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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第8章:残された者達の戦い
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グロスエレムの夜明け

前回のあらすじ

 ダンマス達が絶体絶命のピンチを迎えたところに現れたアイリは、あっという間に人狼達を斬り捨てると、メリーヒルスによって甦った勇者に注意を向ける。

だが相手は勇者特有のギフトにより、アイリ1人では厳しい戦いになるとされた。

が、対人戦を得意とするモフモフの前に勇者は敗れ、メリーヒルスを生け捕る事に成功。

しかし、眷族から解放されたクインゾーラは、メリーヒルスへの復讐のため、首都の地下で自爆しようと行動を起こすのであった。

『お姉様、クインゾーラは転移したので、今から止めに行っては間に合いません!』


『って、だったらどうすりゃいいのよ!?』


『広範囲でシールドを展開し、爆発による被害を抑えるのです!』


 確かにそれが現実的かもね。

 被害は出るだろうけど、そこまでは気にしてられない。


『聴いての通りよ、レイク達はすぐに首都から離れなさい!』


『『『承知した!(どぉ!)』』』


「ほら、アンタ達もダンジョンに戻って!」


「わわわ分かったぜぇぇぇ!」

「ああ~もぅ、踏んだり蹴ったりだ!」

「ちょ、あたいを置いてくな!」


 ダンマス3人はこれで大丈夫なので、私はメリーヒルスを連れて地上に転移した。

 するとそこには思いがけない人物が……


「あら? 貴女はアイリさんですよね? 捕らわれたダンマスはどう――「メディル!」


 何だってこんな所に! って言ってる場合じゃない!


「もうすぐ爆発が起こるわ! 危険だから後ろにいる奴隷達も一緒に、私の側から絶対に離れちゃダメよ!?」


「はい? それはどういう――「時間がないから言う通りにして!」ははははいぃぃぃ!」


「アイシクルドーム!」


 巨大なドーム型のシールドを展開した。

 これで多少の被害は抑えられる筈……と、思った次の瞬間!




 ゴォォォォォォン……


 この音は!


『神殿地下からエネルギー反応が拡散! 衝撃に備えて下さい!』


 クインゾーラが自爆したのね!


「メディル、あと奴隷達も絶対にシールドから出ちゃダメよ!」

「ももも勿論です!」


『3、2、1、来ます!』


 ズドドドドドドォォォォォォン!


 展開したシールドを避けるように爆発炎上が巻き起こり、地面や建物を空高く持ち上げる。

 やや間を置いて炎上が収まると、空の旅をしていた瓦礫が地上へと帰還した。

 でも一向に視界が良くならないので、煙やら埃やらが舞い上がる中、ドローンの風魔法ハリケーンを周囲に拡散させ、視界を良好にする。

 そしてようやく周囲の状況が見えてきた。


「うわぁ……相当な被害じゃない……」


 もうね、なんと言うか、神殿が砂漠の中のオアシスみたいになっちゃってるのよ。

 あ、でも瓦礫とか散乱してるから、砂漠って言うより世紀末を迎えた世界みたいな感じ?

 しかもそれを彩るように夕日が地平線の向こうから顔を覗かせてて、まさにドラマのラストシーンの如く【この国は終わりを迎えた。いや、また明日から始まるんだ!】みたいに見えなくもない。


「あのぉ……そろそろ状況の説明をして頂きたいのですが……」


 ゴメン、忘れてたわ。


「コイツの眷族のクインゾーラって奴が、地下にある大量の密造酒ごと自爆したのよ。お陰でこの有り様って訳。一応言っとくけど、コイツがメリーヒルス本人だから」


「……フン」


 私がメリーヒルスを指してやると、合点がいったような顔でメディルは頷いた。


「……ああ、何となく分かりました。それであの強力なシールドを展開したんですね」


「そういう事」


 さて、最低限の被害に収まっただろうし、一旦ダンジョンに戻りましょうか。

 しっかしこれから大変ねこの国は。

 ま、私は他人だから気楽でいいけどね――



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ――なぁんて思ってた日が私にもありました……。

 帰ってから聞かされた衝撃の事実!

 内容は次の通りよ。


「お姉様、グロスエレム教国の教祖がメリーヒルスによって殺されてしまったので、新たなトップを添えないと内戦に突入します」


 なんてこったい! あの厚化粧のクソババアは何て事してくれたのよ! このまま放置して内戦になったら私のせいにされるじゃないの!


「ああもう、次から次へと面倒事ばかり。本当にグロスエレムはろくでもない国ね!」


 八つ当たりしようにもメリーヒルスはディスパイルに引き渡した後だし、千手(せんじゅ)達が集めた大勢の奴隷が街に溢れてるからそっちも気にしなきゃならないし、もう手に負えない……。

 因みにアイカの頭と身体は回収したので、既に再接合し終わって無事動けるようになったわ。


「アイリ様、僭越(せんえつ)ながらその件に関して妙案があるのですが、発言しても宜しいでしょうか?」


 おや? 何やらギンに考えがあるらしい。


「そんなに畏まらなくてもいいわよ。今は猫の手も借りたいくらい忙しいから、アイデアは大歓迎よ」


「はい、ありがとう御座います。アイカさんにお聞きしましたところ、かのダンジョンにはホムンクルスに似たものが有るとの事。でしたら、それを用いて新たなトップに添えるというのは如何でしょう?」


 んん? むむむむ……これはもしかしなくても上手くいきそうな予感がする。


「幸いな事にメンヒルミュラーと同一の身体だという話ですし、更にこちらの言いなりになるように上手く仕込めば……」


 成る程成る程。

 これなら責任を逃れる事が出来る上に、私の都合に合わせた国が誕生するって事ね! まさに一石二鳥のナイスアイデアじゃない!


「うん、素晴らしいわ、最高よ!」

「はい!」


「さっきまで頭抱えてたのが嘘みたい!」

「はい!」


「さすがはギンね! 前にクロが言ってた通り、腹黒さはピカイチだわ!」

「はい! ……はい?」


 よし、そうとなれば善は急げよ。メリーヒルスのダンジョンが崩壊する前に、あのホムンクルスもどき――もう面倒だからホムンクルスでいいや。ソレを全部運び出しちゃおう!



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「で、全部持ってきたのはいいんだけど……」


 全部で20体はあるコレ、どうやって動かせばいいんだろ? まさかメリーヒルスに聞かないと分からないパターン?


「いえ、そうでもありませんよお姉様」


「ん? アイカは分かるの?」


「確証はありませんが、恐らく――」


 アイカが一体のホムンクルスを抱き起こすと、椅子に座らせる。


「見た目的にこの身体がメンヒルミュラーの年齢に近かったと思われますので、今回はこれを使用しましょう」


「私は直接本人見てないけど、この身体は前よりも若くない? 確か20代後半だって聴いたんだけど、コレはどう見ても20代前半なんじゃ……」


「お姉様、多少若い程度ならバレません。寧ろ若々しい方が民衆受けしやすいのです」


 ……私にはよく分からないから、アイカの判断に任せよう。


「問題なさそうなので、この身体を使用する事にしますね。ではここからが本番です」


 アイカはスマホを取り出すとアイテムの召喚を始めた。

 やがて魔方陣から出現したのは紫色の宝石。


「んん? コレって前にも見た事があるような……」


「おや、お忘れですか? ダミーコアですよ、お姉様」


「ダミーコア……ああ! 思い出した!」


 そうそう、アイカがまだ自動人形(オートマタ)の身体を手に入れてない時の話ね。

 あの時に自動人形(オートマタ)にダミーコアを埋め込む事で、アイカが自由に動けるようになったのよ。


「既に見当がついてると思いますが、このダミーコアをメンヒルミュラーになる予定の身体に埋め込むのです」


 うん、ダミーコアだと分かった時にそれは予想がついたわ。


「――っと、これで準備OKです。後は仕上げなのですが、今回は降臨召喚を行います」


「降臨召喚?」


「はい。簡単に説明すると、通常のモンスター召喚を行うのではなく、予め用意した器にモンスターを召喚するというものです。例えば剣を用意して降臨召喚を行えば、意思のある魔剣となる事でしょう」


 なんか凄そうねソレ、というか間違いなく凄いわ! 今度試しに作ってみよう!


「ですが少々コストが高く、一回の使用でDP10000が必要です」


 めっちゃ高いじゃない!


「そんなのホイホイとやってられないわよ!」


「ですがそれの10倍のDPであるエリクサーをホイホイ使用されてるので、まるで説得力がありません」


 数秒で論破された……。


「……コホン。それじゃこの身体に降臨召喚を行って、新たなメンヒルミュラーとして動いてもらいましょ」


 意識を集中して椅子に座らせてる身体に……


「降臨召喚!」


 ホムンクルスの足元に魔方陣が出現し、その身体を淡い光が包み込む。

 やがて光が収まると、ホムンクルスがゆっくりと目を開いた。


「……ん、んん? あれ? ここどこ?」


 メンヒルミュラー?は椅子から立ち上がると、周囲をキョロキョロと見渡してる。


「ここは私のダンジョンよ。で、貴女は自分が誰だか分かる?」


「うっちー? うっちーは……誰だっけ?」


 何か軽く混乱してるみたいだけど、大丈夫だろうか? しかも口調がおかしいし……。


「落ち着いて聞いて、貴女はメンヒルミュラーっていうグロスエレム教国の教祖なの」


「グロスエレム? メンヘラ?」


「そう、グロスエレムよ。メンヘラは違うけれど」


「う~ん……あ、もしかして、うっちーって凄く偉い人?」


「そうよ、偉いわよ。なんたって一国のトップだからね」


「マッジィ~!? うっちーちょ~凄いじゃん! 我は王なるぞ~キャハハハハ!」


 言っちゃ悪いけど、すんごく頭悪そう……。

 コレを国のトップに添えて大丈夫なんだろうか……いや、大丈夫には見えない。

 ちょっとテンションがおかしいメンヒルミュラーは置いといて……


「ねぇアイカ、念のため聞くけど、降臨召喚が失敗した訳じゃないわよね?」

「いえ、それは有り得ません。キチンと10000ポイント消費してますので、間違いなく成功してます」

「でも成功した結果がこれだと不安になってくるんだけど」

「お気持ちはお察ししますが、我々に魂を選別する権利はありませんので、まぁぶっちゃけ諦めて下さい」


 マジですか……。


「それよりも、明日の朝までに最低限の事は教えておかないとなりません。何せ首都で大規模な爆発が起こったのですから、表立って何らかの声明を出さないと、死んだものと思われてしまいますよ?」


 それは困るわ。

 折角上手い具合に収まりそうなのに、勝手に内戦になったら目も当てられない。


「こうなったらアイカ、明日までに徹底的に教えてやりましょ!」

「分かりました。少なくとも今までの教国とは違う国にしてやりましょう」


 そんな訳で、徹夜で一般常識から国政に関わる事を出来る範囲で教え込んだ。

 国政に関してはミゲールさんとジュリアさんに協力してもらいながらになったけども。


 それに途中で何度投げ出してやろうかと思ったか分からない。

 何故かって言うと、ちょっと教えたら「マジ疲れたんだけど~」とか「うっちー分かんな~い」とか「っていうかカラオケ行かない?」とか言ってくるんだもんこっちが疲れるっつーの……。


 でも何とか様にはなってきたので、表面上は大丈夫……だと思いたい。

 一応これが新たなメンヒルミュラーよ。


「あ、うっちーの名前? メンヒルミュラーだよ、精々よろろ~ん♪」


 相変わらず乗りが軽い……。


「でもって、うっちーはグロスエレムって国のトップなんだって。マジスゴ~♪」


 どこか他人事に感じる……。


「あ、でもでもちゃ~んとお仕事はやるよ、ヤっちゃうよ~」


 何か余計な事を仕出かしそうな雰囲気が(にじ)み出ている……。


 でももう時間がないし、このまま首都に送ろう。

 念のため人狼(ウェアウルフ)人猫(ウェアキャット)を護衛につければ大丈夫でしょ。


「はぁぁぁ、もう疲れたぁぁぁ。これで一段落着いたし、暫くはゆっくり過ごそう」


「はい、大変お疲れ様です」


 それじゃあ昼寝でもして――『お~い(しゅ)よ』――っと、アンジェラからの念話だ。


『どうしたのアンジェラ?』


『アイリーンの街に居る獣人達なのだが、それぞれ仕事が欲しいそうだ。しかし如何せん数が多すぎてな、とても全てに割り当てるのは不可能なのじゃ。何とかならぬかのぅ?』


 忘れてたぁ! そうよ、解放した奴隷が大勢いるんだったわ。

 だけど……


「あ~もぅダメ。今日はもう寝るから後はアイカの方で宜しく~……」


「ちょ、お姉様? お姉様!? 困りますよお姉様、わたくしだって大事なスイーツタイムが始まるのですから! お姉様ぁぁぁ!」


 いつも通り、ダンジョンは妙に騒がしのであった。


 第8章END

アイリ「これにて第8章は終了です」

アイカ「閑話と登場人物紹介を終えてから、第9章になる予定です」

アイリ「そうそう、今回の閑話はクリスマス特別編よ」

アイカ「但し、クリスマスが題材なだけで特別という訳ではありません」

アイリ「特別なのか否かどっちなのよ……」

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