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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第1章:外の世界
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ロドリゲスの蛮行

 俺は貴族ロドリゲスだ。

平民の上に立つ貴族だ。

このラムシートの街の領主は俺の父ラドリゲスが治めている。

 つまり、この街が領主である父のものなら、その父の嫡男である俺のものも同然だ。

俺は次期当主なのだから、今のうちに威厳(いげん)を示すべく行動していた。



 まず手始めに、商人共には食料品から工芸品に至るまで、常に必要な物は俺の方を優先させた。

たとえ他の者が欲していたとしても、それこそ飢餓で苦しんでる村があったとしても、俺が必要なら俺を優先だ。


 次に、街に居る女で容姿の優れてる者が居れば、皆俺の手付きにする。

もし人妻だったとしても関係ない。

 逆らえば不敬罪として屋敷の地下に監禁する。


 最後に冒険者共だ。

ランクの高い者は俺の専属護衛として迎え、もしどんなイザコザがあろうと黙認させるため、ギルドのマスターには金で黙らせる。

 まぁ残念なことに、高ランクの冒険者はこの街には現れなかったので、金さえやれば何でもやりそうな連中を専属護衛として迎えたが。



 勿論、これらのことを行うにもただ権力をちらつかせるだけではダメだ。

国に知られれば罰せられるからな。

 ではどうやって行ったのかというと、罠に掛けて弱みを握ったのだ。


 例えば商人に対しては、注文した商品を期日までに間に合わなくする工作を行い、今後俺に従えば黙認してやると言って逆らえなくした。

 冒険者にしたことも似たようなものだ。

偽の採取依頼を指名して間違った物を納品させた後に、事実を突き付けただけだ。


 これで大抵のことは問題にはならない。

立場上父はこの街を不在にすることも多いため、(とが)める者も居ない。

全ては俺の思うがままだ。


「そういえば、プリムという女冒険者をまだ抱いてなかったな」


 せっかく手に入れたのだ、鮮度が落ちる前に頂いておこうか。


 それにしても……、




「俺はとんでもない強者と聞いたんだがなぁ?」


 ある日、専属護衛の4人が、手も足も出せずにやられたと言ってきた。

最初に聞いた時は、専属護衛として迎えようかと思ったのだが、その本人が言うには昨日冒険者登録をしたばかりの初心者というではないか。


「いえ、間違いなく強ぇですよ!」


 しかもまだ未成年の少女であって、この少女1人に大人の男4人が負けたなどと、何を馬鹿なことを言ってるのだ。


「1対1じゃないんす! 俺ら4人がかりでも軽くあしらわれたんすよ!」


 まぁ腕には自信が有るのかもしれんが、戦いは腕だけではない。

頭が良くなければ生き残れないのだ。

 そういう意味ではまだまだ未熟だったようだがな。


「……ふん、まあいい」


 最初コイツらに泣きつかれた時は何事かと思ったが、会ってみれば何てことはないただの小娘。

この小娘が本当に強者なら、ここまで無警戒なんてことはないだろう。

良くて多少腕に覚えのある程度だろうな。


「後はコイツの仲間たちだが、その中に上玉が居るんだな?」


「へい。そりゃもう、少なくともこの街の中じゃあベスト3以内は間違いないですぜ!」


「その仲間の中では最年長だと思いやす。名前は確か、アンジェラって名前です。多分見たらすぐわかりやすぜ!」


 ククク、それは楽しめそうだ。

さっそく明日中に来るようにギルドに使いをよこすとしよう。

その上玉以外の小娘共も、場合によっては専属メイドとして迎えればいいしな。

 アイリという仲間を捕らえてる以上逆らえまい。


「ところで、あの捕らえた糞ガキの小娘ですが……」


 護衛の1人が催促してくる。

まぁ小娘1人ならくれてやってもいいか。


「……ああ。好きにするといい。ただし、絶対に殺すなよ?」


 パーティメンバーの1人のアンジェラという上玉を手に入れる前に死なれては困るからな。


「へい、わかってまさぁ! おい、お前ら行くぜ!」

「「「おう!」」」


 護衛達が退出し、静寂(せいじゃく)が訪れる。


「……さて、あのアイリとかいう小娘は、力を過信し足を(すく)われたわけだ。目を覚ましたら、さぞ絶望することだろう。ククク……」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「……とでも思ってるんでしょうね、今頃」


 残念ながら、睡眠薬はミルドの加護で無効化したから無駄になってるし、潜入するのにちょうどよかったから、罠に掛かったフリをしたのでしたー♪


『はい、以上種明かしでしたっと♪』


『……お姉様のテンションが異常です! これはもしや、薬物中毒というものなのでは!?』


『断じて違う!!』


 とにもう、ちょっとふざけただけじゃないの……。


『て事で、ロドリゲスの使者が何か言って来るかもしれないから』


『うむ、こちらの対応は任せるがいい』


 アイカたちには念話で伝えたから、今はこっちに向かってきてるチンピラ共をなんとかしないとね。


「おい、早く開けろよ!」

「わぁーてるって」

「早くあの糞ガキをいたぶってやるぜ!」

「おうよ、全裸に()()いて土下座させてやらぁ!」


 ……今、聞き捨てならないことを言ったわね?

私を全裸にするとか言ったヘンタイ野郎は、絶対に後悔させてやらないと!


「さーて昨日の礼を……!? おい、あのガキが居ねぇぞ!?」

「馬鹿な!? ちゃんと縛ったはずだぞ!?」

「くそっ! まだ近くにいるはずだ、絶対に捜し出s「その必要はないわ」


 私はチンピラ共の後ろから現れるのと同時に、近くにいたチンピラ1人に回し蹴りを見舞ってやる。

受けたチンピラは、奥の壁まで吹き飛ぶ。


「な!? いつの間に!」


 仲間が吹き飛び動揺してる間に、もう1人にボディブローをかましてやる。


「く、くそがぁ!」


 ヤケクソ気味に殴りかかってきた奴を、勢いを利用して背負い投げ。


「ひ、ひぃぃ……」


 そして尻餅をついて後ずさる最後の1人を……って、よく見たらコイツ、私を全裸にするとか言ってた奴じゃない!

 ……この野郎には()()()()()()()()()威力を調整した蹴りを股間にプレゼントしてやる。


「ぎゅぅおあがぁぅえあぐぅぉぁあーー!!」


 かつてない激痛に泡を吹いて気絶する最後の1人…………女の敵は成敗した。


「ふぅ、試しに使ってみた魔法が役に立ったわね」


 実は、チンピラ共が来た時、火属性魔法のシェマーを使ってみたの。

シェマーとは、自分自身を相手から認識阻害させる魔法よ。

ただし、その場から動いたら効果は失われるという少々微妙な魔法だったけど、今回は上手くいった。

 チンピラ共は私の存在に気付かずに、牢の中に入っていったので、後ろから挨拶してあげたってわけよ。


「さ、他にも私兵が来る可能性があるし、コイツらを監禁しとこう」


 チンピラの1人が持ってた鍵束を使い、隣の牢屋にチンピラ共を全員放り込んでやった。

これで暫くは出てこられないでしょ。


 こっちは片付いたので、ビルと合流して奥へと進んだ。

 私とビルは独房(どくぼう)に入れられてたけど、他にも捕まってる人がいるはずよ。






 で、改めて分かったことだけど、あのロドリゲスという男は本当にゲスね。

突き当たりの手前の牢屋で、8人もの女の人が監禁されてるのを発見したわ。

……しかも裸でね。


「プリム、プリムだろ!? 僕だ、ビルだ!」


「……え? ビル!?」


 どうやらここに居る女性たちの中にビルの仲間が居たようね。


 ……って、ビル!!


 ポスンッ!


「あだ!?」


「他にも女の人が()()居るんだから、あっち向いてて!」


「す、すまん……」


 ひとまず女性たちに適当に召喚した服を渡してあげた。

その時、数人の女性から胸元がキツいと言われて若干イラッときたけど、ここは我慢してもらおう。

私も我慢するから。

 ちなみに、女の人に混じって男の人(勿論裸で)も1人居たみたいだけど、何故そこに居たのかは、あまり知りたくない気がする。

勿論その人にも服を渡して、その場の全員に口止めをしとく。


「なんとなく分かったと思うけど、私はダンジョンマスターだから、このことは秘密にしといてね」


 このお願いにその場の全員が頷いてくれた。

まぁ助けたんだからそうよね?


「で、さっそくだけど、ロドリゲスの弱味になりそうな物とか知らない?」


 ためしに聞いてみたら、あっさりと有力な情報を得ることができた。

女性たちがロドリゲスの寝室に連れ込まれた際に、契約書を晒したのだとか。

 契約書の内容は様々だけど、要は契約違反でペナルティを発生させたくなければ、言うことを聞けと言って、その時の女性たちの反応を見て楽しんでたってことみたいね。


 つまり、その契約書を回収してしまえば、女性たち……と、男性1人は自由になれる。


「ロドリゲスの寝室ね。じゃあ場所を覚えてる人は案内してもらっていい?」


 ロドリゲスの弱味になるかは分かんないけど、ロドリゲスをざまぁ!な目に遭わせるため、女性達の案内のもとロドリゲスの寝室にぞろぞろと向かった。

あそこに残すのは可哀想だからね。

 向かう途中で数人の私兵に出くわしたけど、全員当て身で気絶させてたら無事寝室に到着した。


「さてと、どこに隠してるのかな……」


 悪趣味な黄金色に輝く部屋の隅々まで探す。

引き出しとか本棚とか、目につく所には何もなかった。

仕方ないので、棚の裏や額縁の裏とかも探してみる。

 あ、額縁の裏から羊皮紙が出てきたわ! どうやらビンゴみたいね。


「……あ! それはあたしの時の契約書!」


 契約書にはジェシカと書いてあるわね。

どうやら私が手にしたのは、このジェシカさんの物だった。

聞けばジェシカさんはある商人の娘さんで、商品が納入期限に間に合わなかったため、ペナルティを避けるために連れてこられたとか。

 要は既に契約を違反してしまってるのを、ロドリゲスが恩情で見逃してるってことらしい。


 そこでペナルティに関してなんだけど、私が知ってる日本のと違って、イグリーシアの場合は契約違反を行うと即座に魔法の発動準備状態となり、契約相手に伝わる。

そして契約相手がゴーサインを出せば、即座に魔法が発動するんだって。


 さっきも言った通り、ロドリゲスはペナルティが発生しないようにするから言うことを聞けと迫ったらしい。

どこまでもゲスね、ロドリゲスは。

 でもゴーサインを出すには契約書が必要だから、ここから持ち出せばペナルティは発動しない。


 それにしても、見事に額縁の裏側に隠してあったけど、隠す場所って地球もイグリーシアも同じ感覚なのね……ってそんなことはどうでもいいわね今は。


 隅々まで探した結果、契約書は全部で12枚有り、内8枚はここに居る人たちの契約書だ。

他の4枚は何の契約書か分かんないけども。


「おい、それって冒険者ギルドのギルマスの名前じゃないか?」


 ビルが4枚の内の1枚を指でさした。

その契約書にはバルクレオと書かれている。


「あのハゲマス(ギルドマスター)ってバルクレオって名前なの?」


「ハゲマス? えーとよく分からんが確かギルマスの名前だったぞ」


「それなら私も覚えてるよ。冒険者ギルドのギルマスはバルクレオ・ブリンクスって名前よ」


 ビルとプリムさんの2人が言うのなら間違いなさそうね。


 ただ残りの3枚の内容が分かんないのよね。

商業関係の内容みたいだけど、素人の私が見てもよくわからない。

でも隠してあったということは、見付かるとマズイってこと。

 誰か商業関係でわかる人に……、






 いるじゃない! つい最近知り合ったばかりの商人さんが。


「アルバムーン商会のドルトンさんに見てもらうのが早いわね」


「あ、それ、あたしの父です」


 ……まさかジェシカさんがドルトンさんの娘さんだったなんて、世の中って狭いわね……。

 でもそれなら話が早いわ、ジェシカさんを連れてアルバムーン商会にいけば上手くいきそう。


 ただし、ここから全員で出るとなれば強行突破が必要になるから、私1人では厳しい。

私がジェシカさんと一緒にこっそり脱け出すなら可能なんだけど……。


「なら俺とプリムに任せてくれ。ここで籠城すればいいんだろ?」


「そうなんだけど、大丈夫なの?」


「ああ、任せとけ…………ちなみに武器が有ると助かるんだが……」


 ズルッ!

 それは大丈夫とは言わないわ……。


「ちょっとビル、幾らなんでも図々しいよ!」


 ありがとうプリムさん。

でも現状他に手段がないわ。


「じゃあすぐに戻ってくるから、それまでここに隠ってて」


「分かった!」


 ビルとプリムさんにその場で召喚した武器を渡すと、ジェシカさんを連れて邸を脱け出した。






 領主の邸を出てアルバムーン商会へ急いでる最中にスマホを見ると、時刻は18:10になっていた。


「時間的には、今日中に終わりそうね……アレ?」


 何気なくスマホに表示されてる召喚履歴を見てると、そこには六〇亭のお菓子の詰め合わせを注文(DPで召喚)した履歴がしっかりと残っていた。

 時間的に考えて、私がロドリゲスの屋敷に着く少し前だ。

スマホ無しでどうやって召喚したのか、ちょっと追及しないといけない。





『アンジェラにセレン、おまけにアイカ聴こえる?』


『聴こえておるぞ(しゅ)よ』

『聴こえてます~♪』

『何故わたくしは、おまけなのですか?』


 とりあえずアイカは放っておいて……、


『ロドリゲスの使者は?』


『そのことなのじゃが、たった今ロドリゲス本人が冒険者ギルドに訪れてるようじゃぞ?』


 邸に居ないと思ったらそっちに居たのね。

 でもそれなら好都合よ。

ハゲマス(ギルドマスター)とロドリゲスを纏めて拘束しちゃおう。


『ロドリゲスの邸で、ロドリゲスとハゲマス(ギルドマスター)が繋がってる証拠を見つけたのよ。だからアンジェラとセレンはハゲマス(ギルドマスター)とロドリゲスの身柄を押さえといて』


『了解したぞ』

『了解です~♪』


『アイカはそのまま宿で待機してて』


『はいお姉様』


『宿に帰ったら、ちょーーっと聞きたいことがあるから‥‥お菓子の詰め合わせの件で』


『……えーと……コホン。コノネンワハ、ネンワノトドカナイバショニイルカ、デンゲンガハイッテイナイタm『このおバカーーーッ!!』

『すみませんお姉様! なにとぞお慈悲を!』


 全くもう、油断も隙もありゃしないわ……。


『どうやって召喚したのか、後で教えてもらうからね』


『……はい』


 もぅ、この一件が片付いたら説教よ!


アイカ「まさかお姉様にバレてしまうとは……」

アンジェラ「だから言ったであろう、黒和牛の詰め合わせにせよと」

アイリ「いや、どっちでも同じだから」

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