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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
最終章:落ちこぼれ勇者とエリート学生
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そして日常へ?



「はぁぁぁ。漸く落ち着いたわ」


 あれから――ナイトメア本体を倒してからも大変な毎日を送り続けた1週間後、何とか混乱も収まりアルカナウ王国もチョワイツ王国も日常を取り戻しつつある。


「お疲れ様でした、お姉様。毎度のように面倒事に関わってしまうお姿は、端から見てて笑いの対象に見えつつあります」


 笑いたきゃ笑いなさい。

 その代わりスイーツ禁止令を発動するから。それこそ軽~く1ヶ月くらい。


「ですがよかったんですかい? ムーザの奴をアルカナウ王国に派遣して。また余計な事を企てないとも限らねぇですぜ?」

「モフモフ兄貴の言う通りッスよ。なんか出ていく時に不適な笑いをしてたッスよ?」

「仕方ないのよ。適任者がムーザだったんだから」


 実のところ、アルカナウ王国はこらからが大変なのよ。

 十針(とばり)達に便乗した貴族は処罰しなきゃだし、後継者問題が絡んで不審な動きをみせる輩が出たりで油断ならない情況が続いてるらしいし。

 そこで思い付いたのが、ムーザによる管理体制よ。

 さすがのエルシドも剣を振るう事以外では役立たずだってメロニア王女がぼやいてたわ。

 ……うん、気持ちは分からなくもないけど、もう少しオブラートに包んであげてほしい。


「こうしてムーザ殿は人柱となったのです」

「ちょっとアイカ、人聞きの悪い事言わないでちょうだい」


 本人は管理者という立場が好ましく思ってるらしいので、そのポストに添えてあげただけ。

 お願いしたらあっさり了承――というか、感激して抱きついてきたわよ。すぐに引っぺがしたけども。


「アイリ様、一つ気になる事が……」

「ん? ギンは何が気になったの?」

「結局ナイトメア――いえ、この場合は桜庭と言った方が正しいでしょうか? 彼女の目的は何だったのでしょう?」

「ああ、それね」


 多分だけど、最初は単純にエルシドの魂を狙ってたんだと思う。

 だけど一緒に過ごしてるうちに感情が変化して、エルシドを好きになった。

 けれどナイトメアである以上その恋が実る事は無く、せめて最後は好きな人に――ってところかな。


「悲恋ですね~。私も~、そういうラブロマンスが~、欲しかったです~♪」


 いやいや、最後は死んじゃうんだから憧れるのは映画の中だけにしなさい。


「そうは言いますが、セレンの歳なら腐るほど経験してるのでは?」






「ウフフフ、アイカさん~? ちょっとダンジョンの裏手に来てもらっていいですか~?」

「ちょ、引っ張らないでください! イタタタタタタタタ、腕がもげる!」


 憐れ、アイカはセレンによって拉致られてしまいましたとさ。

 めでたしめでたしっと。


『めでたくありません! お姉様、早く助けてください!』

『自業自得なんだから諦めてセレンの相手をしてなさい』

『そんな!?』


 年齢地雷(セレン)は眷族の共通認識でしょうに……。


「そう言えば(あるじ)よ、いつもは騒がしいホークの姿が見えないようだが?」

「ホークなら7階層でやってるたこ焼き大会に参加してるわよ」

「たこ焼き大会……で御座るか?」


 7階層に発生したクラーケンはダンジョンモンスターとは違って消えなかったのよ。

 そのまま吸収してもよかったんだけど、リヴァイの提案でたこ焼きにする事にしたって訳。

 因みに何故大会という名目になってるのかというと、大食い選手権も同時に開催されてるためよ。


「アンジェラとレイクも参加してるし、調理はリヴァイがやってるわ。他の冒険者も参加してるから気になるなら行ってみたら?」

「そうで御座ったか。しかし(いささ)か遅かったようで御座るな」


 ああ、ホークが爪楊枝くわえて戻って来た。

 どうやらたこ焼き大会は終了したらしい。


「いやぁごっつう旨かったで! アイリはんも参加すりゃよかったんちゃうん?」

「食べようと思えばいつでも食べれるから私は遠慮したのよ」


 というかついつい食べ過ぎちゃうのよね。

 あのソースがまた絶妙で次々と口に放り込みたく――って落ち着け私、冷静に冷静に。


「そういやアイリはん、あの後に邪神様が出てきよったやろ? あれは結局どういうこっちゃ?」


 ホークが言ってるのはナイトメア本体を倒した後の事ね。

 あの後レグリアス様が現れて、桜庭さんの亡骸を抱えて行ったのよ。

 悪いようにはしないから――って私達に言い残してね。


「レグリアス様はダンジョンマスターを管理してる邪神様よ。その神様が桜庭さんを連れてったって事は()()()()()なんでしょ。殆どのダンマスは転生者だって話だし」


 ダンマスが転生者って話はユーリから聞いたのよね確か。

 どこまで本当か知らないけれど。


「しかし桜庭は別としてじゃ、集団で転移してきた奴等はろくな奴等じゃなかったのぅ」

(しか)り。奴等がまともな存在であれば、あのような事には成らなかったものを」


 アンジェラとリヴァイも戻って来た。


「でも無理もない事よ。根底にある欲望を刺激された結果らしいし(と、レグリアス様が言ってた)、ある意味彼等も被害者って事になるらしいわ」


 だから桜庭さん以外の転移者は地球で転生するらしい。

 勿論前世の記憶は消されるみたいだけど。

 まぁ、彼等にしてみれば悪い夢よね。


「ま、そんな事より私はこれからのんびりと過ごすから、呉々(くれぐれ)も邪魔しないでよね」


 何だか転移転生果たしてから怒涛(どとう)のような一年だったわ。

 次から次へと面倒事が舞い込んでくるし、思い返せば涙が――零れる事はないけどね。


「お言葉ですがアイリ様。あまり休む暇は有りませぬぞ?」

「へ? なんで?」

「アイリ様はお忘れでしょうが、十針(とばり)の固有スキルによって操られたプラーガ帝国の工作員が現皇帝を暗殺してしまったのですからな」


 うん、覚えてはいるわよ? だけど私には関係無い話だと思ったからスルーしてるだけだし。


「ぶっちゃけ皇帝が暗殺されたんは自業自得やないかい?」

「そうだぜリヴァイ、姉御は何にも悪くねぇぜ?」


 うんうん、その通り!

 偉いわ2人共、もっと言ってちょうだい!


「いえ、そういう事ではありません。アイリ様にはこの春よりプラーガ帝国の帝都にある学園に通ってもらわなくてはなりませんので、十分に注意して頂きたいのです」


 ふむふむ、学園に入るんだ。

 それなら国家情勢が不安定になってるだろうし、気を付けないと――。






「ちょっと待って。誰が通うって?」

「アイリ様で御座います。どうせお暇になればダンジョンでゴロゴロする毎日でしょう? それでは健康に良くありませんし、何より無駄に時間を浪費するのは好ましくありません。よってアイリ様には学園で勉学に励んでいただくのが得策と考えたのです」

「ええーーーっ!?」


 いつの間にか学園に通う事になってんだけど、どうしてこうなったのかが分からない!


「突然そんな事言われても急には無理よ!」

「御心配には及びません。入園手続きは既に済ませてありますゆえ」

「そうじゃない! だいたい情勢が不安定なこの時期に行くなんて――」

「護衛をつけますので御安心を」

「だから違うって!」


 ダメだ、リヴァイが優秀過ぎて付け入る隙が無い! 何かいい方法は――


「た、大変ですお姉様!」

「アイカァ!」


 何か妙にボロボロになってるけどアイカが戻って来た。


「ちょっと聞いてよアイ――「それより大変なんです! 女神クリューネがコンサートホールで熱唱してホールが吹っ飛んでしまい――」

「ホワッツ!?」


 あんの駄女神ぃぃぃ、何回やったら気がすむのよもう!


「そのためコンサートホールが使えなくなったので、魔法少女の5人が広場を勝手に独占してコンサートを始めて近隣店舗から苦情が――」


 防音障壁で囲っちゃって!

 

「それから酒場ではレックスとディスパイル殿、ドミニク子爵に千手(せんじゅ)様がアイリ様を巡って口論を繰り広げており――」


 それは放っといていいわ。


「あ、そうそう、冒険者ギルドの本部から派遣された職員がいらしてます。アイリーンに冒険者ギルドを設置するための話し合いだそうです」


 それは放置出来ないわ。すぐに面会しに行かないと。


「それから国家情勢ですが、東方の島国であるダンノーラ帝国の内乱が収まったのはいいのですが、こちらの大陸への侵略を企ててるという噂が流れてます」


 うっわ~、面倒くさそう……。

 関わりたくないから情報だけ集めといてもらおう。


「ささ、アイリ様。客人を待たせてはいけませんぞ? 速やかに行動し、速やかに話し合いを終わらすのです」

「ちょ、ちょっとリヴァイ?」

「それが済んだら学園の説明を致しますので」


 うげぇ……。


「うんうん、やはり(しゅ)は周りに振り回されてる姿がよく似合うのぅ」

「そうッスね。そして泥沼に嵌まるのは定番ッスよ」


 そんな定番はいりません!


「ではお姉様、今日も忙しくなりそうですが頑張って下さい」

「頑張ってくだせぇ姉御!」

「ファイトやで、アイリはん!」


 ああもぅアンタ達――






「少しは私を休ませなさーーーい!」


 END

アイリ「これにて完結です。ありがとう御座いました」

アイカ「最後まで微妙な主人公でしたね」

アイリ「言うな!」

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