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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第2章:ダンジョンバトル
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アイリVSロック

「またバトルの申し込み?」


「はい、そのようです」


 昨日の今日でねぇ。

そういえば、ここ最近はダンジョンバトルばっかりしてる気がする。

いや、気がするじゃなくてしてるわね実際に。


「まさかまた水虫じゃないでしょうね?」


「いえ、別人ですよ。ランクはEで、名前はロック様となってますね」


 水虫じゃなくて良かった。

今度あんな醜態見せられたら、物理的に潰してやるところよ。

 そうそう水虫と言えば、私とのバトルに負けたペナルティとしてレグリアス様に1日自由に使って下さいって貸し出したのよね。

そうしたらレグリアス様からお礼に人化の指輪を貰っちゃった。

なので哀れなホークに渡してあげたらウザいくらい喜んでたわ。

今回だけは水虫感謝してる。

 それにしてもロックって、どこかで見たような名前なんだけど……どこで見たんだろ?


「ま、いっか。断る理由は無いし受けるわ」


「では通信繋ぎますね」




ロック

『こうして対決するのは初めてだったな』


 ん? 向こうは私を知ってるっぽいな。

でも私は覚えてないのよねぇ……。



アイリ

『あの~、どこかで会いましたっけ?』


ロック

『ぐふ! まさか忘れたのか? 以前アレクシス王国の集いで色々と話した筈だが……』


 言われてみれば居たような気もしないでもない……。

 女神クリューネから教えてもらったダンジョン通信で、ダンジョンが開放される前に事前対策としてアレクシス王国の情報を集めてた頃に話してたのねきっと。


「お姉様、相手が少々気の毒です……」


 それはまぁ……うん、さすがに今回はロックには申し訳ないと思ってるわ。


アイリ

『……まぁその事は今は置いといて、対決方法を決めましょう?』


ロック

『置いとかれるのか……。まぁいいか。俺としてはオーソドックスに互いに侵略戦を行いたいんだが、どうだろう?』


 侵略戦って事は、最初にグーチェスと戦った時と同じやり方ね。

 思えばオーソドックスな割に、殆ど侵略戦をしてない私は変わり者かもしれない。


アイリ

『なら侵略戦でいきましょう。私としては今からでもいいんだけど……』


ロック

『い、いや待て、さすがに今すぐはキツい。せめて明日の朝からで頼む』


 そうなるわよね普通は。

私と違って他のダンマス達はDPに余裕は無いと見るべきよね。

それにバトルの内容決めてから事前準備をするだろうし。


アイリ

『それでいいわ。勿論ダンジョンは特設ダンジョンでいいわよね?』


ロック

『ああ。それと階層は1階層にしてほしい。先に相手のボスを倒した方が勝ちという事だな。眷族(けんぞく)の参加も可能にしてくれると助かる』


 眷族の可否に関しては、私の方が可能にしてほしいくらいよ。

だから勿論、眷族の参加も有りね。


アイリ

『じゃあそれで決まり。明日の朝会いましょう』


ロック

『ああ。また明日な』




 バトルの内容も決まった事だし、早速行動ね。


「聞いての通りよ。明日の朝にダンジョンバトルの侵略戦を行うから、今の内に眷族を集めといて。ダンジョンも参加する眷族に作ってもらうわ」


「お姉様、眷族にダンジョンを作らせるのですか?」


「そ、今回参戦させる眷族にね」


 そうすれば、自分達に有利になるようにダンジョンを構築する筈だから、私が作るよりも出来が良かったりするかもね。




 次の日の朝食後、ダンジョン通信を繋ぐと、既に相手は待機してたみたい。


ロック

『おはよう。こっちは準備万端だ』


アイリ

『おはよう。こっちも大丈夫よ』


モルデナ

『おはよう御座います。えーと、今回の審判を務める悪魔族のモルデナです。お2人とも準備が出来てるという事で、すぐに始めさせていただきます……いいですよね?』


 今回の審判はモルデナさんだ。

いや、今回もと言ったほうがいいのかもしれない。

 モルデナさんとはこれで3度目になるから、中々の遭遇率だわ。


モルデナ

『今回は侵略戦で、使用出来る階層は2階層までですが、お2人共1階層しか使用しないとの事なので、1階層のみの使用。先に1階層のボスを撃破した方が勝ちになります。ではカウントダウン入ります』


 Gランクだと1階層しか使用出来ないんだけど、Fランクになると2階層まで使用出来るらしい。

 そして私はFランクに昇格してるので、2階層使用出来るって訳。

今回は1階層しか作ってないんだけど、Fランクの特設ダンジョンだと5000ポイントのDPを借りれるから中身は濃くなってるわ。

勿論ちゃんとモンスターを召喚出来るだけのDPも残してあるわよ?


モルデナ

『0! バトルスタート!』


 色々考えてたらバトルが始まったみたい。

 さて、前回の侵略戦は様子を見ながらだったけど、今回はこちらから強気で攻めてみようと思う。

 まずは……、


「アイカ、エアーバットを10匹召喚して相手ダンジョンに突入させて」


「お姉様、現在設定されている階層とエアーバットの相性が悪いため召喚コストが高くなってしまいますが宜しいでしょうか?」


 相性とか有ったんだ……私もまだまだ知識不足ね。


「もしかして、エアーバットは寒さに弱かったの?」


「ズバリその通りですが、今現在1階層しか使用出来ないのも原因です。現状1階層は雪原エリアとなっており、お姉様が仰った通り、エアーバットとの相性が悪いので召喚コストがかかってしまうのですが、もし2階層が使用可能で、2階層を洞窟エリアに設定していれば、問題は解消されておりました」


 うーーん、なら雪原エリアのモンスターを召喚するしかないか……。

 あ、それなら折角だし今回参戦してる眷族に助言してもらおう。

という訳で……、


『ねぇギン、偵察を出したいんだけど、召喚するのはどんな奴がいい?』


 参戦してる眷族の1人はシルバーウルフのギンなのよ。

そのギンに念話で聞いてみた。


『では僭越(せんえつ)ながら助言させていただきます。まずはクロコゲ虫を1匹だけ召喚し、相手のダンジョンに侵入させます』


 クロコゲ虫を1匹だけ?

なんだか拍子抜けしてくるんだけど……。


『1匹だけでいいの? 少なくない?』


『いえ、問題ありません。その1匹で相手ダンジョンのタイプを確認するのです。クロコゲ虫は、寒さや暑さに影響されませんので』


 ああ、成る程ね! 相手ダンジョンを確認してから、改めて偵察するモンスターを出せばいいのね。


「アイカ、クロコゲ虫を1匹召喚して、相手ダンジョンに侵入させてちょうだい」


「了解しました。クロコゲ虫を1匹召喚します」

DP2870DP→残DP2869


 召喚したクロコゲ虫は、ゴキブリのような動きで素早く相手ダンジョンに潜り込んだ。

そしてクロコゲ虫の視点から得られた情報は、相手ダンジョンは洞窟エリアであるという事だった。


『洞窟エリアですか……ではスノーラビットは如何でしょう? スノーラビットなら洞窟エリアでも支障はない筈です』


『分かったわ、スノーラビットね……という事でアイカ、スノーラビットを30体召喚して」


「ではスノーラビットを30体召喚します」

DP2869→DP2719


 あ、そういえば消費DPを確認してなかったけど、1体5ポイントなら問題ないわね、良かった良かった。


「お姉様、もう少ししっかりとDPを管理しないと、眷族達に示しがつきませんよ? 今もギンに助言されてるくらいなんですから。これではお姉様も、わたくしの事をとやかく言えませんね」


 アイカに呆れられてしまった。

普段私が無駄遣いするなと言ってる手前、大福餅片手に溜め息をついてるアイカに言い返せないのが悔しい……。

 更にその横でルーが、モソモソと最中を食べてるのを見て若干イラッときたけど、仕方ないので諦める。

というか、ルーはすっかりアイカ2号になってしまったようで……。


「まぁいいわ。スノーラビット達を突入させて」


「了解です」


 さて、相手はどう出るかな?



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 アイカとルーが和菓子に舌鼓を打ってる時、相手のダンジョンマスターであるロックは、アイリのダンジョンに入り込めないでいた。


「……いったいどういう事だ? 侵入した直後にロストしてしまうとは……」


『恐らくは、かなり実力差のあるモンスターが相手ダンジョンの入口に待機してるものと思われ、こちらのブッシュラビットが侵入した直後に狩られているのでしょう』


 ロックの問いかけに淡々と状況説明を行うダンジョンコア。

 それを聞いて溜め息をついたロック。

まさか相手ダンジョンを偵察する事すら出来ないとは思わなかったからだ。

 それもその筈、アイリのダンジョン入口では、シルバーウルフのギンが待機してるのである。

シルバーウルフはCランクのモンスターであるため、Fランクのブッシュラビットでは瞬殺もやむ無しであった。


(あるじ)様! あたしが乗り込んでパパッと片付けてくるよ!』


 今発言したのは、ロックの眷族であるナレクアム、Cランクのモンスターのシルバーウルフだ。

偶然にもアイリとロックは同じモンスターを眷族とし、同じダンジョンバトルに参戦させていた。


『ナレクアム、お前はボス部屋を担当してるだろう……』


 ボスを担当してるという事は、ボス部屋からは出られないという事なので、ナレクアムがボス部屋から出た瞬間ロックの敗北が決まってしまう。


『でもさー、ボス部屋にただ居るだけって退屈なんだよねー』


 勿論ただ居るだけじゃない。

いつ来るかわからない侵入者に備えて待機してなければならない。

 が、その割にはナレクアムは緊張感に欠けていた。


『どのみちバトル終了まで、その部屋からは出られんぞ』


『ちぇーっ……』


 会話を終え、ダンジョンコアから送られてくる映像を注視するロック。

 するとダンジョン入口から侵入してくるモンスターを発見した。


「コア、侵入者だ。入口をアップしてくれ」


『畏まりました』


 これまで動きが無かった相手からの侵入だ。

一体どんなモンスターが送られて来たのか。

それをハッキリさせるために入口付近をアップしてみた。

 しかし、そこに映っていたのは、予想を遥かに下回る()()だった。


「クロコゲ虫が1匹だけだと!?」


 まさかこの1匹だけでダンジョンを偵察する気なのか?


 だが困惑するロックに見せつけるかのように、スノーラビットの群がクロコゲ虫に続き侵入してきた。


『ロック様、敵スノーラビット30体が偵察を行ってるようです。如何致しますか?』


 さすがに放置するのは良くないな。

あちら側のダンジョンを偵察出来てない以上、時間稼ぎの意味も含めて妨害すべきだろう。


「コア、グリーンウルフを60体召喚し、2体で敵スノーラビット1体を迎撃させてくれ」


『了解しました。グリーンウルフを60体召喚します』

 DP1820→DP1520


 さて、上手くいけばいいのだが……。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「まったく、アイリ様がダンジョンバトルをなさってるというのに、お前達ときたら……」


 対戦相手のロックがスノーラビットの迎撃を行ってる頃、アイリのダンジョンでは、アイカとアイカ2号(ルー)がリヴァイにより説教を受けていた。

 説教されてる理由は、アイリのバトルを真面目に観戦してないというのが原因だ。

先程までリヴァイは談話室の清掃をしていたため、コアルームには居なかったのだ。


「心外です。わたくしはキチンと観戦してるのですよ? 何せダンジョンコアですから。わたくしはルーにお菓子をせがまれて仕方なくですね……」


「アイカは狡い。ルーはアイカが大福を食べてる姿に誘惑された被害者。もしくは悲劇のヒロイン」


 ……どっちもどっちだから、素直に説教されてなさい。


「兎に角、アイリ様がバトルを行ってる最中は、黙って観戦する事です。その代わり、お茶と茶請けくらいなら許可しましょう」


「本当ですか!? それなら……「ただし、茶請けは私が用意します。いいですね?」


「「……はい」」


 茶請けと言いつつアイカが大量のお菓子を召喚しようとしてる事をリヴァイに察知されたため、アイカの野望はここで潰えた。


 さて、後ろの2人は大人しくなったところでバトルの状況はというと、偵察中のスノーラビットが20体以上やられてしまったのよ。

まだまだ未捜索の場所が多いみたいだから、追加で召喚するしかないわね。


「アイカ、グレーウルフを30体召喚して突入させて!」


「大盤振る舞いですね。分かりました、グレーウルフを30体召喚します」

 DP2719→DP1219


 見たところ、相手はグリーンウルフをスノーラビットに当ててきてるようだから、それの上位種であるグレーウルフを当ててやれば、楽に倒せる筈よ。

 Fランクのグリーンウルフが5ポイントなのに対し、Eランクのグレーウルフは50ポイントとその差は10倍だけどね。

 でもその影響でDPの残りが心許なくなってきたし、ギンも一緒に突入させよう。


『ギン、入口での待機は終了よ。グレーウルフ達と一緒に突入してちょうだい』


『承知しましたわ。シルバーウルフのギン、推して参ります!』


 お、いい感じに気合い入ってるわね。

これなら安心して見てられそうだわ。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 お互いにボス部屋を発見出来てない状況が続く中、アイリのダンジョンのボス部屋では、マットブラックウルフのクロが退屈そうにしていた。


「退屈ッスねぇ……。こんな事なら漫画の一冊でも持ってくれば良かったッス」


 しかし、特設ダンジョンでのバトルは外部からのアイテムの持ち込みは不可のため、持って来ようとしたところで弾かれるのだが。


『クロ、聴こえる?』


 暇をもて余してたクロに、アイリからの念話が届いた。

もしや漸く出番がやって来たかと思い、過剰に反応するクロだったが……。


『聴こえるッスよ姉貴。ついに敵が来たんスよね? 俺の出番ッスよね?』


『違うわよ。敵は暫く来そうにないからリラックスしててちょうだいって言おうと思っただけ。じゃあ宜しく』


「………………」


 現実は非情である。


ルー「茶請けのおかわりちょうだい」

リヴァイ「ダメです」

ルー「ケチ!」

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