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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第1章:外の世界
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儚き少年の夢

 昼食後、私たちはレックスたちと冒険者ギルドに来ていた。

討伐依頼を合同で受けるというものだが、よく考えてみれば、複数パーティで依頼を受けることってできるのだろうか?

せっかく一緒に依頼を受けようと誘ったけど、できないんじゃ意味がない。

 けどギルドにて確認すると、問題ないとアッサリ言われてしまった。


「別に駄目ではないわよ? 命に関わるんだし、人数が多いほど成功率も上がるでしょ? 自分よりランクが上の冒険者がいれば、その冒険者と一緒の基準で依頼が選べるしメリットはあるわ。但し、報酬額は変わらないから、後で報酬で揉めないようにね」


 とまぁ、報酬の分配で注意すればいいってことが、ローニアさんに聞いてわかった。


「レックスたちは、どれがいいと思う?」


 今現在受けられる依頼だと、強い魔物はいないためレックスたちに選ばせることにした。

レックスたちはFランクの冒険者らしいので、受けようと思えばDランクの依頼を受けられるのである。


「このクラッシュベアの討伐なんてどうだ? 多人数で囲んじまえば楽勝だろ?」


「でもアイリさんたちにとっては初めての討伐依頼なのですから、もう少し難易度を落とした方がいいと思いますよ?」


「そうだぜレックス。俺たちは良くても、アイリさんたちを怪我させたくないだろ?」


「そ、そうだな、すまん……」


 ちゃんと私たちを気遣ってくれてる点は好印象ね。

何せ昨日のチンピラ共の印象が強すぎて、冒険者=粗暴ってイメージがね……。


 でもゴメンね……クラッシュベア余裕です……。


「やっぱりゴブリンあたりが無難じゃないか?」


「……いいと思う」


「ゴブリンなら巣に近付かなければ問題なさそうだね」


「そうだな。よし決まった! このゴブリンを10匹以上討伐の依頼にしよう!」


 どうやらゴブリン討伐に決まったらしい。


「決まったようですね。早く受付に行きましょう」


「あ~、アイカさん。ちょいとばかし今はタイミングが悪いや……」


「何故です?」


「ほら、受付嬢と話し込んでるアイツら。この街じゃ、ちょっと有名なヤツラなんだ。勿論悪い意味でな」


 アルバの視線を追うと、そこには昨日ボコッたチンピラ共がいた。

しかも受付嬢をナンパしてる……。


「彼らは冒険者パーティ「ワンカップの誓い」で、この街の領主ラドリゲス男爵の息子ロドリゲスの専属護衛だ」


「……関わらない方が無難」


 ゴメン、それも知ってます……。

 いや、パーティ名までは知らなかったわ。

ワンカップの誓い? なによそのどこにでも有りそうな、飲み会サークルのような名前は。


 ……あ~、自分で言っといてあれだけど、飲み会サークルの名前だとしたら、コイツらにピッタリだわ。


「でもどうするの? このままだといつ終わるかわかんないわよ?」


「うーん、どこかで時間を潰してくるしかないかもなぁ」


 ちょっとアルバ君、なんでそんな遠回りなことしないといけないのかな?

さすがにそれはダメよ。

ここは一つガツンと言わないと!


「それなら私に任せてくれる?」


「え!? 任せるって、どうすんだ!? アイツらはマジでやべぇぞ!」


 レックスはちょっと落ち着きなさいっての……。


「大丈夫です !お姉様がアイツらをぶっ飛b……むぐぐぐ……「アイカは黙ってて」


「ちょっと話してくるだけだから安心して」


「……わかった。危なくなったらすぐ逃げろよ?」


「分かってるわよ」


 まぁ、話してわかるなら苦労しないんだけど、あのチンピラ共の場合OHANASHIしないといけない可能性が高いわね。

少々面倒くさいと思いつつ、受付嬢のところへむかう。


「なぁいいじゃねーかよ。ちょっとくらいよぉ」

「そうだぜ。それに金の心配ならいらねぇぜ? なんせ領主様は太っ腹だからよ!」


「結構よ。私は仕事中なの」


「そう言わずによぉ」


 ローニアさんがナンパされてるわけだけど、キッパリと断ってるわね。

あの妖艶な美女のローニアさんならモテそうだから、かなり前から誘われてるのかもね。


 でもコイツらには不釣り合いね。

まさに美女と野獣ってやつよ。


 って、いい加減コイツら止めないと……。


「ちょっと、邪魔だから退いてくれる?」


「ぁあ!? んだよ誰が邪魔だっ……て?」


 コイツらも私を見て固まってるわ。

人の顔見て固まるのって流行ってるのかしら?


「……くそっ、おい、行こうぜ!」

「……あぁ」「……チッ」「…………」


 ん? 今日は大人しく引き下がるのね?

まぁ面倒がない方が有り難いんだけと。


「ローニアさん大丈夫ですか?」


「あらアイリちゃん。有難う、私は大丈夫よ」


 最初から相手にしてなかったみたいだから、大丈夫なのはわかってたけどね。


「おいアイリ、アイツら出ていったけど、いったいどうやって……ハッ! まさか!? アイリが色仕掛けでアイツr「んなわけあるかぁーーーっ!!」


 なんでアイツらごときに色仕掛けなんてしなきゃならねーのよ!

有り得ないから! 絶対!


「ち、違うんだな? 色仕掛けとかしてないんだな? 信用するぞ?」


「くどいわよ!」


 レックスも落ち着いてちょうだい……。

そして私も冷静に冷静に。


「色仕掛けなんかしなくても、お姉様なら片腕一つで、むぐぐぐ「だから余計なこと言わないの!」


 どうして私の周りは落ち着きがない子が多いのかしらね……。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 少し予想外な出来事があったけど、予定通りゴブリンの討伐依頼を引き受けた。

ゴブリンが出現する場所として、街の北にある森の中での目撃情報が多いため、あまり奥に行かない程度まで移動した。


「この辺かな。これより奥に行かなければ大丈夫だと思うよ」


「だな。この辺りを慎重に探索して、ゴブリンを発見したら倒していくと。ただ、数が多い場合は、すぐに声を上げて知らせるってことでいいか?」


「危なくなったら知らせればいいのね? 分かったわ」


 まだ森の入口を入ってすぐなんだけど、初心者冒険者だとここまでが限界なのかもね。

とりあえず、ゴブリンを見つけ次第倒していくってことね。


 でも多少数が多かったとしても、倒してしまってもいいわよね?


「じゃあ2人一組で辺りを探索するってことで……どうやってわける?」


 アルバが私とレックスを見ながら言ってくるけど、特に深い意味は無いわよね?


「僕は是非とも貴女と組みたいですね」

「うむ、良かろう」


 最初に決まったのはアンジェラとルークのペア。

 というか、何で簡単に決まるわけ?


「……宜しく」

「はい~♪」


 続いて決まったのはセレンとユユのペア。

おかしいわね。

私の予想では、最後まで残って自然に決まりそうな2人だったのに……。


「じゃあアイカさん、お願いします」

「わかりました」


 そしてごく自然にアイカとアルバのペアが決まった。

 ねぇ、みんなして私とレックスを組ませようとしてない? というか絶対そうよね!?


「お、俺とアイリがペアだな……ペアだ……」


 こらこら、またトリップしてるじゃないコイツ!

 レックスの注意力が心配だけど、私がしっかりしてれば問題ないか。


「ほら、他の人たちはみんな探索に出たわよ。早く行きましょ」


「お、おぅ……」


 さてと、なるべく奥に行かないように……と……、


 ガサ、ガサガサガサッ!


「っ! 何かいるわね!」


「アイリ、俺の後ろへ!」


「う、うん。ありがとう!」


 せっかく体を動かそうと思ったんだけど……まぁここはレックスに任せちゃおう。

 そして茂みの中から現れたのはゴブリン!


 ……ではなくベビーヘッジホッグ。

Fランクの魔物でスライムよりやや弱い。


「気を付けろ! コイツは針を飛ばしてくるからな!」


「わかった!」


 この程度の魔物ならレックスに任せても大丈夫ね。


「くらえっ! コイツッ!」


 チュチュチュッ!!


「イタタタッ! くそ、やりやがったなコイツゥ!」


 もう、明らかに針を飛ばそうとしてたじゃない……。

正面からじゃなくて側面から……ほらぁ、こんどはそっちに向いたから……ああもう!


 だからどうして馬鹿正直に正面からかかるのよ!

正直なのは私生活だけにしなさいよ!


 って、何で私が熱くなってるんだろ、落ち着け私……冷静に冷静に。


 で、結局戦闘が終わったら、腕が針だらけよ……。

顔に当たらなくてよかったわね。


「イツツ……あ~痛ぇ……」


名前:レックス Lv8 

HP123/104   


 鑑定してみたけど、まだ大丈夫そうね。


「もう、どうして正面から仕掛けるの? 回り込めばよかったじゃない」


「いや、なんつーか、正面から立ち向かわないと、カッコ悪いかな……と」


 ……呆れた。

カッコつけたいのはわからなくもないけど、そのために無茶な真似はしてほしくない。


「そんな下らないことで怪我されても嬉しくないわよ! もっと自分を大事にしなさい! 分かった!?」


「う、うん……」


「それにね、戦いかただけど、もっと工夫しないとダメ!」


「え?」


 さすがに見てられないから、私が手本を見せてやるわ!

もう初心者のふりはやめ!


「だいたい剣の構えがぎこちないのよ!もっと切っ先(きっさき)を落として!」


「おう!?」


「更に腰を落として足下をしっかり踏みしめて!」


「お、おう……」


「そうしたら、相手が動いたタイミングでこちらも動き出せるでしょ! そこで相手の様子を窺いなg『ガサガサッ!』


 もう、誰よこの忙しい時に邪魔するのは!?


「グギャギャギャ!」


「うお、ゴブリンだ! しかも5・6匹はいる! おーい! ゴブリンが出たぞーっ!!」


 こんな雑魚共のために時間を浪費しちゃだめよ!

本当は呼ばなくてよもかったんだけど、呼んでしまったのならしょうがないわ。


「レックス、すぐに終らせるからそこで見てなさい!」


「ぇえ!?」


 せっかく人が教育してあげてるのに、水を差すドアホウ共に鉄槌よ!


 ザシュザシュザシュ! ザクッ! スバッ! ズシャ! ドスッ! パキーンッ! 「グゲァ!?」ズババババッ! ザシュ!


 ……ふぅ、丁度いいストレス解消になったわ。


「す、凄ぇ……」


 どうよ? ……って、ちょっとやり過ぎたかもしれないわね。


「まぁちょっと速すぎてわかりにくかったかも知れないけど、少しは参考になったかしら?」


「あ、ああ、……あのさ……アイリって強かったんだな」


「ゴメンね。なかなか言い出しづらくて……」


 本当は言い出すつもりは無かったんだけどね。


「おーい! 大丈……なんだこりゃ!?」

「アルバ、何をそんなに驚……なんだこれは!?」

「……何事?」


 他のみんなも来たみたい。


「レックス! まさかお前が!?」


 問われたレックスは首を左右に振る。


「……アイリが1人で倒した。……俺は何もできなかった……」


「……マジか……」

「これは……さすがに驚きますね……」

「……凄過ぎ」


 なんかアイカ達も「やっぱりなぁ」みたいな顔をしてるし、これはもう隠し通せないわね。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「そうでしたか……どうやら君たちは我々よりも強いパーティのようですね」


「まさか心配する側じゃなく、心配される側だったとは……」


「ゴメンね? 騙すつもりは無かったんだけど……」


結局あの後すぐに街に戻ってきた。

そして冒険者ギルドの中で休憩中というわけ。


 聞いてみると、どうやらしびれを切らしたのは私だけじゃなかったらしく、他の面々も同様の状態に(おちい)っていた。


「ああ、気にしないでくれ。むしろ自分たちが未熟なのが再認識できたからいいさ」


「……新たな目標ができた」


「そう言ってもらえると有り難いのぅ」


「頑張ってください~♪」


 結局、報酬は全部「夢の翼」にあげた。

別に私たちはお金に困ってないし、騙してたという負い目があったからね。

最初は全部は受け取れないと拒否してた彼らだが、実力を偽って迷惑かけたからってことで多少強引に納得してもらった。


 それで私たちの報酬は0サークになるけど、依頼達成でFランクに昇格したから全然OK!


「…………」


「で、レックスさんは先程から黙ったままですが、どうされたのですか?」


 そんなに私たちとの実力差がショックだったのだろうか?

 ……と、思われたけど。


「アイリ、俺……もっと強くなる! そしていつかアイリより強くなって、護ってやれるような男になるぜ!!」


 おお? 随分大きく出たけど大丈夫かな?


「お、ようやく復活したな」

「うんうん、実にレックスらしいと思うよ」

「……夢だけはデカイ」


 ユユ、意外と毒舌なのね……。


「よし、さっそく宿に帰って作戦会議だ!また会おうぜアイリ!」

「先は長そうだけどなぁ……じゃあな、アイカさんたち!」

「見ていて飽きない男だよ、レックスという男はね。では縁があったらまた会いましょう!」

「……また会う日まで。バイバイ」


 何かと騒がしかったレックスたち「夢の翼」と別れた。

レックスの夢は少し……いや、かなり大き過ぎると思うけど、頑張ってほしいわ。


 それにしても……守ってやる! って言われるのも悪くないわね。

私はギフトの影響で強くなってるだけだし、レックスのように努力する男の人には惹かれるものがある。


 ……が、そんな余韻を吹き飛ばすかのように、入口が勢いよく開いた。


 バタンッ!


 開いた入口の方をみると、この街の衛兵達が中に入ってくるところだった。


「何事でしょうか?」


 ぞろぞろと入ってきた衛兵たちは、一直線に受付まで進む。

衛兵が依頼の申請?

 って感じじゃなさそうね。


 そして彼らがカウンター前に止まり、そこに居たローニアさんに先頭にいた衛兵が問いかける。


「ここにアイリという冒険者はいるか?」


 どうやら厄介事が訪れたようだわ。


レックス「ところでアルバはアイカさんの事をどう思ってんだ?」

アルバ「(ギクッ!)」

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