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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
最終章:落ちこぼれ勇者とエリート学生
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決戦、ナイトメア

前回のあらすじ

 ダンジョン7階層にて大量の魔物が発生したため、それらを潰す事にしたアイリ達。

3ヶ所有る発生源をアイカ、モフモフ、リヴァイに任せ、アイリは差し向けられた無人機を撃墜に出る。

モフモフは危うい状況であったが、リヴァイとアンジェラの援護により危機を脱し、他2ヶ所も問題なく潰す事に成功した。


「これ全部が無人機とはね……」


 地上からは500は有るかと思われる数の戦車が行進しつつ、その上空を戦闘機や戦闘ヘリが同等の速度を保ってに飛行してる。

 上下合わせて1000を超えるんじゃないかって数は、まるで本物の戦争を見てる感じがするわ。


「でもマスター、()()()()()()()なのにどうやって侵入してきたの?」

「右に同じく。ミリーもそこが分からない」


 ゴーレム姉妹の言うように、これらはアルカナウ王国から直接転移して現れた。

 まるで他の国に被害が出ないよう配慮されてる感じに。

 いや、ナイトメアが配慮する訳ないか。

 恐らくだけど、私のダンジョンを集中砲火するための措置なんでしょうね。


「考えるのは後よ。今はこれらを破壊しなきゃならないしね」


 近代兵器となれば、第三者の手に渡らないように徹底的に破壊する必要がある。

 ゴーレム姉妹を呼んだのも使用不能なくらいスクラップにしてもらうためよ。


「破壊する――という事は好きなだけ()()()()()って事? もしそうならルーは遠慮しない――もしくは全力で遊ぶ」

「そうよ、好きなだけ遊びなさい。但し、ダンジョンに侵入させないようにね」

「イヤッフーゥ! 一日乗車券無しで乗り放題――ミリー感激!」


 さっそく姉妹は二手に分かれて独自の遊びを開始した。


「これより、第一回――ルー空軍対ミリー陸軍のガチンコ軍事演習を開始する」

「演習だけどガチのバトル。手を抜けば命は無いと思え」

「「レディ……ゴー!」」



 あれ? これって私が実況しなきゃダメなパターン? ま、いいか。

 ――と言ってるそばからルーが上空より銃撃を受けてる。

  勿論全くダメージにはなってないけども。


「コラーッ! ルーは味方、誤射いくない!」


 そりゃアンタらが勝手に始めた事なんだから味方な訳ないわ。

 ――と、そこへ今度はミサイルが撃ち込まれた!


「ちょっとルー、さすがにミサイルを食らったらダメージを受けると思うわよ!?」

「大丈夫、食らわなければ――」


 ガシッ!


「どうという事はない!」


 飛びついてキャッチすると、そのまま地上にぶん投げた!


 ドォーーーン!


 今ので戦車数台が大破したようね。


「く、何台かやられたか……。こっちもお返しする!」


 ポイッ! ポイポイポイポイッ!


 で、ミリーが対抗して戦車をぶん投げると。

 使い方が間違ってるけど、本人は楽しそうにしてるからいい事にしよう。


 ドゴン! ドガン!


「ミリーの応戦により2機が墜落。被害はまだまだ微弱、まだいける!」


 そりゃそうでしょうね。

 ミリーに落とされた数よりフレンドリーファイア(ルーに落とされた数)の方が遥かに多いんだから。


「相手の消耗は少ない。もっと数を増やして撃ち落とす!」

「そうはさせない。こちらも特攻させる!」


 そこからは、地上から撃ち上がる戦車と上空から叩き落とされる戦闘機及び戦闘ヘリの応報によりどんどん数を減らしていく。

 こうなると近代兵器と言えど殆ど何も出来ずに沈んでいくばかり。

 うんうん、思った通り楽出来そうだわ。


「マスター、大破してないのが出てきてるからそっちはお願い」

「同じくお願い。ミリー達は軍事演習で忙しい」


 あ、コイツら私に後始末を押し付けたわね!?


「――ったくしょうがない。原住民に悪用される事がないように壊して回ろう」


 あちこちに散らばってる壊されかけの近代兵器を完全に破壊し、残骸をアイテムボックスに突っ込む。

 その最中に上から降ってくる近代兵器を避けつつ、落とした姉妹に念話で怒鳴りつけたりしてると瞬く間に数は減少。最後は戦車と戦闘機が正面衝突して(させて)ゲームセット。

 うん、さすがはゴーレム。物理防御並びに物理攻撃の高さは伊達じゃないわ。


「で、結局どっちが勝ったの?」

「「残機ゼロのためドロー」」


 いや、残機をゼロにするのが目的だったんだから当たり前でしょ。


「お姉様! ――っと、こちらも終わってましたか」

「ついさっきね」


 アイカ達が援護に来てくれたけれど、ゴーレム姉妹が大活躍してくれたから必要無かったみたい。


「ならば(しゅ)よ、エルシドを助けに行こうではないか」

「うん!」


 ナイトメアによるダンジョン侵攻は食い止めた。

 後は本人を倒せば終わりよ!



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「イグニスノヴァ!」


 ドゴォォォン!


「は~ぃ、ざんね~ん♪」

「く、これでもダメなの!?」


 今の火魔法は最上位に位置するものよ、それを食らってノーダメージだなんて!


「もぅせっかちだなぁ……。ボクとしてはもう少し余裕を持ってほしいね」


 ……おかしい。魔法もそうだけど、剣も打撃も何も効いてる感じがしない。

 特にこの私――ムーザの精神を直接刺激する魔法を何度も耐えうるなんてどういう神経してる訳?


「おかしいで! 何やってもナイトメアには通じてる感じがせぇへん!」

(それがし)も同意で御座る。いったいどのようなカラクリがあるのか……」


 ホークとザードも同様に、どんな攻撃を繰り出してもナイトメアは涼しい顔して微動だにしない。

 それでいて本人は何かをしてる様子もないし、もうお手上げな状態よ。


「こんな筈は――とか思ってるでしょ? でもこれエルシドのせいだったりするんだよねぇ」

「エルシドの?」


 ――言われてチラリと視線をずらす。

 残念な事にエルシドはまだ立ち直ってないようで、身を震わせて俯いたままだわ。

 けれどそのエルシドのせいだと言うのなら、彼に何らかの変化が訪れなければならないって事になる。


「エルシドがどう関係してるのかしら? 物理的に関連性があるようには見えないんだけれども」

「ふ~ん、気になる? ――まぁいいよ、教えてあげる。答えはとっても簡単、エルシドの最終選択が終わってないからだよ」

「最終選択?」

「そ。最終選択。エルシドが望んだのはハッピーエンドだからね。愛する王女は死んでしまったけど、救出した桜庭陽氷(さくらばようひ)と寄り添う事で幸せになりました――なんていうのはラブロマンス的には有りでしょ? それが決定するまではボクの無敵時間なのさ」


 そんな選択をエルシドがするとは思えないけどねぇ。

 だけど今ので分かった。(さい)を握ってるのはエルシドなのよ。彼が賽を投げない限り、この()()は結末を迎える事が出来ない。

 つまり、まだ彼女(ナイトメア)は降板する事は許されない――そういう事ね。


「どうやら気付いたみたいだね。今選択出来るのはエルシドだけ。だからエルシドが行動を起こさない限り何も変わらないんだよ」


 やっぱりか……。

 こうなったら嫌でもエルシドに動いてもらうしかないわ。


「――立ちなさいエルシド。そしてナイトメアを倒すのよ!」

「……む、無理だ。俺には無理なんだ……」

「いいから立ちなさい!」

「だ、ダメだ……桜庭さんを殺すなんて、俺には出来ない!」


 あーもぅ、使えない奴ね!

 だいたい何だって私がこんなに苦労しやきゃいけないよの! 帰ったら特別手当を要求するわ!


「フフ、エルシドは優しいね。大好きだよ、そういうところは。けど先に進まないし、今は悩んでほしくはないなぁ――って事で、強硬措置をとっちゃうね」


 強硬措置ですって? コイツいったい何をするつもり――え? 床に魔方陣が!?


「しょうがないから特別ゲストを呼んであげるね。――じゃじゃーん! お呼びしたのはエルシドの婚約者であるメロニア王女でーす!」

「お、王女!」


 婚約者の名前を聴いてエルシドが飛び上がった。

 最初からそうしてちょうだい……。


「ほら、エルシドにも分かるでしょ? 早く決断しないと、この人が死んじゃうよ?」

「な!?」


 王女を魔法で拘束すると、エルシドに見せつけるように剣を首筋にあてる。

 この状況で手出しするのは難しいか……。


「ま、待ってくれ! 王女は、王女は殺さないでくれぇ!」

「だったら行動で示してごらんよ……さぁ!」


 手出し出来ない上に、出来たとしてもエルシド以外の行動は無効化されるんじゃ私達の出る幕は無い。

 頼みの綱はエルシドだけど……。


「くぅぅ……く、くく……」


 エルシド?






「クソッタレがぁーーーーーーっ!」


 ドシュッ!


「ガハァ!」






「フフ、やれば……出来るじゃ……ない。ゴフッ……これで物語は終演。良く…頑張ったね、エルシド……」

「桜庭……さん? ――桜庭さん! 何故だ、何故抵抗せずに黙って刺され――「これしか方法が……無かったのさ。何せボクは――ゴホッ! ナ、ナイトメア……だから」

「だからって!」

「あ~あ……どうしてナイトメアなんかに……生まれちゃったかなぁ……。ボクも人間として生まれてれば……エルシドと……一緒に……」

「そ、そんな……桜庭さん――桜庭さん? さ――」






「桜庭さぁぁぁぁぁぁん!」




 そういう事だったかぁ。

 おかしいとは思った。わざわざエルシドに自分を殺すように仕向けるなんて、何かの罠かと思ったけれども。

 どうせ敵同士ならせめて好きな相手に――って事だったようね。


「むう? ムーザ殿、あの王女が消えて行くで御座る!」

「王女? ってああ!」


 騙された!

 魔方陣から浮かび上がってるのは偽物で、ナイトメアが倒された事により偽王女がロストしていく。

 よく考えてみれば、アイリのダンジョンで匿ってるのを簡単に召喚出来る訳ないものね。

 騙される私もアレだけど。


「……俺のせいだ」


 エルシド?


「俺がくだらない妄想を夢で見たからこんな事になったんだ」

「し、しかしエルシド殿、それは少々違うのでは御座らんか? 奴は世界の敵で――「いや、違わないさ。切っ掛けは彼女が作ったのかもしれないが、俺がすべての元凶だったのは間違いない。俺がこの国を滅茶苦茶にしたんだ……」


 とは言えねぇ。

 さすがに夢の中まで自我を保て――なんて言えないし、実際滅茶苦茶にしたのは自分勝手な転移者達なんだから、そこまで自分を責める事はないと思うんだけれど。


「ま、責任を感じるのは勝手だけど、さっさと報告に戻りましょ。メロニア王女が待ってるんでしょ?」

「確かにそうだが、今の俺に王女と会う資格が有るとは思えない……」


 今度は資格ときたか……。

 婚約者が存在しながらも他の女とイチャコラしてたのが後ろめたいんでしょうけど、若いんだから多少は羽目を外して――なんか婆くさいわね私……。



「たたた、大変やムーザはん! アレを見てみぃ!」

「何よ騒々し――こ、これは!?」


 ホークが倒れたナイトメアを指して叫ぶから何事かと思った。

 見ればナイトメアから黒いモヤモヤが出てきて宙に集まりだしたところよ!


「離れなさいエルシド!」

「!!」


 ただならぬ異変を感じてくれたようで、エルシドもすぐに距離をとる。

 すると直後、集まったモヤモヤが巨大な山羊みたいに実体化して私達を見下ろしてきた。


『不甲斐ない依代(よりしろ)だ。まさか自身の存在を否定してまでその男を助けるとはな』

「お、お前は何だ? まさか桜庭さんを操ってたのは貴様か!? いったい貴様の目的はなんなんだ!」

『フン、貴様も質問の多い男だな。あの十針(とばり)とかいう男とそっくりだ』

「十針だと?」


 十針っていうのは転移者グループの首謀者だった少年よね? つまりコイツはナイトメアそのもので、十針の魂を食らったんだわ。


『一々説明してやる義理はない。が、一つだけ答えてやろう。我は魂を食らう者だ。貴様の魂をおとなしく差し出すがよい!』

「ぐぉぉ!? か、身体から何かが!」


 コイツまさか、エルシドの魂を生きたまま取り出そうとしてる訳!?


「エルシドから離れなさい!」


 ズバッ!


『ぬぅぅ、小癪(こしゃく)なぁぁ!』


 攻撃が通った! きっと物語が終演を迎えたからなのね。


『こうなったら貴様らまとめて魂を抉り取ってくれよう!』

「くっ!」


 私に魂は無いけど、身体が自由に動かない!


「うぉぉぉぉぉぉ……」

「くそ、ダメや! なんや身体が硬直したように動かん!」

「そ、(それがし)も同様で御座る」


 チッ、油断したわけじゃないけど、このままじゃ!






「待ちなさい! ハァァァ!」


 ザシュ!


『グァァァァァァ! 目がぁぁぁ!』

「フン、ざまぁみなさい! 私の眷族達を亡き者にしようとした罰よ!」


(漸く来たわね小娘。もう少し遅かったら危なかったじゃない! それと私は眷族じゃないからね!?)


『ええぃ、次から次えと! 貴様らもまとめて――「皆、やっちゃって!」


 私の自慢の眷族達よ。その身体に焼き付けてやるからしっかり味わいなさい!


「ルーは右腕を貰う」

「だったらミリーは左腕」


 ベキッ! ボキッ!


『グゥォゥァ!?』

「あっしは右脚を頂戴しやすぜ!」

「ならばわたくしは左脚です!」


 ズシャ! ズバッ!


『ンガァァァァァァ!?』

「このリヴァイが股関節を砕きますぞ!」

「なら妾は頭部以外を消し飛ばしてくれよう」


 ゴリゴリゴリ! バシュゥゥゥゥゥゥ!


『ギャァァァァァァ! 止めろぉぉぉ!』


 さて、後はトドメだけど、最後はエルシドにやってもらおう!


「エルシド!」

「分かった! ――貴様のせいで桜庭さんは死んだんだ、二度と復活出来ないように叩き潰してやる! くらえ、天地降波斬(てんちこうはざん)!」


 ズドン!


『ガァァァ! ぐ、ぐぞぉ……ば、化け物どもめぇぇぇぇぇぇ! ――グフッ!』


 化け物に化け物と言われてしまった……まぁいいけど。

 それより後片付けどうしよう………。 


アイカ「お姉様の出番少な!」

アイリ「だ、大丈夫! まだ後日談があるから!」

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