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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
最終章:落ちこぼれ勇者とエリート学生
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アイリVS高遠

前回のあらすじ

 アルカナウ王国の上空に差し掛かった直後、対空レーダーに掛かったホーク達にミサイルの嵐が迫りくる。

追加で無人機までもが出てくるが何とか切り抜け城の中庭へと着地し、玉座の間へと駆け上がっていく。

そこで待ってたのは腕っぷしに自信ありの虎田であったが、桁違いに強くなったエルシドにより討ち取られる。

更に玉座の後ろに隠れてた富岡を発見すると、桜庭の居るところまで案内させるのであった。


「奴が来ました! お姉様。予定通り()()します」

「うん、上手くいくと良いけどね」


 いよいよ高遠(たかとう)を撃破する時が来た。

 今まで散々引っ掻き回してくれた()()はキッチリとするつもりよ。

 そのお礼の方法なんだけど――いや、これは実際に見てもらった方が早いわね。


「やりました、お姉様! ()()()()()()()()()により高遠のダンジョンポータル並びに転移石の封印に成功。これで奴の退却はきわまりました」


 よし! 上手くいったみたいね。

 これは昨日のうちにダンジョンポータルの対抗手段をイグリスに聞いた事で立案された作戦で、このテレポートバスターという特殊アイテムの効果範囲に入り込むと自動で発動し、範囲に居る者の転移を不可にするものよ。


「見てくださいお姉様、モフモフと遭遇した高遠が慌てふためいてます」

「フン、ざまぁないわね。そのまま奴を仕留めてもらいましょ」


 モフモフの襲来を予知したらしい高遠だけど、転移石が使用出来なく慌ててるところにモフモフが突撃。めっちゃビビった顔を堪能させてもらったわ。


『姉御、高遠を捕まえやしたぜ!』

『良くやったわモフモフ! 直ぐ行くからそのまま捕らえといて!』

『へい!』


 随分と呆気なかったけど、想定外の事が起これば誰だってこうなるわよね。

 高遠の場合は転移アイテムに頼り過ぎたからなんだけども。




「――で、コイツが高遠なの? 見た感じ、ただの男子高校生にしか見えないんだけども」


 私はアイカとアンジェラを引き連れて、モフモフに押さえ付けられてる高遠の前にやってきた。

 本人は既に諦めたのか、ガクリと項垂れててその表情は(うかが)えない。


「鑑定しましたが間違いありません。それから――やはり邪王のダンジョンコアの新しいマスターとなってるようですね」


 邪王のダンジョンコアが盗まれた時点で何となく察してたわ。

 それを盗むなんて、売り払うか自分で使用するかの2択しかないんだし。


「しかし妙なものじゃな、ダンジョンマスター自らダンジョンアタックとは。それにコヤツのダンジョンは何処にあるんじゃろうのぅ?」

「どうせ自分のダンジョンが無ぇからって、姉御のダンジョンを奪おうと企んだんだぜきっと。器の小せぇ野郎だぜ!」


 多分モフモフの考えが正解なんでしょうね。

 一部修正するなら、自分でダンジョンを作るよりも相手のダンジョンを奪った方が効率が良いってとこかな?


「――で、どうなの? アンタのダンジョンは何処かにあるわけ?」


 いまだに項垂れてた高遠の髪を掴んでグイッと持ち上げると、虚ろな表情をした顔が(あらわ)になる。


 バシバシン!


「ちょっと、他人(ひと)の話聞いてる?」


 心此処に在らずって感じだったので、往復ビンタで目を覚まさせてみた。


「フヒヒ……」


 な、何? なんか気味が悪いんだけど……


「最初から――」


 ん?


「最初から無理だったんだよ。俺みたいな一般人がよ、ヒーローみたいに成るなんてな」


 急に何か語り出した。

 遺言になるかもしれないし、一応聞いてあげよう。


「俺は陰の立役者な感じが好きだった。困ってる奴がいれば相談に乗ったり、いじめられてる奴がいればいじめてる側をブチのめしてきた」


 そういえば捕らえた転移者が、高遠は人気者だって言ってたとか。

 聞いてるだけだとヒーローみたいに感じるわね。


「そんな時に異世界転移ときた訳だ。当時は混乱もしたが、自分のスキルを考えりゃ成り上がれるかもしれねぇ……そう思ったのさ。――だが結果この有り様だ」


 さぞ自分のスキルに自信があったんでしょうね。次々とクラスメイトを手に掛けるくらいだし。

 

「だいたい何で私のダンジョンを狙った訳? まぁ、狙われなくてもこっちから探し回ってただろうけど」

「騙されたんだよ。リオンにな」


 リオンに?


「このダンジョンなら()()()()()()()()って言われてな」


 うん、確かに簡単にケリがついたわね。

 って事は、やっぱりリオンは最初から不本意だったのね。コイツに使役される事が。


「来たはいいがリオンは勝手にくたばりやがるし、このダンジョンもとても正攻法じゃ攻略出来ねぇしで手詰まりな状態でな、結局コソコソと攻略する羽目になっちまった。まぁもう無理だけどな……」


 そりゃそうよ。簡単に攻略されてたまるかっての。


「ところでよ、お前がここのダンジョンマスターか?」

「そうだけど?」

「……ククッ」


 凄く嫌な予感がした。

 取り押さえられながらも不適に笑う高遠が、とても危険な存在として感じるように――


「バカめ、恐怖投影(テラーハイライト)!」

「っな!」

「お姉様!」


 忘れてた! このスキルは相手に絶望的なものを見せて戦意を削ぐスキルよ!






「大変申し上げ難いのですが、お子様の状態は通常では考えられない程弱っております」

「え……」


 ん……これは?


「先生、愛漓(あいり)は……愛漓はどうなるんです!?」

「それは……」

「教えてください、先生!」


 お父さんに……お母さん?

 病院で私の話をしてるみたいだけど……


「……ではハッキリと申し上げます。お子様は……もって7・8年かと思われます」

「「そんな!」」


 ああ、分かった。私が産まれた直後の話をしてるんだ。

 でも7・8年って言われたところを13年も生きてこれたのは長くもった方よね。

 これ、自分で言うのもおかしな話だけど。


「お願いです先生! 愛漓を助けてください!」

「お願いします!」

「そうは言われましてもですね、未知の病気ともなれば薬の効果は期待出来ない上、隔離処置を施さなければならない状況です。今は様子を見るしかありません」

「そ、そんな! 何故愛漓が隔離されなければならないのです!?」

「ご理解ください。もし他人に感染するような事があれば手遅れになるかもしれないのです」


 え~と……確か数ヶ月間様子見を続けたけど、原因も分からなければ病名も分からずで終わったのよね。


「それに感染の恐れが無いと分かれば直ぐにでもご家族の元へ帰す事が出来ますので」

「も、もし感染の恐れが有った場合は……」

「……安全のため、強制隔離処置を取らざるを得ません」

「「…………」」


 後に感染の恐れは非常に低いと見られて入退院を繰り返すだけで済んだんだっけ?

 ま、隔離はされなかったのが幸いね。


『よ~う、どうだ? 恐怖投影(テラーハイライト)の効果は絶大だろ? 十針の命令でこのダンジョンに侵入しようとした奴に掛けたら、泡吹いて気絶しやがったくらいだぜ?』


 高遠の声! いったいどこから!?


『豆腐メンタルな奴だと生きる気力まで失うらしいからな、マジで凶悪だぜ!』

『それはどうでもいわ。それよりアンタは何処にいるの!?』

『何処って……ずっとお前の目の前にいるじゃねえか。――ああ、そういう事か!』


 ちょ、コイツ1人で納得してるじゃない。


『お前がここで何時間も消耗したところで、周りの連中にとっちゃあほんの一瞬だからな。助けは来ないと思った方がいいぜ?』


 いや、別に助けは必要ないんだけれど。

 というかこれ、今更見せられても特に悲観したりはしないんだけどね……あ、そういえばミゴルさんが言ってたっけ? ミルドの加護があるからナイトメアの見せる夢には惑わされないとか。


「ちょっと高遠、ドヤッてるとこ悪いんだけど、別に助けが欲しいとか思ってはいないわよ?」

『は?』

「こんな過去を見せられても、改めて今の自分が恵まれてるって事が分かってるし。というかこれ、自分の知らないところで行われてるみたいだけど真実なの?」

『チッ、んなもん俺が知るかよ! だが一つだけ言えるのは幻なんかじゃ――な、なんだ?』


 んん?


『か、身体が! ぐぉぉぉ!? ――テ、テメェはあん時の!』


 何言ってるんだろコイツ?


『クソッ、離せ、離せよチクショウ! テメェのせいでこんな目に合ってんだぞ! ふざけるなよこのナイトメ――アガガガァァァ!……』






「――ん……ハッ!? た、高遠は!?」


 気付けば目の前に居たアイカの身体を揺すってた。


「お、落ち着いてくださいお姉様! 高遠がお姉様に何かを行おうとしたので、素早く殺処分したのです」


 近くで高遠が血を流して倒れてる。

 そっか、あのスキルの使用中は一瞬の出来事だけど、アイカも瞬時に動いたから持続しなかったのね。


「それより姉御、お身体の方は大丈夫ですかい!?」

「そうですよお姉様、確か恐怖投影(テラーハイライト)を掛けられた筈ですが……」

「それは大丈夫。ミルドの加護が効いたらしくて、ただ過去を振り返るだけに終わったわ」


 振り返るというより、知らない一面を見たって感じかな? あんなに取り乱した両親は初めて見た気がする。

 特にいつも笑いながらお父さんにプロレス技を掛けてるお母さんには見えなかったわね。


「ふむ、問題無いように見えるな。それよりコヤツは本当にナイトメアなのかや? どう見てもただの人間にしか見えんがの」


 そりゃ神様じゃないと見分けがつかないらしいからね。私達が見ても一般人にしか――いや、コイツの場合、妄想に取り付かれた哀れな一般人ってとこかな。

 でも一応ディスパイルに確認してみよう。


「――あ、ディスパイル? 今ナイトメアと思われる転移者を倒したんだけど――」






「え……ナイトメアは健在!?」


 まさか高遠もナイトメアじゃなかったっていうの!?


「お姉様、まさか違ったのですか?」

「らしいわ。絶対コイツだと思ったのに。――なら本物のナイトメアは――あっ!」


 マズイ、このままだとエルシド達が危ない!



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 

「本当にこっちで合ってるんやな? 罠やったら滅多打ちやで!?」

「わわわ分かってるよ、そんな事はないから落ち着きたまえ。シャーラップシャーラップ」


 富岡(とみおか)に案内される形で城内を移動するエルシド達。

 所々で給士と見回りの兵士を見掛けるが、干渉させないように厳命されてるためか、こちらには一切見向きもしない。

 というのも彼等はいまだに十針が健在だと思ってるので、不興をかいたくないという思いが続いてるのである。


「随分と時間掛かるわねぇ、眠くなってきたわ」

「確かに。随分と遠くに案内されてるみたいだが?」


 ホークのみならずムーザとエルシドも不信感を(あらわ)にする。

 最もムーザの場合は不信感ではなく不満感だが。


「人手が少ないから仕方なく隅っこに監禁してるのさ。というより、残りの面子が隅っこでアフレェイド――震え上がってるって言った方がいいかな? 何せ生き残りは僕も含めて6人しか――ああいやいや、桜庭さんと館林(たてばやし)さんを入れれば8人しか転移者はいないからね」


 度重なる戦闘で犠牲者が続出し、最初に居た総勢40人から大きく数を減らしていたのだ。

 ただし、十数人は十針と対立して殺されたのだが。


「本当なら今頃――ん? この音は……無人機が動いてる!?」

「なんやと!?」


 ゴゴゴゴという鈍い音と共に富岡が立ち止まると、驚愕の事実を口にする。

 それを聞いたエルシドが富岡に詰め寄り、胸ぐらを掴み上げた。


「どういう事だトミオカ! 貴様は降参したと言っただろう!?」

「ままま待ってくれ、俺ッチにもわかんないんだ! だいたいこんな状態で操作出来る訳ないだろう?」

「だったら誰が!?」

「お、屋内(おくない)君だ。近代兵器を造り出し、無人機までも手掛けるようになった彼しか操作出来る者はいない筈だよ」


 それを聞いて屋内が籠ってる研究室へと進路を変更する。

 無人機が動いてるなら放置する事は出来ない。


「ここが屋内君のプライベートルームだ。――屋内君開けてくれ、富岡だ。――屋内君?」


 何度かノックするが屋内が出てくる気配はなく、ドアを開けようとしても鍵が掛けられており中に入る事も出来ない。


「屋内君! 早く開けるんだ、屋内――「もういい、どけ!」


 ドガッ!


 エルシドが富岡を押し退けドアを蹴破って入り込む。

 そこには屋内と思われる少年が、この非常時にありながら机とにらめっこをしていた。


「おい貴様! さっさと無人機を止めろ!」


 エルシドに怒鳴られるが、彼はピクリとも動かない。


「聞いてるのか貴様。早く無人機を止めろと言ってるんだ! いい加減――」


 ゴロン……


 屋内の肩を掴み揺すろうとした途端、屋内は力なく仰向けに倒れ込む。

 その顔は青白く、既に白目をむいていた。


「これは……」


 ザードが急いで脈を計るが、エルシドに振り向き首を左右に振る。


「既に死んでるで御座る」

「そ、そんな! いったい誰が!?」


 屋内が死んでる事で富岡が取り乱す。

 給士や兵士の立ち入りは一切禁止してる中で暗殺を企てる者は皆無に近い。

 可能だとすれば同じ転移者しか考えられないのだ。


「嫌な予感がする。桜庭さんのところへ急ごう!」


 富岡の頬を叩くことで正気に戻し、桜庭の元へと走る一行。

 普段から全く人が寄り付かないであろう城の隅の方にある一室にたどり着くと、エルシドはノックもせずに扉を開け放つ。

 すると衝撃の光景が視界に飛び込んてくるのと同時に、アイリが言っていたナイトメアという存在を思い出した。


「そうか、君がナイトメアだったのか――」






「桜庭さん!」

「フフッ……」


 血溜まりに沈む4人の男女の反り血を浴びて、不釣り合いな笑顔を見せる桜庭がそこに居た。


アイリ「なんとビックリ、桜庭さんがナイトメアでしたーーっ!」

アイカ「作者としては、桜庭さんの固有スキルを一切明かさなかったのがヒントだったらしいです」

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