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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第7章:過去に誘われしアイリ
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終決その後

前回のあらすじ

 昼間の戦闘でアイリに出番を取られた女性陣3人は、晩御飯で巻き返すべく行動を起こした。

しかし結果は惨敗。

見事アイリの噛ませ犬となってしまった。

そんな彼女達を立ち直らせるようにクリューネから言われてしまうのであった。

「あれ? 昨日まで雰囲気が良くなかった筈だけど、みんな急に仲良くなったね。いったい何があったんだい?」


 頭にクエスチョンマークを浮かべて首を捻るのは、ご存知勇者のアレクシス。

特に何も言わなかった勇者だけど、雰囲気が良くない事は気付いてたらしい。


「ごめんねアレク、それは言えないわ」

「そうですね。わたくし達()()の秘密です」

「せやな、アイリ?」

「もっちろん!」


「「「「ねーっ♪」」」」


 って感じで、私達4人はすっかり打ち解けてわだかまりは無くなったのよ。

というのも昨日の夜に落ち込んだ3人と話し合ったら、意外にも本音で語り出したもんだから逆にこっちが驚いたくらいにして。


 その後も周囲を警戒しながらも首を捻り続けてるアレクシスだけど、本来なら彼が注意しなきゃならない事なのよね。

今回は私が解決したけども、今後はアレクシスに頑張ってもらわないとダメだと思う。


「しっかし傑作やったなぁ、昨日のアイリの話は!」


 傑作? ……ああ、()()の事か。


「そうそう、特に私はヤゴレーという間抜けな奴の話が気に入ったわ」


「わたくしはルーちゃんとミリーちゃんの姉妹喧嘩のお話ですね」


 とまぁ、何となく想像出来ると思うけど、所々虚像を交えて私の事を話したのよ。

勿論ダンジョンマスターや未来から飛ばされて来た事は伏せた内容で。

 どんな感じになったのかというと……



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「……何よ、笑いたければ笑えばいいじゃない。どうせ私は戦闘でも料理でも小娘に遅れをとる年増の露出狂よ……」


 確かに賢者にしては薄着で目のやり場に少々困……って、そうじゃないそうじゃない。


「ねぇリーガ、それと他の2人も聞いて。大事な話だから」


「大事なお話……ですか? それはどの程度大事なのでしょう? わたくしとアレクの仲が進展するよりも重要な事なのでしょうか? それとも負け犬となったわたくしの希望となる話でしょうか?」


 そこまでは重要ではないんだけど、半眼でぼんやりと私を眺めてるエルフには聞いてほしい内容よ。


「少なくとも希望を見出だせる話よ。――そしてミリオネにも関係あるわ。だから聞いてちょうだい」


「なら聞くだけ聞こか……。つまらん話やったらふて寝するで?」


「いいわよ。ふて寝するかどうかは聞いてから判断して」


 一応は聞く姿勢をとってくれたので、まずは

私の事から話し出した。


「私はこの世界の人間じゃないの。本当は別世界に住んでて、そこからここへ飛ばされてちゃったのよ。所謂(いわゆる)転移者という奴ね」


「「「転移者!?」」」


 どうやら興味を持ったらしい。


「そういえば聞いた事あるわ。プリムラ帝国には別の世界からやって来た異世界人が居るって話を。陛下は極秘に接触して取引を行ってるとも言われてるし、やっぱり存在したのね」


 どうやらこの時代にも転移者は居るみたいで、リーガが身を寄せているプリムラ帝国の皇帝は既に接触してる可能性が高いのだとか。

 他の転移者が何を考えてるのか知らないけど、異世界で成り上がるなら権力者との接触は必須になるから他人の上に立ちたいと思ってるのかもね。


「それで私の目的なんだけど――「ちょっとタンマや! まだ心の準備が出来てへん!」


 いや、心の準備が必要な程じゃ……。


「頼む! その先は言わんでほしいねん」


 ……なんで?


「あんたの言わんとしてる事は分かる。せやから今はまだ夢を見させてほしいねん。あんたがアレクシスと結ばれた時、その時はキッパリと諦めるさかい……」


 なんか盛大に勘違いをされてるようで。

しかも黄昏た雰囲気で夜空を見上げてるけど、残念ながら今夜は曇りです。

星1つ見えやしません。


「言っとくけど、アレクシスを狙ってる訳じゃないからね?」


「「「え!?」」」


 え!? って、何で驚くの!?


「「「なんで!?」」」


 いや、何でって……こっちが聞きたいんですが。


「さっきも言ったけど、私はアレクシスに嫁ぐつもりはないわ。私の目的は魔女の森に潜む悪しき魔女を討伐する事なの。だからそれさえ達成すれば私はパーティから抜けるから」


「そ、そうなのですか? てっきりわたくしはアレクを横から略奪しに来て、わたくしを悲劇のヒロインにするつもりなのだと……」


 どうしてそういう発想になるの!?

しかもちゃっかり自分を悲劇のヒロインに仕立て上げてるところは何というか……エルフってこんなのばっかりなんだろうか。


「ウチも同じや。アレクが何処か遠くに連れてかれる思うて、今夜あたり夜這いかけて既成事実作ろう思ったんや」


 それは私とは関係ないわよね? 思いっきり本能のままに走ろうとしただけではないだろうか?


「私もそうよ。アレクが寝取られそうだと思って、今夜あたりこのマジックアイテムを使って呪いを掛けようと思ったもの」


 マジックアイテムと言いつつ何気に手にしてるのは(わら)人形じゃない! 絶対転移者が広めたやつでしょソレ! ……そもそも寝取るって! 寝取るって……いや、あんまり考えないようにしよう。


「兎に角、アレクシスを奪ったりしないから安心してちょうだい。その代わり、魔女を討伐するまでは争うのは止めて仲良くしましょ? この先は今よりも危険になるんだし、私1人じゃ限界があるから」


 暫しの沈黙の後、最初に口を開いたのはリーガだった。

立ち上がった彼女は、賢者にしてはやけに短いスカートを払うと私に顔を向け、これまでに無い笑顔を見せる。


「まさか年下の子に励まされるなんてね。アイリの言う通り、これからは仲良くやってきましょう」


 するとミリオネとエレムも彼女に続いて立ち上がり、私に微笑んだ。


「なんやこないな事で悩んでたらバカみたいやん。もう争いは止めや!」


「そうですね。アレクの事は討伐が完了してからにして、今は気を引き締めて挑む事にしましょう」


 最後に私も立ち上がっで3人の手を繋ぐと、力強く頷いた。


「さぁて、腹も減ったし晩酌といこか?」

「賛成です。あ、でもわたくしの串焼きは半生のようでして……」

「私のは炭になってるけど食べる?」

「「遠慮するわ(いたします)」」


 そういえば晩御飯まだだったわ。

ヘヴィボアの肉はまだ有ったかな?



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 その後、御飯食べながら談笑したりして、すっかり打ち解けたと言う訳。

中でもミリオネが傑作だと言ってお腹抱えて笑い転げたのが、ゴーレム姉妹に人化の指輪を取られたホークの話よ。

当然ゴーレムの部分は人間にして、指輪はちょっとオシャレなマジックアイテムに置き換えた話にしたけども。


「まぁ何というか、アイリの知り合いには面白い人達が多いというのが分かったわ。宮廷にもいろんな人達が居るけど、【水虫】って名前の人は皆無だし。その人、本当に人間なの?」


 一応人間よ。

ダンジョンマスターやってるけどね。

 後ごめんリーガ。

水虫は本人が好きで名乗ってるんじゃなくて私が改名したやつだわ。


「わたくしはアイリさんの双子の妹さんが気になりますね。今頃寂しがってるのでは?」


「……かもしれないわね」


 クリューネの話だと時間が並行するだかで、こっちに居ても元の世界の時間は進んでるらしい。

詳しくは難しそうだから聞かなかったけど、私がこうしてる今もアイカ達も同じように時間が経過してるのだとか。

今頃血相変えて慌ててるに違いないわ。

 それからどうでもいい事だけど、エレムからさん付けで呼ばれるとムズムズしてくる。

出来れば呼び捨てでお願いしたい。

まぁいいけど……。


「それにしても……」


 やっぱりアイカ達も心配してるわよねぇ。

念話が繋がれば何も問題ないんだけど、さすがに時を越えて繋げるのは不可能だった。

 それならばと思ってダメ元でスマホからの通話を試そうとしたんだけれど、スマホが無くなってる事に昨日の夜気付いたのよ。

アレは落としても何故か手元に戻ってくる不思議なスマホだから無くなるなんて事は無い筈なのに……。


 そして思わず天を仰いだ状態で見上げると、何故か強烈な違和感が私を襲った。


「あれ? んん?」


 原因は分かんないけど何かを見つけたような……ああ!!


「アイリ、さっきからキョロキョロしてどうしたんだ?」


 アレクシスがチラリと視線を送ってきた。

他のメンバーも気になってたようで、私に顔を向けてくる。


「その事なんだけど、皆よく聞いてね? 今私達は魔女の森の奥へとやって来てるでしょ? 木々が鬱蒼(うっそう)と生い茂ってるから光なんて殆ど届かない筈なのに、なんでここは明るいの?」


「「「「え?」」」」


 違和感の原因はこれよ。

私達の周辺は何故か不自然な程に明るいのよ。

まるでスポットライトに照らされてるかのように。


「そう言われてみれば……。リーガ、何か感じるかい?」

「いいえ、不自然な魔力反応はないわ」


「ミリオネはどうだ?」

「同じや。特に気配に掛かった奴は居らんで」


 確かに魔物の気配はない。

だからこそおかしい。

これはいったい……。


 カチッ!


「「「「「「!?」」」」」」


 な、何の音なの今のは!?


「す、すみません皆さん。わたくし、何かを踏んでしまったようで……」


 え? 踏んだ? それってどういう……


 ジャラララララララッ!


 言い終わる前に豪快な鎖の擦れる音と共に答えが降ってきた!


「な!? 吊り天井だ! 避けろぉぉぉ!」


 なんだってこんなところにトラップがあるのよ! って考えてる場合じゃない!




 ズシーーーーーーン!!


 四方に散る形でトラップを避ける事が出来た。


「ふぅ……、皆無事か!?」


「ちょっと焦ってもうたけど大丈夫や、全員上手く避けたみたいやで」


 アレクシスが全員の安否を確認し終え、改めてトラップを調べる。


「これは……遺跡とかにあるトラップと同じもののように見えるが……」


「ええ、私も同意するわ。でもどうしてこんな森の中に……」


 アレクシスとリーガも見た事があるように、私にも見覚えがあるわ。

それも私にとってはとても身近なもので、関わりの深いものだから。

 そしてさっきの違和感もこれに関連してくる。

光が届かない筈のところが不自然に明るくて、天井が無い筈のところに吊り天井がある不思議な場所なんて一つしかない。


「ここは既にダンジョンだったのよ」


リーガ「アイリ、朝御飯お願い」

ミリオネ「アイリ、昼飯頼むわ」

エレム「アイリさん、晩御飯おねがいしますね」

アイリ「おかしい、苦労が増えた気がする……」

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