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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
序章:ダンジョンマスターのすすめ
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ダミーコア

前回のあらすじ

 抱き枕にしてたモフモフと何故か人化してたアンジェラとは言葉が通じるという事実を知ったアイリ。

更には理由は不明ながら手にはスマホが握られており、興味を持ったアイカが解析ーーすると、このスマホはイグリーシアに革命をもたらすと大興奮。

しかしアイリはというと世界制覇をする気など無く、マイペースなダンジョンマスターライフを続けると宣言した。

 ダンジョン運営を開始して5日経過した。

2日目で3階層まで完成したけど、5日経った今でも3階層でストップしている。

 何故それ以降進んでないのかというと、その原因を語るには3日前の夜まで遡る必要がある。




「お姉様、DPに余裕がありますので、生活環境を整えるのに使用することを提案します」


「それはわかるけど、今はダンジョンを作るほうが楽しいのよ。だから身の回りのことに関しては、後回しにしたいの」


 生前はソシャゲか小説観賞しかのめり込む物がなかったから、それに比べると今は物凄く充実してるしね。


「ですが生活環境が改善すれば、モチベーションの向上にも繋がりますし、何よりスマホでテレビ番組を観賞するのは、満足度的にやや不満が残ります」


 コヤツ、本音が出てきたわね……。

DPに余裕が有るとわかってから贅沢になってきたのね、私も人のこと言えないけど。

 ちなみに魔力とDPのレートは、魔力10=DP1となっている。

このことからアンジェラの最大MPは、10万オーバーということになる。

正にアンジェラ様様ね。


「でもねぇ、日々それなりのDPを消費するからね……あ、そうだ! それならこうしましょう!」


「何かご提案ですか?」


「うん。アイカが今一番欲しい物を1つだけ用意するから、後はダンジョン作成を優先させてちょうだい」


「何でも宜しいのですね? 約束ですよ?」


「勿論よ。但し1つだけよ?」


 といってもアイカが欲しいのはテレビだろうから、それほどDPを消費するとは思えないし、全く問題ないわね。


「でしたらダミーコアを作らせていただきます」


「ダミーコア?」


 ホワッツ? どういうこと? そもそもダミーコアってなんぞ? でもってダミーコアを作ってどうしようと?


「お姉様、ダミーコアとは、本体であるダンジョンコアそっくりの偽物と思っていただければ宜しいかと」


 ああ、なるほど。

本物のダンジョンコアだと思って持ち去った侵入者が、悔しがるパターンね。

でも今必要かと言えば、必要ないと思うんだけれども、アイカとの約束だし諦めよう。


「では3日後にダミーコアの作成を予約させていただきますね」


「ん? なんで3日後? 今じゃだめなの?」


「はいお姉様。今現在のDPは2430ポイントなのに対し、ダミーコア作成に必要なDPは30000ポイントとなっております」


 チクショウ! やられたわ! アンジェラに1日頼んで10000ポイントくらいだから、3日後まで何もできないじゃない!


「勿論ダミーコア作成までダンジョン構築はお預けです。宜しいですねお姉様?」


「わかってるわよ! 約束だものね! その代わり、3日後までスマホで遊んでるから、その間アイカはスマホの使用禁止ね!」


「!!!」


 絶句してるわね。唖然とした表情をしてるのが目に浮かぶわ、ザマーミロ!






 こうして下らないことに時間を費やし、3日後の今日まで私とアイカは耐えたのよ。

もの凄く長く感じたわ……。


「じゃあ早速ダミーコアを作って」


「はいお姉様」


 魔法陣が出現し、その上にダンジョンコアそっくりなダミーコアが出来上がった。


「それで、このダミーコアで何をするつもりなの? まさか侵入者対策ってことじゃないんでしょ?」


 3日前に聞いた時は、最下層に設置して本物と誤認させるのに使用するのかと思ったけど、このダンジョンの場合アンジェラが居る以上攻略不可能だろうから、使用する機会があるかすら怪しい気がする。

 というか、絶対ないわね。

もしアンジェラが負けるような相手が出てきたら、諦めるしかないもの。


「はいお姉様。自動人形(オートマタ)にダミーコアをセットすると、自動人形を遠隔操作をすることができるので、それを行うことによりダンジョン内を好きなように動いてみたかったのです。わたくしは自力で動くことができませんので」


 これはちょっと驚いた。

まさかそんな願望をもっていたとは……。


 アイカはダンジョンコアだから私が茶の間代わりにつかってるコアルームから動くことはできない。

でも気持ちは凄くわかる。

この子(アイカ)は少し前の私と同じなんだ。

動きたくても動けなかった私と……。


「分かったわ。それなら自動人形も必要なんだから、それも作りましょ」


「宜しいのですか? 自動人形を作成するには1000ポイント必要ですが……」


「勿論よ。それくらいのポイントならまだ残ってたでしょ?」


「はい、残りのDPは1374ポイントです」


 ポイントは足りる。でも今日1日は何もできないけどね。


「よし、なら自動人形作っちゃって!」


「了解しました」


 再び魔法陣が出現し、自動人形が出来上がる。

そして善は急げとばかりに、自動人形にダミーコアをセットする。

セットだけなら20ポイントで可能だったので余裕でクリアー。


 セットが完了すると、自動人形が光に包まれて、光が収まると……






 なんと、そこには私そっくりな自動人形が存在した。

但し、髪の毛が水色っぽい感じのポニーテールになって。

 ちなみに私の髪型もポニーテールだ。黒髪だけどね。

そして目線が若干ひくい。私よりも数㌢低い身長ってことね。


「自動人形とのリンクが完了しました」


 目の前の自動人形からアイカの声が聞こえた瞬間、私は思わず抱きついた。


 何でかって?

そりゃもう私の妹だからだよ。

私の妹が目の前にいる以上、抱きしめたくなるのは道理ってもんでしょ?

 他に理由が有るなら是非とも伺ってみたいわね、可愛い以外で。


「あの……お姉様?」


 おっと、数秒間我を忘れてしまったようだ。

落ち着こう、冷静に冷静に。


「ごめんごめん、でももう少しこのままで居させて」


 正に今のアイカの姿は、私に妹がいたらこんな感じだというのを、忠実に再現されてると思うわ。


「あのぅお姉様、できれば至急お願いしたいことが……」


「ん? なになに? 今機嫌がいいから大抵のことは許可するよ?」


 他ならぬ(アイカ)のためよ。






「汗臭いので離れてもらえますか?」


 アイカの口撃は私にクリティカルヒットした。

その結果、私はその場に崩れ、立ち上がることができない。



 ワン



 ツーゥ



 スリーィ


 負けるな私、立ち上がるのよ!



 フォーォ



 ファーイブ


 まだ終わりじゃない! 終わらせない!


 シーックス



 セェブン


 まだやれる、まだ行ける!



 エーイト



 ナーイン


 まだまだ(体を)磨けば光るのよ!






「失礼しますお姉様、応急処置としてファブ〇ーズをかけさせていただきますね」


 シュ、シュ、シュ、


「グハァ!」



 テェーーーン!


 カンカンカーーーン!


 試合終了のゴングが鳴り、私はその場でKOされた。






 アイカの口撃から2日経った。

昨日はバスルームと大浴場の作成に力を注いだ。

それはもうあんな目(アイカの口撃)に遭いたくないがために必死で考えたわよ。

機能性からデザインに至るまで。


 その努力のおかげで昨日は久しぶりのお風呂を堪能することができたってわけ。

勿論アイカやアンジェラにも堪能してもらったわよ?


 でも意外だったのがモフモフね。

モフモフも大浴場に入ったけど、余程気持ちよかったのか、浴槽の中から顔だけ出して寝てたわ。

仕方ないからモフモフの手下に私の寝室まで運んでもらった。


 でもって今現在、私とアイカは1階層に来ていた。

アイカもダミーコアと自動人形(オートマタ)のおかげで自由に動けるようになったため、今ではダンジョン内のあちこちを動き回っている。






「そういえばアイカ、この前のファブ〇ーズはどこから出てきたの?」


 いつの間にかアイカが手にしてたのよね。


「はい、どうしても我慢できなかったので、勝手に召喚させていただきました」


 それほど私は汗臭かったのだろうか……。

正直女としての自信をなくしてしまいそう……。


 でももう大丈夫。

これからは毎日お風呂に入るから!

もう2度とファブ〇ーズは使わせない!


「ところでお姉様、新たにモンスターを増やしたほうが宜しいと思いますがいかがでしょう?」


「やっぱりそう思う?」


「はい。現在このダンジョンは2階層までできてますが、配置されているモンスターは圧倒的に少ないので、雑魚モンスターで数多く揃えるのが理想です」


 うんうん、その通りね。

強いモンスターばかり配置したら、大した旨みのないダンジョンってことで、誰も近寄らなくなる可能性が高い。


 そうなると今度はDPの収入が無くなってしまう。

今はまだアンジェラに頼んで賄ってるけど、あまりアンジェラばかりに負担を掛けたくない。


「そういえばアンジェラの様子は?」


「日本の人気スイーツ店のケーキを、上から人気のある順番に適当に箱詰めして渡したら張り切ってました」


「ナイス! 良くやったわアイカ」


「恐縮です」


 アンジェラには()()()()()()()()()()を用意することで魔力供給をお願いしてる。

ダンジョン運営が軌道に乗れば、毎回アンジェラにお願いする必要もなくなる。


「よし、じゃあモンスターの召喚ね。今回は各階層に合うモンスターを召喚したいから、指名召喚でお願い」


「了解です。まず洞窟エリアの推奨モンスターをリストアップします」


ランクG:スピアバグ    

ランクG:ジャイアントラット

ランクF:ゴブリン     

ランクF:ゴブリンアーチャー

ランクF:ゴブリンファイター

ランクF:エアーバット   

ランクF:スライム     

ランクE:グレーウルフ   

ランクE:ゴブリンメイジ  

ランクE:ゴブリンナイト  

ランクE:ゴブリンウォーリア

ランクD:ブラックウルフ  

ランクD:ゴブリンジェネラル

ランクD:ゴブリンソーサラー


「ちょっと多すぎない? とりあえずゴブリン種は除外して、スピアバグ、ジャイアントラット、エアーバット、スライムをそれぞれ100体召喚し、グレーウルフを300体召喚してちょうだい」


「何故グレーウルフだけ多いのですか?」 


「そりゃ勿論モフるためよ。最近何故かモフモフは寝る時間になると居なくなることが多いのよ。念話で呼んでも反応しないし。早めに寝てるのかしらね?」


「なるほど。最近ブラックウルフがくたびれてるように見えるのは、そのためですか」


 そうなのよねぇ。最近モフモフを抱き枕にできないことが多いから、ブラックウルフを眷属にして抱き枕にしたのよ。

でも毎回ブラックウルフに付き合わせるのは悪い気がしてきたから、グレーウルフを何匹か眷属にするのもありかなってね。


「ボス部屋には……うん、クレイゴーレムを置いときましょ」


「ゴーレムは防衛に向いてますからね、宜しいかと思います、お姉様」


「それと、ボス部屋の前にセーフティエリアを設けようとおもうんだけど」


「セーフティエリアですか?」


 ボス戦の前にはセーブポイントがあると相場が決まってるからね。

それにできれば万全の状態でボス戦に挑んでもらいたいし。


「なるべく死者を出したくないしね」


「……お姉様、一度確認させていただきたいのですが、お姉様は地上にある国々と共存していきたいとお考えですか?」


「共存というか、積極的に攻め滅ぼすようなことはしたくないわね」


「理由を伺っても?」


「私は元は普通の人間だったからよ。私は私自身とアイカを護ることができればいいの。だから、ダンジョンで素材集めやアイテム収集してる冒険者は、殺さないようにしたい。だからといって、誰でも殺さないわけじゃないわ。ダンジョンマスターである私やアイカ(ダンジョンコア)を狙ってくるような輩には容赦しないつもりよ」


 ここは異世界で平和な日本じゃない。

地上には魔物がいて冒険者がいて盗賊がいて傭兵もいる。

 さらに、魔族がいて貴族がいて勇者がいて魔王も覇王もいるらしい。

そんな中で、殺しは犯罪だから良くありません! なんて綺麗事を言うつもりはない。

こちらの命を狙うなら、相手にも死を覚悟してもらうわ。


 誰が言ったか知らないけど、こんな言葉がある。

殺していいのは殺される覚悟のある奴だけ……ってね。


「いいんじゃないかの、それで」


「アンジェラ? あの……いつから居たの?」


「ブラックウルフがくたびれてる……あたりだったかのぅ?」


 おぅふ、結構前から居たのね……。


「妾とて挑んでくる相手しか殺したくはないしの。まぁ国が総力戦を仕掛けてきたりすれば、恨みのない兵士を仕留めてしまうかもしれんがの」


 アンジェラが暴れたら国一つ簡単に滅びそうだわ……。 


「お姉様のお考えはよくわかりました。1階層に凶悪な罠の数々を仕掛けた時は、快楽殺人鬼的な感じがしましたが、どうやらわたくしの勘違いだったようです」


「ちょ、快楽殺人鬼って、んなわけないでしょ!」

 

 そりゃ調子に乗って罠を量産しちゃったけど、些細な問題よ。


「国によってはダンジョンと敵対するか共存するかは違いが出てくると思われますので、こちらも相手の国によって対応を分けることをおすすめ致します」


「安心して。最初からそのつもりよ」


「ククク、まぁ国ごと出張ってくることがあれば、妾が相手してくれようぞ」


 とにかく、国と対等に交渉するなら強さを見せつける必要があるから、バランスを考えないとね。

弱小ダンジョンだと、どの国も聞く耳を持たない可能性が高いし。

既にアンジェラやモフモフが居るから、弱小ダンジョンは卒業してるわね。


「セーフティエリアの話なんだけど、浴場でも設置しとかない? そうすれば絶対流行ると思うんだけど」


 業界(ダンジョン)初、大浴場が完備された最新ダンジョンとか。


(しゅ)よ、それは止めたほうがいいぞ」


「どうして?」


「ボス部屋の前がホームレスのたまり場になりますよお姉様」


「老人たちも集まりそうだの」


 うん、それはあり得そうだわ。

すると今度は冒険者と浴場の利用者で衝突するなんてこともあるかも。


 それに男湯と女湯を分ける必要もあるし、下手すると覗き魔が出現したりして、管理責任を問われたりとか?


 よし、ちょっとイメージしてみよう。






『おーし、今日も儲かったし風呂でも入ってくかぁ!』

『おぅ、そうだな!』


 しかし、浴場には既に満員。


『おい、これ以上入ったらお湯が減るんだから入るなよ!』

『そうだのぅ。儂らが上がるまで待っててほしいのぅ』

『そんなことよりアンタ、もっとそっち行きなさいよ!』

『しゃーねーだろ! 満員状態で動けねぇんだからよ!』

『フォッフォッフォッ、そうカリカリするでない、お若いの』

『キャッ! って、このスケベ爺ぃ、アンタ今尻触っただろ!?』

『フォッフォッフォッ、堅いこと言うでない』

『ンホォ! って、この爺ぃ、俺のケツまで触りやがった!』

『フォッフォッフォッ、楽しいのぅ』

『コラッ! 若者の邪魔をするんじゃないよ、このバカ亭主!』

『ば、婆ぁさん! おお、こんなにシワだらけになってしもうて……』

『バカタレが! 湯に浸かったら誰だってこうなるんだよ!』

『おーい誰か手伝ってくれ、仲間が逆上せちまった!』


『……今日は諦めるか』

『……だな』






 ……………。


 面倒だから混浴をイメージしてみたんだけど、予想以上に修羅場になりそう。


「うん、やってらんないわ」


 こうしてボス部屋の前に浴場を設置する案は見送られた。


モフモフ「おいアンジェラ、お前も抱き枕をやれよ!」

アンジェラ「主は妾の身体を見ると不機嫌になるから無理だの」

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