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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第2章:ダンジョンバトル
35/255

新たな侵入者

ブクマありがとう御座います。m(._.)m

「ただいまーっ!」


「アイリちゃん、お帰りなさい」

「お帰りッス」


 冒険者ギルドを出た後、すぐに街から出て転移でユーリのダンジョンに戻って来た。

あまり時間をかけ過ぎると危険かなと思ったしね。


「留守中問題なかった?」


「問題なかったッスよ。侵入者がいたッスけど、罠に掛かって帰ったッス」


 それなら良かった。

後はユーリには暫くDP(ダンジョンポイント)を貯めてもらって、ダンジョンを安定させれば大丈夫そうね。


「って事で、ユーリはDPを貯めてちょうだい。今の状態だと、まともに召喚出来ないでしょ?」


「はいぃ、簡単な罠すら召喚出来ませーん……」


 うん、だろうと思ったわ。

でも今更だけど、どうしてDPがここまで不足するんだろ?

 無駄な事に使用しなければ、危機的状況に陥る事はないと思うんだけど……。


「それはですね………ジャーーーン♪ 魔法少女変身セットでーーーす♪」


 ……は?


「元々コスプレが趣味でして、DPで元の世界の物が一部召喚出来ると知って、入手したんですよーぅ」


 とんでもなく身近なところに無駄が存在したわ……。

これならDPが枯渇(こかつ)するのも頷ける。

というか元の世界って……やっぱり転生者って訳ね。

 でもこれはユーリの考え方を改めさせる必要があるわ、放っておいたらまた余計な物を召喚しそうだし。


 ……いや、するわね、間違いなく。


「い、いいじゃないですかぁ! コスプレが出来ない世界なんて、ナメコの無い味噌汁みたいなものじゃないですかぁ!」


 趣味を控えなきゃならないのは大変かもだけど、その例えは微妙よ……。

 というか別に趣味を止める必要はないんだし。


「一応ソルギムの街の冒険者ギルドには話つけてきたから、馬鹿な連中じゃなければこのダンジョンには来ないと思うわ」


「……馬鹿な連中だった場合は?」


「懲りずに来るでしょうね。だからキチンとDPを貯めないとダメよ?」


「はいぃ、わかりましたぁ」


 あの馬鹿そうな貴族ならまた来そうな気がするわ。

と言っても、ダンジョンコアの持ち出しは禁止されてる国だから、そのまま投獄される可能性が高いけどね。


「暫くの間、クロを護衛に付けるからダンジョン運営頑張るのよ?」


「はぁーい。有難う御座いますぅ!」


 一応は落ち着いたので、アイリ達はクロを残して自分達のダンジョンに戻っていった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ええい、くそ! 何故ワシが捕らわれなければならんのだ!」


 ユーリのダンジョンが落ち着いた頃、ソルギムの領主エルドレッドは、自宅の地下牢に監禁されていた。

 エルドレッドが気絶してる最中に事が運んでたので、目を覚ました時には私兵達により牢に入れられ、国家反逆罪として議長に報告された後だった。

 なので今は、騎士団が到着して首都に連行されるのを待つだけとなっていた。


「早くしないと別の奴に獲られてしまうではないか! 何か、何か方法は……」


「お困りのようですね」


 現状を打開する手立てを模索するエルドレッドに、不意に声がかけられる。


「誰だ? そこに誰か居るのか?」


 誰も居ない筈の薄暗い地下牢にエルドレッドの声が響く。

しかし、エルドレッドの呼び掛けに反応し、1人の青年が何処からともなく現れた。


「勿論()りますとも。指定した時間に現れないので心配致しましたよ?」


 エルドレッドに声をかけたのは、黒装束に身を包んだ中性的な声をした者。


「お、お前は闇「おっと……お静かに。あまり大きな声で話されますと、兵達に気付かれてしまいます」


「う、すまぬ……」


 素早くエルドレッドの口を塞ぐ黒装束。

牢の外に居たはずが、いつの間にか中に入り込んでいるのだが、生憎とエルドレッドはそんな事を気にしてる余裕はなかった。


「ところで、何故ご自宅で捕らわれの身となっているのです?」


「し、私兵達が裏切りおっ「しーーっ。落ち着いてお話し下さい」……う、うむ」


 自分の私兵に裏切られた事を思い出し、思わず語気を強めてしまったが、黒装束が(なだ)めて続きを施す。


「ダンジョンマスターの眷族(けんぞく)らしき狼にやられたのだ。その狼に近付かれて気を失ってしまった。そして目が覚めたら牢に入れられていたのだ」


「ふむ……では気を失っている間に何があったのかご存じないと?」


「よくわからんが、ダンジョンコアを奪うつもりだった事が冒険者ギルドに伝わってしまったようだ。恐らく早馬を出されてるだろうから、議長に伝わるのは時間の問題だろう」


「……成る程」


 顔には出さないが、黒装束には焦りが出始めた。

 それもそのはず、エルドレッドと黒装束の身を置く組織に繋がるものが出てしまうと、取り返しのつかない事になるからだ。

 ましてやダンジョンコアの奪取が目的だとバレれてしまえば、国を上げて討伐隊が派遣される可能性すらあった。



「どうやら少々甘く見すぎてたようですね」


「そうだぞ。こうなったのも、お前達がワシを(そそのか)したのが悪いのだ。責任をとってもらうぞ!」


 黒装束が言った意味と、エルドレッドが解釈した意味は全く違うのだが、少なくとも黒装束の側には()()()()()必要があった。


「畏まりました。では介錯させて頂きます」


「かいしゃくだと? 一体何を解釈するつもりだ?」


 その言葉がエルドレッドの最後の言葉となった。

黒装束が手にしたダガーがエルドレッドの首から上を切り飛ばしたのだ。

そしてダガーについた血を丁寧に拭き取り、懐にしまった。


「これ以上、足を引っ張られるのは御免ですからねぇ」


 出来ればエルドレッドが余計な事を喋る前に始末したかったですがね。

過ぎた事は仕方ありません。

 それにしても‥‥


「エルドレッドの私兵達を返り討ちにする狼ですか……」


 あの私兵達が弱いとも思えませんが、一応注意はしときますか。


「やむを得ません。我々の方でダンジョンコアを拝借するとしますか」


 本来ならば、人前に出る可能性を考えれば、第3者に委ねるのが一番なのでしょうが、生憎と時間が有りません。

 ここは時間を優先し、速やかに動くとしましょうか。


「では見張りが来る前に退散するとしましょう」


 その日の夜。エルドレッドの私兵が夜食を届けに来るまでエルドレッドが死んでいたことは気付かれなかった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「マジカルユーリ参上! 何か違うなぁ、もう1度、マジカルユーリ参っ上! これもいまいちねぇ……」


 ユーリのダンジョンでは、DPが貯まるまで何も出来ないとあって、己の趣味に没頭してるユーリの姿があった。


「やっぱりステッキは水平に構えるよりも、斜め15度くらいに傾けて構えるべきよねぇ……クロちゃんもそう思うでしょーーぉ?」


「そんなん知らないッスよ……」


 アイリのお陰で地球の知識が少しあるだけのクロに、魔法少女のウンチクがわかるはずはない。

そもそも地球の人間に魔法少女を語れる存在がいるとは思え‥‥いや、それなりに居るのかもしれないが、極少数である事は間違いないだろう。


「大体そんな事して何と闘うんスか?」


 もっともな疑問である。

魔法少女マジカルユーリとは、ユーリ本人が勝手に名乗ってるだけであって、悪い魔王や、悪の秘密結社等と敵対してる訳ではない。

 だが仮に敵対してしまうと、ユーリ本人では手に負えない事態が待ってる事だろう。


「もうクロちゃん。こういうのは雰囲気が大事なの雰囲気が。それに、こうやってイメージトレーニングをする事によって、いざ! って時に変身出来たりするのよーーぅ!」


「そ、そうッスか……」


 ユーリのぶっ飛んだ発想に付いていく事が出来ずにタジタジになるクロ。

 ちなみにだが、本来クロは()()()()()と会話をする事は出来ないが、ダンジョンマスターとなら会話が可能なので、ユーリと会話をする事が出来るのである。


「でもやっぱり敵がいないと、決まるものも決まらないと思うのよね」


 呑気な事を言ってるユーリであったが、その呑気な雰囲気を吹き飛ばすアラームが鳴り響いた。


「この音は……警報ッスよね?」


「そそ、そうみたい……ですぅ」


 また侵入者が来たようだ。

クロは改めて前方に神経を集中させる。


「姉貴が言ってたんスが、こういうのってフラグって言うらしいッスよ?」


「はい、存じておりますぅ……」


 ユーリのダンジョンは規模が小さいため、早くも侵入者達はダンジョンの半分を越えて来てるようであった。


「間もなく来るッスよ。コアルームで隠れててほしいッス」


「も、もうですか!?」


 クロの言葉に驚くも、闘いに巻き込まれるのが怖いユーリは、すぐにコアルームへ引き籠った。


「数は……1、2、3……4、5、6……7ッスか。ちょっと厳しいかも知れないッスね」


 そして間もなく、クロのカウント通りに7人の黒装束を着た者達が現れた。


「リーダー、情報通りならあの狼が例の強い眷族(けんぞく)ってやつですぜ」


「そのようですね。しかし……」


「それほど苦戦しそうには見えないってんでしょ? アタイもそう思うよ」


「まぁ所詮は貴族の私兵って事でしょうよ。コイツはマットブラックウルフって出てきやしたぜ」


 口々にクロを評価する黒装束達。

その評価は、魔物にしては強い方だが、それほど恐ろしい存在ではない。

1対1なら苦戦は免れないが、今は7対1である。

慎重に取り囲んでしまえば、脅威ではないだろう……という感じであった。

 それに黒装束の中に鑑定スキルを持っている者がいるようで、クロの種族名をピタリと言い当てた。


「鑑定持ちか……なら先手必勝で!」


 いきなりクロは駆け出し一番手前にいた黒装束に襲いかかる。

 黒装束の方も気付いたようで、クロを見て構えた。


隠密走牙(スニークアタック)!」


「グアァーーーッ!! く、くそぅ!」


 先手を取る事に成功したようで、クロの攻撃で1人の黒装束の利き腕を噛み千切った。


「油断し過ぎだテモス。下がりたまえ」


「く、了解……」


 クロが噛み付いた黒装束のテモスという男は、リーダーらしき黒装束に下がるよう命じられる。

 リーダーを狙えば統率が乱れると判断したクロは、すかさずリーダーらしき黒装束に襲いかかるが……、


 ガキィィィン!


「おっと、キミのスキルは知ってるよ。確か隠密走牙(スニークアタック)だったはずだ」


 クロは驚き目を見開く。

黒装束がスキルを知っていた事にではない。

今間違いなく隠密走牙(スニークアタック)が発動したはずなのに防がれたのだ。

 このスキルは一瞬相手の視界から消えて、死角から襲いかかるスキルだ。

そのため、勘で避ける事は出来ても、ガードする事は非常に難しいのだ。

それをこの黒装束は難なく防いだ。

 何故防ぐ事が出来たのか不明だが、今は気にしてる隙はない。

一旦距離をとって仕切り直しをと思ったクロだが……、


「そこだぜ!」


 黒装束の1人から放たれたダガーがクロに迫る。

すぐに避けるが、そこに別の黒装束が避けようがない一撃を叩き込んできた。


 ザシュ!!

っと斬られると同時に血が吹き出し後退するクロ。


「……くっ、くそ!」


 さすがに多勢に無勢とあって、クロは追い詰められてしまった。

しかも黒装束のダガーには毒が仕込んであり、徐々にクロの意識が遠退いていく。


「この程度の狼に苦戦するたぁ、あの貴族の私兵共は雑魚だなぁ」


「まったくね。所詮は貴族の道楽に付き合ってるだけなんでしょうけど」


「これこれ、まだ目的は達成されてませんよ」


 リーダーの黒装束が、他のメンバーを(たしな)める。

 その後に、一歩一歩慎重にクロへ近付いていきダガーを構え直した。

そしてクロの目の前でダガーを振り上げ……、


「さてと、1人負傷者を出しましたが、これで最後ですね」


『ああ、お前らがな』


 唐突に黒装束達の頭に響く声。

その声に黒装束達全員が驚き戸惑った。

どこにも敵の気配は感じない。

目の前の狼は虫の息。

ならば一体どこから?


『どこ見てやがる。後ろだ後ろ』


 言われて背後に振り向いた黒装束達が見たのは、奇妙な色合いの1匹の狼。

そしてその足下で血溜まりに沈んでいる2人の黒装束達であった。


「な!? いつの間に!」


「ジェノバ! ワッツ!」


『俺の舎弟が随分世話になったようだなぁ。キッチリ礼をしてやるぜぇ、おい!』


「コイツ! よくもジェノバ達を」


「よせ!テモスッ!!」


 リーダーの制止を無視して背後から現れたデルタファングのモフモフに襲いかかるテモス。


「汝を射ぬかん! ストーンジャベリン!」


 石礫(せきれき)の先が鋭利に尖った槍をモフモフに向かって放った。


 ザシュザシュ!!


「グボァッ!」


 ストーンジャベリンがモフモフを貫く事はなく、逆にモフモフにより食い千切られてしまった。


「な、何なんだコイツ!?」 


「こんな魔物、見た事がないよ!」


 突然現れた狼の異常な強さに喚き出す黒装束達。


「……いや、俺は知っている」


「し、知ってるのか、ライデム!?」


 かつて相見えた事がない相手だと思われたが、黒装束の1人が知っていたようだ。


「コイツはデルタファングだ。コイツに敵と見なされれば生きて帰る事は不可能と言われている」


「デ、デルタファングって、本当に実在してたっていうの!?」


「ああ間違いない。冒険者時代に資料で見た事がある」


『おう。資料見たなら念話出来るっつー事も知ってるよなぁ!?』


 ザシャッ!


「ガハッ!」


 念話で話しながら攻撃の手を緩めないモフモフは、ライデムという男を血祭りにあげた。


「リ、リーダー、どうするよ、どうすりゃいいんだよ!」


「い、嫌よ、こんなところで死にたく『グシャ!』


 喚いてる間にまた1人、頭から丸かじりにされる黒装束。


「た、頼む助けてく『ズシャ!』ギャーーーーーッ!!」


 見苦しくも命乞いをしてきた黒装束も、上半身と下半身に分断された。


「………………」


 そして黒装束リーダーだけが最後に残された。


「……これが、デルタファングの脅威なのか……」


 圧倒的な戦闘能力を見せつけられた黒装束のリーダーは、ただその様子を眺める事しか出来なかった。

力量差は歴然、もし逃げ出したとしてもデルタファングからは逃げ切れないだろう。


『言い残す事はもう無いか? 無いならいくぜ!』


 モフモフが飛び掛かり、それに反応し黒装束のリーダーも切り掛かる。

二つの影が空中で交差し着地する。

そして最後に立ってたのは……、


「……お見事…です……」


 黒装束のリーダーは前のめりに倒れ込んだ。


ユーリ「すみません、食べ物を恵んでくれないでしょうか?」

アイリ「早速なの!?」

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