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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第8章:残された者達の戦い
190/255

変動

前回のあらすじ

 奴隷商と神殿を襲撃し、見事奴隷を解放していくアイカ達。

そこへメリーヒルスの眷族ジュヌーンが襲いかかるが、ルーとの実力差の前にその命を散らしてしまうのであった。

 ダンジョン最下層の一際(まばゆ)いコアルームで、瞑想(めいそう)の最中であったメリーヒルスが目を見開き顔を上げた。


「なんという事だ! まさかジュヌーンまで失う事になろうとは……」


 たった今ジュヌーンとの繋がりが消えたのを感じ取ったメリーヒルスが、珍しく悲痛な表情を作る。

 つい先日モッツァヴィーノを失ったばかりだというのに、早くも2人目の眷族が犠牲になるとは思ってなかったのだ。


「まさかジュヌーンまで裏切ったのか? ――いや、いくら何でもそれは考え難い。となると何者かに仕留められた可能性が出てくるが、Bランクの魔物を倒せる者がそこらを練り歩いてるとも思えん……」


 ではいったい誰に殺られたのかという事になるのだが、その答えが出る前に、眷族の1人から念話が届く。


『メリーヒルス様、お時間宜しいですか?』


『む? クインゾーラか。何用だ?』


『はい。実は今イスルの街へとやってきたのですが、どうやら既に襲撃された後らしく、奴隷商の館と神殿が半壊してる模様です』


(チッ、忌々しい魔物め。どこの差し金か知らんが、この借りは必ず返してくれようぞ!)


 肘をついて徐々にイライラを募らせるが、憂さ晴らしは後にする事にして、今はクインゾーラに報告の続きを促す事にした。


『それでですね、誠に申し上げ難い事なのですが、ジュヌーンの死体が神殿の脇に放置されてるのを発見しました。如何致しましょう?』


 なんと、クインゾーラが発見したのはジュヌーンの死体であった。

 つまり、先程繋がりを失ったばかりなので、仕留めた者が近くに居る可能性がある訳で。


『死体は捨て置け。どうせ勝手に消えるのだからな。それよりも仕留めた者を探し出せ! まだ近くに居るやもしれん!』


『え、え~とですね、その事なのですが――』


 語気を強めるメリーヒルスとは反対にクインゾーラは言葉を濁しつつ答える。

彼女も同じ事を考え襲撃者を探し出そうとしたのだ。

 だがズタボロにされた兵士達から得た証言は、何処(いずこ)かへ転移してしまったという残念なもので、遠目で見ていた平民達が話した内容も同じだ。


『――という感じでして、既に街から居なくなってしまったようでして……』


『クッ……味な真似を!』


 実際はこのまま陸上を移動するのはマズイと判断したアイカがレックス達を連れて転移しただけなのだが、メリーヒルスから見れば襲撃するだけしてさっさと退散したようにしか見えない。


『それに襲撃者はどうやら冒険者らしく、人間や獣人等が複数居たとの事です』


『な! 魔物ではないと申すか!?』


『は、はいぃぃぃ!』


 ここで事態の異常さに気付く。

 魔物だけならまだしも、人間や獣人までが襲撃してるのはどう考えてもおかしい。


『クインゾーラよ、大至急我が娘をここへ連れてこい!』


『はははははいぃぃぃ!』


 明らかに不機嫌なメリーヒルスが念話を終え、久方ぶりのダンジョン通信を使用する。

滅多に利用する事のない機能だが、やはり情報を集める手段としては欠かせないものであると再認識しつつ、とある集いに目が止まる。


『む? この集いは……んな!?』


 そこで目にした驚くべき事実に言葉を失い、呆然とスクリーンを眺めてる状態が続いた。

 彼女が見たのは、モッツァヴィーノがステータスをスクリーンショットされた状態で死亡してる画像で、メリーヒルスの眷族という事が丸分かりである。

更には集い名も【グロスエレムの裏側】と付けられてる事から、メリーヒルス=グロスエレムという事実までもが明らかにされてしまったのだ。

 暫し呆然としていた彼女だったが、クインゾーラがメンヒルミュラーを伴ってコアルームへやってきた事で正気を取り戻した。


「お母様、本日もご機嫌麗し――「くだらん前置きはよい。それよりもお前に聞きたい事がある」


「んな、ななな何で御座いましょう?」


 メリーヒルスが不機嫌な状態にあると分かり思わず声が裏返ってしまう。

 彼女にとってメリーヒルスは絶対に逆らえない存在なので、何とか怒らせないよう必死だ。


「ミュラーよ、魔女の森で何があったのか詳しく報告せよ」


「…………」


 今度はメンヒルミュラーが言葉を失う番だったらしく、顔が青ざめた状態で硬直した。


「聴こえなかったのか? 魔女の森で起こった出来事を話せと言っているのだ」


「そ、それは……」


 彼女は顔を伏せて言葉を詰まらせる。

 出来れば魔女の森で多数の犠牲者を出した挙げ句、コソコソと逃げ帰った事は伏せて起きたかったのだ。

 そんなプライドにまみれた娘に眉をひそめたメリーヒルスが、ダンジョンコアを操作してあるものをスクリーンに映し出す。


「コレを見よ」


「――こ、これは!」


 メンヒルミュラーが顔を上げると、例のモッツァヴィーノの画像がそこに有った。


「ミュラーよ、奴は死ぬ前にお前を迎えに行ったのであろう? つまり、お前を転送した後に殺されたという事だ。奴が決して弱い存在ではないという事は、お前も知っておろう?」


 一旦言葉を区切ると、紅茶の入ったグラスを手にしてやけ酒のように煽り、再び娘へ顔を向ける。

 眷族が2人も死に、自身の正体までもがバレた今となっては、最早隠し通す事は困難だ。

 ならばやるべき事は、発端となった存在を消し、それに乗じたであろう愚かなダンマス達をも力で捩じ伏せる事。

 つまり紅茶を煽ったのは、開き直ったという意味も含まれていた。


「答えよミュラー。相手はいったい何者だ?」


 そしてメンヒルミュラーも隠し通せないと悟り、ポツリポツリと語りだす。

その中には勇者であるアビゲイルまでもが殺されたであろうという事も含まれており、何故今まで黙ってたのかという怒りがこみ上げてくるが、時既に遅しである。

 

「――大体の事は分かった。つまり相手の()()()という者は転移者を抱えてるか、もしくは自身が転移者であるかのどちらかだな」


 メリーヒルスがアイリに行き着いた理由……それは、アイカがダンジョン通信を使用したという単純な理由からだ。

 本来ダンマスしか使えないダンジョン通信をアイカが使える理由はいまだ不明なのだが、元々この機能は名前とログが残るようになってるので、アイリのダンジョンコアから使用した場合、名前がアイリとして記録される。

 その事からメリーヒルスは、アイリが今回の襲撃を企てたと結論付けたのだ。


 ガシャーーーン!


「小娘の分際で生意気な! グロスエレムに手を出した事、必ず後悔させてくれる!」


 怒りに震えてグラスを叩き割ると、アイリへの復讐に燃えるのであった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「すっげ~、本当にダンジョンの中に街があんのな。何だか夢でも見てるみたいだせ……」


「今回ばかりはレックスに同感だな。まさか本当にダンジョンの中にあるなんてな……」


 口を開けておのぼりさんのように呆けた顔を見せるレックスとアルバ。

 彼等の後ろではルークとユユまでもがアホ面を晒してるが、アイリーンを見た者はだいたい似たような反応を見せる。

 しかも今回は敢えて4階層に転移してから街まで移動したので、まるで砂漠の中のオアシスのように見えた事だろう。


「しかし良いので御座るか? 彼等を勝手に招待するのは、(あるじ)の意思に反してないか不安になるで御座るよ」


「それは問題ありません。親しくなった者達に素性を隠すは後ろめたいと以前から申されておりましたので、寧ろ良い機会でしょう」


「左様で御座ったか。ならば心配は無用で御座るな」


 アイリの意思に反してないと知ったザードが安心したところで、レックス達を街へと入場させる。

 そもそも彼等を招いた本当の理由は、アイカ達のように強くなりたいとレックスが熱望したからで、聞くと彼の仲間も同様の意思を持ってたため、アイリーンに招いて修行を積ませる事にしたという訳だ。


「ほんで奴隷の救出はどないするんや? ひょっとしてワイらも休んでええんか?」


 サボりたいホークが目を輝かせるが、アイカの答えは当然のようにNOだった。


「折角他のダンマス達も張り切ってるのです。わたくし達がサボタージュしては示しがつきません。さぁ、他の街も解放しますよ」


「マジでっか……」


「ちゃんとやる気を出してくれればご褒美を差し上げましょう。そうですね……ホークだけ特別に深夜でもゲームが出来るようにしときましょう。1日だけですけども」


「ほ、ホンマか?」


 ガクリな肩を落としたホークが誘惑に負けて再び目に輝きを取り戻す。


「はい。なので後で好きなアーケードを教えて下さい」


「おう、分かったで! むっちゃ張り切ったるわい! 1日中遊び倒したる!」


 褒美を約束されたホークだが、そうなると当然同じ要求をするものが現れる。

 勿論それはこの2人……


「ホークばっかりズルい!」

「その通り。ミリー達も報酬としてお菓子を要求する!」


 駄々っ子のように腕を振り回して要求する2人――いや、寧ろ駄々っ子そのものであった。


「大丈夫ですよ。2人の分もそうですし、セレンにはホークと同じようにカラオケボックスの深夜解放を。ザードには暴れん〇将軍のDVDセットを差し上げましょう」


「それは~、感激です~♪」


「そのタイトルはよく分からぬで御座るが、お心遣い感謝致す」


 レックス達の事はリヴァイに任せ、再びグロスエレム国内へと転移するアイカ達。

 彼等が――というか、褒美で眷族を釣ってまでアイカが押し進めるのにも理由がある。

 それはアイカが前哨基地からエルフ達を連れて、アイリーンに戻ってきた時の事だ。






「アイカ、折り入って頼みたい事がある」


 ちょうどタイミングよくディスパイルが現れたのだ。


「頼みたい事……ですか? 断っておきますが、わたくしにお姉様の代わりをやれとかは無理ですからね?」


「そ、そんなんじゃない! いや、やってくれるなら嬉しいが……」


「ほほぅ?」


「いやいや、そうじゃない。今回は真面目な話だ」


 ポロリと本音が出てきたが、ディスパイルが真面目な表情になったので、アイカも真剣に聞く事にした。


「覚えてるか? 以前にレンというダンジョンマスターを捕らえた時の事だ」


 レンとは日本人の転生者で、玉置錬三郎(たまおきれんざぶろう)と名乗った男の事だ。


「そういえば、ミゴル殿と一緒にここへ来られたのが慣れ始めでしたね。もしかして、そのレンという男がグロスエレムと何か関係があると?」


「さすがに鋭いな、まぁその通りさ。俺にも教育係だった先輩が居て、よく面倒を見てもらってたんだが――」


 そして語られるディスパイルの過去。

 彼の先輩はとある初心者のダンマスをサポートしてたのだが、その際に運悪く初心者狩りに巻き込まれ、命を落としてしまったのだという。

 初心者狩りを行ったのは知っての通りレンであり、そのため当時はレンを見つけ出す事に躍起にやってたのだ。


「成る程。慕ってた存在を失ったのですね」


「ああ。だがアイリ達のお陰で奴を捕らえる事が出来た。この事は本当に感謝している」


「それは何よりです。しかし、それと此度の件とはどのような関係が?」


 そう、アイカのいう通り、ここからが本題であった。


「実はな、レンに情報を流したのがメリーヒルスなんだ」


「何と! つまり、間接的にはメリーヒルスのせいでディスパイルの先輩が……」


「……そういう事だ」


 新たな事実に軽く驚いたが、だからこそ疑問も出てくるというもので、アイカは率直にその疑問をぶつけてみた。


「何故メリーヒルスを野放しにしているのです? レンと同じように捕らえればよいのでは?」


 アイカの疑問はもっともであったが、ディスパイルは静かに首を左右に振る。


「メリーヒルスが行ってるのは、ダンマス初期を脱した者達を狩るというものだ。これに関しては特に禁止されてる訳じゃないんだ。互いに共存が出来ない者同士が戦わなくてはならないのは、国もダンマスも同じなのさ。そしてメリーヒルスという存在にアイカが行き着いた今、奴を捕らえるチャンスが巡ってきたんだ」


 そこでディスパイルは土下座をして床に頭を擦り付ける。


「頼むアイカ。図々しいというのは承知してる。立場上どうする事も出来ずに黙って見てるしかなかった俺だが、奴を捕らえるチャンスなんだ! 奴を生け捕りにしてくれ!」


 ディスパイルの熱意が充分過ぎる程にコアルームに漂う。

 そんな彼の頭を上げさせると……


「いいですよ」


「え!?」


 アイカがあっさりと了承し、ディスパイルは面食らってしまう。

 まさか簡単に了承されるとは思ってなかったのだ。


「お、俺が言うのもなんだが、本当にいいのか?」


「勿論です。ディスパイルが悲しむのはお姉様としても見過ごせないでしょうし、きっとお姉様なら引き受けた筈です」


「あ、あ、あ、ありがとうアイカ! 本当にありがとう!」


「ちょ、ディスパイル!?」


 感極まり、思わずアイカに抱きついてしまい……






 バチバチバチバチーーーン!






「……反省してますか?」


「ふぁい……ふみまへんれした……」


 結果アイカに往復ビンタを食らったのである。

 そしてアイカの方も、きっとアイリは同じようにするだろうと信じて。


「まぁ兎に角、メリーヒルスはわたくしにお任せ下さい。襲撃を繰り返せば、いずれ何らかのアプローチがあるでしょう」


ユユ「……アレ、凄く楽しそう」

クロ「あれはジェットコースター……ってマジッスか!?」

ユユ「…………」コクコク


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