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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第6章:富と欲望のミリオネック
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盗賊村

前回のあらすじ

 山道にて盗賊の襲撃を受けたものの、難なくこれを粉砕し、逆に盗賊達を捕らえる事に成功する。

そしていざ尋問を……というところでアイリの様子がおかしくなり、盗賊の頭目をなぶり殺しにしようとしたところをアンジェラによって強制的にとめられる。

これで一旦は落ち着き、盗賊の拠点となる村へと向かう事にした。




 盗賊共を眠らせた後、ケオルっていう村に向かう事にした。

この村は村人全員が漏れなく盗賊だという通称盗賊村(私が命名)で、他所へ出掛けては悪さをして金目の物を奪ってくるというとんでもない村よ。

 この事態に領主は何をやってるのかって話だけど、恐らくはグルなんでしょうね。


「お姉様、例の盗賊村が見えてきました」


 山林に挟まれた山道の先にある雑木林を夕日が差し込み、その先にある村の家屋を赤茶色に照らしてるのが見える。


「それじゃあ手筈通りに頼むわね」


「了解です」

「了解じゃ」

「了解~♪」


 私達がこれから行おうとしてるのは、いかにも道に迷ったというフリをして村に入り込もうというものよ。

でもって襲ってきたところを返り討ちにしてやるという作戦ね。


 木々を掻き分けて村に入り込むと、農作業をしていたおばさんが怪訝な表情でこちらを見てきた。

うん、如何にも閉鎖的って感じがする村ね。

その表情は余所者を嫌う……というよりも、探りを入れているといった感じもする。


「アンタらどっから来よった? ここらは盗賊が出るって噂があっから普通は近寄らんで?」


 そんな盗賊が出没するところでよく生活出来るわね……とでも言ってやろうかな? いや、作戦に支障をきたすから止めとこう。



「どうやら私達、道に迷ってしまったらしくて、一晩泊めていただければ有り難いんですが……」


「ほぅほぅほぅ、そりゃ難儀なこっだぁ! なんなら(わたす)んとこで泊めたるけぇ付いて来よんね」


 道に迷って言ったら、途端に狡猾な笑みを浮かべながら付いてこい……だって。

もう何て言うか欲望が駄々漏れなんだけど、この人気付いてないんだろうか?


「アンタら飯さまだやろ? 久々の客人だけぇ()()しちゃるけ!」


 ()()ねぇ。

どんな歓迎をしてくれるのか楽しみにしときましょうか。


『歓迎会ですねお姉様。クラスメイト達が転校生に自己紹介したり、プレゼント交換をしたり、歌ったりするアレですよね?』


 それは小学校の恒例行事よ……。

それにプレゼント交換は普通お別れ会のイベントなんじゃないの? まぁこんな胡散臭いところとは、さっさとお別れしたいけども。

更に付け加えると、こんな閉鎖的な村の連中が歌ってるのを想像出来ないわ。






「か~ぜ~が呼ぶ~♪ 木霊を~♪ 轟かせて~♪」


 知らない楽曲だ……って私の予想以上だった……。

まさか本当に歌いだすとは思ってもみなかったわ。

というかこれって私達を油断させるために歌ってるのよね? 決して素でやってる訳じゃないわよね? しかも村人の大半が集まって酒盛り始めるとかバカなんじゃないのコイツら。

そこは普通、私達を酔わせた後に身ぐるみ剥ぐとかするもんなんじゃないの……。


(しゅ)よ、気付いてると思うがスープに眠り薬が入っておるぞ』


『うん、大丈夫よアンジェラ』


 一応眠らせて剥ぎ取るという計画は練ってたらしく、出されたスープに仕込まれていた。

けれど私には眠り薬は効かないだろうから、このまま飲んでも……にっが! このおばさん盗賊の上にまともに料理出来ないとか救いようが無いわ……。


 それからチラチラとこちらの様子を(うかが)ってくるんだけど、全く効果が表れないところを見て徐々に表情を曇らせる。

 私は加護のお陰で効かないし、アイカも自動人形(オートマタ)だから効かないし、セレンに神経ステータスの異常は無効だし、アンジェラも大量に摂取しないと効果は出ないしで、最初からコイツらの計画は破綻してるのよね。


「うっ……酒飲んだら小便したくなったぜ」

「俺もだ、ちょいと用を達してくるか」


 数人の男が民家から出ていく。

出る際に残ってるおばさん達に目配せしてるのを見ると、どうやら強行手段に出るとみて間違いなさそうね。

というか相手に気付かれてるんだけど、素人もいいとこだわ……。


(しゅ)よ、入口を封鎖するように男達が集まって来てるぞ。いよいよじゃな』


 よし、油断せずにいきましょうか。


 バタン!


「おいお前ら! 大人しくして……え?」


 勢いよく扉が開かれて男達が入ってくるけど、その男達に見せつけるように屋内のおばさん連中にナイフを突き付けた。


「大人しくしないとおばさん達の命が無いけどいいの?」


「ア、アンタら! は、早く、早くこの小娘共を何とかしておくれぇ!」


「い、いや、そう言われてもな……」


 先頭の男がチラリと見てきたので、ナイフを首に密着させた。


「ほらほらぁ、早く剣を捨てなさい。言っとくけど脅しじゃないからね? 西の山道に居た連中と同じ目に合いたくなかったら、大人しく従いなさい」


「西の……って、まさか!」


「多分アンタらの想像通りよ。私達はあの山道を通ってきたんだもの。当然そこでどんな連中が待ち伏せしてたか知ってるわよ?」


「バ、バカな事お言いでないよ! あそこには20人以上の男達が居るんだ、アンタら数人でどうにかなる訳ないじゃないか!」


 ちょ、このおばさん、ナイフ突き付けられてるのに身を(よじ)るとか、刺さっても知らないからね!?


「はいはい、静かにして。ならこの状況はどう説明するの? いい加減大人しくしないと、アイツらと同じように魔物の餌にするからね?」


 とはいえ、まだ魔物に食われたと決まった訳じゃないんだけどね。

でもここの連中にとってはインパクトがデカかったらしく、おっさん連中は武器を捨て、おばさん連中は大人しくなった。

 一応こちらの指示に従ってくれたので、そのまま尋問を開始した訳なんだけど、やっぱりアオダヌキの手掛かりは無し。

アレクシス王国へ出稼ぎに出てる奴がいないか聞いたけど、これも無し。

念のためアイカのドローンで読心スキルを掛けたけど、誰も嘘は付いてなかった。


「仕方ない、こうなったらベタンゴートって領主に会いに行きましょ」


「ですがここの村人はどうするのですか? 放って置くのも良くないと思われますが」


 そうよねぇ……。

このまま無罪放免って訳にはいかないし。

う~ん……。


「やはり~魔物の~餌でしょうか~?」


 ニコニコしながらのセレンの発言に、村人達は身体を寄せ合い震え上がる。


「ままままっとくれ! あたしらが悪かった、悪かったから見逃してくれ! もう明日から綺麗サッパリ心を入れ換えるさ!」

「んだんだ! 盗賊家業も今日までだ!」

「そん通りだ! これでも昔は真面目に働いてたんだ!」


 うわぁ、嘘臭い……。

これは絶対に見逃しちゃダメなパターンね。


『アイカ』


『はい、お姉様。読心スキルで調べた結果、全員上部だけでしか言ってません。何とかこの場を切り抜けようと必死のようです』


 やっぱりね。

でもどうしよう、まさかコイツらをゾロゾロと連れてく訳にもいかないし、かといって放置するのもダメとなると……


 現状だと()()()を置いとくしかないわね。フォーカスさんに処遇を任せるまでは悪さをさせないようにするって事で、面倒だからそのままフォーカスさんに丸投げしよう。

だから引き渡すまでは()()()()()に見張らせとくって事で。

うん、我ながらナイスアイデアだと思う。


「は~い、それじゃあ皆さんそのまま外に出て」


 私の命令に従い、武器を残したままゾロゾロと外へ出ていく村人達。


「お姉様、モンスターを召喚するのですか?」


「ええ、やっぱり見張りがいないと好き勝手するのは目に見えてるからね」


 村人の顔を見ながら言うと、目を泳がせながら顔を逸らした。

アンタらの考えてる事はお見通しよ。

って事で、パパッと召喚しちゃおう。


「血を求めし本能よ、肉を求めし刃よ、()(もと)に集い、仮初(かりそ)めの(めい)を与え、その(せい)(われ)()くさん、迷宮魔召喚(サモンモンスター)!」


 村の中に31体のウルフを召喚した。

内訳はホワイトウルフ10体、レッドウルフ10体、ブラックウルフ10体、そして司令塔に人狼(ウェアウルフ)を1体よ。


「うわぁ! モ、モンスターが急に!」

「何故でこんなところに!?」

「おおお、お助けぇ~!」


「はいはい、騒がないで。今日から暫く彼等がアンタらを見張るから、勝手に村から出ないようにね。知ってる人も居ると思うけど、ウェアウルフはCランクのモンスターだから、命令を無視するなら死ぬ覚悟を決める事ね」


 盗賊とはいえ元は只の村人だっただろうから、彼等が相手に出来るのは精々Eランクまででしょうね。

今回召喚したウルフ達はDランクだから、彼等に勝ち目は無いわ。


「お、おお、お前さんはもしかして、ダンジョンマスターってやつなんか!?」


「そうよ。アンタらが襲ったのはダンジョンマスターである私よ。さっきも言ったけど、死にたくなかったら大人しくしててちょうだい。それから――そこのアンタ」


「お、俺か?」


「そうよ。暗くて見辛いかもしれないけど、隣にブラックウルフが居るから尻尾を踏まないようにね」

「ヒェッ!?」


 私の言葉に男が慌ててズザザザーッと後ずさる。


「そこのおばさんの後ろにも居るわ」

「ヒィィィ!」


 このおばさんは驚いて前のめりに倒れて腰を抜かしてる。


「そこのオッサン(地面を)踏んでるわよ」

「フォォォォォォ!!」


 このオッサンは2メートルくらい垂直に飛び上がってから気絶した。

なんかちょっとだけ面白いかも。


(しゅ)よ、遊んでないで(はよ)ぅせんか……』


『ああ、ゴメンゴメン、ちょっと癖になりそうな面白さだったもんだからつい』


「え~コホン。要するに私達が戻って来るまで村の中で普通に生活してればいいのよ、分かった?」


 念を押すように確認すると、村人全員がブンブンと顔を上下に振った。

当面はこれで大丈夫でしょ。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「コイツで最後だ! おらよ!」


 ズバッ!


「グギャァァァ……」


 男が振り下ろした大剣をまともに食らい、ゴブリンが断末魔を上げて息絶える。


「終わったか。――よし、行くぞ」


 ルートを変更してから丸1日。

レイネを乗せた馬車は順調に進んでいた。

先程のような少数による魔物の襲撃が有った以外は、問題となる点は無かった。


「もう少しでロータルの街に着くだろうから、そこで1泊しよう」


 だいぶ日が傾いて来たようで、これ以上進むと夜間走行となる。

事故が発生しやすく魔物の襲撃にも注意が必要になるため、無理せず街で泊まる事にした。


 それから完全に日が落ちる前にロータルへ到着し、街門を潜って奥へと進んでいく。

そんな彼等一行を、街の住人は監視するような視線を向けてきた。


「なぁ、この街の連中、やけにジロジロと見てくる気がしないか?」


「ああ、そうだな。何だか見張られてるみたいで良い気分にゃなれねぇ。さっさと宿を探すぞ」


 やがて大通りを進んでくと左側に宿屋が見えてきたので、まずは裏手に回って馬車を止め、宿の中へと入っていくのだが……


「おーい、誰か居ないかぁ?」


 中には誰も居らず、隣接している食堂もガランとした有り様だ。


「おかしいな。灯りは点いてるのに誰も居ないとは……」


「何か急用で出払ってるのかもしれんな。別の宿を探そう」


 そう言いつつ宿を出ると、いつの間にか見知らぬ男児がジッと彼等を見ていた。

その様子が少々気にはなったものの、急いで宿を探さなければならないとあって無視して素通りしようとしたのだが、徐に行く手を阻むとある方向を指でさした。


「ん? もしかして宿屋があるのか?」


 男が尋ねるも、男児は黙って歩き出す。

それを見た彼等は、顔を見合わせ互いに首を傾げる。

だが初めてやって来た街の情報に乏しい彼等は、結局男児の後を付いて行く事に決めたのであった。


作者「おかしい。何故かホラーチックになってしまった……」

アイリ「ドンマイ」

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