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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第5章:熱き猛るダンジョンバトル
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反り立つ壁

前回のあらすじ

 アンジェラたっての希望により、Sランクのダンマスが居るダンジョンへと送り込まれるが、案の定、瞬く間にそこを攻略してしまう。

そしてダンマスと眷族によるヒューマンドラマを見せつけられたアンジェラは、何故かお茶を堪能して居り、帰還が遅いと思ったアイリにより呼び戻されるのであった。


 アンジェラがアイリにより呼び戻された頃、アイリのダンジョンを攻略しようとしてるダンマス達は4階層を突破していた。

部隊編成されたゴブリンがボス部屋にて待ち構えてたが、何とか数で押し切る事に成功したのである。


アーサー アイリーンにようこそ♪

『何とか突破出来たか。ゴブリンジェネラルやゴブリンナイトは少々厄介だったが、物量作戦が項をそうした形だな』


 人形(ひとがた)モンスターを中心に部隊編成した若き青年のアーサーは、主に遊撃を行う事でここまで進んで来た。


サーリア アイリーンにようこそ♪

『でもこの程度で苦戦してるようでは攻略なんて出来ませんことよ? この先はもっと過酷になってるのでしょうから、突破出来て当たり前……くらいで挑むべきですわ』


 続いてゴーレムやオーガ等の大型なモンスターで部隊を固めたのが、真っ黒なドレスを纏った紅一点であるサーリアだ。

彼女のモンスターが、ゲームで言うところの所謂(いわゆる)タンクという役割をこなし、被害を抑えてきた。


ベルトラン アイリーンにようこそ♪

『然りですな。あの期待のルーキーの事です。きっと罠を張り巡らせて待ち構えてる事でしょう』


 最後にこの男、タキシードにシルクハットというマジシャンにも詐欺師にも見える中年男は、後方支援と情報提供を行う事で他2人を引っ張ってきたと言ってもいい。


アーサー アイリーンにようこそ♪

『まぁ慌てるな。後続のグループも来てるだろうし、いざとなりゃ合流して共闘するさ』


 アーサーの思惑通りになるかは別問題だが、徒党を組まないとアイリのダンジョンを攻略するのは夢のまた夢のという事は確かだろう。

特に4階層まではアイリによって手心を加えられてるため、比較的容易に突破出来るようにしてるのである。


ベルトラン アイリーンにようこそ♪

『5階層は街になっているとの事でしたが、恐らく不可侵エリアに設定されてる筈です。なのでここは6階層になるのでしょうな』


サーリア アイリーンにようこそ♪

『不可侵エリアの街。確かこの名前横にウザいくらい出てくるアイリーンというのが街の名前でしたわね』


 実はダンマスが自身のダンジョンに名前を付ける事ができ、通信時に名前の横に表示する事も可能となっている。

因みに、この恥ずかしいネーミングと表示をONにしたのは、大方の予想通りアイカである。


アーサー アイリーンにようこそ♪

『そうなのか? よく分からんが、要するに6階層まで来てるという事か』


 ベルトランの言う通り、既に彼等は6階層に足を踏み入れており、薄暗く長い石造りの通路が先へと続いている。

横道は無く、真っ直ぐな一本道をそのまま進んでると、通路の先から光が射し込んでるのが見えてきた。

その光を潜ってくと、広く切り開かれた場所にたどり着いたのであった。


アーサー アイリーンにようこそ♪

『ここはいったい……』


ベルトラン アイリーンにようこそ♪

『暫し待たれよ。私の記憶を紐解けば…………む、思い出しましたぞ。ここは闘技場エリア、1体ずつ登場するモンスターを撃破しなければ、先へは進めませんぞ』


アーサー アイリーンにようこそ♪

『闘技場……って事は出現するやつを全部倒さなきゃならんのだな』


サーリア アイリーンにようこそ♪

『そういう事ですのね』


 ベルトラン以外の2人も詳細を理解するのと同時に、闘技場を挟んだ反対側から対戦相手のモンスターが姿を現した。


「カカカカカ!」


 骨だけの顎をカクカク鳴らして現れたのは、Dランクのスカルソルジャー。

これまで配置されていたモンスターよりも格上である。


アーサー アイリーンにようこそ♪

『Dランクか……。一斉にかかればいけるな』


サーリア アイリーンにようこそ♪

『いきますわよ!』


 まずはサーリアのオーガが正面に立ち、その両脇をクラッシュベアという獰猛熊が隙間を固める。

更にアーサーの木製人形(ウッドパペット)を左右に展開させ、いつでも回り込める状態を作り上げた。


「カカカ!」


 と、そこへスカルソルジャーが正面のオーガに突っ込んで来た。

上段から振り下ろしてきた剣を斧で防ぐが、次の足下への払いのけを防ぎきれず、脛を斬られてしまう。


「ガァァァ!」


 その斬られた痛みにより声を上げるのと同時に両脇のクラッシュベアが襲いかかるが、スカルソルジャーはすぐに後方へ飛び退き距離をとった。

そして再び斬りかかろうとしたところで、ベルトランのコボルト達が弓矢で牽制する。

だが肉付きが無いため殆どの矢は奥へと逸れてしまうのだが、その牽制の間にスカルソルジャーへの包囲が完成した。


アーサー アイリーンにようこそ♪

『よし、今だ!』


 この機を逃すまいとアーサーの掛け声に応じてオーガとクラッシュベアが突っ込む。

当然スカルソルジャーは回避行動をとろうとするが、回り込んだウッドパペットに阻まれ動きを止める。

そこへクラッシュベア2体が殴り掛かり両腕を砕くと、オーガにより振り上げられた斧がスカルソルジャー目掛けて振り下ろされ、脳天からカチ割る事に成功したのだった。


サーリア アイリーンにようこそ♪

『やりましたわ!』


 目に掛かった髪をサッと後ろに流し、笑顔を露にするサーリアだったが、それも束の間。

すぐに次の対戦相手が近付いてくる。


ベルトラン アイリーンにようこそ♪

『さぁ、次が出てきましたぞ!』


 だが6階層最初の敵を撃破した一行は、その勢いのままに次々と打ち破っていく。

突進鹿(とっしんじか)として厄介がられるブレイブガゼル、硬い皮膚と人1人を丸飲み出来る大口を持った人食いワニのロックダイル、更には人間程の大きさで威圧する巨大ハリネズミのバリスタヘッジホッグ――共にDランク――を立て続けに撃破したのだ。


 そして益々勢い付く彼等の前に、事実上6階層のボスである5体目のモンスターが現れる。

1歩進む度にドスンと地面を揺らし、軽く砂利を舞い上がらせるその正体は……


サーリア アイリーンにようこそ♪

『このモンスターは……カオスウェアボア!』


 カオスウェアボア……猪が二本足で立ち上がり行動する人猪(ウェアボア)の上位種で、オーガ並の巨体を誇るCランクのモンスターだ。


アーサー アイリーンにようこそ♪

『コイツは厳しいな。ここに来てCランクが相手とは……』


ベルトラン アイリーンにようこそ♪

『然り。ですが引き返すのは無しですぞ? ここまで来たからには、行けるところまで行くべきですからな』


サーリア アイリーンにようこそ♪

『勿論ですわ。強敵と戦ってこそ強くなれるのですからね』


 退かずに挑む事を選択した彼等は、素早く陣形を組み上げると強敵(カオスウェアボア)の出方を窺う。


 一方のカオスウェアボアは、三者の意気を汲み取ったかどうかは定かではないが雄叫びを上げながら手にしたハルバードを振り回して接近してくる。


 ガキィィィン!


 胴体を分断せんと迫った斧槍をオーガの斧が阻む。

だが力は相手が上らしくオーガは徐々に後ろへと追いやられるのだが、その隙にクラッシュベアが左右から襲いかかった……のだが……


「グガァァァ!?」


 力を弱めハルバードを引き寄せたカオスウェアボアの動きによりオーガが前につんのめる。

突然オーガが目の前に来ため、クラッシュベアは攻撃を中断せざるを得ない状態となり、その場で棒立ちとなった。


 だがCランク相手に隙を作る訳にはいかない彼等は、すぐに雑魚モンスターを当て付ける。

待機中だったアーサーのゴブリンと、同じく後方で控えてたサーリアのオーク――いずれもFランク――が一斉に襲いかかる。


「ゴウゥゥゥ!」


 だがカオスウェアボアが前に踏み込むタイミングでハルバードをフルスイングすると、群がる雑魚が上下に分断されながら周囲に散った。

 しかしそれだけでは終われない。

ゴブリン達が犠牲になったが、弓矢を持つコボルトと火球を放てるゴブリンメイジが動作直後で硬直しているカオスウェアボアに集中砲火を浴びせる。


「グゥゥゥ……」


 多少はダメージがあったようで、後ろへと後退していく。


ベルトラン アイリーンにようこそ♪

『あの斧槍の範囲に入ると危険ですな。ここはジワジワと遠距離から削っていくのが吉となるでしょう』


アーサー アイリーンにようこそ♪

『賛成だ。しかし向こうから接近されては回避が難しい。となると……』


 男2人の視線がサーリアへと注がれる。

視線を受けた彼女は、その意味を理解して頷いた。


サーリア アイリーンにようこそ♪

『分かってますわ。連れてきたオーガとクラッシュベアを全て投入しましょう。お2人の盾を(まっと)う致しますわ』


 彼等が立てた作戦は、盾役は回避せずに攻撃を受け止め、支援部隊は後方から遠距離射撃を行う。

そして盾役が討ち取られて出来た穴をフォローするために、遊撃者により注意を引き付けるというものだ。

 こうして賛成が固まり、再び戦闘へと集中する。


アーサー アイリーンにようこそ♪

『では予定通りに頼む』


 作戦通りクラッシュベアを前面に出して壁を作ると、その隙間から弓矢と火球が撃ち込まれる。

すると当然後方にヘイトが集まるため、そこ目掛けてカオスウェアボアが突っ込んで来た。

それをクラッシュベアが全力で阻んでる間に再び遠距離射撃を行うというのを繰り返した。

 だがその度にクラッシュベアが毎回毎回散っていくので、すぐに盾役はオーガのみとなってしまう。


サーリア アイリーンにようこそ♪

『ここからが正念場ですわね』


 その後も同様の動きが繰り返され、時には回り込んだウッドパペットが撃破される等の被害を被った末に、カオスウェアボアを徐々に追い込んでいく。

そして見るからに痛々しい姿に成りつつあるところで、カオスウェアボアは捨て身の攻撃に出てきた。


「ゴアァァァ!」


 ダメージが蓄積してイライラが募りだした可能性もあるそれは、一点集中でオーガに突撃するというこれまでに見ない動きをしてきたのである。

まるで防御は微塵も考えてないかのようにハルバードを前へと突き出してくるカオスウェアボア。

 的が大きいオーガは、防ぐこと叶わずそのまま串刺しになりながら、尚もそのまま後方へと押されて行く。

その影響でコボルトとゴブリンメイジが数体磨り潰されてしまった。

 そして漸く動きを止めたカオスウェアボアは格好の的となり、弓矢と火球によりその場に倒れ込む。

そこへオーガによる止めの一撃を加えて、カオスウェアボアは光の粒となり消えていった。


ベルトラン アイリーンにようこそ♪

『やりましたぞ! 我々の勝利です!』


アーサー アイリーンにようこそ♪

『ああ。ここまで白熱した戦いは久し振りに体験するな』


サーリア アイリーンにようこそ♪

『……ですわね。でも勝利の余韻(よいん)(ひた)るのも程々に、先へ進みましょう』


 だがさすがに攻撃力の高いモンスター相手に盾役は疲弊し過ぎたため、カオスウェアボアを倒した時にはサーリアのモンスターはオーガ2体だけしか残らなかった。

 しかし、それでも彼等は戦い続けるであろう。

最後のモンスターが尽きるまで……。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 そして視点は彼等のナイスファイトを見ていたアイリへと移る。


「大変ですお姉様! これは一大事です」


 一大事とは大袈裟ね……。

そりゃ6階層も強めに設定しといて突破されたんじゃ、そう感じても仕方ないかもだけど。


「まぁ落ち着きなさいアイカ。いいサンプルになったんだから、結果的にOKなのよ」


 前にも言ったけど、本当の侵入者が現れたらどうなるかを見たかったんだし、私としては有り難い限りよ。


「そうではありません。見てください、このウェディングケーキを。下の方がディスプレイのサンプルみたいになってて食べられません。これは詐欺ですよ詐欺! 訴えてやります!」


 ウェディングケーキって元々そういう作りじゃなかったっけ?

何処に訴えるつもりなのか知らないけど、アイカはバトルに集中してないっぽい。

まぁ今は私が見てるからいいか。


「訴えるのは好きにしていいから、とりあえず顔に付いた洗顔パック(生クリーム)を拭きなさい」


 バトル中でもアイカはぶれないのであった。

ルー「マスター、あのケーキ美味しそう」

アイリ「帰ってきたらあげるから、さっさと行ってきなさい」

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