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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第2章:ダンジョンバトル
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閑話:その頃の天界

 イグリーシアを見下ろす位置ある天界には、複数の神々が居る。

彼等は積極的に下界に関わる事は無いが、この世界を外界から変えられるのを嫌う為、秘密裏に動く事も有ったりする。

 嫌う理由は、このイグリーシアから見ての異世界側から侵略を受けた事が過去にあるからで、その時の事がトラウマになっている……と言えば分かりやすいかもしれない。

 それに近い理由で日本から転移してきた転移者を送り返したり、逆にイグリーシアでの生活をサポートしたりするのも彼等の役目のようになっていた。

 何故外界からの変化を嫌うのにサポートしたりするのか……という疑問も出てくるが、答えは簡単、侵略の意志が有るか無いかの違いである。

なので不本意に転移させられた者達は、キチンとした扱いを受けるのだ。

罪人以外は……。

 そして今日もそんな転移者を1人サポートし終えた女神が天界に帰ってきたようだ。


「はぁ…………だっる」


 今日で何とかプラーガ帝国が召喚した6人のサポートを終える事が出来た。

転移してきたのが全員同時なのに対して、召喚された場所が全員バラバラってどういう事なのかしら……。

 そのせいであっち行ったりこっち行ったりでもう大変よ。

そもそもあたしはパシリじゃないっつーの!


 それもこれも全部プラーガ帝国のせいね。

このクソ帝国がいまだに勇者の召喚と称して行ってるんだから、面倒くさいったらありゃしないわ。

 誰かこのクソ帝国を潰してくれないかしら。

今なら情報提供くらいならしてあげるわ。




「あっれー? クリューネは疲れて寝ちゃったのー?」


「……寝てない」


 はぁ……うるさいのが来たから起きようかな。


「うるさくないよ~。僕をクリューネと一緒にしないでよね」


 はいはいはいはい、そういう事にしときましょう。

 まったく、プルドに構ってたら疲れるだけだからスルーしたいんだけど、コイツの場合は積極的に絡んでくるから余計面倒くさいのよねぇ……。

 それにこのプルドって奴は、何も喋らなければ何処にでもいる普通の男の子に見えるのよ。

それも小学校低学年くらいのね。

 その無邪気な外見の影響か口がかるいから一々うるさいのよこのガキは。

きっと他の神も同じ事思ってるに違いないわ。


「なんだよ~、面倒くさくもないよ~。そんなに邪険にするなら、オルド様にサボってた事言っちゃうからねー!」


 ほら、面倒くさいじゃないの……。

だいたいこれはサボってるんじゃなくて休んでるのよ、その辺を間違えないでほしいわ。


「よっこしょ……と」


 折角自室でダラダラとしてるのを邪魔されちゃたまんないと思い、渋々ながら上体を起こした。


「クリューネ、なんかオバサンくさいよ?」


「な!」


 コイツ……アタシの美貌を前にしてオバサンだと!?

この若々しい金髪美女でおまけに巨乳なクリューネ様に向かって生意気な!


「誰がオバサンか! どこを見てオバサンっつったこのクソガキ!」


 プルドの見た目は男子小学生だから、その小学生にバカにされてると思うと尚更イラつくわ!


「あ~、ガキって言った! ガキって言う方がガキなんだぞ~?」


 あーーもう、本っっっ当に面倒くさい奴!

面倒くさいからさっさと用件聞いて追い返してやろう。


「もうあたしがガキでいいから。それで何の用なの?」


「前にクリューネが持ってきたお土産が、大天使達に好評だったんだよ。だからまた持ってきてくれないかな~~って思ってさ」


 ふーーん、そんなに好評だったんだ、アイリちゃんから貰ったお土産。


 うんうん、そう言われれば確かに美味しかったわね。

あたしは1個だけ確保して、残りは全部あげちゃったんだけど、食べた直後に物凄く後悔したわ。

もうね、なんというか、魅了されるってのは、ああいう事を言うんだなぁって思ったわよ。

あの生八ツ橋の美味しさったらもう……。


「……ねぇ、聞いてるクリューネ?」


「ハッ!?」


 っと、いけないいけない、軽くトリップしてたわ。


「残念だけど、あたしは忙しいの。そんなに欲しければ自分で貰いに行けば?」


 というか、あたしをパシリに使うなっつうの!


「えーーっ? 嫌だよそんなの。ただお菓子をねだる為だけに行けって事でしょ? そんな事したら嫌われちゃうじゃないか」


 現にお菓子をねだってるでしょーが!

それにアンタ1人がアイリちゃんに嫌われたところで誰も困らないんだから、気にする必要はないわ。

寧ろ嫌われて来い。


「すぐそうやって嫌な役を僕に押し付けるんだから……」


 その嫌な役をあたしに押し付けてるって自覚はコイツにはないようね。

 ま、嫌なら諦めなさい。


 あ、嫌われてるって言ったらミルドの奴はかなり致命的な事をやらかしたから、ミルドに頼むって手もあるわね。

多分あれ以上好感度は下がりようがないし。


「って事だから、ミルドに頼んでみたら?」


「うーーーん、ミルドかぁ……。僕アイツは苦手なんだよねぇ。それにミルドって確か、アイリちゃんの裸を見ちゃったんでしょ? さすがに気まずいんじゃないかなぁ……」


 まぁ得意な奴は居ないでしょうね。

あたしもアイツの天然っぷりは苦手だし。

 だけど多分ミルドの奴は、気まずいとか思ってないんじゃないの?




「呼んだかい?」


 ゲッ! まさか本人が現れるとは思わなかった。

というか何で他人の部屋に勝手に入って来るかなコイツらは。


 まぁいいか、丁度いいからパシリ役を押し付けよう。


「プルドがアンタに話があるんだってさ」


「ほぅ……それは珍しい。いったいどんな話なのかな?」



「え、えーーーとね……んーーーと、や、やっぱりいいや……」 


 この期に及んで遠慮するとか……。

まったく、しょうがない。


「プルドがね、アイリちゃんから貰ったお土産を気に入ったみたいなんだけど、また貰えないかって思ってるんだってさ。だからアンタに頼みたいみたいよ?」


「ほほぅ……つまり僕を使いっ走りにしようとしたと?」


「え、い、いや、まぁそうなる……かな?」


 さすがにミルドもパシリにされるのは良く思わないみたいね。






「そうですね。久々にアイリの様子を見に行ってくるのも悪くないかもしれません」


「「えっ!?」」


 予想外の返答が帰ってきた。

まさかアイリちゃんの顔を見るためだけに下界に行く気なの!?

 それにプルドも驚いてるわ。

てっきり小言を言われるとでも思ってたんでしょうね。


「あのさ、あたしが言うのもなんだけど、本気でアイリちゃんに会いに行く気?」


「何か問題でも?」


 人間同士なら間違いなくトラブルになるであろう事をアイリちゃんにやらかした訳だけど、ミルドはもう忘れてしまったらしい。


 ちなみにアイリちゃんに対してやらかした事とは、ミルドの目の前で裸のまま肉体を授けた事よ。

 アレはさすがにショックだったでしょうね。


「いや、だってさ、ミルドってアイリちゃんにビンタされたんでしょ? 気まずいんじゃないかって……」


「何を言ってるのです? アレは彼女の気分が高揚してしまい、感極まって混乱したからですよ? 別に嫌われてる訳ではありません」


「「………………」」


 呆れた…………物凄く呆れた。

まさか本気で嫌われてないと思ってるなんてねぇ。

まぁアイリちゃんは優しそうだからハッキリ嫌いとは言わないだろうけど、コイツ(ミルド)は少し理解させた方がいいのかもしれない。


「ねぇ、コレってさ、アイリちゃんにそのまま会いに行かせて理解させた方がよくない? アイリちゃんは少し可哀想かもだけど」


「うん、あたしもそう考えてた。ただアイリちゃんに迷惑かける事になるんだけども」


 うーーーん、どうしたらいいのやら。

行かせるべきか止めるべきか……。



「よく分かりませんが、これから会いに行ってきますよ。その際にお土産を貰ってくればいいのですね?」


 悩んでたらミルドが行くと言い出した。

 仕方ないから快く送り出そう。


「「うん、まぁ……はい」」


「分かりました。さっそく顔を出す事にしましょう」


 すぐさまミルドは下界に転移した。

 ああごめん、アイリちゃん、疫病神がそっちに行っちゃった。

多分顔を出すだけじゃなく膿も出しそうだけど、本当にごめん!






 それから1時間も経たない内にミルドは戻って来た。

キチンとお土産も持って。


「ただいま。コレが以前貰ったお土産と同じ物だね。そしてこっちが以前とは違う中身らしいよ。なんでも洋菓子スイーツって言ってたかな?」


 意外にもミルドはアイリちゃんと会っても問題なかったようだ。

しかも追加のお見舞いまで持って来た。

 もしかして、あたしの気にしすぎだったんだろうか?

絶対良く思われてないと思ってたんだけど。


「ねぇねぇ、持ってってもいい? 大天使達が待ってるからさ?」


「ちょっと待ってくれないかいプルド。アイリちゃんからクリューネ宛に手紙を預かったんだ。まずはそれを見てもらってからだね」


「「手紙?」」


 ミルドから手紙を受け取ったあたしは、さっそく読んでみる事にした。


「えーと何々……拝啓クリューネ様、お土産が好評との事で大変恐縮です。そこで前回の和菓子の詰め合わせの他に、今回新に洋菓子の詰め合わせもお贈り致しますので、是非ご賞味下さい。それから話は変わりますが、今回ミルド様がお越しになられた際、私アイリは入浴中であった為、たいしたもてなしが出来なかった事が大変悔やまれます。ミルド様は()()()()()()と仰いましたが、()()()()()()()。正直ミルド様は話になりません。つきましてはクリューネ様に1度我がダンジョンにお越しいただき、そこで()()()()とお話をさせて頂きたく存じます。ではお目汚し失礼致しました」


 ………………。


「うわぁ……やっちゃったねコレは……」


 そうね、プルドの言う通りやっちゃったわ。

そして怒りの矛先があたしに向いてるってのが正直笑えない。


「じ、じゃあ僕はこの和菓子の詰め合わせを貰って行くよ。それじゃ!」


 言うとプルドは神速で消えてった。


「さてと、久々に見たアイリも元気そうだったし僕としても一安心かな。それじゃあ失礼するよ」


 そしてあたしと洋菓子の詰め合わせだけが残された。

 いやね、もうどんな顔してアイリちゃんに会いに行けばいいのか分かんないのよ。

こういう時って笑えばいいってフレーズが下界にあるらしいけど、笑ったら本気で殴られそうよね……。

 それとも何かレアアイテムの1つでも持って行けばいいかな?

でもあんまりレア過ぎるやつだと指摘されちゃうしなぁ……ああもう胃が痛いわ!


 誰か代わってちょうだい!!

 

プルド「なんかごめんね? まさかミルドがここまで無頓着だとは思わなかったから」

クリューネ「もうアイツはアイリちゃんに会うの禁止!」

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