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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第1章:外の世界
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閑話:モフモフと愉快な仲間達

華麗なるモフモフの苦悩を御覧いただこう。

 俺の名はデルタファング、深緑の殺し屋と言われている。

 この深緑の森の奥地へ一度入ると、生きては帰れないと言われている。

足を踏み入れるのを戸惑わせるこの森で、俺に敵う者はいない。

この森で頂点に立つもの、それは他ならぬこの俺様、デルt「モフモフーっ! どこー!?」


 ……すまないが急用ができた。

今はまだ捕まるわけにはいかないのだ!

ではさらばだ、ここに居ることは絶対に内s「ここに居るッスよ! 姉貴!」


「だあぁーーーーーっ! 何でバラすんだテメェ!」


 チッキショウ! クロの奴裏切りやがったな!? 

あの野郎、後で覚えてやが「あ、見つけた!」

「ウヒィ!?」


「モフモフーっ! もぅ探したじゃない。ほら、早く寝るわよ」


「へ、へぃ……」


 俺は今、アイリの姉御に眷族(けんぞく)として仕えてる。

 飯は美味いし、ダンジョン内部は快適だしで、今の生活には満足している。


 しかし、1つだけ問題がある。それは……。






「それじゃお休み、モフモフ」


「へぃ、お休みなすってくだせぇ姉御」


 この夜の時間は大変苦痛だ。

寝るといっても、決して色気のある話じゃねぇ。

寧ろ油断してると死を招く可能性すらある。


 何故かというと、姉御が俺を抱き枕にするんだが、この時に絶妙な角度でヘッドロックを決めてくるのである。

正直笑えない。


 無理やり脱け出すこともできるが、それをやると姉御の両手が千切れる危険性があるために、絶対にできない。


 なので、最初クロが眷族に成ったのは大変有り難かった。

クロが眷族に成ったのをいいことに、クロに抱き枕役を押し付けることに成功した!


 しかし、それは最初のうちだけだった。

あの野郎(クロ)は悪知恵を働かせて、抱き枕の役目を俺に返上しやがった!

このままじゃ終わらせねぇ、きっちりと落とし前つけてやらぁ!




「つーわけで、今から模擬戦な」


「何が、というわけなのか全然わかんないッスよ!」


 今俺たちは、ダンジョンの2階層にあたる、森林エリアに来ていた。

ここへ来た理由は、クロへの稽古付けだ……表向きはな!


「うるせぇ! こっちはな、テメェのせいで寝違えが酷ぇんだ!」


「俺だって最初、抱き枕役は新人が務めるのが仕来たりだとか言って騙されたッスよ!?」


「やはりお前とは、拳と拳で語るしかないようだな……」


「何で熱血漢みたいな話にしてるんスか。結局はただの八つ当たりじゃないッスか!」


「いつまでもごちゃごちゃと言ってんじゃねぇ! いくぜクr「面白そうじゃな。妾もまぜるがよいぞ!」


 ちっ、邪魔が入ったか……仕方ない、ならば……。


「クロ、一時休戦だ」


「了解ッス。先に逃げるんで、殿は任せたッス!」


「おう! ってちょっと待て!」


「まずはお主からじゃな? せぃや!」


「いや、待て待て、ちょ、ブゴォ!?」


 言う間もなくぶっ飛ばされたんだが、コイツ(アンジェラ)とまともにやり合える奴なんざ居ねぇ以上、逃げるしか手段がねぇ!


「ほれほれどうした? もっと妾を楽しませてみよ!」


 もう完全にラスボスの台詞なんだが、コイツ(アンジェラ)はわかってて言ってんだろうか?


 しかし俺だって一方的にやられてるばかりではない。


「こっちだ、ついてこい!」


「ほぅ、少しは殺る気になったかの? まあよい、少し付き合ってやろうぞ」


 馬鹿言ってんじゃねぇ!

テメェとやり合ってたら命が幾つあっても足りねぇじゃねぇか!


 それとさっき、やる気の字が物騒に感じたのは気のせいか?


「くそぅ……上手い具合にアレ(アンジェラ)アイツ(クロ)に押し付けねぇと、俺に未来は無いことくらいは理解できるぜ。何とかクロを探し出さねぇと……」


 だが間もなく、幸運なことに前方にひたすら走るクロを捕捉することに成功した。

 よしよし、ツキは俺にある!


「見つけたぜクロッ!」


「ちょっ、何でこっち来るんスか!?」


 何でって、んなもん決まってんだろ!

俺が逃げ延びるために、必要な生け贄を捧げんだよ!


「いいか? 一度しか言わないから心して聞け!」


「いや、いきなり何言ってんスか?」


 いきなりなのはアイツ(アンジェラ)の方だろ、いい加減にしろ!


「実戦だと思ってアイツ(アンジェラ)と戦ってこい、以上!」


「無茶言うなッス! そんなことできるわけが「やってみないとわからんじゃろ?」


「「………………」」






「「出たぁーーーっ!!」」


「何じゃ失礼な奴らじゃな。人をスペクターを見るような目で見おってからに」


 アホ抜かせ! テメェの強さはスペクターの比じゃねぇだろうが!

テメェと比べたらスペクターなんざ砂埃と同等だろうよ!


 しかし、うだうだやってるうちに、作戦は成功した!


「あれ? 兄貴、いったいどこに!?」


 ふ、深緑の森に生きるこの俺の固有スキル、特殊迷彩(ステルス)ってやつだ。

これを発動してると、ホークの鷹の目すら通用しなくなるのだ。


「ふむ。モフモフには逃げられたか。仕方ない、お主(クロ)で我慢するか」


「ちょ、何を我慢するんスか!? ちょっとーっ!?」






 ……どうやら上手くやり過ごしたようだ。

今更固有スキルを使うのは、卑怯だとかの言い訳は通用しない。

ここは戦場なのだ!


 さて、我が居城に戻ったら、勝利の美酒に酔いしれながら、姉御お薦めのテイシボウドッグフードとやらを頂くとしよう。

運動後の食事は大変「そろそろ良いかの?」


 ………………え?






 ………………ぇええ!?


「んなバカな! スキルは発動してるはずだぞ!?」


「確かに発動しとるの。だが妾の固有スキル、探知波動(エクスプロルウェーブ)からは逃れられんぞ?」


「……くっ、チキショウめ!」


 なんて大人げない奴だ。

固有スキルを使ってまで追ってくるとは、卑怯者め!


 その後、クロも一緒にボコボコにされた。






 全く、この前は酷い目にあったぜ……。

久々に身体中が悲鳴を上げやがったかんな。

おかげで永遠に寝ちまうところだった。


 だいたい、いくら手加減されてるとは言え、痛ぇもんは痛ぇんだ。

それをアンジェラのやつは全然理解してねぇでいやがる。

もうアンジェラの前で戦闘の話は禁止だな。


 なんて考えながらダンジョンをぶらついてたら、いつの間にか沼地エリアに来ていた。


「むむ? そこに居るのはモフモフ殿ではないか」


「ああ、ザードか。ちょいと気晴らしにぶらついてんのさ」


 目の前に現れたのは、リザードマンキングのザード。

俺と同じように姉御の眷族(けんぞく)だ。


「気晴らしか……ならば是非手合わせ願いたいのだが、いかがいたす?」


「おう……いやいや、待て、早まるな」


「どうしたのだ?」


 どうしたもこうしたも、手合わせなんて単語をアンジェラが耳にした日にゃおまえ、俺と一緒にボコられる未来しか想像できんぞ?


「アンジェラに聴かれたら厄介なことになるんだよ。昨日なんてよ、クロと一緒に派手にボコられたかんな」


「ほほぅ、やはりアンジェラ殿の実力は桁違いということなのでござろうな。これは一度、アンジェラ殿と手合わせをするしかなかろうな」


 だーかーら、手合わせとか口に出すなっつーの!

あの戦闘狂に聴かれたら大変なことになるだろ!

巻き添えをくいたくない俺は、必死になってザードに説明してやった。






「ふむ、つまりより高みを目指せるということだな?」


「お前、話聞いてたのかよ……」


「違うのか?」


「全然ちゃうわ!!」


 興奮し過ぎてホークの口調が移っちまった。

仕方ねぇからもう一度だけ説明してやろう。


「いいか? あのバカ女の前で、戦闘や闘うとかの単語は絶対に出すな」


「……それは何故なのかのぅ?」


「んなもん決まってんだろ。自分も混ぜろとか言って殴りかかってくっからだよ! 本当あのバカ女は何考えてんだか……」


 これだけ話せばザードの奴も少しは危機感ってもんを持つんじゃねぇかと思うんだが。


「ほうほう……して、そのバカ女とは誰のことじゃ?」


 あーーダメだなこりゃ。

コイツは前にクロが言ってた脳金って奴だ。

意味は確か、脳ミソが金ピカでお馬鹿な奴だったかな?


「何度も言うがアンジェラのことだっつーの!」






「………………」


 あれ? ザードの奴、妙に静かだが……、


「ザードなら妾の隣で寝ておるぞ?」


 ああ、なんだ、道理で反応が薄いと思ったら既にアンジェラによって倒された……、






「んゲーーーーーッ! いつの間に来やがったんだテメー!」


「確か、バカ女がどうとか言ってたところから……だったかの」


 それってもしや、バカ女がアンジェラのことだと言った辺りじゃないか?

 つーことはだよ、今の俺はかなり……、






「さてモフモフよ、バカ女の力、特と味わうがよいぞ!」






「やっぱそうなんのかよーーーーーぉ!」


 この後、目を覚ましたザード共々ボコられた。

ザードの奴は喜んでたような気がするが気のせいだよな?






 あーーくそ、2日も続けて災難(アンジェラ)が訪れるとは思わなかったぜ。


 仕方ないからなるべくアンジェラに遭遇しないようにしよう……ってことで草原エリアにやってきたぜ。

 何故草原エリアなのかって?

そりゃお前、草原で狩りをしても満足しないから、アンジェラは来ねぇんだよ。

アンジェラならもっと大物の肉を求めるからな。


「おうおう、なんやなんや、モフモフがこんなとこに来るんは、珍しいんちゃいまっか?」


 草原エリアを闊歩(かっぽ)してると、上空からホークが現れた。


「よぉホーク。厄介な奴から逃れようと思ったらよ、ここに来ちまったのさ」


 コイツはワイルドホークのホークだ。

勿論姉御の眷族だぜ?


「せやけどモフモフが厄介に感じるほどの魔物が、このダンジョンに居ったかなぁ……」


「いや、雑魚なんざ相手になんねぇよ。俺が厄介に感じてるのはアンジェラよ」


「あぁアンジェラはんな~、あれはもう動く凶器でっせ」


 おお、やっぱみんなそう思ってんだな。

俺とクロだけかと思ったぜ。


「だよな~。突然飛び蹴りとかかましてくるもんな」


「せやなぁ。あのスラッとした脚は、中々の破壊力やな」


「それにあいつの腕で首を締められると、そのまま昇天しちまいそうになるよな」


「あぁ、それなぁ、後ろから乳が当たると昇天しそうになるかもなぁ」


「まったくよ、人化しててあの強さなら人化してない状態だと、どんだけ強ぇんだって話だ」


「うんうん、ワイとしては人化しててくれる方が有り難いで」


「そうなんだよなぁ……」


 せめて戦闘狂でなけりゃ良かったんだが、ここで愚痴っててもしゃーないか。


「んじゃ俺は戻るぜ。じゃーな、ホーク」


「………………」


 ん? ホーク?


「ホークならお主の隣で寝とるぞ?」


 ああ、なんだ、昼寝してんのか。






「って、なんじゃこりゃーーーっ!!」


 いつの間にかボロ雑巾のようになったホークが、俺の隣に転がってやがる。

いったい誰が……、


「もう気付いておるのだろ?」


「あ、はい」


 この後、隣の雑巾(ホーク)と一緒にボコボコにされた。

何故かホークは足で踏みつけられてるのに喜んでやがったが、ホークの奴どこかおかしいんじゃないか?






 最近災難が続いてる気がするな。

主に原因となってるのはアンジェラなんだが、どこにでも現れるから逃げようがない。


 だが俺は諦めなかった。

今回は物理的に肉の壁を作ることで、アンジェラから逃れるという方法を思い付いた。

 その方法とはズバリ、眷族の1人であるファイアドレイクのレイクを盾に使うというナイスな方法だ。


 そんな訳でレイクがいつも寝てる火山エリアに来たんだが……。


「遅かったのう。レイクが使い物にならなくなってしもうたし、ちと相手をしてくれ」


 ダメだった。

先回りされて、レイクが肉団子のように転がされてるところだったようだ。


 最早ここまでくると、笑うしかない。


 その後は以下省略だ。

俺はもう疲れた……。






 それから数日後、ようやく精神的な疲労から回復した俺は、コアルームで何かを美味そうに食ってるクロを発見した。


「ハムハム……うんめぇッス! メチャ美味ッス!」


「クロ、何か美味そうなもん食ってんな?」


「あ、兄貴、この前テレビで特集してたやつッス! タンパク質が豊富だとかで、栄養満点ッス!」


 ほぅ、そのような豪華な食いもんを、俺より先に手をつけるとは……。


「おいクロ、俺と勝負しようぜ? 俺が勝ったら、その豪華な奴をもらう!」


「嫌なこったッス。勝てる訳ないし、自分にメリットが無いッス」


「んだとぅ!? 臆病者め!」


「兄貴、そもそもよく考えてほしいッス」


「おぅ?」


「目の前に絶対に勝てない相手が居たとするッス。そんな相手に自分が勝てると思って、勝負を仕掛けるッス。そいつのことをどう思うッスか?」


 えーと……つまり、目の前にアンジェラが居たとして、俺はコイツ(アンジェラ)に勝てると思って、勝負を仕掛けるってことか?

要するにそれは……。


「んなもん、馬鹿のすることじゃねぇか。頭が悪いにも程があるぜ!」


「そうッス。それと同じことを、兄貴はさせようとしてるッスよ!」


 ……………………。


「……マジか?」


「マジッス! 大マジッス!」


 そうだったのか……。

まさかクロに論されることになるとはな。


 結局、クロと同じ物をアイリにお願いすればいいことに気付いたのは、それから3日後のことだった。


アンジェラ「うーーむ、もの足りぬのぅ……」

モフモフ「(ビクゥゥゥ!)」

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