改変バトルロイヤル3
前回のあらすじ
アマノテラスの誘導により、アイリのダンジョンへと突撃したダンマス達。
迎え撃つアイリも罠を増やすなどして応戦するが、それでもやはり数は多い。
味方のダンジョンも徐々に攻略されていく中、ついにアイリの仕掛けた最大級の罠が発動するのだった。
「さすがお姉様ですね。戦わずして勝つとは、正しくこの事なのでしょう」
「そうでしょうそうでしょう。私としてもアイリーンの宣伝になるし、一石二鳥よ」
今スクリーンからは街のあちこちで賑わいを見せている様子が窺える。
遊園地は勿論の事ゲーセンも非常に好評で、あるダンマスがスロットマシンで遊んでる横で、眷族のゾンビがバイ〇ハザードをプレイしてるという奇妙な光景も映っていた。
更に隣ではチャラそうな男の人が格闘ゲームをプレイしてて、ガードキャンセルが上手くいかへん! ってホークみたいな喋り方で台をドついてる。
壊したら弁償してもらおう。
そして中にはスポーツジムで汗を流してる変わり者もいるようで、眷族のスケルトンが重量挙げに挑戦していた。
というか骨折しても知らないわよ……。
「雑貨屋と武器防具の店は未開放ですが、飲食店は開放されてるので、こちらも好評ですね」
普通に食事出来るのでここも人気のようね。
遊園地とゲーセンを無料開放してるのとは別に飲食店は有料になってるんだけど、皆気にせずお金を落としていく。
特に人気なのはケーキバイキングで、多くの女性と甘党の男性がケーキを貪っていた。
あれ? 今チラッとルーが見えたような気がしたけど……気のせいよね?
「ところで、ミゲールさん達はどうしてる?」
「ああ、それなら問題ありません。お喋り好きなダンマス達と交流してるみたいですので」
それもまた奇妙な光景ね。
本来グロスエレム教国はダンジョンとは徹底的に敵対してるから、ミゲールさん達とダンマスは交流なんて不可能な筈よ。
けれどもう祖国は見限ったようだから、気にしてないのかもしれない。
「それからエマルガ達は遊園地ですね。ダンマスの少年少女と交ざって遊んでるようです」
その少年少女の中にさらっとメイプルが交ざってるわね……まぁ良いけど。
「それで、肝心の闘技場エリアは?」
「はい。こちらはまだ突破されてませんね。それに挑戦者も極僅かですので、攻める側も諦め気味なのでは?」
「だと良いんだけどねぇ……」
それでもアマノテラスは最後まで足掻くでしょうね。
寧ろアイリーンを見たら激怒するんじゃないかな?
トミー 前回勝者
『急にすまん、アイリ。こっちはやられちまった』
あらら。トミーは攻略されちゃったか。
でもよく持ちこたえた方よ。
トミー 前回勝者
『これで残ってるのはアイリと千手を含めて4人だな』
うわぁ、随分減っちゃったのね。
まだ1時間しか経過してないけど、殆どが攻略されたようだ。
でも侵入者側も殆どがリタイアしてる筈よ。
何せアイリーンには400人近くのダンマスが居るんだからね。
千手 前回勝者
『やべぇ、やべぇぞアイリ! アマノテラスの野郎が破竹の勢いで攻め込んで来てるぞ!』
ん? 今まで動いてなかったみたいだけど、漸く気付いたのかな?
千手 前回勝者
『ああ。何かひたすら【アイリふざけんな】を連呼してぜ? そんでもって大量のモンスターを寄越しやがった!』
どうやら千手のダンジョンにも攻め入ってるみないね。
私のダンジョンには来てないから、こっちは最後に――ってとこかな?
「お姉様、また1つ攻略されました。これで残りは3つです」
早いわね……。
アマノテラス以外にも侵入者側は居るのかな?
「現在アイリーンに居るダンマスは556人で、前回勝者側が20人ですから536人のダンマスが侵入者側となります」
それってもうリタイアした9割がここに居るって事よね?
「侵入者側の総数は543人で、6人がご自分のダンジョンへ帰還されてますから、実質1人しかまともにバトルを行ってないという事になります」
え~と……それってつまり……
「アマノテラスしか居ないって事?」
「可哀想ですがそうなります。あ、また1つ攻略されましたので、お姉様と千手様の2人きりですね」
残りは私と千手だけか……というか、
「その2人きりってフレーズは止めてくれない? アイツと2人きりはさすがに嫌なんだけど」
まぁアマノテラスよりは全然ましだけど。
「相変わらずですね、お姉様。あ、とうとう最後の砦が陥落したようです」
最後の砦って……
千手 前回勝者
『アイリィィィ! やられたぁぁぁ!』
うるさいわね……。
やられたのは分かるから、大人しくしててほしいんだけど。
アイリ 前回勝者
『アマノテラスは私が返り討ちにするから、アンタは大人しくアイリーンで遊んでなさい。まだ1時間は残ってるんだし』
千手 前回勝者
『おおお、ありがとうアイリィィィ!』
さて、うるさいのはフェードアウトしてった事だし、アイツとの最終決戦といきましょうか。
残り26人中1人
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「チッ、無駄にダンジョンがデカイせいで手間取ったじゃないか」
こちらは、たった今千手のダンジョンを攻略したアマノテラス。
眷族が使えない中、新たに召喚したモンスターによる無情なまでの力押しで、強引な攻略に乗り出したのだ。
引き連れてるのはヒポグリフにアイスワイバーン、アースドラゴンにゴールドゴーレムといったいずれもAランクのモンスターである。
「ここにはもう用はない。次はいよいよアイリのダンジョンだ!」
他のダンジョンに散らばってたモンスターを集約すると、アイリのダンジョンへ送り込む。
既に他のダンマスが築いた道筋をなぞって1階層2階層と進んで行く。
そして5階層で街を一瞬だけ流し見すると直ぐに6階層へと向かった。
だがそこには……
「なんだここは? 闘技場が無いぞ!?」
闘技場の影も形も有りはせず、代わりに有るのは開放感溢れる見渡す限りの大平原であった。
これもアイリによる作戦の1つで、アマノテラスが強力なモンスターを多数召喚したと聞いて、急遽階層入れ換えを行ったのだ。
入れ換えたのは15階層の平原エリアで、実質最後の砦になる。
「こんなだだっ広い場所じゃ逆にこっちが有利な筈だが……まぁいい。進め!」
障害物が一切無い真っ昼間の平原をモンスターが群となり進軍するが、すぐにここが生易しい場所ではないと理解する事になる。
ドゴォォォン!
「な、なんだ!?」
突然アースドラゴンが爆発し、上空にはキノコ曇ができ上がっていた。
今も燃え移った炎によりアースドラゴンはその場でもがくが、それは更なる惨劇を生み出す事となる。
ドゴドゴドゴォォォン!
「う、うわわわ、何なんだよいったい!」
地面を転がってもがくアースドラゴンは別のトラップに掛かり、木っ端微塵に飛び散ってしまった。
「これは……地雷か!」
漸く気付いたアマノテラスの言う通り、この大平原には無数の地雷が仕掛けられており、アースドラゴンは見事にそれを踏み抜いたのである。
「マズイ! 全軍停『ドゴォォォン!』
慌てて止めようとするも一歩間に合わず、ゴールドゴーレムが新たに地雷を踏みつけてしまった。
「ちくしょう! こうなりゃ仕方ない。せめて空から……」
地上は諦めて上空から攻めようと考えたが、それを予め予測するかのように、遠くからミサイルが飛んできた。
1発目は回避したが、2発目3発目になると徐々に苦しくなる。
何故なら回避されたミサイルは地上に落下して爆発炎上を引き起こし、その爆風にグリフォンなどが煽られるのだ。
すると当然バランスを崩し、回避出来なくなったところへミサイルが直撃した。
「えぇい、クソが! 何でミサイルまであるんだよぉぉぉ!」
地上は地雷、上空はミサイルと、正に二つの双璧に阻まれる形になり、どうにか突破しようにもボス部屋の場所は近くには見えず、闇雲に進む以外の方法はない。
「何でだ……何でだよチクチョォォォッ!! こんなの勝てる訳ないじゃないか!」
先には進めず、かといって引き返す選択肢も無く、ミサイルや地雷の洗礼をこれでもかというほど浴びたアマノテラスは、制限時間いっぱいまで自身のモンスターをボロボロにしてしまうのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
そんなアマノテラスの無様な様子をコアルームで寛ぎながら観戦してたのは、当然の如くアイリである。
「フフン、あと10分しか残ってないから、ボス部屋まで来るのは無理ね。一応召喚して待ってたんだけど」
「お姉様、それは仕方ないかと。あの地雷原とミサイルの応報に耐えうる強者は、アンジェラやリヴァイくらいかと。モフモフでも危険だと思われます」
うん、それくらいじゃないと鉄壁の防御とは言わないしね。
私としては絶対安心を得たい訳で、中途半端に手抜きをするつもりはない。
「でも折角召喚したのに無駄になったわね」
そう言ってボス部屋いる新たに召喚されたモンスターを見る。
うん、逞しい外見だわ。
このモンスターも眷族にしようかな?
「眷族にするのですか? となると、さしずめルーの妹ってところですね」
う~ん……そうなるのかな?
私としても指定した訳じゃないんだけど、ランダム召喚をやったら出てきちゃったのよね。
「ミスリルゴーレムが」
ミスリルゴーレムはSランクのゴーレム型モンスターでオリハルコンゴーレムよりも1ランク下になるから、ルーの妹として迎えるにはピッタリね。
前向きに検討しよう。
そして10分後、審判によるバトル終了宣言と共に私を含む前回勝者チームの勝ちが決まり、私の対戦成績も16勝3敗となったのでした。
因みに審判の終了宣言はアイリーンにいたダンマスは誰一人として聞いておらず、審判のエーリッヒさんはかなり凹んだらしい。
ルカーネロ「ふむ、お化け屋敷ですか。しかしどのお化けも顔色が優れませんね。僕が彩って差し上げましょう!」
ユーリ「これ以上グロくしないで!」




