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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第5章:熱き猛るダンジョンバトル
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タッグバトルという名のソロバトル

前回のあらすじ

 勝手にファンクラブを立ち上げた千手への報復措置として、1000匹のクロコゲ虫を送り込んだアイリ。

それは予想以上の効果をもたらし、千手のやる気を削ぐ事に成功するが……


 クロコゲ虫による嫌がらせはとても効果的だった。

アイカのドローンが階層を貫通して千手の居るコアルームを盗撮した結果、あまりの光景に自身のダンジョンを見ないようにしてるらしい。

 もし私が逆の立場だったらダンジョン放棄して逃げ出すかもしれない。

何せゴキブリ(クロコゲ虫)が1000匹も居る場所に滞在したいと思わないし。

 因みに今更だけど、相手のコアルームを間接的に盗撮出来るのは私の持ってるドローン以外は存在しないと思う。

いや、しないわね絶対。


「アイリはん、中々のモンが録れたで! こら上手く編集してダンマスドッキリ映像として放送すべきやな!」


 うん、まぁ……そうね。

スクリーンから目を逸らして後ろに倒れ込むところとか、クロコゲ虫を見てパニック起こしたようにも見えるしね。


「編集作業はお任せ下さい。わたくしアイカが最優先事項として処理させて頂きます」


 いやいやいや、そんな事を最優先にやらなくていいわ……。


「でも尺が足りないッスよ? もっと色んな映像を録るべきッスね。だから俺も協力「これクロよ、お主は妾と修行じゃ。逃げるでない」ちょ、ちょっとタンマッス! 無理ッス! これ以上はァーーーーーッ!」


 前回の反省を踏まえて、クロがアンジェラによってスパルタ式な特訓をさせられている。

こっそり抜け出して来たけれど、たった今アンジェラによって連れ戻されて行った。

その内クロもCランクにクラスチェンジするかもしれないし、頑張って修行してもらおう。


「でも~、クロちゃんの言う通り~、尺が足りないのは~、事実ですよ~?」


 なんだかセレンまで乗り気なんだけど、私の眷族達はどうしてしまったんだろ……。

そんなに千手の間抜けな映像を録りたいのかしら?

いや、単に娯楽に飢えてるだけよね、きっと。


「それならさ、コアルームにクロコゲ虫を突入させるってのはどう? そうすればもっと面白いのが見れそうだけども」


 クリューネまで……。

一応女神なんだから、他人の不幸を笑うのは……





 って! クリューネ!?


「いったいいつの間に!?」


 然り気無く会話に雑ざってたから、違和感が全く無かったわ。


「そりゃこんな美女なら違和感なんて無いでしょ。それからここに着いたのはついさっきね」


 いや、それはいいんだけど、何で居るんですかねぇ……。

というか、友達の家に遊びに来たよ! みたいな感覚で言われても困るんですが……。


「コホン! とりあえずクリューネ、今はダンジョンバトルの最中だから助言はしないでね。不正を疑われちゃうから」


「OKOK。ちょっと街の方で遊んでくから気にしないで。んじゃ!」


 よっぽど街で遊びたかったのか、光の速さで居なくなった。

ちゃんと仕事してるのかしらね?

あの性格を見るに、サボってるようにしか見えないんだけども……。


「それよりお姉様、レイクが怒ってオーガを追いかけて行きましたが、如何致しますか?」


 あ、レイクの事を忘れてた。

寝てるところをオーガによって殴り付けられたのよね。

驚いて飛び起きたみたいだけど、そのまま戦闘に突入し、オーガを数体燃やしたところでオーガ達が撤退。

レイクが勝手に追撃してるみたい。

止めようと思ったけども、面倒だからそのまま追撃させよう。


『レイク、こっちの事は気にしないでいいから、そのまま追い詰めといて』


『勿論だべ。アイリ様の命令通り、ギッタギタにしてやるべ!』


 ええぇ……、ギッタギタにしろとは言ってないんだけど。

睡眠を邪魔されたのがよっぽどムカついたんでしょうね、きっと。


「お姉様、2階層のボス部屋にはボスが居ませんでした。現在モフモフは、3階層のボス部屋に向けて進んでいます」


 よしよし、順調順調。

トミーの方はどうなってるか分からないけど、この様子だと、モフモフからの吉報を待つだけになりそうね。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 アイリが千手のダンジョンを容赦なく攻め立ててる頃、相方であるトミーは、マリオン相手に苦戦を強いられていた。


「Cランクか……。流石に経験は積んでるらしく、手駒の進め方が上手いな」


 突入させた偵察は何故か放置されてる一方で、マリオンは偵察と攻略部隊を同時に送り込んできたのだ。

まるでボス部屋を発見されたところで問題などないかのように。

そしてそれを証明するかの如く素早く部隊を進軍させてくるので、トミーが攻め込む余裕は無くなり、防戦一方となっていた。


「情けない話だが、アイリに頼る以外方法は無いか」


 実際、年上の男が年下の女――しかも未成年の少女に頼るのは情けなく感じるものだろう。

しかし、アイリの場合は正に例外で、Sランクの眷族を抱えてるという話は急速に広まりつつある。

その内、全てのダンジョンマスターの耳に入るのは時間の問題かもしれない。


「コア、残りDPは?」


「はい、トミー様。残りDPは、5600ポイントとなっております」


「5600か……」


 目を瞑り、無精髭を撫でながら現状を好転させるための思考を巡らすと、やがて1つの結論に至った。


「よし、決まったぜ!」


 なるべくなら足を引っ張るような真似はしたくない……そんな思いから、男の意地を見せるべくダンジョンコアに召喚を命じ……ようとしたのだが……




「トミー様、キャメル様より緊急連絡です」


「キャメルから?」


 これから――という時に、キャメルからの通信が来たようだ。


「緊急なら仕方ねぇ。繋いでくれ」


「了解」


 間が悪いと思いつつも国を揺るがす事態の可能性もあるとみて、直ぐにキャメルとの通信を繋いだ。


キャメル

『ダンジョンバトル中に悪いわね。ちょっと厄介事が発生しちゃったのよ』


トミー

『厄介事ねぇ。俺に手伝わせるってこたぁ王都の警備隊だけじゃ足りないって事か?』


キャメル

『ええ、その通りよ。何せ例の怪盗が現れたんだもの』


トミー

『例の……って、おいまさか、怪盗アオダヌキか!?』


キャメル

『ご名答、ソイツで正解よ』


 怪盗アオダヌキとは、最近アレクシス王国内に出没するようになった泥棒で、主に金持ちの貴族や商人の邸に浸入し、金品を奪っていく者の事である。

事に及んだ現場には、ご丁寧に【怪盗アオダヌキ参上!】というメモ紙を残す事でも有名で、奪った金品は貧しい生活を送っている者達にバラまいてるため、一般庶民の間では義賊としても人気が高いのだ。


トミー

『まいったな。こりゃ完全にアイリに任せるしかないか……』


キャメル

『あら、もしかしてアイリとタッグ組んでるの?』


トミー

『まぁな。アイリにゃ悪いが、有りったけの罠を仕掛けて相手を引き付けるとすっか』


 やむを得ず、マリオンの足止めだけをダンジョンコアに任せて、トミーは怪盗が現れた地上へと向かったのだった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 一方、そんな事が起こってるとは知る由もないマリオンは、着実にトミーのダンジョンを攻略していった。

何となく罠が増えた気がするだろうが、まさかトミー本人が席を外してるとは思ってもみないだろう。


「罠が多くなってきたという事は、守りに専念してると見てよさそうね」


 それに加えてトミーからはモンスターが送られて来ないのを踏まえると一目瞭然であった。


「となると、やはり期待のルーキーと名高いアイリが千手相手に善戦してるのかもしれない」


 そう思い、千手側の戦況を確認すべく通信を繋ぐように指示を出した。


「コアちゃん、千手に繋いでくれる?」


「はい。千手様に繋ぎますね」


 ここのダンジョンコアは、マリオンからちゃん付けで呼ばれており、どこぞの魔法少女と違ってブンブンと振り回される事も無く、大事に扱われてるようだ。


千手

『あ~、すみませんマリオンさん。いきなりですが、援軍寄越して下さいませんか?』


 妙に低姿勢な千手が現れた。

流石に上から目線で援軍くれとは言えないのか、普段の生意気な態度が嘘のようである。


マリオン

『あらあら、苦戦してるみたいね。そんなにマズイ状況なの?』


千手

『それはもう……攻め込んだオーガ達が逃げ戻ってくるくらいでして、今もなおファイアドレイクに追い回されております、はい』


マリオン

『ファイアドレイクって言ったらAランクよね? アイリが抱えてるのはSランクモンスターだったと思うんだけど……』


 マリオンは首を捻る。

事前に噂として、アイリがSランクのモンスターを眷族にしてるという情報は既に掴んでいたのだが、もしかしてAランクのモンスターという事実が拡張され、Sランクとして噂が1人歩きしてるのだろうか……とも思ったが、次の千手による発言で、それを否定される。


千手

『それはもう……Sランクのデルタファングも猛威を奮っております、はい』


マリオン

『え? Sランクを抱えてる上でAランクまで抱えてるっていうの!?』


千手

『それはもう……自分も驚いております、はい』


 ここでマリオンは内心で後悔する。

まさか高ランクのモンスターを複数抱えてるとは思ってなかったからだ。

 マリオンのシミュレートでは、恐らく突撃してくるであろうSランクのモンスターを足止めし、その間にアイリのダンジョンを攻略するつもりだった。

だが足止めが必要なモンスターが2体も居るのなら話は違ってくる。


(少々侮り過ぎたようね。こうなったら千手に援軍を送ったように見せ掛けて、アイリのダンジョンに本隊を突入させましょうか)


マリオン

『直ぐに援軍を送るから、それまで頑張りなさいね?』


千手

『アザァーッス、マリオン様! もう感謝の涙とクロコゲ虫で、スクリーンが直視出来ません!』


マリオン

『クロコゲ虫? 兎に角、少しでも長く足止めしといてね』


千手

『ラジャー!』


(さて、どうやら私とアイリの一騎討ちになりそうね)



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 キャメルからの緊急要請が入ったトミーは、直ぐ様アイリへと伝言を送った。

それをアイカから聞いたアイリは……


「急用!?」


「はい、お姉様。伝言によると、厄介な怪盗が現れたとの事で、席を外すと仰ってました」


 たった今トミーからの伝言が来て、急用で席を外すから、マリオンの進軍を罠で足止めしてる間に決着つけてくれって言ってきたらしい。


「トミーはんはアレクシス王国に属してるんやろ? なら立場上しゃ~ないわな」


 ホークが言うように、国に所属するなら庇護下に入るのと引き換えに自由が利かなくなるのが難点となる。

その点私は自由に動けるから有り難い。


「ま、トミーはいいとして、今はバトルに専念しないと」


 一応足止めはしてくれるらしいし、その間に千手を潰しちゃおう。


『モフモフ、遠慮はいらないからコアルームまで突っ走っちゃって!』


『ガッテン承知でさぁ!』


 既に5階層まで到達してるモフモフに、全力を出すようにと念話を飛ばした。

確か千手のダンジョンは8階層だった筈だし、もう少しで攻略出来そうね。


「お姉様、敵の新手が入口より侵入してきました」


「新手?」


「はい、どうやらマリオン様のモンスターのようです」


 浸入したモンスターは、FランクのスケルトンにEランクのゾンビウルフだった。

マリオンはアンデッド系のモンスターを扱うのが得意なのかもしれない。


「お姉様、如何致しましょう? 一応1階層のボス部屋にはザードを配置済みですが」


「そうね……」


 まだ千手のダンジョンが攻略出来てないし、流石に二面作戦は面倒よね。

と、なれば……


「アイカ、1階層の松明を全部落として真っ暗にしちゃって」


「成る程。了解です、お姉様」


 私のダンジョンの1階層は洞窟エリアになってるから、松明を落とせば真っ暗になる。

これで少しは時間稼ぎ出来ると思うし、こちらもマリオンのダンジョンに攻め込む準備をしよう。


千手「くそっ! こうなりゃキンチョ〇ルを召喚してやる!」

ダンジョンコア「DPの無駄遣いはお控え下さい」

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