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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第2章:ダンジョンバトル
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もっと魔法少女

「うん、今日もいい天気ね」


 寝起きの直後、平原エリアを一望してみる。

ここは眺めがいいので、朝一に来る事が割りと多かったりする。

そして今日も快晴……と。


「でも天候を調整してるのはお姉様ですよね?」


 ……折角広い平原の開放感を味わってるんだから、水を差さないでいただきたい。

 それに昨日の説教で疲れてるのよ。

2時間くらい正座させられた上に、有り難いお言葉まで頂いたのよ。

まったく、足は痺れるわ居眠りしてたたき起こされるわで酷い目にあったわ。


「でも相手のシーラ様とは仲良くなれたのですよね?」


「まぁね。同じ説教をされた者同士って感じでね」


 シーラとはペルフィカさんの説教中に友達になった。

ペルフィカさんが目を離してる隙にコソコソと話してたからね。

 説教中に何やってんだと思うかもしれないけど、そもそも説教を受けるのはホークだけで充分な筈なのよ。

つまり、私とシーラはとばっちりな訳。

だからホークに命令してやったわ、ペルフィカさんを宥めなさいってね。


 そうしたらホークの奴、何を考えたのかペルフィカさんに挑戦状を叩きつけて言い放ったのよ。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 只今回想中



「これでもワイはお笑い芸人の端くれや。もしワイの一発芸にアンタが笑ったら、ワイらを無罪放免にせえへんか?」


 まさかペルフィカさんを宥めるのに、ペルフィカさんに挑戦状を叩きつけるなんて思わなかったから、私は慌ててホークを止めようとしたのよ。

 そうしたら……、


「いいでしょう。そこまで言うのならやってみなさい」


 って言い出したの。

 ぶっちゃけホークの行動にも驚いたけど、ペルフィカさんの反応にも驚いたわ。

そしたら後は、ホークの健闘に期待しましょうって流れになる訳よ。


「しゃあ、一発芸行くでぇ!」


 そして気合いを入れたホークの一発芸。






「真実はいつも1つ! 犯人はお前だ! ブリッ!」


 まさか説教の原因となったハゲヅラを使うとは思わなかった。


「プッ……ククク……」


 でもホークの前で仁王立ちするペルフィカさんから笑い声が漏れるとも思わなかった。

世の中何が起こるか分からないものね。


「よっしゃあ! 笑った笑った! ワイの勝利やで!」


「むぐぐぐぐ……仕方ありません。今回はわたくしの負けです。ですが次に同じ事をしたら、もっとキツいお説教をしますからね?」


「「「「はーーい(棒)」」」」



 回想終わり。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ってな感じでね、ホークのお陰で短いお説教で済んだのよ。

それでも2時間もかかったけども。


「……随分と濃い1日だったのですね」


「まぁね。もう一度体験したいかと聞かれたら、二度とごめんだと言うわね」


 特に説教は精神衛生上よろしくない。


「じゃあコアルームに戻りましょうか」






「姉御、次はいつバトルをやるつもりで?」


 コアルームに戻ると、モフモフが待ち構えていた。

そして開口一番、今の台詞である。


「ん? モフモフはバトルがしたいの?」


「勿論でさぁ! 闘いこそ俺の求めるものってやつでごぜぇやす」


 モフモフの性格なら聞かなくてもわかってたけどね。

今までバトルを受ける側が殆どだったし、たまにはこっちからダンジョンバトルを申請しちゃおうかな。


「モフモフもやる気になってるみたいだし、バトルの申請をするわ」


「本当ですかい!? っしゃあ!」


 テンションの上がりかたが凄まじいわねモフモフは。


「ちょ、モフモフ、あまり走り回らないで下さい! 団子に埃が!」


 まぁテンションが低いよりは全然ましだけどねーーーと……ん?

 ダンジョン通信から対戦者をリストアップして見てると、少しクセの有りそうな相手を見つけた。


「魔法少女マジカルユーリ?」


 ユーリって名前の人なんだけど、補足で【魔法少女マジカルユーリ】が強調されてる。

 なんかアニメのタイトルっぽいんだけど、恐らくこのユーリって人は転生者ね。

シーラもダンジョンマスターには転生者が多いって言ってたし多分間違いない筈。

 よし、シーラの事を知ってるかもしれないし、この人にしよう。


「お姉様、決まったのですか?」


「ええ、決まったわよ。相手がOKしてくれればだけど、次の相手はこの人よ」


 私はリストに載っている、ユーリを指で差した。


「昨日の今日で、また魔法少女ですか?」


「いいじゃないの、どうせ相手が分かんない内は誰を指名しても変わらないわよ」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



ユーリ

『やっほー♪ 貴女がダンジョンバトルを申請してきたアイリちゃん?』


アイリ

『ええ、そうよ。宜しくお願いね』


 申請した直後、相手から通信がきたので繋いでみると、そこに映された相手の姿は、ピンク色の髪をツインテールにした少女だった。

見た感じ、レミエマと同じくらいの年齢に見える。


ユーリ

『あたしは無敵の魔法少女、愛と勇気と希望の結晶マジカルユーリ! 女神の命に従って、貴女を討ちます、滅ぼしまっす♪』


アイリ

『………………』


 ……あ~これはアレね、そういう系の人って事ね。

しかも杖みたいなのを持って、こちらにビシッと突き付けてきてるし……。

 というかこの人、女神の命に従ってって言ってるけど、バトル申請したのは私の方からなので、出来れば無関係な女神を巻き込まないであげてほしい。


 でも面白そうだから、今度クリューネが来たら話してみよう。


ユーリ

『あの……何か反応してくれないと恥ずかしいんだけど……』


 その恥ずかしい事を自らやっておいて、何を言ってるんだろうか。


アイリ

『……とりあえず、バトルは受けてくれるって事でOK?』


ユーリ

『は、はいOKですぅ……』


 なんか急にテンションが低くなったようだけど、大丈夫なのかしら?

まるでさっきとは別人みたいに見えるんだけど……もしかして覚めちゃったとか?


アイリ

『バトルの内容なんだけど、お互いの眷族(けんぞく)同士で闘って勝敗を決めるのはどう?』


ユーリ

『えー、それがですね、あたしはまだ眷族が居ないんですよ。中々強いモンスターが入手出来なくて……』


 そういえば自分の基準で考えてたけど、私の召喚したモンスターはかなり強いんだった。

 Gランクでは絶対に入手出来ないモンスターが多かったのよね。

そう考えればユーリに眷族が居ないのも不思議じゃない。


アイリ

『なら普通に侵略戦にする?』


ユーリ

『御免なさい、まともにバトルした経験が無いんで無理ですぅ……』


 ダメだこりゃ……。

次行ってみよ……じゃなかった。

何か簡単に勝負する方法があれば……、


ユーリ

『あのー、提案なんですけど、単純に先に相手のコアルームに辿り着いた方が勝ちというのはどうですか?』


 でもねぇ、直接闘えるバトルじゃないとモフモフが納得しないと思うのよねぇ。

 でもこの際仕方ないか。

モフモフにはそれで我慢してもらおう。


アイリ

『分かったそれでいいわ。それとただの競争だから、本ダンジョンでやっても大丈夫よね?』


ユーリ

『それで大丈夫です。いやぁポイントが足りなくて大変なんですよ。侵入してくる冒険者にも対応しないといけないし』


 中々苦労してそうね。

普通なら冒険者も相手にしないといけないから、私ほど余裕のあるEランクは居ないだろう。


アイリ

『じゃあ明日の朝からでも大丈夫?』


ユーリ

『はい、大丈夫です』


 よし、何とか話は纏まったわ。

明日はモフモフに頑張ってもらいましょうか。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 次の日の朝、予定通り審判の人が来てバトルが開始された。

最初はモフモフがゴネるかと思ったが、そんな事もなく全力疾走で相手のコアルームへと向かって行った。

 一方のユーリのモンスターなんだけど……、


「迷ってますね」


「迷ってるわね」


 ユーリが出したモンスターは、ブッシュラビット。

Gランクのモンスターだ。

 そのブッシュラビットは、洞窟エリアに戸惑ってるのか中々コアルームに近付かない。

いや、近付こうとしてるのかもしれないが、全くと言っていいほど前に進んでいなかった。


「元々ブッシュラビットは、森林に生息してる事が多いので、洞窟内だと適応出来ないのでは?」


「そうかもしれないけど、普通召喚したモンスターは、ダンジョンに適応するものってアイカが教えてくれたじゃない」


「そのはずなんですが、この現実を突き付けられると自信が無くなってきます……」


 今言った通り、召喚したモンスターはダンジョンに適応するもので、元々の生活環境と違うからといって活動に影響を及ぼす事はない。

 勿論例外もある。

例えば、陸に生息してるモンスターが水中で生きていけるかと言われれば否である。

 だが今回のブッシュラビットの場合は例外には当てはまらない。


「念のため聞くけど、強力な罠を仕掛けたりしなかった?」


 アイカの仕掛けた罠のせいで、15階層の平原エリアはハッキリ言って地雷原と言える状態になっている。

まぁ15階層までたどり着ける輩がいるかと言われれば、居ないと答えるだろうけど……。


「いいえ、平原エリアに仕掛けたような罠は有りませんし、精神や視覚に影響のある罠も配置してません」


 となると、完全に謎ね。

バトルが終わったらユーリに聞いてみよう。


 結局バトルは、モフモフがコアルームの扉をぶち破って到達し、アイリの勝利に終るのであった。




ユーリ

『負けちゃいました……』


アイリ

『私の勝ちみたいね』


 バトル終了後、ご褒美であるDP1000ポイントを振り込んだ事を宣言して、審判は通信を切った。


アイリ

『あのー、ちょっと聞きたいんだけど、あのブッシュラビットって何かおかしくない? 洞窟エリアで迷ってたみたいなんだけど』


ユーリ

『ああ、やっぱりそうだったんですか……。実はですね、あの兎さんはダンジョンの外で捕まえて支配下に置いたモンスターなんですよ』


 ああ、そっか! 外で捕まえてきたモンスターなら納得だわ。

だから環境に適応しなかったのね。

 でもどうして態々外から捕まえてきたんだろ?


アイリ

『なんで外から連れてきたの? 召喚したら環境に適応するわよ?』


ユーリ

『あたしとしても、出来ればそうしたいんだけど、そのぅ……DPがですね、少々心許ない状態でして……』


アイリ

『そ、そうだったのね……』


 理由は単純だった。

DPがなければ召喚は出来ない。

 というかこの人、魔法少女気取って決めポーズなんかしてる場合じゃないんじゃないの?


アイリ

『そんな状態でよく『ビー、ビー、ビー……』ビックリした! 何なの一体!?』


 突然アラームみたいなのが鳴り出したので慌てたアイリだったが、自分のダンジョンに異常はなかった。

 つまり……、


ユーリ

『ああ、冒険者が侵入して来ちゃいました! コアルームの扉が壊れてるのに、マズイですぅ!』


 ああもう、あの単細胞(モフモフ)のせいで大ピンチじゃない!

このまま見捨てるのは罪悪感が半端ないわ!


「モフモフ、責任とって撃退してきなさい! でも必ずしも殺す必要はないからね? ただし、侵入者がユーリを殺そうとしたり、ダンジョンコアを破壊もしくは奪取しようとしたら、殺っちゃっていいわ!」


「ガッテンでさぁ!!」


アイリ

『ユーリ、今からそっちに私の眷族を送るから安心して!』


ユーリ

『で、でもどうやって送り込むんですか? アイリさんはこのダンジョンの場所を知らない筈ですよ!?』


アイリ

『大丈夫。私のスキルにある座標転移(ハザードワープ)を使うからすぐ着くわよ』


ユーリ

『え? 座標転移(ハザードワープ)を使えるんですか!? ……って、座標転移(ハザードワープ)って何です?』


 ちょ、知らないのに知ってる素振りを見せないでほしいんだけど。


 座標転移(ハザードワープ)……以前ルーキーキラーのヤゴレーという奴が持ってたスキルで、詳細を確認したら使えそうだったから私も習得したのよ。

 このスキルの凄いところは、1度目にした場所ならどこでも転移可能というところよ。

必要DPが高かったけど、それだけの価値はあるスキルだと思って習得したわ。

 結果、さっそく役に立ちそうね。

 というかユーリ、はしゃいでる場合じゃないでしょ!


「しっかり頼むわねモフモフ。ユーリを護ってあげて」


「へい! カチコミかけてきた連中には、キッチリと灸を据えてきやすぜ!」


 こういう時は頼もしいわねモフモフ。


「モフモフ、お土産を忘れずにお願いします」


「アイカの姐さん、そいつはちと厳しいですぜ。まぁ装備品でも剥ぎ取ってきやす」


 そんなお土産なんて持って来られても邪魔にしかならないんだから、アイカは余計なこと言わないの!

 だいたいお土産なんかねだらなくても、自分で召喚してるじゃないの。


「何かマズイ事が起きたら念話で話してちょうだい」


「わかってますぜ」


「じゃあいくわよ! 座標転移(ハザードワープ)!」


 アイリの使用したスキルにより、モフモフは身体全体が光に包まれると、やがて光は粒となって消え去った。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 座標転移(ハザードワープ)でモフモフを送り出した頃、ユーリのダンジョンにやってきた侵入者達は、ダンジョン攻略を目指していた。


「ダンジョンの様子はどうだ?」


「ハッ! まだ出現して間もないダンジョンである事は、間違いなさそうだとの事です!」


 情報通りだな。

出来立てのダンジョンなら1階層から3階層くらいのはずだ。

これなら攻略は容易いと言うもの。


「うむ、ならば良し。引き続き冒険者の奴等には罠を解体、もしくは破壊させて進ませよ。もし我々が怪我をする事があれば、報酬は減額すると伝えておけ!」


「ハッ! 直ちに伝えます!」


 さて、ダンジョンコアを手土産に帰還した暁には、昇爵を言い渡されるのは間違いない。

子爵という下級貴族から別れる事が出来るというものだ。

そして領地の者共が私を……エルドレッド・ソリアーノを伯爵と称えるのだ。


「クックックッ、実に楽しみだ。冒険者共から新しいダンジョンの情報を横から無理矢理買い叩いた甲斐があったというものだ」


 冒険者なぞ所詮はダンジョンの宝に目が眩んだ愚か者ばかりだ。

そんな連中にダンジョンを攻略させるのは勿体無い。

 ならばこのエルドレッドが有効活用してやろうではないか。

このダンジョンにある宝は、全て私の物だ。

冒険者には決まった報酬を渡すだけ。

 気分が良い、実に気分が良いぞ!


「さあ、行くぞ者共。栄光は目の前だ!」


「「「ハッ!」」」


 欲深い貴族がコアルームを目指して進む。

そこに絶望がまってるとも知らずに……。


アイカ「お土産が期待出来そうにないので、夏の清涼ギフトを召喚してみました」

アイリ「水羊羹とかでしょ?」

アイカ「お、お姉様はエスパーですか!?」

アイリ「なんでやねん!」

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