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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第6章:富と欲望のミリオネック
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金香る首都

前回のあらすじ

 怪盗アオダヌキを鑑定で見つけ出したアイリだったが、どうやって人狼を見分けようかと頭を悩ます。するとそこへアイカのドローンが到着し、ドローンの鑑定によりあっさりと人狼を見つけると、難なく撃破に成功するのであった。


 予想以上に回り道になったけど、あの集落から1週間かけてミリオネックの首都ダラーに到着した。

外壁にデカデカと掲げられている、どう見ても$マークにしか見えない国旗を眺めながら街門を潜ると、これまで見てきたどの街よりも活気が溢れているのが一目で分かる賑わいね。


「らっしゃいらっしゃい! 他では見れない加工品の数々、是非とも拝見して下さいな!」

「こちらはダンジョン産のアーティファクトだよ! 旅のお供にゃ必需品だ!」

「さぁさぁさぁ、オークの串焼きが上がったぞ! 今なら熱々の出来立てだぜ!」

「やぁやぁそこの熱いお二人さん、観光するならこの人力車で案内しますよ!」


 さすがに経済大国と言われるだけはあるわ。

ただ人が多すぎて目眩がしそうだけども。

実際に見たことはないけど、築地の競りもこんな感じなんだろうか?


「なぁアイリ、オイラとしちゃ表通りを歩くのはおすすめしないぜ?」


「どうして? 別に問題は……あ、分かった。スリが居るって事ね」


 そらなら怪盗のトゥラビスが警戒するのも頷ける。


「違う違う。ホラ……」


 そう言って(あご)で示す方向には、屋台に釘付けとなっいるアイカとアンジェラが涎を垂らしていた。


「大変ですお姉様、あの串焼きがわたくしを誘惑してきます! 今すぐ対処すべきです!」

「確かに。あやつめ、妾の胃袋を刺激しよってからに……けしからん、実にけしからん!」


 そういう事……。


「ほら、2人共行くわよ」


 アイカの手を引いて行こうとしたけど微動だにしなかったため、逆に私がコケそうになる。


「むむむむ、お姉様、このような暴挙を見過ごす訳にはいきません! 買いましょう、買い占めましょう!」

「賛成じゃ。我が胃袋の脅威、思い知らせてくれようぞ!」


 どうやら早くも術中に嵌まってしまったらしく、こうなるとテコでも動かないので、仕方なく串焼きを2本買う事にした。


「毎度! 後5本追加で買うなら1本サービスするがどうする?」


「「5本追加で!」」


「へぃ毎度!」


 あ、コラ! 勝手に追加して! ……もぅ、2本だけだったのが7本分になったじゃないの。

まだ1本で銅貨10枚だからいいものの、高かったら直ぐに金貨を出す羽目になりそう。


「向こうも商売だからな、ああやって少しでも儲けを出そうとするのさ」


 成る程ねぇ。

やっぱり商売で成り上がった国ね。


「そういう事。表通りは人混みで移動しずらいし、ああいった誘惑があるから裏道を通った方がいいよ。こっちに付いてきて」


 プラプラとツインテールを揺らすレイネの案内で裏道に出て、街の中央へと進んで行く。

舗装された表通りと違って砂利道になっているところを除けば人通りも疎らで通りやすいし、屋台による誘惑も無いので胃袋にも優しい。


「裏道での露店の出店は禁止されてるのよ。そうしないと急いで兵を動かす時とかで邪魔になるからね」


 ああ、そういうところはキチンと考えてるんだ。

これは私の街でもリスペクトすべき事ね。

後でリヴァイに伝えておこう。


「そうそう、地元の連中の間じゃ「表歩かず裏通り」って言葉が有るくらいだな。観光客やおのぼりさんは表通りで散財するのが好例行事なのさ」


「トゥラビスに自慢気に語られるのはイラッと来るけど、概ね合ってるわ。ついでに言うと、スリを行う輩はスラム街にしかいないから、そこは安心していいよ」


 うん、なんかこの国が恐くなってきた。

地元の連中にとって私みたいなのはカモに見えるんでしょうね。

でもって、スラム街に行かない以上はほぼ安全って事か。


「着いたよ。街の中心にあって良心的な宿屋と言えばここしかないわ」


 着いた宿屋は外装が赤茶色の煉瓦(れんが)のような造りで、他の木造建築の家屋よりも丈夫に見える事から安心感を与えてくれている。

セキュリティもしっかりしてそうね。


「ありがとうレイネ。一旦ここに泊まる事にするから、レイネ達はそのまま寛いでて。私はこの国の外交官に会わないといけないから」


「ああ、そういやダンジョンを攻略するための話し合いをするって言ってたっけ? 確か……アマノテラスだったよね?」


 本来の目的はそれよ。

知り合った経緯からレイネのお父さんも助ける事になったけども。


「アイツは放置するのは危険過ぎるからね」


 アンジェラ以外のメンバーを残して、まずは冒険者ギルドへと向かう。

いくらアマノテラスでも首都を襲撃するような事はしないと思いたいけど、万が一という事も有るし護衛はセレンとアイカとドローンに任せる事にした。


(しゅ)よ、何故に冒険者ギルドへときたのじゃ? まさか冒険者ギルドで会う約束をしておったのかや?」


「違う違う、ここに来たのは興味本意よ」


 初めて踏み入れる街の場合、冒険者ギルドを見るのが最早通例になってしまったけども。


「では妾が門出を開いてくれよう。たのもーーーっ!!」


 ああ、しまった! アンジェラは豪快に扉を開ける癖があるのを忘れてた! これじゃまた目立っちゃうじゃない!

 中に居た冒険者達が一斉に振り向いて、シーーーンとした静けさが訪れる。

そして案の定、ゴツいハゲデブのおっさんがこちらに歩いて来た。


「おい、お前ら……」


 どうせ二言目には、ここはガキの来る所じゃねぇって言い出すのよ。


「ここで大声を出すのは禁止されている。ここの職員に目を付けられたらランク昇格にも影響するから気を付けろ」


 そ~ら来た。

まったく、面倒ったらありゃしな……あれ?


「特に新参冒険者の場合、散々罵倒された挙げ句、ランク降格も有り得るからな」


「は、はぁ……」


「下手すると冒険者資格を剥奪されてボランティア活動を強要されたりするしな。俺の知る限りじゃ過去に受付嬢をナンパした野郎が1時間近く説教されて、更に業務を妨害したって事で罰金くらった挙げ句、終いにゃランク降格だ」


 ざまぁみろと言いたいけど、ナンパしただけでそれは厳し過ぎるのでは……。


「ず、随分厳しいのねここ……」


「ああ。だからお前さん方も気を付けな。別のギルドじゃどうだったか知らねぇが、ここでは職員に逆らうのはご法度だ。特にギルドマスターはヤバい。気に入らない奴は、ドンドン降格や除名に追い込んでやがる」


「う、うん。ありがとう御座います」


「じゃあな、忠告はしたぜ」


 てっきり粗暴な奴に絡まれたと思ったけど、メッチャいい人だった。

心の中でハゲデブだとディスってごめんなさい。


(しゅ)よ。依頼を見てきたが大したものは無かったぞ。繁殖し過ぎたゴブリンの討伐がいいとこじゃな」


 ゴブリンかぁ。

確かに面白くはないわね。


「せめてゴブリンキングでも出るのなら楽しめたんだがのぅ」


 さすがに首都なんだから、そういった危険な魔物は既に刈られてるでしょ。


「じゃあ大使館に行きましょ。そこで会う約束になってるから」


「そこの2人、お待ちなさい」


 特に何も無いって事でギルドを出ようとしたところ、後ろから呼び止められたので振り向くと、眼鏡を掛けたインテリっぽいオバサンが私達を見下ろしていた。


「先程大声を上げてたのはア~タ達ザマスね?」


「あ、すみません。悪気が有った訳じゃないんですが……」


 この人多分職員ね。

面倒くさいし、さっさと謝ってさっさと出て行こう。


「そこの貼り紙に書いてある通り、ここでは騒がない、順番を守る、依頼の報告は速やかにが原則ザマス。守れない者は冒険者の資格無しと判断させていただくザマスよ」


「は、はい、すみません」


「長年ここで勤めてるザマスが、ア~タ達のような小娘冒険者が出てくるなど世も末ザマス。まったくもって嘆かわしいザマスね」


「さ、左様で御座いますか」


「ア~タ達は冒険者ギルドが存在するから生活出来るのだという事をキチンと認識する必要もあるザマスし、若いからと言ってはっちゃけても許されるとは思わないでほしいザマス。分かるザマスか?」


「はいはい、反省してま~す(棒)」

(チッ、うっさいわね……)


「そもそも、冒険者という存在は――」


 あ~面倒な事になった。

まさか冒険者じゃなく職員に絡まれるとは思わなかった。


(しゅ)よ、いつものように1度ブチのめしてやったらどうかの? いい加減腹が立ってきたぞ』


『そういう訳にはいかないでしょ』


 向こうが暴力を振るってきたら遠慮なく反撃するけども、こちらから手を出したら言い逃れは出来ないじゃない。

 それから()()()()()()()は余計よ。

それだと私が暴力女みたいじゃないの。


『お姉様、ミリオネック所属のダンマスから通信が届いてますよ。予定の時間になってもお姉様が来ないと(おっしゃ)られてますが、いったいどうしたのです?』


 やっば! もう時間が過ぎてるじゃない!


『ごめんごめん。冒険者ギルドで変なオバサンに絡まれちゃって、しばらく解放されそうにないのよ』


『変なオバサンですか? とりあえず了解しました。そのように伝えておきますね』


「ちょっとア~タ達、聴いてるザマスか!?」


「はいはい、聴いてますよ~」

(アンタも大声を上げてるじゃないの)




 それから1時間くらい経過すると、アイリ達の周囲は人だかりで出来てしまい、完全に見世物のようた状態になってしまった。


「あ、あのぅ……、そろそろ解放してくれませんか? 私達にも用事がありまして……」


「んまぁ! 自分の不始末を棚に上げて用事を理由にうやむやにしようなど冒険者の風上にも置けないザマス! これは反省が足りないザマスね!」


「いえいえ、本当に用事があるんですって! 外交官の人と約束してるんです。このままだと物凄く待たせる事になっちゃいますので……」


「ムグググググ、どうやら本当に反省をしてないようザマスね。待たせてると言ってもどうせア~タ達のおバカな知り合いザマスでしょう? そんなものはいつまでも待たせておけばいいザマス!」


 ダメだこりゃ。

一向に終わる気配を見せないわ……。


「失礼、ちょっと通らせてもらうぞ」


 背後の野次馬を掻き分けて、護衛を引き連れた男の人が現れた。

 んん? この人どっかで見たような……


「あらあら、フォーカスさんじゃありませんか! 生憎今は節操の無い冒険者を反省させてる最中で、充分なおもてなしが出来ず申し訳ないザマス!」


 ああ思い出した! そうそうこの人がフォーカスさんよ! 1度しか会ってないから忘れちゃってたわ。


「それで、本日はどのようなご用件ザマスでしょうか?」


「うむ。大事なお客人に会いに来たのだよ。どうもここで絡まれてるという情報を入手したのでな」


「んまぁ! それは大変ザマス! 当冒険者ギルドで他人に絡むなど有ってはならない暴挙ザマス! ギルドマスターとして見過ごす事は出来ないでごザーマスよ!」


 只の職員じゃなくてギルドマスターだったんだこの説教オバサン。


「それで、お捜しなのはどのような御方でごザーマスか?」


「うむ。黒髪をポニーテールにした若い少女なのだ」


「ふむふむ……黒髪にポニーテール。若い少女で何者かに絡まれて……ハッ!?」


 はい、こんにちは。

私の顔を見て、情報と一致したみたい。


「え、え、え、まさか……」


 プルプルと震える手で指をさされる。

そうです、私がフォーカスさんの捜してたお客人です。


「フォーカスさん、お久し振りです」


「やぁやぁ、アイリさん。こちらこそご無沙汰しておりましたな。ところで誰に絡まれたのですかな?」


「ええ、実はそこのおバカさん……じゃなかった、そこのオバサンに絡まれちゃいまして」


「……ほぅ」


 フォーカスさんの鋭い視線がオバサンに突き刺さる。

既に顔が青ざめてるオバサンは、まるで物理的に槍でぶっ刺されたかのようなダメージを負ってるように胃の辺りを手で押さえていた。


「約束があるって言ったんですけど、おバカな知り合いはいつまでも待たせておけばいいとも言われました」


「成る程成る程。つまり――ギルドマスターという立場を利用して、好き勝手な振る舞いをしたという事で間違いないかな? ザーマ殿?」


 縮こまってるザーマというオバサンに近付くと、肩にポンと手を置いた。

瞬間ビクッと飛び上がり、恐る恐るフォーカスさんを見上げる。


「以前から同様の報告はあったようだが残念ながら私は担当ではないのでな。しかし今回の事はすぐに国会で報告させてもらうから、そのつもりでいたまえ」


 それを聞き終えたザーマというギルマスは、ガックリと肩を落とした。

 その瞬間、冒険者ギルド内のあちこちで歓声が上がったところをみると、元々評判は良くなかったみたいね。

何にせよ、フォーカスさんが来てくれて助かったわ。


アイカ「もぐもぐ……セレンも串焼きを食べますか?」

セレン「余分な脂は美肌の敵です」

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