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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第5章:熱き猛るダンジョンバトル
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ユーリとルカーネロ

前回のあらすじ

 アイリへの逆恨みによりユーリへの襲撃を計画したアマノテラスだったが、依頼した闇ギルドがユーリの新たな眷属であるルカーネロによって返り討ちに合ってしまい計画は失敗に終わる。


 (おびただ)しく咲き誇った血液の薔薇が盛大な最期を披露しているコアルームで、ユーリはルカーネロによって抱き起こされた。

ルカーネロが魅せた(見せた)血の演舞中に途中で気を失ってしまったのだが、何とか意識を取り戻したようだ。


「……ん、……あれ? 私今まで……」


 朧気な意識が徐々にハッキリとしてくる。


「漸くお目覚めですか? 僕のマスター」


 そしてユーリが完全に意識を取り戻したのと同時に、目の前に返り血を浴びたルカーネロの爽やかスマイルが現れる。


「――イヤァァァァァァ!!」


 だがユーリには刺激が強すぎたようで、ルカーネロを突き飛ばすと再び気絶してしまうのであった。


「やれやれ。美し過ぎるのも罪ですねぇ」


 ――という一連の流れを何度か繰り返してると、漸く……本当に漸くユーリが冷静さを取り戻した。


「あのぉ……これって……全員殺しちゃったんですか?」


 恐る恐るといった感じにユーリが尋ねる。

見た限りでは生きている者は居ないように見えたが、もし死んでると思い込んでるソレが突然動き出したら、今度こそ心臓発作を起こす自信があったためだ。


「安心してください。全員キッチリと息の根を止めてありますので」


 それを聞いて少しだけ緊張が和らぎ、肩の力がスッと抜けていく。


「そうそう、リーダーと思われる男が罠に掛かって絶命してましたよ。流石は僕のマスターです!」


「そう言われても、あんまり嬉しくないんですが……」


 両手を上げてややオーバーに誉め称えるルカーネロとは裏腹に、ユーリの心境は複雑であった。

別に自ら進んで殺したいと思ってはいないので。


「それにこの状態……」


 殺しに来た相手を殺すのは仕方がない。

しかし、だからといってコアルーム一面を血の海にしなくても……というのがユーリの本音だ。

それに誰だって1度血に染まった場所で寝泊まりをしたいとは思わないだろう。


 そもそもルカーネロが眷属になった経緯はというと、定期的にダンジョン通信で行われてるダンマスジャンボ宝くじが原因だったりする。


 1週間くらい前の事だが、興味本意で購入した宝くじが見事当たり、賞品として眷属召喚チケットを入手したのである。

このチケットは、過去に自分のダンジョンで落命した者を1人だけ眷属として復活させられる大変貴重なチケットなのだ。

 以前からアイリに負担をかけたくないと思っていたユーリは、このチケットで優秀な眷属をゲットしようと決意し使用した。


 すると過去に死んだ者達が一覧となって表示されたので、その中でもステータスがずば抜けていたルカーネロを選択したのだ。

当然眷属であるルカーネロはユーリに対して絶対服従なので、裏切られる心配は無い。無いのだが、代わりに別の心配事が出来てしまった。

 それはルカーネロの本来の性格が問題で、ターゲットを美しく彩る(血しぶきを上げて血の海を作る)事を趣味としてるため、当然ながらそんな趣味に付いていく事はユーリに出来る筈はない。

なのでさっさとダンジョンに吸収を……というところで、ルカーネロがそれを(さえぎ)るように声を上げた。


「そうそう、すっかり忘れてましたが、この構成員達はマスターを拘束した後に、アイリというダンジョンマスターに通信を繋げさせるつもりでいたようですよ」


「アイリちゃんに?」


「ええ。ですが拘束が面倒なら殺害してもいいと、クライアントから言われてたみたいですがね」


 当然ながらユーリ視点ではアイリとアマノテラスのやり取りは知らないので、何故自分が命を狙われてるのか分からない。

なので真相を知るためにも、ユーリはアイリへと通信を繋いだのであった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 そして通信を受けたアイリはというと、繋げてびっくり、スクリーン越しに見る惨状を見て思わず胃液が込み上げてくるのを必死に堪えたつつ、アマノテラスを睨みつけた。


アイリ

『アンタ、こんなもの見せていったい何を考えてるの?』


 こんなスプラッターな趣味を見せつけるとか普通じゃない。

というか、本当にこの惨状を見せつけるのが目的とは思えないんだけど……あ、まさかコイツ……


アマノテラス

『ハッ、何をだって? 期待のルーキーとは名ばかりで以外と察しが悪いんだねぇ。そんなの決まってるじゃないか、君が大切にしてたお友達の運命はそこに居る闇ギルドの連中が握ってるって事だよ。でもって、それを僕が瀬戸際で食い止めてるって訳さ。分かる?』


アイリ

『………………』


アマノテラス

『あれ、どうしたのさ? まさかそんなにショックだったのかい? でも大人しく僕に従ってくれるなら悪いようにはしないよ?』


 やっぱりコイツ、闇ギルドの襲撃が成功したと思い込んでるのね。

というより、成果を確認せずにドヤ顔してくるとか恥ずかしいにも程がある……。


アイリ

『あのさ、一応アンタのために言ってあげるけど、ユーリの方をよ~く見た方がいいわよ?』


 このままだと話が噛み合わないから教えてあげる事にする。

なんて優しいのかしらね私って。


アマノテラス

『往生際が悪いねぇ。僕が見たところで結果は何も変わらないとい……へぁあ!?』


 随分と間抜けな声を出したけど、まさか闇ギルドが失敗するとは思わなかったんでしょうね。

つい最近まで丸腰のような状態だったから、それを仮定して襲撃させたんだろうけども。


「それにしても……」


 最初アマノテラスから聞かされた時は心配したんだけど、闇ギルドを返り討ちに出来るなんて凄い成果よ。

よく見るとスクリーン越しに眷族らしき……いや、眷属かな? ソレらしき男が居るみたいだから、その男が余程強いのね。

 でも何処かで見たような気がするんだけど……






 何処だったかしらね? ちょっと思い出せない。


アマノテラス

『な、何だよ……何でなんだよぉぉぉ! おいお前、どうせお前が何かやったんだろ!? そうなんだろ!?』


 ムキになって私に当たるのは止めてほしいんだけども……。

だいたい私は何もしてないし。


「でもきっかけを作ったのはお姉様なのでは?」


 黙らっしゃいアイカ! 例えそうだとしても責任はとりません!


アマノテラス

『ええい、クソクソクソッ! どいつもこいつもふざけやがって! 特にお前だアイリ! どうやって地球の技術を持ち込んだか知らないが、兎に角不快だ、不快だよお前!』


 コイツ! 地球を知ってるって事は、コイツも転生者だったのね。

でもこんな奴とは仲良く出来ない。

コイツも同じように思ってるだろうけども。


アイリ

『不快不快ってうるさいわね。そんなに不快なら私に関わらなければいいじゃない』


アマノテラス

『うるさい黙れ! お前が僕に指図するな! だぁぁぁクソクソクソクソ! 絶対に……絶対に後悔させてやるからなぁぁぁ』


 アマノテラスは捨て台詞を吐いて通信を切った

正直迷惑だから関わりたくないんだけど、さすがに命を狙う奴を放置するつもりはない。

近い内に落とし前をつけてもらいましょ。


 で、ユーリはというと……


ユーリ

『あのぉ……よく分かりませんが、あたしって巻き込まれちゃった感じですか?』


 よく分かりませんと言いながら、よく分かってるじゃない。


アイリ

『ゴメンね、巻き込むつもりはなかったんだけど、危険な目に合わせちゃって』


ユーリ

『いえ、アイリちゃんには日頃助けてもらってたし、全然気にしてませんよ? それに今は強い眷属がいるし大丈夫です』


 と言っても限度があるしね。

毎度毎度巻き込む訳にはいかないから、そこら辺も考えないといけないかもしれない。


アイリ

『兎に角、あのキチガイな少年は私に任せといて。もう2度と手出しさせないから』


ユーリ

『はい、お任せします』


 何にせよユーリが無事で良かったわ。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 アイリとの通信を終えたユーリは、改めてコアルームを見渡す。

今現在7つの死体とその周辺に真っ赤な地図が出来てる状態で、これを片付けない事にはまともに生活が出来ないのは誰でも理解できよう。


「ううぅ、気持ち悪い……。早いとこ吸収しちゃおう」


 ダンジョンコアに命じて異物を全て吸収させようとする。

が、それを見ていたルカーネロが待ったをかけた。


「お待ち下さい、僕のマスター! この芸術を失うなんてとんでもない!」


(残しとく方がとんでもないですよね、明らかに……)


 これ以上は話にならないと思い吸収を続けさせる。


「ああ、折角の彩りが! 勿体無い……。せめてリーダーの男の首を壁に飾って置きましょうよ。ねぇ僕のマスター?」


「嫌です、そんな趣味有りません!」


「……残念です」


 ユーリに拒否されガックリと肩を落とすルカーネロだが、彼に共感する者は余程の変わり者であろう。


「はぁ……。何でこんな人を眷属(けんぞく)にしちゃったんだろ……」


 ユーリもユーリで疲れた表情で溜め息をつく。

しかし実際に選択出来たのは、ルカーネロか他の闇ギルドの構成員しか居なかったため、そうなると当然ステータスが頭一つ抜き出てるルカーネロしか選びようがない。

 そして今に至って少々後悔してるユーリだが、今更返品はきかないので今後も苦悩が続きそうである。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ちくしょうチクショウちくしょうチクショウ! 畜生がぁぁぁぁーーーーっ!!」


 見事に計画がぶっ壊れたアマノテラスは酷い荒れようだった。

これは単純に計画失敗とは別の理由が含まれており、バトルロイヤルを観戦していた他の排他主義者にフェザードラゴンが一方的に駆逐されるところを見られたのも原因の一つだ。

当然バカにされ激昂するアマノテラスは、アイリを絶望の底へ叩き落としてやろうと画策したのだが、それは脆くも崩れ去った。


「クソがクソがクソがぁぁぁっ! なんで僕がこんな目に合わなきゃならないんだ! そうだ、おかしいんだ、こんなのは間違ってる。 こんな筈じゃなかったんだぁ! 何か……何か良い方法はないか、何か……」


 もう是が非でもアイリを痛い目にあわせたいアマノテラスは、思考を練りに練った。

だが簡単には思い付かない。

アイリにはSランクのデルタファングがついてる事は既に知っており、それをどうにかしない限り勝機は無いだろう。


「そうさ、あんな眷族さえ居なければ……居なければ?」


 ここでハッと閃く。

アイリの強みは強力な眷族の存在だ。

ならばソレが無ければ牙の抜けた狼も同然。


「ハ、ハハ、ハハハハハハ! なぁ~んだ、簡単な事じゃないか。脅威ならその強みを取り除けば良かったんだ!」


 何かを思い付いた少年は急に笑いだしたかと思えばすぐに真顔に戻る。


「今に見てろ……必ず……必ず後悔させてやるからなぁ! あ~ヒャッヒャッヒャッ!」


 狂気に駆られた少年は気味の悪い笑い声を撒き散らすと、新たな計画に取り掛かるのだった。


ユーリ「血が怖くて夜も眠れません……」

アイリ「強く生きなさい」

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