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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第8章:残された者達の戦い
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捕虜解放作戦

前回のあらすじ

 撤退するメンヒルミュラー達に追い付いたアイカ達は、雑魚兵を蹴散らしたまでは良かったのだが、途中で割り込んで来たモッツァヴィーノにより教祖と側近を逃されてしまう。

そこでモッツァヴィーノを倒し情報彼のマスターであるメリーヒルスというダンジョンマスターの事を聞き出そうとするが、予め仕込まれてた呪いの類いによりモッツァヴィーノは絶命してしまった。


 魔女の森侵攻にあたり、森の一部を急遽切り開いて設置された前哨基地。

捕まったエルフは勿論の事、そのエルフに加担した者達もそこへ運び込まれており、最終的にはここからグロスエレム国内へと運ばれる事となる。

 そしてたった今、この基地の地下牢に新たな捕虜が運び込まれた。


「ほら、さっさと入れ」

「イテテテ……おい、蹴る事ないだろ!」

「うるさい、こっちは忙しいんだから手間かけさせんな!」


 キィィィ……ガチャン!


「くっそぉ~、覚えとけよ!」

「フン、テメェみたいなクソガキをいつまでも覚えてられるか!」


 鉄格子に4人の若者を乱雑に放り込むと、兵士はせわしなく地上へと戻って行った。


「あぁ~くそ! まさかあんなに強い奴だとは思わなかったぜ! 俺も少しは強くなったと思ったのに……」


「ま、上には上が居るって事さ。それに相手は腐っても勇者ですよ、負けても仕方ない相手だと僕は思いますねぇ」


 彼等が戦ったのは勇者アビゲイルで、Dランクの冒険者である彼等では到底敵う相手ではない。

 因みにアビゲイルの冒険者ランクはSランクである。


「そんな事よりこれからどうするよ? このままじゃ奴隷に落とされて終わりだぜ?」


「そんな事ぁ分かってるよ! だからこうして考えてるんじゃないか」


 捕らわれの1人である獣人の少年は、寝そべってふて寝をしていた。

いや、もしかしたらふて寝してるように見せかけて本人は集中力を高めてるのかもしれない。






 グゥ……グゥ……


「っておい、寝るな! 寝るなっつーの!」


 どうやら寝てるだけのようで、仲間から叩き起こされる有り様だ。


「何だよアルバ、今考え事――「お前のは考え事じゃなく寝てるだけだろ! ……ったくしっかりしろよレックス」


 なんと彼等、以前ラムシートでアイリ達と一緒に討伐依頼を受けた【夢の翼】という冒険者パーティだった。

 彼等は仲間の1人であるエルフのユユが里帰りをするという事で村まで付き添ってきたのだが、そこで運悪くグロスエレムの襲撃に遭い戦う羽目になったのだ。

 が、結果はご覧の通りの惨敗で、漏れなく拘束されてしまったという。


「わ、悪かったって……。でもさ、実際どうするかって言われてもどうしようもないだろ? 出来る事と言ったら精々見張りが巡回に来たときに鍵を奪う事くらいしか……」


「名案……と言いたいところですが、どうやって奪うんです? もしかしたら当分見張りは来ないかもしれませんし」


「う……」


「来たところでこちらから触れられない距離ではどうしようもありませんし」


「うう……」


「何より武具の類いが取り上げられたままじゃ戦闘は難しいでしょう」


「ううう……」


 ルークによる怒涛のダメ出しを受けたレックスはすっかり縮こまってしまい、再びふて寝してしまった。

 そんな中、先程から黙りこくってるユユはどうしてるのかというと……






 ZZZ……


「こっちも寝てんのかよ……」


 案外マイペースらしく牢の隅で夢心地な状態であり、それを見たアルバとルークは共に額に手を当てるのであった。


「まったく、これでも我々は男だというのに、これでは自信を無くすというものです」


「ああ、同感だな。ユユにはもう少し警戒心ってもんを――ん? 何だか騒がしいな?」


 ルークに同調したアルバは、妙に地上が騒がしいのに気付いた。

牢の真上をドタドタの走り回る音が響いてくるので、何かが起こってるのだと感じとる。


「これはチャンスかも知れません。アルバ、2人を起こし『ズドォォォン!』


 寝てる2人を叩き起こそうとした矢先、牢の一部が崩れて砂埃が舞い込む。


「なななな何だいったい! 何が起こったんだ!?」

「……むぅ?」


 寝てた2人も飛び起き――いや、ユユはいまだに眠気眼だが、全員が崩れた天井を見上げると、そこから太陽が顔を覗かせていた。


「ど、どうだ、俺の考えた通り、果報は寝て待て意味が分かっただろ?」


「意味は分かりますが、何故レックスがドヤ顔をしてるのかは分かりませんね」


 これ見よがしに天井を指してドヤ顔をかますレックスに、お前は寝てただけだろうという視線を向けたルークが肩を竦める。

 だが果報は兎も角チャンスはやって来たという事で、早速4人は土砂をよじ登って脱出する事に成功した。


「さぁて、いったい何が起こってる――うへぇ!?」


 建物の陰から様子を(うかが)うために顔を覗かせたレックスの視界には、驚くべき光景が広がっていた。

 なんと周囲には多数の兵士が倒れており、その殆どが寝息を立てていたのだ。


「おいレックスいったい何を――って何じゃこりゃ!?」


 硬直してるレックスを押し退けたアルバもその光景を目にして呆気にとられる中、遠くから見覚えのある少女がポニーテールを揺らして駆け寄ってくる。


「これは皆さん、このようなところで会うとは奇遇ですね」


「え……え? アイリ!?」

「ちょ、レックスよく見ろ、アイカさんだろ!」


 剣を片手に颯爽(さっそう)現れたアイカであったが、レックスは一瞬アイリと間違えてしまう。

そもそもアイリとアイカは同じワンピースを着る事も多いため、遠目だと同じに見える事もあるらしい。

 いや、レックスの場合は願望が混ざってアイリに見えてしまったのだが。


「ご、ごめんアイカ。でもアイカが居るって事はアイリも来てるんだろ?」


「いえ、お姉様は他に用がありますのでここには居ません」


 とりあえずアイリの事情は説明が面倒なので誤魔化す事にした。

もしも詳しく話してしまうと、アイリに一目惚れ中のレックスが暴走する恐れもあったのも理由の一つだ。


「それより皆さんは何故ここに? わたくしはここがグロスエレム教国の前哨基地だと聞いて、エルフを解放しに来たのですが」


「え? あ、いや俺達は――」


 倒した兵士を尋問してここまでやって来たアイカだったが、レックス達もエルフ達と同じように捕まった事を知る。

直後に牢の一部が崩れて脱出したという話しだが、実はコレ、牢の上にあった(やぐら)をミリーが叩き潰した際に発生したもので、一歩間違えばレックス達も被害を被るところだったのだ。

 後でミリーへの説教を行う事を頭に入れつつ互いに詳しく情報交換を行ってると、基地の兵士達を一通りブチのめした面々がアイカの元に集まって来たので、互いに自己紹介を済ますとレックス達の居た地下牢へと向かう。


「ほら、ここが俺達が捕まってたところだよ。多分奥の方にエルフ達も捕まってると思うんだけど……」


 レックスの案内で更に奥へと進む。

すると複数の鉄格子に周りを囲まれた状態で、大勢のエルフ達が身を寄せあってるのが見えてきた。


「……お前達はグロスエレムの連中……ではないな。何者だ?」


 見た目上はエルフの青年である人物に尋ねられる。

その顔にはやはり警戒の色が浮かんでいた。


「わたくし達は皆さんを解放しに来たのです。長老のニルグークさんをご存知ですか?」


 まだ少年であるデュークの名前を出しても知らない者が多いと判断したアイカは、ニルグークの名前を出せば知ってる者がいるだろうと考えた結果だ。


「おお、ニルグーク殿の知人か。それなら知っているぞ」

「成る程、ニルグーク殿の村は無事なのだな」

「ニルグーク殿の知り合いなら安心だわ」


 アイカの判断は正しかったらしく、一応は信用されたようだ。


「だがどうやってこの牢から出るかだな。たしかこの牢は通常の牢とは違い、鍵が存在しないタイプだと兵士が言っていたが……」


「あ、そういやそうだな。確かに鍵を掛けてた様子は無かったぜ。こりゃあ時間が掛かりそうだ」


 青年エルフの言葉でアルバも思い出す。

実はこの鉄格子の扉はマジックアイテムの一種で、指紋認証による開閉を行うのである。

つまり、許可された人物が鉄格子に触れる事で扉を開閉出来るのだ。

 だが、そんなものは一部の者にとっては全く障害にはならないようで……


 バキベキボキッ!


「これで通れる」


 ルーが少々力を加えただけで、指紋認証という高度な技術が脆くも崩れ去ったのだった。


「さ、早く脱出してくだ……どうしました?」


 アイカ達には別に気にならない光景だが、それ以外の面々にとっては信じられない光景であったため、レックス達は口をあんぐりと開けっ放しになり、エルフ達は何が起こったのか理解出来ずだ。


「あのぉ?」


「ハッ!? す、すまない、まさか鉄格子をへし折る事が出来るとは……案外脆かったのだろうか……」


 微妙な勘違いをされたまま、エルフが次々と鉄格子から出てくる。

そして最後の1人が出たところで、ひとまずはニルグークの村に送る事に決定し、アイカ1人がエルフ達を連れて転移した。


「な、なぁホークさん、ちょっと聞きたいんだけど……」


 レックスがチラリとルーに視線を送りつつ尋ねてくる。

それを見て理解したホークは、ダンジョンの事を喋る訳にはいかないので、ルーの素性に関してはテキトーに誤魔化す事にした。


「まぁ、アレや。世の中には不思議な事の一つや二つはあるもんや。言うなれば世界の七不思議の一つやな」


 レックスと一緒にルーとミリーに顔を向けると、お菓子をくれたユユによりすっかり餌付けされたゴーレム姉妹が出来上がっている様子で、夢の翼のメンバーが微笑ましく見てる反面ホーク達は呆れ半分で見ていた。


「それともう一つ聞きたいんだけど、さっきアイカが使ったのって……」


「そら転移スキルよ。うん、まぁどうやって身につけたかは本人に聞いてや」


 当然転移スキルを持ってる者も珍しいので聞かれる事は分かっていたホークは、頭をポリポリと掻きながら返答をアイカに丸投げする。

 ホークとしてもなるべくボロが出ないようにする必要があるため仕方のない事だった。

 ……いや、もしかしたら説明が面倒だというのも理由の一つかもしれない。


「お待たせしました」

「うおっ!?」


 アイカの話を行ってたところに突然本人が目の前に転移してきたため、ホークに身体を預ける形で驚き仰け反る。


「ちょ、アイカはん、あんま驚かすのは禁止やで」


「おや、驚かせてしまいましたか? まぁそれはいいとして――」

(ええんかいな……)

「わたくし達は更に南下してグロスエレムへ向かおうと思うのですが、レックス達はこれからどうするのですか?」


「あ、ああ、えーと……」


 改めて尋ねられたレックスはその場で考え込んでしまう。

 彼等としては巻き込まれただけに過ぎないので、このままアレクシス王国に帰還するのが一番安全ではある。

 アイカを待ってる間に奪われた武器防具も発見出来たので、最早何も話題は残らないのだが……


「……俺達も行っていいかな?」


 なんと、レックスの答えは同行するというものだった。


『そうきましたか。どう思います皆さん?』


 アイカは念話で眷族に呼び掛ける。

勿論レックス達に内緒で議論するためだ。


『ルーは賛成。お菓子くれたし』

『ミリーも賛成。右に同じく』


 まず餌付けされた2人が両手を上げて賛成に回る。

理由が不純なので、他の眷族達はため息をついたが……。

 

(それがし)も構わんのだが、なるべく死者が出ないようにフォローする必要はあるで御座ろうな』

『せやな。ワイも反対はせぇへんが、不満な点としちゃあ移動手段が徒歩になるっちゅうところやな』


 ザードとホークも賛成のようで、ザードの言う通り力量で劣る彼等をフォローしなければならないのは当然だと考え、これに関してはアイカが全面的にフォローする事に決まる。

 対してホークの上げた不満点として、この前哨基地にやって来た手段がセスナ機を召喚して搭乗してたためで、彼等の前では使用出来ないだろうと考えたのだ。

 要するにこの男、楽が出来なくなるのが嫌なだけであった。


『私も~、問題ありません~♪』


 眷族全員が賛成したところで、それならばと彼等も連れて行く事に決定したのだった。


「では共に参りましょう。ですがお仲間の意見は聞かずとも宜しいのですか?」


「それなら大丈夫さ。グロスエレム教国の惨状をあらためて実感したし、出来る事なら何とかしたいと思ってたんだ」


 人間至上主義なのは以前から分かってた事であり、彼等もうっかり入国しようとして拘束されそうになった過去を持つ。

 その後、グロスエレムが人間以外を家畜の如く扱ってる事を知ったため、その時にも酷く憤りを感じたのだとか。


「事情は分かりました。ですが気をつけて下さい。以前のように真っ向から突っ込むような真似をすれば、長生きは出来ませんよ?」


「分かってるさ。これでも少しは強くなったんだ。以前の俺達とは違うってところを見せてやるぜ!」


 奴隷解放作戦にレックス達のパーティが加わる事になり、共にグロスエレムへと向かうのであった。


ルー「モグモグ」

ミリー「モキュモキュ」

ユユ「(小動物みたいで可愛い)」

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