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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第2章:ダンジョンバトル
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さよなら男爵また来て子爵

 ナレックのダンジョンの手助けをしてから5日後、チョワイツ王国の使者がやって来たとナレック本人から通信が来たので、さっそくホークとザードの2人を回収しに向かった。

 例の如くナレックが出迎えてくれたけど、毎回同じように出迎えなくてもいいのよ?って言ったら、恩人なんだから当然だよと言われた。

 しかもあの2人が上手い具合にDPを稼いでくれてるお陰で、随分生活が楽になったらしい。

うん……まぁ役に立ってるようで何より。

 というか、いまだに2人は、剣術特訓やら玉乗りやらをやらせてるらしいので、さっさと回収しに行く。


「まだ捕虜達と訓練してるみたいだね。とりあえず様子を見てみる?」


 ナレックの案内で現場に向かうと、ホークとザードの2人は大半の兵士からは恐怖の対象として見られてるのがすぐ分かった。

明らかに距離をとってるからね。

 だけど一部の兵士からは師と仰がれてるようで、試しに1人の兵士を鑑定してみると、驚くべき事実が判明した。


 スキルに有った剣Lv5。

これって騎士団長クラスのレベルよ。

因みにこの兵士は今も熱心にザードの教えを聞いて剣を振るっている。

まったく知らない他人だけど将来は安泰だと思うわ。

 でも他人を育てても何にもならないんだからザードには余計な事をしないように言っとかなくちゃいけない。


 続いてホークを師と仰いでる兵士を鑑定してみたところ、以下のスキルが付いていた。


玉乗りLv2

お手玉Lv2

皿回しLv2

よさこいLv1

組体操Lv1

ファイヤーブレスLv3


 色々と突っ込みたいんだけど、一番重要な事だけを言うわ。

ファイヤーブレスってどうやって身に付いたのよ!? おかしいでしょ!!

これは後でホークを問い詰めないといけない。


「ホーク、ザード、帰るわよ!」


「おお、アイリはん。お迎えに来てくれたんか?」

(あるじ)殿、もう帰還の時間で御座るか?」


 そうよ、これ以上妙な兵士が育たない内に、さっさと連れて帰ってやるわ!

 ……でもって、他の兵士達はなんで私を見て震えてるんだろ? まぁいいや。


「アイリさん、もう帰っちゃうの?」


「ええ。やる事は終わったしね」


 その代わり、別にやる事が増えたんだけどね。

ホークとザードにはキッチリとお説教しないといけないのよ。


「出来れば使者の貴族に会ってほしいんだ。不正を行ったノルゴストルを捕らえるのに協力してくれたお礼を言いたいそうだからさ」


 うーーん、貴族って響きに良いイメージは無いのよねぇ……。

どうしてもアレが出てくるのよ、ロ〇リゲスとか、ロド〇ゲスとか、ロドリ〇スとかね。

でもまぁ、会うだけなら別にいいか。


「まぁ会うだけならね」


「うん、有難う。ドミニク子爵って言うんだけど、既に応接室に待たせてるから」


 そういえば使者はもう来てるんだったわね。


「使者の子爵……プックククク!」


 ホーク、親父ギャグをかますのは止めてちょうだい……。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ホークとザードの2人を先にダンジョンに送ってから会う事にした。

とくにホークが居ると余計な事を言われかねないし。

そして今、ナレックのダンジョン内に有る応接室……勿論ちゃんとした部屋よ? その応接室で私の対面に使者が座ってる状態よ。


「初めましてお嬢さん。僕はドミニク、チョワイツ王国の使者として参上した者だよ」


「初めまして、私はアイリよ。ナレックから聞いてると思うけど、ダンジョンマスターをやってるわ」


 チョワイツ王国からの使者は、意外にも若い青年貴族だった。

若いといっても私よりは歳上に見えるけども。

少なくとも20代前半ね。


「ノルゴストル男爵の暴走により、ダンジョンが危機的状況に陥ったところを助けていただき感謝するよ。国としても貴重な収入源になるから、失う訳にはいかなかったんだ」


「間に合って良かったと思うわ。それに私の方にも収穫があったしね」


 実は今回、侵入者との戦いを録画してもらうようにホークに頼んでたのよ。

それを見れば色々と役に立つだろうから期待してるわ。


 しかし録画されてる内容は、まさにダンジョン大運動会だったので、それを見たアイリはホークに怒りをぶつけるのだが、それはまた別のお話。


「収穫かい? なら僕にも収穫があったよ。 君のような素敵なお嬢さんに出会えた事が、なによりの収穫さ!」


 あれ? もしかして口説かれてるんだろうか?

チラッとナレックの方を見ると苦笑いしてこっちを見てる。


「どうだいアイリさん。良ければこの後、僕の邸に招待するよ?」


 さすがにそれは遠慮したい……。


「ちょっとドミニク、一応使者なんだから僕との話し合いが先だよ?」


「分かってるよ、その後の話さ」


 ナレックが割って入ってきたけどまったく効果が無かった。

そしてナレックは申し訳無さそうな顔をしてる。

相手に悪気が無いだけに断り難いんだけど、どうしようか……。


『お姉様、()()()()()すみませんが、ダンジョンバトルの申請が来てますよ』


 ナイスなタイミングでアイカからの念話。

 っというか、楽しんでないわ!

まったく、他人事だと思って……。


「申し訳ないんだけど、ダンジョンバトルの申請が来てるから戻らないといけないの。だからまたの機会にしてね」


「むぅ、残念だが仕方ないな……」


 よし、何とか回避する事に成功した。

バトルの申請相手には感謝するわ!



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ただいま~」


 ナレックのダンジョンから逃げるように帰って来た。

あのままだと私とドミニクの話し合いに成りそうだったわ……。


「お帰りなさいませ、お姉様。せっかく()()()()子爵のお誘いがあったのに、水を差してしまい申し訳ありません」


 いや、私としては助かったから寧ろ有り難いんだけどね。

だけどアイカには確認しないといけない事がある。


「ねぇアイカ、なんでドミニクの事を知ってるの? 私は使者の名前は一言も喋ってないんだけど?」


「………………」


 沈黙するって事は何かが有るって事ね。


「えーーと……あ、そうそう! 確か今日のラッキーアイテムがドミニクという人だったような気が……」


 要らんわそんなアイテム!


「アイカ、正直に話しなさい、今話せば怒らないから……ね?」


「……はい」



 そして判明した驚愕の事実!

 なんと、アイカったらいつの間にか座標転移(ハザードワープ)を覚えてたのよ。

確か20000ポイントくらい必要だったと思う。

その座標転移(ハザードワープ)で私の後を付けて来たらしいんだけど、アイカの存在にはまったく気付かなかったわ。


 じゃあなんで気付かなかったのかというと、すっかり忘れてたけど、倉庫に仕舞ってあった透明マントを身に付けてたからって事らしい。

 試しに目の前で着けてもらったら、あら不思議、見た目どころか気配までシャットアウトしたゃったわ!

という訳で、透明マントは気配も隠せるという事実が判明したのでしたっと。

 というかこれじゃあ透明マントじゃなくて認識阻害マントよね……。



「ところでお姉様、ダンジョンバトルを申請してきた相手を待たせてるのですが……」


 いっけない、そっちを忘れてたわ!


「アイカ、ダンジョン通信をつないで!」


「了解しました」


 急いでダンジョン通信を繋ぐと、映ったのは真っ赤な髪をしたツインテールの女の子だった。


リゼット

『遅かったじゃない! いつまで待たせるつもりよ!』


 真っ赤な髪が怒りで燃えてるように見える。

というか、そんなに長時間待たせた訳じゃないのに怒り過ぎよ。

 精々1時間くらい……かな?


リゼット

『待たせ過ぎよ! 何で1時間もダンジョンコアの前で待機してなきゃなんないのよ!』


アイリ

『ごめんごめん、ちょっと立て込んでてね』


リゼット

『フン、まぁいいわ。だけど今度また同じように待たせたら極刑よ! 死刑よ! まぁ初犯だから今回は見逃してあげる』


 この子、私と見た目の年齢が大して変わらないのに、この偉そうな態度は何なんだろう。


アイリ

『はいはいごめんね。で、自己紹介しとくけど、私はアイリよ。貴女は?』


リゼット

『フフン、よくぞ聞いてくれたわ! 私は選ばれし者。魔法に愛され、魔法に目覚めた究極の少女、魔法少女リゼット!』


「………………」


 まーーーた魔法少女だった……。

いったい魔法少女のダンマスって、どんだけ居るんだろう……。


リゼット

『驚いて声も出ないみたいね!』


 ええ、凄く驚いてるわよ、この世界での魔法少女との遭遇率の高さにね。


リゼット

『……って、こんな事やってる場合じゃなかった、バトルの内容を決めないと。……コホン、私としては互いに召喚したモンスターを闘わせて、最後に生き残ったモンスターがどちらの陣営かで争うのがいいんだけど』


 リゼットの案を纏めると、以下のようになった。


・召喚出来る数は10体まで

・バトルフィールドは大きめのボス部屋

・眷族の参戦も可能

・どちらかの陣営のモンスターが0になれば終了


アイリ

『分かった、それでいいわ』


リゼット

『ならバトルは明日の朝ね。あ、そうだ、私を待たせた罰として、アイリは特設ダンジョンを作っとく事、いいわね?』


 指をビシッと突き付けられて命令されてしまった。

若干イラッとくるけど、遅れたのは事実だから仕方ない。


アイリ

『あ~はいはい、作っといてあげるわ……チッ、メンドクサ……』


リゼット

『コラァ! 今舌打ちしたでしょ!? もぅ、真面目にやらないと極刑だからね!? 絶対だからね!?』


 はいはい、善処しますよ~。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 そしてバトル当日の朝。

ダンジョン通信からハイテンションな声が響いた。


リゼット

『アイリーーッ、起きてるーーッ!!?』






 …………鼓膜が破れるかと思いました。

 このバカみたいにデカイ声の主は、昨日お姉様が話してた相手で、リゼットという魔法少女です。

 せっかくわたくしが朝食後のティータイムを楽しんでたのですが、興が削がれてしまいました。

仕方ないので話し相手に成りましょう。


アイカ

『リゼット様、わたくしはアイリの妹のアイカと申します。申し訳御座いませんが、お姉様は急用で席を外しております』


リゼット

『ちょっとぉ! 昨日バトルの申請して合意したでしょ? 何で用事があるのよーーっ!!』






 すぐさま耳栓をして助かりました。

この魔法少女は、余程大声で叫ぶのがお好きのようですね。

 ですが、残念ながらお姉様が席を外してるのは本当です。

 何故かというと、ナレック様のダンジョンでホークとザードが一部の兵士を鍛えてたのが原因で、ダンジョンにやって来る前よりも二段階も三段階も実力がアップした兵士が周囲に露呈したからです。

 すると当然周りからは何があったのか問い詰められる訳でして……。

……でまぁ結果として、レベルアップを志願する兵士や冒険者がナレック様のダンジョンに殺到してしまい、ナレック様からヘルプミーという訳です。


 そんな訳で、早朝から眷族達を連れてナレック様のダンジョンに向かわれました。

 一応リゼット様にも説明しときましょう、納得してくれるかは別として。


アイカ

『……っという訳です』


リゼット

『うーーん、分かったような分からないような……』


 どうやらリゼット様は脳筋の部類に入るらしく、頭があまりよろしくないようです。


アイカ

『要するにですね、お姉様でなければ解決出来ない事案という事です。なのでお姉様は、不戦敗でもいいと仰ってました』


リゼット

『そうなのか……』


 おや? 不戦勝になるなら喜ぶと思ったのですが、どうやら違ったようです。

あからさまにシュンとして、まるで捨てられた子犬のように見えます。


モルデナ

『すみませーん、遅れましたーっ!』


 おやおや、誰かと思えば最初のダンジョンバトルでお世話になった、悪魔族のモルデナさんではないですか。

 今回の審判はモルデナさんでしたか。


アイカ

『モルデナさん、態々来ていただいて申し訳ないのですが、アイリお姉様は急用で……』


モルデナ

『え、居ないんですか? それは困りましたね……あ、ですが代わりに眷族の方が指揮をとるのでも構いませんけども?』


 それは分かってましたが、出来ればやりたくないのですよ。

わたくしは、お姉様を()()()()()()しなければならないのです。

 恐らくお姉様は、ドミニク子爵と再び接触する事になるでしょうからね。

それを覗き見……ではなく、注意深く見守ってなければなりません。


アイカ

『いえ、わたくしは遠慮しますので、不戦敗で構いません。お姉様からも不戦敗でいいと言われてますので』


モルデナ

『そうですか? では今回のバトルはリゼットさんの勝利とします』


リゼット

『なんか嬉しくない……』


 その気持ちも分からないではないのですが、こればかりは仕方ありません。

 しかしバトルを楽しみにしてたであろうリゼット様を悲しませるのもよくありませんね。



 ……むむ、妙案を思い付きました!

これならリゼット様にも満足していただけるでしょう。


アイカ

『リゼット様、少々面白い話があるのですが、如何です?』


リゼット

『……面白い? 何々?』


 簡単に食い付いてきたリゼット様の将来が心配になりますが、今は話を進めましょう。


アイカ

『実はですね、お姉様の急用には、とある貴族の青年が関係してるのです。その青年はお姉様の事を大変気に入ってらっしゃるので、もしかしたらそのまま邸に連れ込む……なんて展開が見れるかもしれません』


モルデナ

『も、もしかして、わたくしはアイリさんに先を越されるかもって事ですか!? それ、なんとか阻止出来ないんでしょうか?』


 ……モルデナさん、何故貴女まで食い付くのです。

しかも思いっきり邪魔する気ですか……。

 ああ、そういえばこの人、彼氏募集中とか言ってましたからね、いまだに恋人が出来ずに嫉妬してるのでしょう。


アイカ

『邪魔するかは兎も角、お姉様を追跡観察する魔道具が有るのです。御一緒に観察してみますか?』


モルデナ

『是非!』


 貴女はそこまで邪魔したいのですか……まぁ面白い事に成りそうなのでいいんですが。

 というかモルデナさんは審判のお仕事があると思うのですがよろしいのでしょうか。


モルデナ

『仕事なんて他人に任せておけばいいんです。それよりこっちが重要です!』


 ……これはもう手遅れですね。

諦めて一緒に観察する事にしましょう。


リゼット

『ねぇ、それって悪趣味じゃない? 他人のしてる事を覗くって事でしょ?』


 この期に及んでそう来ましたか。

 ですがこれは、お姉様をお守りする事にも繋がりますので、やらない訳にはいきません。


アイカ

『リゼット様、覗きではなく観察です。そこを間違えてはいけません』


リゼット

『え、いや、どっちも変わらないんじゃ……』


アイカ モルデナ

『違います!』


リゼット

『ア、ハイ……』


 よし、上手くいきました。

 これより作戦を開始しましょう。


アイリ「!! 身に危険が迫ってる気がする!」

ナレック「だ、大丈夫?」

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