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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
最終章:落ちこぼれ勇者とエリート学生
252/255

閑話:アイカVSメリーさん

 それは何気ない日常の最中に起こった。


 ピリリリリ、ピリリリリ


「おや? わたくしのスマホですね。さてさて、いったい誰からでしょう……むむ? 知らない番号のようですが……」


 スマホに表示された番号を見て首を傾げるアイカ。

 それもそのはず、スマホを持ってるのはアイリとアイカ以外だと悪魔族のディスパイル、エルフのミレイ、アレクシス王国のバニラしか居らず、その3人以外から掛かってくることなど有り得ないのだ。


「不審電話でしょうか? お姉様の世界だと振り込め詐欺が多いようですので、注意しなくては」


 気を付けるのは良いことだが、ぶっちゃけ受取人がイグリーシアに来れない以上現物を入手することは不可能なので、いらぬ心配である。


「ともあれ、お姉様に敵対する者がいる可能性も有りますし、まずは出てみることにしましょう……もしもし?」

「……わたし、メリーさん」

「はい?」

「……わたし、メリーさん」

「メリーさん……ですか?」


 スマホに出てみるが、やはり知らない相手だった。本人はメリーさんと名乗ったが、これまでに接触した記憶はない。

 ちなみにアイカは地球で有名なメリーさんを知らないため、メリーさんと名乗られたところで動揺したりはしない。


「今、あなたの家の前にいるの……」

「わたくしの家の前? ということはダンジョンの前にいるという――『ブチッ』――切られてしまいましたね。いったいどのような用件なのでしょう?」


 途中で切られてしまい、再び首を傾げる。

 確認のためダンジョンの入口を探ってみたが、それらしき反応はない。


「つまりこれは――」


 そこでアイカは一つの結論に達する。


「イタズラ電話ですね」


 哀れメリーさんはイタズラ電話として片付けられてしまった――のだが……


 ピリリリリ、ピリリリリ


「またですか? 今度の相手は……また知らない番号ですね」


 スマホを見ると、またもや知らぬ番号であったため軽く肩を竦める。

 それでも出ないという選択肢はないので、再びスマホを耳にあてた。


「もしもし?」

「わたし、メリーさん……」

「またあなたですか。いったい何の――」

「わたし、メリーさん。今、貴女の後ろにいるの……」

「え、う、後ろですか?」


 そんなはずはないと思いつつも慌てて振り返る。そこでアイカが見たものは!






「ギャッハハハ! 見てみぃザード。このオッサン、ズラの代わりにハンディーモップ被っとるで!」

「なんと! 頭にモップを被るのがトレンドで御座ったか……」


 そこにいたのはホークとザードの凸凹コンビで、やはりメリーらしき人物はいない。

 ちなみにこの二人、お笑いのバラエティー番組を視聴中である。


「もしもし? 後ろにはバカが二人居るだけで、あなたの姿は見当たらないのですが?」

「……へ? そ、そんなはずは……あ、あれ? あれぇぇぇ!? ななな、なんでよ! なんで後ろに行けないのよ!?」


 見当たらないと言われた途端、間の抜けた声を上げるメリーさん。

 アイカの後ろに移動できたと思い込んでたが失敗に終わり、ついには発狂してしまう。

 どうやらメリーさんであっても異世界に転移することは出来ないようだ。


「落ち着いてください。まずは用件を伺いたいのですが?」

「落ち着けですって? これが落ち着いてられるかっての!」

「あの……」

「だいたいメリーって名乗ってんだから用件なんて聞くまでもないでしょ! バカにしてんのアンタ!?」


 どうやらメリーさんは自分を知らない者はいないと思い込んでるらしく、当たり障りのないアイカの対応にキレてしまった。


(困りましたねぇ、怒らせるつもりはなかったのですが、さてどうしましょうか……)


 ――などと呑気に思考してるが、今もスマホからは怒声が響き渡っている。


(……しかしうるさいですね、今真剣に考えてるというのに。一旦切りましょう)


「ちょっと聞いてるのアン――『ピッ』

「――これでよし。さて、スマホの向こう側にいる相手はどこにいるのでしょう……」


 メリーさんの罵声をシャットアウトすると、再び思考を開始する。


 ピリリリリ、ピリリリリ


 だがまたしても着信があり、ウンザリしつつスマホを手に取った。


「……また知らない番号ですか。どうせメリーさんという方なんでしょうが――『ピッ』」

「アンタ、何勝手に切ってんのよ! 他人と話してる時に一方的に切るなんて失礼よ!」


(一方的なマシンガントークは失礼ではないのでしょうか。メリーさんという方の思考が今一つ分かりません……)


「……もう一度伺いますが、どのようなご用件でしょうか?」

「はぁ? そんなの決まってんでしょ! 今からアンタの後ろに回って――ってなんで移動できないのよ! アンタいったいどこに居るっていうの!?」

「どこと申されましてもダンジョンに居るとしか……」

「ダンジョン? どこにあんのよそれ!?」

「イグリーシアという世界ですが?」

「は? イグリーシア!? それに世界ってどういうこと?」

「イグリーシアというのはですね――」


 仕方ないのでイグリーシアのことを説明するアイカ。

 だがその説明によりメリーさんは更に怒りのボルテージを上げていき、アイカはアイカで度重なる暴言を浮けてイライラを募らせていく。


「ハン、な~にが別世界よ。私にそんな子供だましが通用するとでも思ってんの? バカにするのもいい加減にしなさいよ!」

「アナタの存在のほうが余程子供だましではないですか? 今グー〇ルで調べてみましたが、存在自体オカルトの類いではないですか。まったく、自分のことを棚に上げて他人を指摘するとは恥を知ってください」

「(こ、このクソガキ!)なんでアンタに説教されなきゃならないのよ! アンタ何様のつもりよ! アンタこそ私が移動出来ないような辺境に引きこもってんでしょ、や~ぃヒッキー!」


(くっ、わたくしを引きこもり呼ばわりするとは……。それに声がお姉様に似てて余計にイラッときます)


「でしたらこちらに来てみてはいかがでしょう? どうせ出来ないでしょうが、精々アナタの無い知恵を絞って頑張ってみてください」

「グヌヌヌ……上等よクソッタレ! 今からブッ殺しに行ってやるから待ってなさい! 絶体逃げんじゃないわよ!?」


 プチッ!


 こうして一度は収まった。

 が、直後にまたスマホから着信が……


 ピリリリリ、ピリリリリ


「もしもし?」

「……ねぇ、どうやっても行けないんだけど、マジでどうなってんの?」

「ですから先程から言ってるじゃありませんか。わたくしの居るところはイグリーシアという別世界なんです。転移魔法か転移スキルでもない限り、一生掛かっても来れませんよ」


 先程までの威勢のよさが鳴りを潜め、意気消沈したメリーさん。その様子にアイカも哀れんだのか、苛立ちは収まっていく。

 だが次のメリーさんの一言で、再び怒りが沸き上がっていった。


「……分かった。だったらこうしましょう。アンタが私のところに来なさい」

「はい?」

「なによ、散々偉そうなこと言っといて自分は来れないっていうの? ハン、これだから口先だけのやつは……」


(このメリーという人物――相当頭がイカれてるようですね。自分が出来ないことを相手にやらせようとは。こうなれば仕方ありません。向こうが来れないなら警戒する必要もありませんし、このまま放置するとしましょう)


 プチッ


 ピリリリリ、ピリリリリ


「もしもし?」

「だから勝手に切るんじゃないわよゴミ! さっさとこっちに来なさいよノロマ!」

「はいはい分かりました。今から行きますので待っててください」


 プチッ


「ふぅ……まったく、バカの相手は疲れますね。当然行くつもりはありませんが、勝手に待たせてやりましょう」


 それから約一時間後。


 ピリリリリ、ピリリリリ


「もしもし?」

「……で、いつ来るのよ?」

「では100年後くらいにしときましょうか」

「ではって何よ、ではって! さては最初から来る気がないわね!?」


 チッ、妙なところで鋭いですね。


「仕方ないじゃありませんか。わたくしでも行くことが出来ないのですから」

「なによ、やっぱり出来ないんじゃない。散々偉そうなこと言っといて情けないやつね」

「……言ってくれますね。でしたらこうしましょう。試しにわたくしがメリーさんを召喚してみます」

「……出来るの?」

「やってみなくては分かりません」


(お姉様が来れたくらいですからね、有名な魔物ともなれば恐らくは……)


 思考しつつ召喚リストを調べるアイカ。

 すると1体の魔物が検索に浮上した。


 メリー:異世界で有名な魔物。電話に出る毎にターゲットに近付いていき、背後に現れたところを振り向いてしまうと殺されると言われている。


(ビンゴです。必要なDPは……1000ポイントですか。Dクラスの魔物と同等とは高いとみるべきか低いとみるべきか悩むところですが、対した消費にはならないのは事実。さっそく召喚してみましょう)


「忠実なる我が下僕よ……今一度魂を呼び起こし、その生涯を我に捧げよ――サモン・メリー!」


 するとアイカの思惑通り、浮かび上がったシルエットが一人の少女へと姿を変え、周囲をキョロキョロと見回している。


「あ、あれ? ここは……」

「ここは既にイグリーシアですよ」

「マ、マジで? 本当に召喚されたの!? さっきまで新宿二丁目にいたのにマジ驚き!」


 まさか本当に召喚されるとは思ってなかっかのか、メリーさんはそこらを駆け回り大はしゃぎだ。


(こうしてみると普通の人間にしか見えませんが、種族がアンデッドになってるので魔物で間違いありませんね)


「ところでメリーさん。わたくしに用があったのでは?」


 アイカの言葉にピタリと動きを止めたメリーさん。

 そして目をギラつかせるとアイカへとにじに寄る。


「クックックッ。そうよ、肝心なことを忘れてたわ」

「肝心なことなら普通忘れないのでは?」

「うっさい! ……コホン。とにかく、今からアンタをブッ殺して――なんてことはできません。どうぞよろしくお願いいたします。――って、ちょっとぉ、なんで私の意志が勝手に!?」


 メリーさんはアイカに対する害意を持つことはできない。

 何故ならば、召喚された魔物は召喚主に対して逆らうことは出来ないのだから。


「というわけでメリーさん。今からアナタはこのダンジョンでメイドとして働いてもらいます」

「ええーーっ!?」

「もちろん拒否権はありません。死ぬまで強制労働ですので、しっかり働いてくださいね?」

「そ、そんなぁ~」


 触らぬ神に祟りなし……とは言うが、今回メリーさんが触れた相手は悪すぎたと言えよう。

 頑張れメリーさん。メイドは大変かもしれないが、飯だけは美味いのは保証しよう。


別の時間軸のアイカが日本に現れる話を連載中です。興味のある方は【気になる彼女はダンジョンコア】で検索してみてください。

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