閑話:迷い人との遭遇
さっそくブクマいただきありがとう御座いますm(._.)m
僕の名はミルド。
イグリーシアの管理神の1柱。
今日は何年ぶりかの迷い人の出現を感知し、そこへ向かった。
「久しぶりの迷い人だけど、罪人じゃなければいいんだけどねぇ」
罪人ではないことを願うのにも理由がある。
迷い人が罪人だった場合、元の世界へは帰せないからなのだ。
何故帰せないのかというと理由は簡単で、帰す世界に悪影響を及ぼすからだ。
つまり、罪人であるが故に悪影響があるのがわかってるので、そのまま送り帰すのは確信犯ということになる。
では罪人だった場合どうするかなのだが、こちらの世界にも、あちらの世界にも悪影響を及ぼすわけにはいかないので、処理するのである。
勿論できればそんなことはしたくない。
だが管理神であるからには、やらなくてはならない。
何故なら、世界を管理するのが役目であるからだ。
「役目だから仕方ないんだけどね」
僕自身も何度か処理したことがあるが、はっきり言って後味が悪い。
命乞いをする者も、半狂乱になって襲ってきた者も、皆等しく土へと還っていった。
襲ってきた者たちはまだいい。
後味の悪さをあまり感じないのだから。
しかし、命乞いをしてる者たちを処理するのは心が痛む。
だからなのか、できれば処理する側ではなく見守る側で在りたいと思うことが強くなった気がする。
いや、恐らく気のせいではない。
「どうやらあそこみたいだ」
迷い人の感知した場所は地中にある空間だった。
何故そのような場所にと思ったが、何となく予想がついた。
まるで今はまだ冬眠してるかのような魔素溜まり。
その中心にあるのはダンジョン核だ。
「どうやらあの子が迷い人のようだね」
地中の空間に入った僕は、そこで魂だけの存在になった迷い人を発見した。
僕は暫く迷い人を観察した。
願わくば罪人ではありませんようにと願いをこめて。
その迷い人を鑑定し僕は驚いた。
産まれながらの不運に見舞われ、本来持ち合わせている才を発揮することなく生涯を終えた少女。
その少女がダンジョン核に喚ばれ、この世界に辿り着いた。
しかし、現実は非情だ。魂だけの存在となった少女ではダンジョン核に触れることはできない。
これは間違いなく少女に掛かっている呪いの影響だ。だがこの呪いと少女に接点はないことから、呪いが先祖帰りしたのだと推測できる。
つまり、この少女の先祖が何らかの罪を犯し、その呪いのとばっちりをこの少女が受けたのである。
これはあまりにも理不尽ではないだろうか?
罪人の子孫として産まれたのが罪だとでも言うのだろうか?
そう思った僕の行動は速かった。
直ぐに元凶とも言える呪いの上から加護を被いかぶせた。
一般人よりはかなりの幸運になったが、今までの不運を考えれば許容範囲だろう。
後は肉体を構築して、本人がダンジョンマスターになることを望んでるのならばそのままに。
望んでなければ地上へと連れ出そうとおもった。
「受肉してないと、ダンジョン核には触れられないよ」
「誰!?」
ちょっと驚かせてしまったようだ。
見た目は人間に近いはずなんだけれど……。
「僕の名はミルド。この世界を管理する神の1柱だよ」
「え……か、神様!?」
「うん、神様」
ふむ、最初は驚いてたみたいだけど、落ち着きを取り戻したようだね。
「……そのぅ、何故神様がここへ?」
「確かに。何故神である僕がここに居るか疑問に思うのは当然だ。うん。中々的確で鋭い質問だと思うよ」
神様という自己紹介に対して実に冷静だ。
なのでついつい冗談を口走ってしまう。
「まぁ冗談は程々にしとこうか」
冗談かよというツッコミを心の中で入れられてしまったが、反応が新鮮で実に楽しい。
「それでここに来た理由なんだけど、異世界から迷い人が来てしまったみたいだから、その調査とサポートだね」
その後も話をしてみると、頭の回転が早いのか、理解力が非常に高いことがわかった。
これならこの世界でも生きていけるだろう。
肉体を構築する際に、感極まったのかビンタをされてしまったが、その後何とか落ち着いてもらった。
恐らく、病に蝕まれてない肉体に思わず興奮してしまったのだろう。
そしてどうやらこの少女はダンジョンマスターになる決心をしたようだ。
ならば後は見守るしかない。
「それじゃあ良い異世界ライフを」
最後に簡単にステータスを説明してその場を後にした。
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自室で寛いでると、同僚のクリューネがやってきた。まぁ来るのはいいんだけれど……。
「クリューネ、いい加減部屋に入る時はノックをすることを覚えてはどうかな?」
「いいじゃない別に。誰が来たかなんて直ぐにわかるんだし」
そういうことを言いたいのではなく、礼儀の話をしたつもりなのですがねぇ……。
「まぁまぁ「ボリボリ」そんな堅苦しい「ボリボリ」事気にしすぎても「ボリボリ」疲れるだけ「バリボリバリボリ」んぐっ、でしょ?」
「煎餅を食べながら話さないでください」
そもそも他人の茶請けに勝手に手をつけるのは、いかがなものかと愚考しますが。
「もぅ相変わらず細かいわね。そんなに細かいこと気にしてると禿げるわよ?」
貴女が大雑把すぎるのだと思いますがね。
「今すぐ禿げるなんてことはあり得ません。オルド様と一緒にしないでください」
全く失礼な話です。
普段からキチンと手入れをしてる僕が禿げるなんてあり得ません。
「……いや、アンタもオルド様に対して失礼だからね?」
オルド様に対して礼を欠いた覚えはありませんよ。
全く、僕のどこを見て言ってるのでしょうか。
「それよりさ、ついさっき変わったみたいよ、罪人の処遇」
「ふむ、それは本当ですか?」
「うん。直ぐに処理するんじゃなくて、暫く様子を観てから決めましょうってことになったみたい」
なるほど。執行猶予というわけですか。
それならばそのほうがいい。
更正できるならそれに越したことはありません。
「でもそれだと「ハグ」監視しなきゃ「モグ」ならないから「ハグ」面倒よ「モグ」ねぇ」
だから貴女は……煎餅の次は大福ですか。程々にしないと太りますよ?
「あたしが大福ごときに困惑させらせるわけないでしょ?」
もう言っても無駄なので一々口には出しませんよ。
「ところでさ、さっきから気になってたんだけど、その頬の赤い手形は何?」
おっと、気がついてましたか。
でもさすがに迷い人にやられたと言えば、あの少女への印象が悪くなりますからね。
ここは誤魔化しておきますか。
「いえ、紅葉の季節が恋しくなりましたので、一足早く彩ってみたのですよ」
これで問題ないでしょう。
「……バカじゃないの?」
どうやら彼女には僕の美的センスが理解できなかったようですね。
「どうせアンタのことだから、余計なことでも言って怒らせた結果なんでしょ?」
つくづくこの女神は失礼なことを言ってきますね。
迷い人のサポートは僕の仕事の1つなわけですからね、そんなヘマはしません。
「僕は何も言ってませんよ。何故か彼女にさっさと服を用意しろとは言われましたが」
「服を……って、アンタもしかして、その迷い人の女の人を裸にしたの?」
おや? クリューネにしては冴えてますね。
「そうですが、何か問題でも?」
「‥‥‥‥‥‥」
バチーーーーーン!!
本日二度目のビンタを受けたせいで、紅い頬が赤く熟してしまいました。
「何故僕はビンタされたのかな? 今日はこれで二度目になるんですがね」
「自分の胸に聞いてみればいいじゃない? 一応110番しといてあげるから。というか、なーにが赤く熟してよ、気持ち悪い発想するんじゃないわよ変態!」
ふぅ、まったく、つくづく女心というものはよく分からないですねぇ……。
ミルド「ところでクリューネ、あの少女の下着は何色が良いのでしょう?」
クリューネ「とりあえずもう一度叩かれてきなさい、ど阿呆!」