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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第6章:富と欲望のミリオネック
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閑話:リヴァイさんの1日

 アイリの眷族であるリヴァイ。

彼はとても働き者であり世話焼きでもあり、面倒見のよい性格をしている。

 当然ながら働き者故に、誰よりも早く起きて朝食の用意をするのだ。


「材料はこれでよし。米が炊き上がる前におかずを作るとしましょう」


 そもそもリヴァイが食事の用意をするようになったのは、好きな物しか食べないアイリの食生活に危機を感じたからであり、自らが食事番をしたいと思った訳ではない。

 今調理してる台所も最初は無かったためアイリに進言して作ってもらうと、それはもう大喜びで使用後は毎日ピカピカに磨いてる程だ。


「さて、後は味噌汁ですが……今日はジャガイモとワカメにしましょう」


 このように日本の一般家庭のような食事を覚えたのは主にテレビからで、中でもキュ〇ピー3分クッキングはお気に入りの1つだ。

それ以外の番組からも情報を取り入れ続けており、最初は味噌汁、沢庵、焼き魚、白米のみだった食卓が徐々に変化しているのだという。


「おかずと味噌汁は完成。更に米も炊けた事ですし、皆を呼んで来ましょう」


 朝食の完成後、向かった先はコアルーム。

目的はダンジョンコア(アイカ)に皆を起こしてもらうためだ。


「おや、朝食の時間ですか。ザード以外はまだ寝てるようですね」


 リヴァイに続いて早起きのザード以外は夢心地であったため、アイカにより各自の部屋のアラームを鳴らす。

アイカのアラームは五感を刺激する精神音波を混ぜてあるので、例え熟睡中であったとしても起きる事間違いなしだ。


「おはよう御座いまする」


 最初に現れたのはザード。

とっくに起きてたので当たり前ではあるが。


「おはよう御座いまッス!」


 続いて現れたのは意外にもクロ。

やはりテレビよりも三度の飯が一番の幸せという事なのかもしれない。


「「――おはよう」」


 クロの直後に現れたのは、ルーとミリーのゴーレムお子様姉妹。

この2人は本来寝る必要が無いのだが、何故か毎日キッチリと睡眠をとっていた。


「ふぁ~ぁ、おはようさん。今日も良い天気やなぁ」


 お次はホーク。

アイカのアラームは完璧の筈なのだが、何故かいつも寝ぼけたまま現れるのは、一種の才能なのかもしれない。


「ホーク、あなたはいったい何処を見て良い天気だと(おっしゃ)ったのです?」


 更に次はギン。

いまだに寝ぼけてるホークに呆れながら席に着く。


「ふぁ~ぁ、どうせまだ半分寝てんだろ。ほっとけほっとけ」


 そして更に続いてモフモフ。

ホークを馬鹿にしてるが、自身も寝ぼけてる事に気付いてはいなかった。


「おや? アイリ様が遅いようですね?」


 いつもなら今くらいには現れる筈が起きて来ない事に気付いたようだ。

だがこれには事情があり……


「それなのですが、ミリオネックに入って早々面倒な事件が起きましてね、ロータスという街に泊まってるのですよ。つまりわたくし達4人は、昨日から帰ってきてはいません」


「なんと! そのような事が……。――しかし困りましたぞ。それだと朝食が余ってしまいますが……」


 ドドドドドドドド……


 頭を悩ませてたリヴァイに、遠くから迫る振動。

ダンジョンに(とどろ)く程の振動と言えば1人しか居ない。


「飯だどぉぉぉぉぉぉ!」


 最後に現れたのはレイク。

三度の飯以外はほぼ睡眠にあてられている巨体のファイアドレイクだ。

レイクはより良い食事を求めてるため、寝起き後は軽く運動をこなしてから食卓に現れるのである。


「どうやら朝食は残らずに済みそうですな」


 リヴァイはレイクを見てポツリと呟いた。




 朝食後、各自が思い思いの行動をとる中、リヴァイは食器を洗いながらアイリーンの様子を見る。


「ふむ、住人も自動人形(オートマタ)も今のところ異常は無いようですな」


 もし異常を感知したら真っ先にアイカが気付くので、リヴァイがそこまで気を張らなくてもいいのだが、どうも気にしたい性分のようだ。


「相変わらず心配性ですね。そこまで気になるリヴァイに依頼します。たった今起こったトラブルを解決してきてくれませんか?」


「いいでしょう。して、何処へ向かえばよいのかな?」


「場所はアイリーンの……」


 アイカに誘導されるまま向かった先は、アイリーンの街にある【ビアードママ】というお菓子屋であった。

 さっそく中に入ると、2人の少年少女が遠巻きに見ている先で、2人の幼女――ルーとミリーが、取っ組み合いの大喧嘩をしてるのを発見した。


「リヴァイさん。このままじゃ店が滅茶苦茶で落ち着いて食べられないよ。何とか止めてくれない?」


「バーニィ、言い方が失礼でしてよ? ――すみませんミスターリヴァイ、悪気は無いのですが、少々口が悪いもので……」


 バーニィと呼ばれた少年と、彼の頭を無理矢理下げて自身も頭を下げたのは、サーリアという少女だ。

何を隠そうこの2人はダンジョンマスターであり、バトルロイヤルを通して知り合ったのである。

 そんな彼等がどうやってアイリーンに来たのかというと個別認証転移装置(プライベートポータル)という装置を利用して来た訳だが、この装置はアイリが許可を出したダンマスしか使用出来ず、許可された各ダンマスのダンジョンコアのコマンドから使用可能だ。


「我がダンジョンの者がご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ありません。後程当人達より改めて謝罪させます故、今暫くお待ち下さい」


 ダンマス2人に頭を下げたリヴァイは、いまだ奥で喧嘩真最中の姉妹の元に行くと……


 ゴツン! ゴツン!


 2人に1回ずつ拳骨を見舞う。


「痛い! リヴァイの鬼、もしくは悪魔」

「同じく痛い! リヴァイのバカ、もしくはアホ」


 拳骨を食らった姉妹は、眠そうな顔をリヴァイに向けて抗議した。


「黙りなさい。喧嘩をするなとは言いませんが、他人に迷惑を掛けてはいけません。そもそも何があったというのです?」


 事の起こりはホットケーキの早食いを行ったのが始まりだ。

どちらが先に完食するかを競ってたのだが、結果はほぼ同着。

これにより、相手に負けを認めさせようという流れになってしまい、最終的に口喧嘩から殴り合いへと発展したのだった。


「この勝負はルーの勝ち。負けを認めないミリーは妹のくせに生意気」

「この勝負はミリーの勝ち。負けを認めないルーは姉のくせに大人気ない」


「………………」


「勝ったのはルー。何故ならミリーより先に眷族になったから」

「それならミリーの方が新しい。お古なルーの負け」


「………………」


「何を言ってもルーの勝ち。姉より優れた妹など居らん」ジャギ

「そんなのは理由にならない。もしくはそんなの関係ねぇ」オッパッピー


 黙って聴いてたリヴァイだが、一向に収まる気配を見せない2人に、決定的な一言を浴びせる。


「喧嘩を止めないのなら、この店の出入りを永久的に禁止しますぞ?」


「今回は引き分け。中々良い勝負だった」

「こちらこそ。次も良い勝負をしよう」


「……まったく。さぁ、あちらの2人に迷惑を掛けた事を詫びてくるのです」


「「は~い(棒)」」


 これにて一件落着!

 だが折角街に来たので、自分の足で見回りをする事にしたのであった。




「――という理由からして、未知のダンジョンを発見した場合、決して中には入らずに速やかに冒険者ギルドへ報告するのが最善の選択となるのです」


 学校を覗いてみると、初老ダンマスのベルトランが教鞭を振るっていた。

他人に教えを説くのが大好きな彼は、臨時講師として雇われた形だ。


「は~い先生!」


「はい、ジェリー君」


「ダンジョン内部に罠がいっぱい有るって事は分かったけど、なんで直ぐにダンジョンに入ったらダメなの? 慎重にいけば問題なさそうな気もするけど……」


「大変良い質問です。ではそれを答える前に1つだけ質問しますが、皆さんはダンジョンマスターとはどのような存在かご存知かな?」


 すると実際に他のダンジョンに潜った事の有るダミアン以外の子供達は、皆アイリを想像してしまうため「優しい」「他人思い」「正義の味方」といった片寄った認識を持っていた。

 当然これらを聞いたベルトランはヤレヤレと思う半面、現状では仕方ないかと窓の外に見えるアイリーンを眺めながら思うのであった。


「まずダンジョンマスターという存在は大きく分けると3つに分類されます。1つはアイリ殿のような他者との共存を望む者、1つは深く他人に干渉せず自衛のみ行う者、――そして最後の1つは他者を排除しようとする者です」


 ここで子供達は「え?」という表情を見せる。

ダンジョンマスターが皆アイリのような者だと思っていたのだから当たり前ではあるが。


「いいですか? 特に注意しなければならないのは、当然最後にあげた存在です。彼等は侵入者を感知すれば何の迷いもなく殺しにきますので、そうならないためにもギルドへの報告が大事なのですよ」


 この様子を(うかが)ってたリヴァイは、うんうんと頷きながら場所を移動しようとするが、間もなくアイカから昼食の時間になると知らされて、慌てて台所に戻って行くのであった。


 そんな感じに昼食は何とか無事終了し後片付けを済ませると、再び街へとやって来た。

最初に訪れたのは割と多くの者が集まるゲームセンターで、今も対戦中の2人が熱中してるようだ。


「おっしゃ決めるで、ジャブからの超必殺技を加えた(ナイン)コンボやぁ!」


「んな!? マジかよくそぅ、ガードが間に合わねぇ!」


『K・O!』


「よっしゃよっしゃ、ワイの勝ちや! これで3連勝やな!」


「くぁ~、さてはアンタ、相当やりこんでるな」


「せやで。毎日欠かさず練習しとるさかいな、ポッとでの新参には負けへんわ!」


 どうやら対戦してたのは眷族のホークとアーサーという青年ダンマスのようだ。

再び対戦を始めたので、邪魔をしないように場所を移動する。


 その後もザードがトレーナーのような事を行ってるスポーツジムや、ギンが看板娘になってるエステ等を見て回り、気付くと時刻は夕方を迎えようとしていた。

そろそろ晩御飯の支度に取り掛かるため台所に戻ろうしたリヴァイであったが、そこへアイカからの依頼が舞い込んでくる。


『リヴァイ、至急カラオケボックスに向かってください。小火(ぼや)騒ぎが起こってるようです』


 急報を受け直ぐにカラオケボックスへとやってくると既に火は消し止められており、傍らでバツの悪そうな顔をした女神クリューネが会釈してきた。


「これはこれは、女神クリューネ様。お怪我は有りませんか?」


「う、うん。まぁあたしは大丈夫だけど、その……カラオケボックスがね?」


 クリューネの後ろに視線を移すと、まるで屋内から天井を思いっきりブチ破ったように屋根が極一部を残して吹き飛んでいるカラオケボックスが目に止まる。

 そしてこの光景に見覚えがあったリヴァイは、額に手を当て軽く溜め息をつくとクリューネに向き直り……


「クリューネ様、()()で御座いますか……」


「すみません。(自分の)音量調整を誤りました」


 女神に怪我が無い事と、悪気が無いという事をふまえて被害額をザッと算出して提示した。

それを見たクリューネは、やや沈黙の後に観念したように項垂れると……


「――分割払いでお願いします……」


 そう言い残し、逃げるように天界へと帰って行った。


「おっといけません、直ぐに晩御飯の支度に取り掛からなければ!」


 本来のやろうとした事を思い出したリヴァイも、ハッとなって台所へと戻るのだった。


 さて、こんな感じで日々忙しいリヴァイだが、誰か代わりにやってくれそうな人材は……残念ながら居ないようだ。


リヴァイ「現在アイリーンの街は、私とアイカが管理しております」

アイカ「わたくしが出来ない事を、リヴァイに行ってもらってるという事です」

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