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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第6章:富と欲望のミリオネック
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アイリの行方

前回のあらすじ

 子供達を追って豪邸にたどり着いたアイリ達は、早速豪邸の中へと突入し捜索を開始した。

だがアイリの様子がおかしい事に気付いたアイカ達は、1人で行動しようとしたアイリにアンジェラを同行させる。

だがアイリを乗っ取ろうとした謎の存在を叩き出そうとしたアンジェラであったが、不運にもアイリ本人の抵抗によりアンジェラの蹴りが炸裂し、気絶した状態で転移トラップに掛かってしまった。



「多くは有りませんが、稀に罠が設置されてるようです。気を付けてくださいね、セレン」


「は~い~♪」


 アイリ達と別れた2人は、左に見える幾つかの部屋を一旦スルーして通路の先へと進む事にした。

数分間注意深く進んでると突き当たりに差し掛かり、左に折れた通路の先には上り階段と下り階段が姿を現している。


「階段ですか。ここがダンジョンである事を加味すれば下が怪しいのですが、上から探ってみる事にしましょう」


 まずは上からという事で上り階段を上がって行く。

2階に出ると、そこにはだだっ広い空間が広がって居り、まるで建築中につき内装はまだ着手されてないかのような状態であった。


「何も有りませんね。兎も角、このフロアを隅々まで……セレン、どうやら敵のお出座しのようですよ」


「ですね~♪」


 無駄に広い2階を調べようとしたが、フロアの奥から5体のプロトガーディアンが出現し、アイカ達に切っ先を向けてきた。


「セレンは「ここは~、お任せします~♪」まだ何も言ってないのですが……」


 ――下がっててと言おうとするが、セレンは自主的に後ろへ下がった。

プロトガーディアンには殆どのステータス異常が効かないため、セレンの判断は正しい。


「一々打ち合うのも面倒です。(まと)めて燃やしてしまいましょう」


 掌を前へ突き出し詠唱を開始する。


「個を包みて紅葉(もみじ)舞う、その期を望むは熱するが如く――舞い散れ、ファイヤーストーム!」


 詠唱が完了し、アイカの掌から前方に向けて炎が燃え広がる。

その炎は今にも斬り掛かろうとしてたプロトガーディアンを包み込み、その周囲にいた同類も巻き込み焦がしていく。

 アイリと同じステータスを持つアイカの魔力により、身体の殆どを焼き尽くされたプロトガーディアンが必死に動こうとするが、それは叶わぬ夢。

再度放たれたファイヤーストームにより、完全に消滅していった。


「Dランクとは中々ですが、最早人間を止めたお姉様のステータスには敵わなかったようですね」


「アイリ様は~、人間を~、お止めになられたのですか~?」


「そうですよ。何故ならこのような驚愕のステータスを持った人間は他に居ませんからね」


「成る程~♪」


 アイリが聴いたら両手振り回して怒りそうだが、幸運?な事に本人はこの場に居ないので、否定する者はなかった。

 だが和んでるのも束の間。

奥から10体以上のプロトガーディアンがこちらに向かって来るのが見えた。


「新手です~♪」


「分かってますよ。何度来ても同じです」


 アイカのMPが桁違いのためファイヤーストーム程度なら何度でもかませるという事で、先程と同じように詠唱する。


「白きを(うち)にし(あか)きを外へ、()を吹き荒らすは我にあり――燃え盛れ、ファイヤーストーム!」


 自信に満ちたアイカであったが、今度のプロトガーディアンは耐魔効果がエンチャントされており、多少焦がした程度で倒すまでには到らない。


「ふむ、エンチャントですか。――ならば倒すまで続けるのみです」

(剣を振るのは面倒なので)


 効果が薄いと判断しながらも、倒すまでファイヤーストームを連発する。

結局すべてのプロトガーディアンを燃やすのに10回も連発したのだが、これはMPに余裕があるから出来る芸当で、普通の魔法使いには到底真似できないだろう。

 因みに魔法を連発してる間、ドローンを使用してフロア全体の捜索を終えていた。


「フフン、ザッとこんなものです」


「勝利の~、ドヤ顔ですね~。ところで~、1つ聞きたいのですが~」


「何でしょう?」


「ファイヤーストームの~、詠唱です~。何故毎回~、違うのです~?」


「ああ、それですか。それはですね……」


 10人中10人が気付くアイカの詠唱だが、実は詠唱を行わなければならないというルールは存在しない。

詠唱を行う事で集中力を高め、精度を上げるのが目的なので、無詠唱で放っても問題ないのである。

 ただし、魔法のイメージを定めないと上手く発動しないため大抵の者は詠唱を行うが、皆喋りやすかったりインパクトのあるものを好むので、詠唱の台詞も様々だ。

つまり、アイカの詠唱は毎回適当だという事である。


「ですが意味なら有りますよ。最初の詠唱はもみじ饅頭をイメージしたもので、次は須天(すあま)ですので」


「それは~、意味が有ると~、言えるのでしょうか~?」


 勿論意味は無い。

だが理由なら有る。

アイリと別れた後、歩きながらもみじ饅頭と須天を口にしてたという緊張感の欠片もない理由が……。


「侵入者発見、武器を捨てて降参せよ。繰り返す、武器を捨てて降参せよ。さもなくば抹殺する」


 勝利のドヤ顔も束の間。

またしても追加でプロトガーディアンが出現する。

その数は1体のみだが、先程までのガーディアンとは違い全身に光沢を帯びたように見える。


「1体のみ……という事は、これが最後なのでしょうね。――フレイムキャノン!」


 無詠唱で放たれたフレイムキャノンが直撃したが、あろう事かプロトガーディアンは無傷であった。

試しにもう2回放ったが、やはり結果は同じ。

 そこでドローンの鑑定スキルを使用して明らかになったのが、このプロトガーディアンは魔法耐性を激しく強化されたものだった。


「厄介な相手ですが、これならどうです?」


 プロトガーディアンの剣を避け続けていたアイカは、もう一度だけフレイムキャノンを放ち後方へと押しやる。

その隙にドローンによる銃撃を行い、穴だらけになったプロトガーディアンは光の粒となり消え去った。


「討伐完了です。しかし、このフロアには何もありませんね。豪邸と言って良いほどの大きなダンジョンを作っておきながら何をしたいのでしょう」


 いまだここのダンマスの目的が見えてこない上に、盗賊村との関係も不明のままだ。

だが村の子供達がここに逃げ込んだ以上、何らかの関係は有ると見て間違いない。


「やはりここのダンマスから直接『おおぃ大変じゃアイカ! (しゅ)が転移トラップに掛かってしまったのじゃ!』な!?」


 階段を下りようとしたところでアンジェラからの急報を受け、その場で立ち止まる。


『妾は急いで(しゅ)の元へ向かう。このダンジョンはアイカに任せるぞ!』


『あ、待ってくださいアンジェラ。お姉様の追跡はドローンで行います。ドローンなら特殊迷彩(ステルス)があるので発見される恐れはほぼありませんし、探知波動(エクスプロルウェーヴ)も有りますからね』


 以前はアンジェラのスキル、探知波動(エクスプロルウェーヴ)が非搭載だったが、DPが充実してきた頃合いを見て搭載させたのである。

 因みに探知波動(エクスプロルウェーヴ)の必要DPは100万ポイントだったので、アイリには内緒だ。


『そ、そうだったのぅ。妾とした事が取り乱したわい』


 兎に角、アイリ捜索はドローンに任せる事にして、アイカ達は1階で合流。

そこから地下への階段を下りた。


(しゅ)はやたらと遠くに転移してしまったようだが、ダンマスは何がしたいのだろうのぅ?」


「それは分かりません。2階を見てもプロトガーディアンがいただけで、何もないフロアが広がってるだけでした。もしかしたらこのダンジョンは、まだ未完成なのかもしれません。しかし……」


 未完成のダンジョンにしては、コストの高いDランクのモンスターが多数徘徊してるのは腑に落ちない。

まるでダンジョンを完成させるのは二の次とでも言いたいかのようにも思える。


「地下に下りましたが、子供達の反応はどうですか?」


「うむ、この階層の奥にいるのは間違いないないぞ」


 石造りの地下通路が先へと続いてるが、途中で幾つもの枝分かれした作りになっており、捜索ヶ所は多そうだ。

だがアイリが転移した今、ダンマスの身柄を押さえるのが先決だと判断し、子供達の反応がある場所へと進んで行く。

ダンジョンの奥に反応が有るという事は、恐らくそこにダンマスも居るであろうと信じて。


「どうやらここが終点みたいですね。反応はこの先ですか?」


「そうじゃ。まさかボス部屋に居るとは思わんかったがの」


 子供達の反応は、今目の前にあるボス部屋の中にあった。

まさか村の子供がボスという事は無いだろうが、ここはダンジョンであり何が起こっても不思議ではない場所だ。

故にアイカ達は油断無くボス部屋の扉を開けた。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ――て。


 ん……何かに揺すられてる?




 ――きて。


 うぅ~、何だか首が痛いんだけど寝違えたかな……。




 ――起きて。


 あ"~、ちょっと待って、首が痛くてアダダダダ! どうやら本格的に寝違えたらしい。

それに左手首も痛むんだけど、何なのこれ?




 ――起きてぇ!


「ひゃう!? なななな何事!? 耳元で大声が……」


 身体を起こして目を凝らすと、私と同い年くらいの女の子が座っていた。

私と違うのは、髪がブロンドのツインテールになってるところかな?


「良かったぁ! もしかしたら2度と目を覚まさないんじゃないかと思ったよ」


 随分と親身になって心配してくれるのね。

誰か分かんないんだけども……。


「え~と、ありがとう? なんだか心配させちゃったようで。それで失礼ですが、貴女はどちら様で?」


「私はレイネ。ここには人形(ひとがた)のモンスターに連れてこられたの」


 モンスターに連れてこられたという物騒なフレーズに慌ててキョロキョロと見渡すと、丸石の壁に囲まれた小部屋に鉄格子を掛けられた状態で監禁されてるみたいだ。

要するに牢屋ね。


「ところで貴女は誰か聞いてもいい?」


「あ、ゴメンゴメン。私はアイリって言うの。それで私ってどのくらい眠ってたの?」


「ここに入れられてからの時間だったら10分くらいよ。人形(ひとがた)モンスターが貴女を運んで来た時には既に気を失ってたから、もっと長い時間かもしれないけど」


「そう……」


 そうなると2、30分は気絶してたと思っていいのかもしれない。

そもそも気絶する前って何してたんだっけ?


「ねぇアイリ、貴女さっきは凄く痛がってたけど大丈夫? モンスターにやられたの?」


「え? あ、そういえアダダダダダ!」


 忘れてたけど、思い出したら急に痛みが! 何なのこの痛みは!? まるで強烈な回し蹴りを食らったような感じの痛みよ。


「やっぱりあの人形(ひとがた)モンスターにやられたのね。私は抵抗しなかったからそのまま連行されたけど、貴女は抵抗して反撃にあったんでしょ?」


 そうだっけ? モンスターと戦った覚えはないんだけど……。

え~と確か……盗賊村から子供達を追って豪邸にたどり着いたのよね?

そこから……






 思い出した! 何者かに意識を乗っ取られそうになってたところをアンジェラに蹴り飛ばされたのよ!


「ありがとうレイネ。お陰で思い出したわ。確かに(謎の意思に)抵抗して、人形(ひとがた)モンスター(人化したアンジェラ)にやられたみたい」


「よく分かんないけど、おめでとう?」


 アンジェラもあんなに強く蹴らなくてもよかったじゃない!

帰ったらお仕置きよ!


アイカ「モグモグモグ」

セレン「今度は~豆大福の詠唱ですか~?」

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