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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第2章:ダンジョンバトル
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わたしのかんがえただんじょん

 ダンジョンバトルを行う前日、アイリのダンジョンでは特設ダンジョンの構想をどうするかの話し合い……という名のお茶会が開かれていた。


「階層は1階層で、ボス部屋で待機してもらうのはモフモフにするってことは決まりだからね」


「ふむふむ。ではお姉様、ダンジョンのタイプは森林エリアにするのですか?」


 デルタファングは深林や密林に棲んでるらしく、当然デルタファングであるモフモフは、それらのエリアと相性がいいらしいけど……。


「でもボスはボス部屋から出られないから、どのエリアにしても変わんなくない?」


 ダンジョンバトルのルールとして、ボスと定められたモンスターはボス部屋から出てはいけないというルールが存在するのよ。

 つまり、モフモフはボス部屋から1歩も出ることはできない。

もし出てしまえば即失格となる。


「それも一理ありますね、さすがお姉様です」


 とはいえ、特に指定したいエリアがあるわけじゃないから森林エリアでもいいんだけどね。


「誰でもいいんだけど、どのエリアにしたらいいとかってアイデアはある?」


「ほいほいほーーい! ここはワイの出番でっしゃろ!?」


 威勢よく挙手……手が無いから翼を広げたのはワイルドホークのホークだ。


「何かアイデアがあるの?」


「勿の論やで。ええか? ダンジョンと言えば罠や、罠を効率よく仕掛けることによって、相手の出鼻を挫くんや。で、その効率を良くするためには洞窟エリアが最適やと思うんよ」


 おや? ホークにしてはまともで鋭い意見ね。

てっきり脳ミソの半分はお笑いで汚染されてると思ってたけども。


「ホークにしてはまともで鋭い意見ですね。わたくしから見てホークの脳ミソは、半分以上がお笑いに汚染されてるものだと思ってましたが……」


「アイカはん、そりゃ酷いでっせ!」


 まさかアイカも私と同じことを思ってるとは思わなかったわ。


「ワイの脳ミソは、全てをお笑いに捧げとるんやで!」


 ……ダメだコイツ、そのうち何とかしないと。


「……まぁとにかく、洞窟エリアが無難そうだから、洞窟エリアにするわ」


「おっしゃ、どや? ワイの意見が採用されよったで!」


「良かったッスね……」


 ホークがクロに自慢してるけど、何故自慢するのか分かんないからほっとこう。

 それにまだ階層のタイプが決まっただけだから、まだまだ考えることが多いのよね。


「じゃあ次に配置するモンスターなんだけど……」


「洞窟エリアならゴブリンでも適当に配置すればよいであろう」


 と、アンジェラは言うんだけど、正直私としてはゴブリンは配置したくないのよね。

 何故かと言うと、見た目が醜いから!

もうこの一言で充分でしょ?


「ではグリーンウルフを配置しますか? グリーンウルフなら洞窟エリアとの相性も問題ありません」


 グリーンウルフね、ウルフ系なら素早さに期待できるし良いかもしれない。


「よし、先ずはグリーンウルフを30体召喚するわ」


「畏まりました。1体15ポイントですので、450ポイント消費してグリーンウルフを30体召喚します」


DP3000→DP2550


 結構消費したわね。

でもゴブリンを配置するのは嫌だから仕方ないのよ。


「次は通路の設置ね。一本道のみにはせずに、あちこち分岐させようと思う。その分岐した通路の1つがボス部屋に繋がってるってことにしようと思うんだけど」


「宜しいと思いますよ。そしてボス部屋へ繋がってるルート上に大量に罠を仕掛けるんですね」


 そうそう。

そしてボス部屋にたどり着く頃には相当消耗してるってわけよ。


「にししし♪ グリーンウルフで誘導して罠に掛ける……我ながら完璧な構想だと思うわ」


「お姉様が黒いです」


 アンタに言われたくないわ!


「それじゃ罠を召喚してちょうだい、1000ポイントくらいの範囲でね。あ、そうそう、罠の種類は落とし穴をメインにしてね」


「どうしてですか?」


「時間稼ぎが必要だからよ」


 今回のバトルの内容が、どちらが早く相手のボスを撃破できるかだからね。

こっちのダンジョンは足止めをメインにして、攻め込む戦力にポイントを多く割り振るってわけよ。


「姉御、それだと俺の出番が無くなるんじゃないですかい?」


「そうですよお姉様。侵入してきた敵はモフモフに任せて、こちらからは攻め込めるだけ攻め込めばいいじゃないですか」


 むむむ……もっともな意見ね。

でもそれだと面白くないのよね。

せっかくのダンジョンバトルなんだから、もっと楽しめるようにしたいんだけど……。


「でしたら見た目を同じような光景にして、同じところをループしてるように見せて混乱させるのはどうでしょう?」


 うん、良いかもしれない。


「アイカのアイデアを採用して、見た目が紛らわしいループ仕様にしようと思うわ。それでここから……ここまでだと、どれくらいポイントが必要?」


 私はダンジョンコアから映写機のように映し出されるマップを手でなぞりつつ確認する。


「そうですね……通路1ブロックで1ポイントですから……721ポイントですね」


 うわぁ、思った以上にかかるわね……。


「ねぇアイカ、もうちょっと負かんない?」


「お姉様、わたくし相手に値切ろうとしないでください。商人じゃないんですから無理に決まってるじゃないですか」


 むぅ……普段は不真面目なくせに、余計なところで真面目なんだから……。


「まぁしょうがないからそれでお願い」


「畏まりました。通路を配置します」


 DP2550→DP1829


「よしよし、じゃあ改めて落とし穴の設置なんだけど、適当に20ヶ所に設置して」


「落とし穴は1つ10ポイントですので200ポイント消費します」


 DP1829→DP1629


「とりあえず、こんな感じね」


 一応できたけど、なんか物足りない気がするなぁ……でもダンジョンバトルの初戦だしこれでいいか。


「あの~、姉貴?」


「ん? なぁにクロ、何か提案?」


「提案ってわけじゃないんスけど、特設ダンジョンでのバトルって、眷族は参戦してもいいんスかね?」






 ……考慮してなかった。

そうよね、当たり前のように眷族を参戦させようとしてたけど、参戦可能かどうか分かんないわね。


「えーーーと、アイカ?」


「事前の話し合いで決められることですので、お姉様と相手のグーチェス様との合意が得られるかどうかですね」






「……ちょっとグーチェスと話してくる!」


 アイリは慌ててダンジョンコアに触れた。

今現在、アイリのスマホだと、ダンジョン通信に直接アクセスすることができないためである。

 そして急かすようにグーチェスに訪ねるのであった。


 しかし、それを見たアイカと眷族たちの頭の中では、違う光景が浮かんでいた。


【ここからはアイカを含む眷族達の勝手な妄想ですので、事実と異なる可能性がございます】


「ごめ~んグーチェス、待った?」


「いや、僕も今着いたところだよアイリ」


「そうなんだ、なら良かったわ」


「それで、話したいことがあるって言ってたけど、どんなことなんだい?」


「あ……うん。それなんだけどさ……ちょっと歩きながら話さない?」


「ああ、いいとも」


「(ああ、どうしよう! グーチェスがこんなに近くに……)」


「…………」


「(相変わらず渋くて無愛想な……じゃなかった! 渋くて凛々しい顔ね)」


「…………」


「(どうしよう……今、凄く緊張してる)」


「…………」


「(あ~どうしよう! って焦っちゃダメよアイリ! 冷静に冷静に……)」


「…………」


「(ダ、ダメ、グーチェスの顔が直視できない! このままじゃダメなのに……)」


「なぁ、アイリ」


「は、はいぃぃぃ!」


「折角だし、アイスでも食べようか?」


「そそそそ、そうね……ち、ちょっと……暑いかもね……」


「ちょうどすぐそこに露店がある」




「へい、らっしゃい!」


「……さて、アイリは何味がいい?」


「えーと……迷うなぁ……」


「お、アイリはん、お悩みでっか?」


「うん……」


「ならワイのお薦めはコレや、大胆不敵・マカオでカカオのコラボレーション・イン・ハワイアンブルーやで!」


「だ、そうだがどうする?」


「うん、じゃあその何とかハワイアンブルーってやつで」


「はい、毎度! で、兄ちゃんはどないするんや?」


「俺はこの、ワサビとハバネロとマスタードのいけない三角関係ジェラードを頼む」


「はい、毎度! ねるねるねるねは……イッヒヒヒヒヒ! っと完成や、へいお待ち!」


「ありがとう。さ、行こうかアイリ」


「うん……」


「おーぅ、頑張りや~、お2人さん!」




「ここにベンチがあるし、座って話そうか」


「そ、そうね」


「…………」


「(じーーーー)」


「…………」


「(じーーーー)」


「アイリ、さっきから黙ったままでどうしたんだい?」


「え? いや、何でもないよ……何でも」


「そうか?」


「うん…………ただ」


「……ただ?」


「そのアイス……凄く不味そ……じゃなかった! えーと……そのね……」


「うん……」


「わ、私、どうしてもグーチェスに伝えたくて!」


「うん、聞くよ」


「そ、それでね……私……私は……」


「…………」


「私は貴方のことが「すみません~、道を~、お尋ねしたいのですが~、宜しいですか~?」


「ああ、いいとも」


「新宿は~、どちらでしょうか~?」


「ああそれなら……こう行ってこう行ってこうのこうのこうだ」


「ありがとうございます~♪」


「うむ、いい事した後は気持ちがいいな。ところで話とはなんだったかな?」


「え? う、ううん、何でもないの……何でも……」


「……そうか」




「今日は楽しめたか?」


「う、うん、なんだかストレスの溜まる展開だったけど、楽しかったよ」


「それは良かった。ならまた今度、時間ができたら連絡するよ」


「うん、分かった!」


「じゃあ、またな」


「うん、バイバイ!」






【以上、アイカを含む眷族たちの勝手な妄想でした】


「待たせてごめんね、今確認し終わったわ」


「はい、お疲れ様ですお姉様。中々楽しそうなデートでしたね」


「デート? よく分かんないけど、今回は眷族の参戦は無しになったわ」






「そんな! あんなに楽しそうな雰囲気だったのに」


 へ? アイカはいったい何を言ってるんだろうか?

特に楽しそうに話してた覚えはないんだけど。


「姉御~、あっしは出番無しですかい?」


「ごめんねモフモフ。グーチェスの方は眷族の戦闘能力が低いから、参戦は無しにしてくれって言ってきたのよ」


 可哀想だけど仕方ないのよ。

合意できないとバトルができないんだもの。


「でも次のダンジョンバトルの時はモフモフを参戦させるから」


「約束ですぜ!」


 モフモフが嬉しそうに尻尾振ってる。

とことん戦闘狂ねモフモフは。


「それより(しゅ)よ、早いとこ特設ダンジョンを完成させねばならぬのではないか?」


 いけない! すっかり忘れてた!


「アイカ、急いで完成させるわよ!」


 その後も、あーでもない、こーでもないと議論を重ね、特設ダンジョンが完成したのは深夜であった。

 そのため、アイリは寝不足のままバトル当日を迎えることになるのである。


アイリ「ところで、デートって何の話?」

アイカ「キオクニゴザイマセン」

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