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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第6章:富と欲望のミリオネック
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逃げた先には……

前回のあらすじ

 締め上げた盗賊の証言を元にケオルの村ーー通称盗賊村へとやって来たアイリ一行は、アイリ達を眠らせて身ぐるみを剥ごうとした村人を見事返り討ちにした。



「それじゃ()()()()を追いましょうか。フフフ」


『うむ。こっちじゃ』


 ウルフ達を監視に残して、アンジェラを先頭に夜の獣道を進んで行く。

あの子達というのは盗賊村の子供達の事で、私達が襲われて(襲って)る最中にこっそり村から脱け出してくのを見てたのよ。

恐らく他に仲間の居るところが有るんでしょうね。


「見えてきましたよ、お姉様。あの邸のようです」


 周囲を木々で囲まれた大きい建物――豪邸と言って差し支えがないような規模の邸が見えてくる。

ただし一般的に想像する豪邸とは異なり、蔦が至る所に絡まりひび割れた丸石の壁はそのままにされてるところから、長らく手入れをされてない様子が(うかが)える。


「この中から子供達の生命反応を感じるぞ。間違いなくこの邸に居るの」


「疑うわけじゃないけど本当にここに逃げ込んだの? 見たところ灯りも点いてないし、お化け屋敷というイメージにピッタリなんだけど」


 それに人の気配が感じられないし夜だという事もあって、不気味さが際立ってるわ。

でも盗賊共が息を潜めてると考えれば、気配を感じないのは当たり前なのかもしれない。


「中に入るわよ」


 両開きの大きな扉を開けると、ギギギギっていう嫌な軋み音が中のエントランスに響き渡る。

いや、本当に不気味過ぎて帰りたくなってきた……。


「これは……」


 ん? アイカが立ち止まって何かを感じ取ってるみたい。


「お姉様、ここはダンジョンのようです」


「ダンジョン!?」


 そっか……ここがダンジョンだというなら納得だわ。

だってこんな目立たない場所に豪邸が有っても誰に自慢するのって感じだし。


「目的は分かりませんが、ここがダンジョンである以上ダンジョンマスターが居る筈ですし相手もこちらに気付いて……あ、先に灯りを点けますね。トーチ!」


 アイカの――というかドローンに登載された光魔法のトーチを使用した。

ドローンが高性能のためか、普通のトーチより強力な光が左右に別れた通路の先を照らす。

 左側の通路を見ると、先の方は行き止まりで右に扉が2つ有る事から2つの部屋が有るんだと思う。

 対する右側は、左に幾つかの扉が見えるけど、通路の先はまだ続いてるようだ。


「してどうするのだ(しゅ)よ。このまま進むのか、それとも1度引き返すのか」


「う~ん、1度戻っ……いや、先に進みましょうか。子供達の事も気になるしね? フフフ」


 既にここのダンマスには気付かれてるだろうし、構わず進む事にした。


「二手に分かれようと思うんだけど、私は左側を見てくるから、アイカ達は右側を頼むわ」


 一方をアイカ達に振って、私は左側を進もうとしたんだけど……


「待て待て待て! さすがに(しゅ)を1人にする訳にはいかんわい。妾も共に行こうぞ」


 1人で行こうと思ったんだけど、何故かアンジェラが付いてくるって言い出した。

あれ? そういえば何で1人で行こうとしたんだろ? まぁいいや。


「ではわたくしとセレンで右側を見てきますね」


 こうして私とアンジェラ、アイカとセレンの二手に分かれてダンジョンを調べる事にした。




(しゅ)よ、奥の部屋は物置じゃな。何も無かったわい」


 奥に有った扉の向こうは物置だったらしい。


「そう……」


「それで(しゅ)は何を見ておるのじゃ?」


「ほら――この壁面に書かれてる文字。何か意味が有るのかなぁってね」


 私が懐中電灯で照らしてる壁面には、意味深な事が書かれていた。


 恐怖とは生き物を支配出来うるものか?

 恐怖とは必要不可欠なものか?

 恐怖とは糧に出来るのだろうか?

 恐怖とは取り除けるのか?

 恐怖とはどこまで耐える事が出来るのか?

 恐怖に染まった先には何があるのか……


 こんな感じの内容が、学校の教室くらいの部屋中至る所に書かれている。


「これってダンマスが書いたのよね?」


「だと思うが目的は分からんのぅ」


 どっちにしろ気味が悪いわ。

今の邸の雰囲気にはピッタリだとは思うけど。


「ところでアンジェラ、逃げた子供達の詳しい場所は分かるのよね? 早くそこへいきましょう。フフフ」


 しかし、部屋から出ようとしたところで、アンジェラによってガシッと腕を捕まれる。


「まぁ待て。妾としてはどうしても確認したい事があるのでな」


「あら、何かしら?」


 するとアンジェラはジィっとアイリの瞳を覗き込み、顔を近付け尋ねる。




「お(ぬし)……()()じゃ?」


 アンジェラが尋ねると、やや沈黙した後に口の端をつり上げたアイリが口を開いた。


「フフ、気付いてたの? 上手く誤魔化せてると思ったのに」


「当然じゃ。妾の(しゅ)はそなたのように目が紅くはない。それに見知らぬ場所を1人で歩き回るほど不用心でもない。よって貴様は別人じゃ」


 アンジェラの言う通りアイリの両目は紅い光を放っており、とても()()()()()とは認識されないだろうという事が分かる。


「成る程。目に関しては盲点だったわ、次は気を付けるわね」


「次があれば……だがの!」


 言い終わる瞬間、アイリを殴り飛ばそうとするが、ギリギリのタイミングで剣を盾に防いだ。


「ちょっとちょっと、それは乱暴なんじゃないの? これでも貴女の主人なんだけど」


「フン、何度も言わせるな。貴様は妾の主人ではない」


 なおも殴り掛かるアンジェラだが、当然手加減はしている。


「――っと、随分と乱暴な眷族ね。アイリが死んじゃってもいいのかしら?」


「良くはないな。――だがそれは貴様にも言える事だと思うが――の!」


 ドスン!


 巨大な丸太でどついたような一撃がアイリに直撃し、数メートル後方へ押しやられた。


「イタタタ……。本当にこれで手加減してるっていうの? 化け物ねアンタ……くっ!」


「フッ、化け物のぅ。もはや誉め言葉にすらならん――がの!」


 体勢を立て直す間もなくアンジェラの連撃が、2発3発と繰り出される。

いずれも辛うじて回避出来る程度に加減した攻撃だ。


「回避するだけでは妾には勝てんぞ?」


「ハァハァ……そのようね。だったらこうするまでよ!」


 アイリは後ろに大きく飛び退くと、アンジェラを目で捉え命令を下す。


「命令よアンジェラ、今ここで死になさい!」


 ダンジョンマスターであるアイリの命令であった。

眷族は絶対服従のため、どのような命令であっても逆らえない。

つまりアンジェラは……




「……フン、どうやら()()だと効果が無いようじゃぞ?」

(少々ヒヤッとしたがの)


「チッ! 面倒ね……」


 偽アイリの策は(もろ)くも崩れ去り、再びアンジェラの猛攻を受ける羽目になる。

が、そこでアイリに変化が訪れ……


(あれ? 私ったら今まで何を? っていうか何でアンジェラと戦ってる訳!? しかも身体が勝手に動いてるし!)


(しゅ)に宿った偽者め、さっさと出ていくがよい!」


「イ・ヤ・よ。折角出てこれたんだもの、この身体は私が頂くわ」



(会話から察するに、何者かが私の身体を乗っ取ろうとしてるみたい。でもそうはさせないんだから!)



「ならば叩きのめすのみじゃ!」


「アンタこそいい加減諦め……グッ!? こんな時に! ガハッ!?」


 目覚めた本物のアイリによる抵抗で急に動きを止めざるを得なかった身体にアンジェラの蹴りが炸裂し、そのまま部屋の中央に転がっていく。


「まさか本物の(しゅ)に戻ったのか!?」


 アンジェラとしてはギリギリで回避するであろうと予測していたが、まさか急に動きを止めるとは思わなかった為、回し蹴りがクリーンヒットしたのだ。

 アンジェラは慌ててアイリに駆け寄ろうとするが、ここで再び予想外の出来事が起こる。

倒れてるアイリの床が光を放ち出したのだ。


「この光は……まさか転移トラップか! (しゅ)よーーーーっ!」


 アイリの腕を掴もうとするアンジェラの手が虚しくも空を切る。

気を失ったままのアイリが何処かに転移してしまい、残されたアンジェラは慌てふためきアイカに念話を送るのであった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「おい坊主、いったいどこまで連れてく気だ? このままだと街から出ちまうぞ?」


 男児に案内されるままに付いて行くレイネと護衛達。

しかし男児は黙ったまま喋ろうとはせず、ひたすら歩き続けるのだった。

だが進む方向は街の外を目指しており、家屋も疎らで殺風景になりつつある。


「なぁ、このまま付いてって大丈夫だと思うか? 正直怪しいぜ」


「――だな。街に着いた時もおかしいとは思ってたが、明らかに怪しいな」


 ここで漸く怪しいと判断した彼等は、男児の肩を掴み強引に引き寄せた。


「おい、正直に答えろ坊主。いったい俺達を何処へ連れてく気だ? そもそもこの街の雰囲気は何なんだ、全員気味が悪いぜ!」


 護衛の男が問い詰めると、男児は初めて口を開いた。


「生き物、連れていく。侯爵の、命令」


「はぁ? 侯爵の命令だぁ!? その侯爵ってのはベタンゴート侯爵の事か?」


 男児は黙って頷いた。

もし男児の言う事が本当なら、ベタンゴート侯爵が何らかの目的で生物を集めてるという事になる。


「ケッ、冗談じゃねぇ! 何を考えてるのか知らねぇが、侯爵の趣味になんざ付き合ってられっか!」

「全くだな。こうなりゃ野宿した方がマシだ。さっさと引き返すぞ」


 彼等は(きびす)を返して馬車の元まで戻ろうとしたその時だ。

彼等の目の前で地面が複数の光を放ち、その光が収まるのと同時にプロトガーディアンが現れたのだった。


「こんなところにDランクのモンスターが!」

「お、おい、マズイぞ、さっさとずらからねぇと!」


 プロトガーディアンは全部で6体。

とても5人の護衛達では敵わない相手であり、

基本能力値に差がありすぎるため、戦闘と言えるほどのものではなく、一方的な虐殺であった。


「ギェッ!」

「ゴフッ!」


「な!? クソがぁぁぁ! ガハァ!」


 前の3体に気を取られてる内に後ろの3体に襲い掛かられ、2人が斬り殺されてしまう。

自棄になった1人が無謀な突撃で討ち取られ、更に1人はこっそりと逃げ出そうとしたが回り込まれて斬殺された。


「グェッ! ちく……しょう……」


 そしてついに最後の1人が倒れ、レイネだけがその場に残される事となり……


「い、いや……来ないで!」


『非戦闘員と認識。抵抗しないのであれば、命は保証しよう』


 尻餅をついているレイネに投げ掛けられた言葉は、彼等に大人しく従う事。

目の前で護衛が惨殺された事もあり、プロトガーディアンの指示に従い無抵抗の状態で――寧ろ腰を抜かしてたので助け起こされ、街から遠ざかってくのであった。


ウェアウルフ「腹がへったなぁ?」

村人「た、只今お持ちしますぅぅぅ!」

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