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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第7章:過去に誘われしアイリ
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アイリVSムーザ①

前回のあらすじ

 神への恨み節を垂れ流しつつアイリがムーザにとっての希望だと打ち明ける。

だが当然アイリとしてはムーザの希望となるつもりはなく、差し伸べてきた手を叩き落とした。

そこへ様子を見ていた女神クリューネが現れると、ムーザはガーゴイルをプリムラ帝国へ向けて進軍させる事で、神として手出しを出来ないクリューネを動揺させる手段に出る。

しかし、クリューネは女神から破壊竜へとその身を変える事で、手出しを可能とするのであった。


「ガーコイルはあたしに任せて、アイリはムーザをお願いするわ!」


 そう言い残し、クリューゲルはガーコイルを追って飛び去っていく。

それならばと私もムーザから距離をとって向き直り、剣を構え直した。


「アンタ確か異世界から来たんだったわね? そんなに支配したいなら、自分の世界だけでやってればいいじゃない」


「向こうは既に統一されてるもの、私の存在は必要なかったのよ。だから別世界で文明の芽生えてるところを見つけて抉じ開けたの。抉じ開けたと言っても年単位で掛かったけどね。大変だったのよ? 生命体の居る惑星を探し出してそこへ跳躍するルートを見つけ、更には地上で言語解析までしなきゃならないしで」


 惑星? 跳躍? つまり別の星から来たっていうの?

それに言語解析って……


「ちょっと難しかった? 要するにね、別の星からこの星に移動出来る穴を接続して、軍隊を率いてやってきたの。でも言葉が通じなかったから、適当にサンプルを捕らえて中身をいろいろと調べたって訳。そうしたら捕らえた人間の中に【相互言語】っていう便利なスキルを持つ者がいたから、有り難く使わせてもらってるのよ」


 相互言語は私も持ってる。

これがないと、イグリーシアの人達と会話が出来ないのよね。


「でも失敗したんでしょ? この世界を征服するのを。1度失敗したんだから、おとなしく帰んなさいよ」


「それは出来ない相談ね。言ったでしょ? 世界を統一する事が私の使命だって。どうしても嫌なら、私を倒すしかないわよ?」


「フン、上等よ」


 こっちは最初からそのつもりだし、封印なんて生温い事は言わない。

2度と復活出来ないように、ミクロ単位で八つ裂きにしてやろうじゃない!


「そう……。残念だけど、交渉は決裂ね」


 そのまま私に向かって来るかと身構えてたけどそうはせず、ダンジョンコアのあった暖炉に手を向けて何やら詠唱を行う。

 すると眩い光が漏れ出すのと同時に空間が裂けて広がり続ける。

やがて人1人が通れるサイズになったところで光が収まり、動きを止めた。


「戦いに相応しい舞台を用意したわ。付いてらっしゃい」


 わざとらしくローブを翻したムーザは、そのまま裂け目の中へと姿を消した。


「罠かもしれないけど……行くしかないか」


 せめてモフモフやアンジェラを召喚出来ればと思ってスマホを弄ってみたけど、予想通り無理だった。

こうなったら自力で切り抜けるしかない。


「そろそろ時が動き出すから、早くしたほうがいいわよ」


 裂け目からヒョコっと顔を出したムーザが告げてくる。

というか……


「それを先に言いなさいよぉ!」


 急いでムーザを追い掛けて裂け目へと入った。






「ここは……」


 裂け目の中は別の世界と繋がってるようで、入った直後に青空が広がってるのが見えた。


「どう? 懐かしい風景でしょ? スマホから得た情報を元にアイリちゃんの世界を構築してみたんだけど、中々発展した良い世界じゃない。これだけ見ても、500年後のアイリちゃんから情報を引き出した甲斐があったというものよ」


 やや得意気に話すムーザの背景には富士山らしきものが見え、足元には大小様々なビルが建ち並んでいる。

ここは紛れもなく私の生まれ育った場所、近代都市の日本よ!


「何を企んでるのか知らないけど、車や通行人が一切見えないという事は、アンタが作った仮想空間って事でいいのね?」


 私の立っている場所は何処かのビルの屋上みたいだけど、その周囲には全く人の気配が感じられない。


「その通りよ。太陽は真上で止まったままで明るいし、生命体は一切存在しないわ。だから安心して暴れまわってちょうだい」


 コイツ、私を暴れ馬みたいに……。

それなら望み通りにしてやろうじゃないの!


「フレイムキャノン!」


 まずは挨拶代わりの火魔法をブチかます。

宙に浮いてるムーザが、どの程度の動きを見せるのかを確認をする意味もある。




 ボン!


「あれ?」


 あっさり命中した炎砲により、ムーザが爆散した。

随分呆気ない幕切れね? 勝算があって誘い込んだと思ったのに。

まぁいいか、早いとこ出口を――。


「あ"~~~ビックリした。あんなの食らったら一溜まりもないわ!」


 ゲ……生きてるじゃないの……。

燃えた筈の黒いローブには傷一つ無く、まったくダメージが通ってる感じはしない。


「それじゃあ今度はこっちの番ね」


 宙に浮いたまま両手をこっちに向けて詠唱してる。

けれどそれを待ってやるほどお人好しじゃないのよ私は!


「スプラッシュファイヤーボール!」


 複数のファイヤーボールを放ち数発をムーザに向け、残りで周囲を包囲するように展開してやる。


「ちょ、アイスバリケード!」


 逃げられないと悟ったのか、即席で張ったシールドで防いだようだ。


「ちょっとちょっと、さすがに今のは卑怯じゃない!?」


「黙れ! 若作りのババァと悠長に付き合ってたら、それだけで晩年を迎えるわ! 分かったらとっととくたばりなさい!」


「んな!」


 私の挑発が意外にも効果を発揮したらしく、身体を震わせ徐々に顔を赤くしていく。


「誰がババァですってぇ!? この身体は未来のアンタなのよ! つまり成人を迎えた天前愛漓(あまさきあいり)なの。これがババァに見えるっていうの!?」


 コイツ、他人の身体を勝手に構築して! というか中々の美人よね、よく見れば。

コイツの性格が大きくマイナス査定だけど、それを抜きにすればかなり期待できそうね、うんうん。

 って、それは兎も角……


「アンタの中身の話をしてんのよ! 500年以上も生きてんなら、干からびたババァ確定でしょうが!」


「私は! ……私は元から物理的存在ではないわ。製作した者の意思を受け継いだ存在でしかないもの、何年だろうが死ぬ事はないのよ」


 ……今、決定的な情報を得た気がする。

要は異世界の侵略者が追い払われる際に、この世界に意思だけを置き土産として残したって事よね? でもどっちにしろ……






「ババァには変わりないじゃない」


「ムグググ……言わせておけば……いい加減にしなさいよクソガキ! どこからどう見てもピチピチギャルでしょう!? アンタの目は節穴なの!?」


 ま~たクソガキって言われた! これでもう3人目よ。

いや、それよりもピチピチギャルって何? 後でググってみよう。


「これ以上話しても無駄だし、500年の歴史に幕を閉じさせてやるわ! 食らいなさい!」


「ぐあぁぁぁ!」


 アイスバリケードが消滅したタイミングを見計らって、ムーザを取り囲んでたファイヤーボールを押し付ける。

爆炎が上がり煙も立ち込める中ヒュルヒュルと落下してくムーザは、途中でビルの壁を蹴る事で再び上昇してきた。


「しぶといわね……だったらコレよ! フレイムウォール!」


 戻ってくるムーザの前に炎の壁を展開し、行く手を阻む。

その間に再びスプラッシュファイアボールをバラまいて置くのも忘れない。


「もう一度食らいなさい!」


 フレイムウォールの効果が消えたのと同時に大量のファイヤーボールがムーザへと殺到し、再度落下を開始する。

 当然このまま一気にトドメを刺すつもりで追撃に移行。

重力を利用した急降下でムーザに追いつき、勢いのままに真下へ蹴り落とした。


 ズゴォォォォォォン!


 そこにはちょうどガソリンスタンドがあり、ムーザの直撃によりに爆発炎上が巻き起こる。


「ここまでやれば生きてはいないと思うんだけど……」


 普通なら生きてる可能性はほぼ無いと言える状況下。

念のため確認しようと私も近くへ着地し、視界が晴れるのを待つ。


「……な!」


 だけど奴は揺れ動く爆煙の中からゆっくりと姿を現した。

しかも表情は笑ってる!? まさに死ぬかどうかの瀬戸際だった筈なのに!


「いいわいいわ、その強さ。しかも怒涛のコンボを容赦なく決めてくる冷酷さ。そうよ、手心を一切加えない非道さで捩じ伏せるというのは上に立つ者として必要な心得。アイリちゃん、益々貴女の事が気に入っちゃった」


「……フン。アンタに気に入られても嬉しくも何ともないわ。それなら千手(せんじゅ)に気に入られる方がよっぽどマシよ」


「その千手とやらが何なのか不明だけど……、まぁ後で調べましょ。今は貴女を調べなくちゃね、隅々まで。フフフ……」


 何かイッちゃってるヤバい女を相手してるみたいでスッゴい嫌なんだけど……。

 あ~いやいや、今はそれよりも戦況よ。

コイツには全くダメージが通ってる気がしないよのね。

それに衣服も新調仕立てのようにしか見えないのもおかしい。

 って事で、やっぱりこういう時に役立つのは鑑定スキルよね。


名前:ムーザよ、宜しくね♪ 

レベル:???       

性別:貴女と同じオ・ン・ナ♪

種族:???  職種:???

趣味:アイリちゃんで遊ぶ事♪

HP:???  MP:???

 力:???  体力:???

知力:???  精神:???

敏速:???   運:???

【補足】ヒ・ミ・ツ♪    


 な、何コレ!? コレじゃ殆ど分かんないじゃない! しかも若干ふざけてる部分が有るのは何故!? 神々と対立してるくらいだから加護を授かってるとかは有り得ないだろうけど、それにしても……。


「あ、もしかして鑑定かけてる? アッハハハ、そりゃ無意味よ! だってここは私の造った空間なんだもの、私の自由に弄れるのは当たり前じゃない! フフフ」


「クッ……」


 せめてヒントだけでもって思ったけれど、無駄に終わったみたいね。


「それじゃあ今度こそ私の番ね」


 これ以上ムーザのペースに合わせるのは危険な気がする。

せめて妨害しつつ攻勢に――


「さすがに2度目は無いわよ、スプラッシュファイヤーボール」


 チッ! 妨害しようとしたら弾幕を張られた! その間にムーザの詠唱が完了してしまう。


「さぁ、ちょっと熱いわよ、フェザープロミネンス!」


 ムーザの両手から放たれた熱風が、私を包み込むように迫る。


「ア、アイスバリケード!」


 身を焦がされるような感覚の中を急いでバリアを張ったものの、思った以上に高熱らしく氷の壁はすぐに溶けてしまった。

 そして盾を失った私を熱風が襲い、身体のあちこちに火傷を負いながら公園の噴水付近まで飛ばされたのを利用して、そのまま噴水に飛び込む。


「アッグググ! アッツゥ……」


 火傷に滲みるのを我慢して冷却を優先する。

つーか痛すぎる! 絶対水ぶくれになるだろうし、後でエリクサー使わないと。


「あらあら、アイリちゃんは防御が苦手のようね。即席のバリアは効果が薄いんだから気を付けなさい」


「クッ、余計なお世話よ! だいたいアンタがやったくせに気を付けろとか、頭おかしいんじゃないの!?」


 肩を竦めるムーザがイラッきたから思わず噛み付いてしまった。

って、ダメダメ、落ち着け私、冷静に冷静に。

 恐らくムーザが詠唱を行ったために魔法の威力が極端に高まったのよ。

そうじゃなければ、属性で有利な筈のアイスバリケードが破られる筈ないもの。


「ほらほら、渋い顔して考え込んでる場合じゃないわよ。今から追撃いくわね?」


 再びムーザが詠唱を開始しようとしたので、透かさず妨害するため手を向けた。


「アイリちゃん、少しは学習すべきだと思うわよ? スプラッシュファイヤーボール」


「フン、バカね。何度も同じ過ちは繰り返さないわよ! ブリザード!」


「何!?」


 ファイヤーボールの弾幕を吹雪で消し飛ばし、自身もムーザへと接近する。


「さっきのお返しよ! デヤァ!」


「クッ!」


 やっぱり私には肉弾戦が合ってるらしく、剣撃によりどんどんムーザを追い込んでいく。


「フン、そこよ!」


 ザシュ!


「ギャッ!」


 回避し続けてたムーザを路地裏の行き止まりまで追い込むと、漸く一撃当てる事が出来た。


「グゥ……アイスバリケ「させないわよ!」


 ズシャ!


「ガハッ!」


 慌ててバリアを張ろうとしたムーザをなぎ払うと、それを皮切りに次々と連撃を繰り出していき、それらが当たる度に腕や足が胴体から切り離されていく。


「これでトドメよ!」


 ズバンッ!


「ギャアァァァァァァ……」


 胸元からバッサリと袈裟斬りにして、ムーザは血溜まりに沈んだ。


「ハァ……ハァ……」


 今度こそ倒したのね。

ムーザにはまだまだ余裕が感じられたけど、本領を発揮される前に倒せてよかったのかもしれない。






「フフフ、なぁ~んてね♪ 今のは結構痛かったわよ?」


「ムーザ!?」


 コイツ、どうやって!?


「言ったじゃない、この空間は私の意のままだって」


「クッ……」


 そういえばそうだったわ。

でもそれじゃあどうやって倒せば……。


「あらあら、詠唱してたのに妨害してこないの?」


 しまった! 今はコイツから目を放すべきじゃなかったのに!


「フフフ、時間をくれてありがとうね? ヒートウォークライ!」


 ニヤケながら発動させたのは、聴いた事が無い魔法……。

どんな効果があるのか分からないけど、ムーザの全身を赤いオーラのようなものが包み込んでいく。


「そんな難しい顔して凝視しなくても教えてあげるわよ。この魔法は自身のステータスを飛躍的に上昇させる魔法よ。……さぁ第2ラウンドを開始しましょう? フフフ」


アイリ「で、ピチピチギャルって何?」

ムーザ「……オホホホ、な、何の事かしら」

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