表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第3章:アレクシス王国の暗部
51/255

逃亡者

 アレクシス王国国内リムシールの街


「よし、次!」


 早く……。


「うむ、後ろの積み荷も見せてもらうぞ」


 早く……。


「積み荷も問題なしだな。これからラムシートの街か?」

「ええ。最近需要が増えたみたいでして」


 早く早く……。


「そういや本来の冒険者ギルドが戻って来たって言ってたな」

「はい。その影響もあるみたいですよ」


 お願いだ、早く……。


「そうか、まぁ頑張んな。次!」


 よし、後少し……。


「……身分証は問題ないな、手荷物は……」


 頼む、早く終わってくれ!


「よし、問題ないな。しかし女2人だけで不用心ではないか?」


 この急いでる時に!


「いや、心配は無用だ。腕には自信がある。それより先を急いでるんだが……」


「おお、すまんすまん、通っていいぞ、次!」


 よし、終わった!

後はラムシートの街に向かいながら……。


「急ぎましょう、セー「いたぞ、あそこだ!」


 ちぃっ、追い付かれたか!


「走りますよ、セーラ様!」


「は、はい!」


 長身の赤い髪の女性がやや小柄な金髪の女性の手を引く形で、2人は走り出した。


「門番! その2人を捕らえろ!」


 だが、2人の女達は既に門から走り出しており、門番ではどうしようもなかった。


「ええい、くそ! お前達、早く追うのだ!」


 門の近くまで走ってきた隊長らしき男は、部下を怒鳴り散らした。

その怒鳴り声を聞いた部下達は、重い甲冑を引きずるように2人の女性を追いかけて行く。

 そして残った隊長は、髪をかき上げながら呟いた。


「このまま逃がす訳にはいかん。ヨゼモナール様の座を安泰にするには邪魔な存在だ。何としてでも仕留めなければ……」


 そしてこの男も部下達を追って再び走り出した。






 追っ手から逃れた2人は街道から外れた森の中にいた。

 今はまだ日は高く、天気も良く周りが良く見えるので、魔物の脅威は少なかった。

それに加え、この辺りは少し前までダンジョンが存在した場所であり、冒険者がレアアイテム狙いでよく出入りしてたため、元々少なかった付近の魔物は狩りつくされ激減していた。

 この事実は今の2人にとっては不幸中の幸いだろう。


「大丈夫ですかセーラ様?」


「はい、大丈夫です。ありがとうケティ」


 この2人は姫と従者という関係で、訳あって追われる身となってしまった。

 その訳とは、セーラ……正式にはセレスティーラ王女は王族であり王位継承権を持っているためで、次期国王の座を巡り派閥の対立が激化しているためである。

 つまり、セーラの存在が目障りな者達から狙われている真っ最中なのだ。


「申し訳ありませんセーラ様。このまま街道に出るのは危険なため、今すぐラムシートに向かう事は出来ません。暫しここらで潜伏しましょう」


「分かりました。ですがこんな森の中で大丈夫でしょうか……」


 セーラの不安は最もだった。

普段城内で暮らしていたセーラにとっては城の外は未知の領域で、さらに街の外ともなれば不安にならない方がおかしいというものだ。

 そんな不安を抱くセーラの手を握り、不安を取り除こうとする従者のケティ。


「大丈夫です。この辺りの魔物は殆ど討伐されています。それに私はセーラ様の側を片時も離れませんのでご安心下さい」


「はい。宜しくお願いします!」


 セーラは礼を言うと、ケティの手を強く握り返した。

 ひとまずセーラの不安は収まったようだ。


「この辺りには、以前ダンジョンがあったのですが、何者かが攻略してしまい、今は廃墟のようになってるらしいのです。ひとまずそこに隠れて、やり過ごそうと思います」


「廃墟……ですか?」


「はい。1週間程前にダンジョンが攻略されている事が発覚し、それより1週間から20日以上前に攻略されたのではと推測されました」


 2人が逃げてきたリムシールの街から2時間程歩いたこの辺りには、本来ダンジョンが存在していたのだが、誰かが攻略したのかダンジョンが崩壊していたのだ。

 その情報を知っていた従者のケティは、一旦そのダンジョンに隠れようと考えていた。


「でもアレは廃墟には見えませんよ?」


「……え?」


 セーラの指す方向を見ると、存在しないはずのダンジョンが出来上がっていたのである。

 そして2人を誘うかのように、入口が2人に向けられていた。


「そ、そんなはずは……いつの間にか攻略されたという報告があった筈。しかしこれは……」


 ある日いつものようにダンジョンを訪れた冒険者パーティからの報告によると、入口が崩壊しており、中には魔物も宝箱もなく、終いには罠すらない状態だったというのだ。

 そして案の定ダンジョンコアは見つからず、このダンジョンは攻略されたとみなされた。


 その後も冒険者パーティが虚像の報告をしてないか特殊スキルで調べたが嘘はついておらず、ダンジョンはどこかの冒険者か闇ギルドが攻略したという結論にいたった。

 

「だとすると、また新しく誕生したダンジョンという事に……しかしそのような偶然があるのだろ、危ない!」


 ドスッ!


 遠くからセーラ目掛けて矢が飛んできたが、当たったのは近くの木だったため、事なきを得た。


「おーい、こっちに居たぞ!」


 もう見つかったか!

ならば迷ってる隙はない!


「セーラ様、ダンジョンに入りましょう!」


「わ、分かりました!」


 飛んできた矢に驚いてへたり込んでいたセーラを助け起こし、そのままダンジョンへと駆け込んだ。


「くそ、逃げられたか……」


「お前が早まるからだろ。もう少し近付いてからでもよかったろうに」


 2人を追ってきた兵士は、功を焦ったのか狙いが定まらぬ内に矢を放ったため、結果としてセーラに命中する事はなかった。


「まぁ落ち着け。女2人で遠くには逃げられねぇよ。きっとまだ近くに……ん? ありゃなんだ?」


「おい、どうした……ってダンジョンかよ。ここに逃げ込んだ可能性が高いな」


 2人を追って来た兵士達も、ダンジョンを発見したようだ。


「でもおかしいぞ。確かここにあったダンジョンは、誰かが攻略したって報告が上がってたはずだ」


「じゃあ新しく出来たって事か? でもそんな偶然ってあるか?」


「それはそうなんだが……」


 この2人の兵士も首を傾げる。

本来ダンジョンとは、いつどこで発生するのか一切分からないが、それほど頻繁に発生する訳ではない。

そのため、1度崩壊したダンジョンの跡地に別のダンジョンが出来上がる可能性は1%も満たない。


「或いは攻略されてなかった……とかか?」


「かもしれんな。何れにせよ一度隊長に報告しようぜ」


「ああ、そうだな」


 そう言って追っ手の兵士達はその場から引き上げて行く。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「結局同じ場所に作ったのね」


 今、アイリは新しく作り直されたレミエマのダンジョンに来ていた。

 以前ヤゴレーに襲われダンジョンを放棄したレミエマは、同じ場所で再びダンジョンマスターをやる事にしたのだ。


「はい。やはり馴染んだ場所の方が運営しやすいかと思って」


 それは分かる気がするわね。

全く知らない場所で始めるよりも、以前から知ってる場合で始めた方がやり易いに決まってるだろうし。


「レミエマ様、そろそろお昼時ですし、こちらをどうぞ。引っ越し蕎麦になります」


「引っ越し蕎麦? それは食べた事がありませんね」


 実はこのイグリーシアにも蕎麦は存在する。

しかし一般的な食べ物として広まってはいないため、マイナーな食べ物である。

 どうやらレミエマは知らないらしい。


「とても食べやすくて美味しいですよ。ギブソンもどうぞ」


「有り難く頂戴する」


 これから少しの間、4人の蕎麦を(すす)る音が会話しながら聴こえてくるのだが、耳障りなのでカットさせていただく。

 

「うん、美味しい! 今の時季は、冷たい蕎麦に限るわね。あ、ところで、以前はアレクシス王国との関係はどうだったの?」


「以前は中立でしたね。コアルームを目指して来た冒険者以外は、不干渉で自由にさせてました。アレクシス王国とは直接交渉する事はなかったですね」


 ふーん、そういうやり方もあるのね。

王国の方も一々ダンジョンに構ってられないって理由もあるのかも。


「なら以前みたいにまた冒険者が来るかもね」


「そうですね。基本的に侵入者が負傷した後にダンジョンを出るだけでDPが稼げるので、適度に来ていただくのが理想です」


 今レミエマが言ったように、ダンジョンに入った者が怪我をしてからダンジョンから出ていくと、撃退したとみなされDPが入ってくるのである。

但し、出たり入ったりを繰り返すだけだとDPは稼げないのだが。

  

「ですが大丈夫でしょうか。まだ2階層しか出来てないようですし」


 2階層だけだと、私達の感覚からするとかなり際どく感じられるけども。

ユーリのダンジョンなんて、いまだに1階層しか無いって話だし……。


 アイリによるユーリのダンジョンへのテコ入れは今も続いており、眷族(けんぞく)が交代交代でユーリのダンジョンの防衛に協力している。

最も、数週間前に入口に寝ていたファイアドレイクのレイクを見た冒険者の話が広まり、以後誰も近付かないのだが。


「大丈夫ですよ。いざとなればギブソンが居ますし」


「うむ。俺が居る限りレミエマには指一本触れさせん」


 そういえばギブソンが居たわね。

全然喋んないからすっかり忘れてたけど、ギブソンはCランクのウェアウルフだもんね。


 Cランクともなれば、冒険者が徒党を組んで挑むか、上位の冒険者でなければ討伐は不可能なくらいの強さは有る。

1度に大勢が押し掛けて来ない限りは安心だろう。


「さてと、それじゃあ蕎麦も食べ終わった事だし、私達は帰るわね」


「「え、もう帰っちゃうんですか?」」


 そりゃ様子を見に来ただけだし、いつまでも居る訳にはいかないわよ。

 ていうかレミエマは兎も角、何でアイカまでハモってるのよ……。


「折角色々とボードゲームを持って来たのですが……」


「アンタは何しに来たのよ……」


 それじゃまるで友達の家に遊びに来たみたいじゃないの。


 ………………。


 あれ? レミエマは友達だと言えるから間違ってないわね?

 ……ま、いいか。


「兎に角、帰るわよアイカ」


「残念ですが仕方ありません……」


 どうせいつでも来れるんだから、露骨にガッカリするんじゃありません。


「そうですか。ではまた来てくだ「ビー! ビー! ビー! ビー!」


 って、このアラームは?


「どうやら侵入者のようだ」


 ギブソンに言われて見てみると、ダンジョンコアから映写機のように映された壁面には、2人の女性がダンジョンに駆け込んで来たところが映されていた。


「冒険者には見えないわね」


「しかも1人は走り方がぎこちない感じがします。手を引かれてる様子から察するに、普段から走る事が少ないのではないでしょうか」


「それに頻りに背後を気にしてるな。何者かに追われてるのだろうが……」


 さて、レミエマはどうするのかな?

私ならここぞとばかりに関与しに行くけど、ここはレミエマのダンジョンだから勝手な事は出来ないしね。


「暫く様子を見ましょう。少なくとも、このダンジョン内で好き勝手な真似はさせません」


 とりあえず様子見って事ね。

何だか気になってきたから、もう少しここに居ようかな。


「私も気になるから、もう少し居てもいい?」


「勿論です。どうせなら泊まっていってもいいんですよ?」


 ……さすがにそれは遠慮するわ。


「なら折角ですので()()で遊びましょう」


 ()()?よく分からないけど、アイカは何かを使って遊ぶらしい……って、結局遊びに来てるんじゃないの……。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ケティ……少し休みませんか?」


「セーラ様、暫しご辛抱下さい。あまり入口に近いと、すぐに発見されてしまいます」


 アイリ達ダンジョンマスターに見られてるとは知らず、セーラとケティは奥へ奥へと進んでいた。


「ダンジョンには次の階層の手前にボス部屋があります。そしてボス部屋の前には、セーフティエリアと呼ばれる魔物が襲って来ない場所が存在するのです」


 ケティの目的は、ボス部屋の手前にあるセーフティエリアだった。

冒険者がボス戦の前に休憩するのに使用する場所である。

 だがそれは魔物から身を守れるのであって、他の冒険者や盗賊などが相手では意味を成さないが。


「む? あれはもしや……」


 そして走り続けて来た2人の前方に、大きな部屋が見えてきた。

 それは1階層のボス部屋であった。


「セーラ様、前方に有るのがボス部屋であるならば、手前の左側にある場所がセーフティエリアのはずです」


「よ、ようやく休めるんですね……」


 普段走る事が少ないセーラは、セーフティエリアに着くとその場に大の字になった。


「お疲れ様です、セーラ様。暫くは大丈夫だと思いますが、連中が簡単に諦めるとは思えません。何れここにも来るでしょう」


 ケティとセーラは知らない事だが、ここまで来る時にモンスターや罠が存在しなかったのは、ダンジョンマスターであるレミエマが2人の進行上にある防衛機能を一時的にOFFにしたからである。

 なので2人を追って来た兵士達は、しっかりとモンスターに遭遇し罠にも掛かっている最中である。


 何故レミエマが2人に加担するような真似をするかというと、2人が追手に捕まってしまえば間違いなく殺されるという会話を拾ったからである。

 つまり最悪な展開だと、セーラとケティを殺したのはここのダンジョンマスターであるレミエマという事にされかねないのだ。

それにもっと気になる情報だと、セーラがアレクシス王国の第二王女だという話だった。

 コレが真実なら、既にレミエマはお家騒動に巻き込まれてしまったと言っていいだろう。

 そういった訳で、陰ながら追手の妨害を行ってきたのだが、時間が経てば兵士達も奥に進んでしまうので、結局2人は見つかってしまうのであった。


「あ、ここに居やがったか! おーい、こっちだこっち!」


「く、やはり来たか!セーラ様、ボス部屋に突入します。絶対に私から離れないで下さい!」


「は、はい、分かりました!」


 セーラとケティはボス部屋へと入り、追って来た兵士達は、ボス部屋の入口前に集まった。


「どうする? 出てくるのを待つか?」


「バカ言え、殺したら殺したで死体を持って来いって言われてるだろ」


 上から言われてるのは、2人の拘束もしくは殺害であった。

特にセーラに関しては絶対に身柄を確保しろと厳命されていた。


「ならもう一度隊長に報告しに行くか?」


「それこそ無しだろ。そんな暇があるならさっさと捕まえて来いって怒鳴り散らされるぞ」


「そうだぜ。それにもし魔物に骨まで食われちまったら証拠を持って帰れねぇよ」


 例えセーラが行方不明扱いになっても、死体が発見されなければどこかで潜伏してると周囲には思われるので、それだけは避けたかったようだ。


「じゃあ入るしかないな。中にはボスが居る可能性があるから慎重に開けるぞ?」


「分かった」


「よし、俺らで開けるから、後ろから弓で構えといてくれ。ボスが見えたら即攻撃な」


「「「「了解!」」」」


 そしてボス部屋の扉がまさに運命の扉の如く、開かれようとしていた。


アイカ「こんな事もあろうかと、お泊まりセットを用意しておきました」

アイリ「準備が良すぎる!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ