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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第4章:夜空に舞う銀箔蝶
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閑話:眷族の秘密4

 またまた時は遡り、アイリが眷族(けんぞく)達から生前の記憶に残っているものを聞き出してるところだ。

 生前の記憶が有るのは、リザードマンキングのザード、ワイルドホークのホーク、マットブラックウルフのクロ、セイレーンのセレン、そしてオリハルコンゴーレムのルー、以上の5人という事が判明し、ザードとホーク、そしてクロの話を聞き終わった状態となり、残すはセレンとルーのみとなった。


 さて、どちらにしようかしら……「マスター、ルーが話してもいい?」……っと、ルーの立候補により次はルーの話に決定ね。


「それじゃルーにお願いしようかな」


「了解マスター。これからルーによる感動スペクタクルをお送りする。もしくは誘われしルーちゃん」


 申し出を了承するとルーは席を立ち、持ってるスプーンをマイクに見立てて語り出した。

 とりあえずスプーンは置きなさい。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 ルーが造られたのは、今から200年近く前の事。

 とある錬金術士によって造られたルーは、その錬金術士が居る国のガーディアンとしての役目を受け、日々を過ごしていた。


 何、マスター? ……ああ、その錬金術士の名前? 残念ながらプロテクトが掛けられてて、その人物の名前も国の名前も一切分からない。

 因みにルーの製造方法も不明なので、万が一にも情報が外部に漏れないようにしたんだと思う。

 ただし、オリハルコンは貴重な存在のため、例え情報が漏れたとしても造れる者は限られているので、製作者である錬金術士による過剰反応の可能性大、もしくは自意識過剰。


 記録よるとその錬金術士は、全財産を注ぎ込んでまでオリハルコンをかき集めたらしく、周囲からは呆れられてて変人扱いだったという。

 一説には、ルーを完成させる前から「ビューーーチフーーーゥ!」と言いつつ頬擦りする姿を何度も目撃されており、変人を通り越した超変人として周囲から認識されてたという。


 え? ならその人物はパパじゃないかって?

 マスター……






 それは違うよ!!(ロンパ)

 いくらなんでもそんな変人をパパとは呼べない。

 造ってくれた事には感謝してるが、それとこれとは別問題あり、永遠に解決しないであろう事はマスターも予想がつく筈。


 ……コホン。

 変人(パパ)の事は脇に置いといて、ルーが守護してた国の話をする。

 さっきも言った通り、プロテクトにより国の名前が不明だけど、どのような国だったかは何となく分かる。

 周りを山で囲まれた国で、規模としては小国の部類に入るんじゃないかと思う。

 外敵から守りやすい地形だったと記憶してるけど、結局守りきる事が出来ずに強国により制圧されてしまったと記録にある。

 最後に残ってる記録はこんな感じ。



「〇〇〇殿ーーっ! 敵が現れたしたぞ! 直ちにガーディアンを出撃させよとの事です!」


「ギャーギャー言わんでも分かっておるわい。なぁに、心配はいらん。何せ儂の造ったガーディアンはオリハルコン製じゃてな。どんな敵が来ようとも敗れはせんわい。例えばこの腕、その名も黄金の腕じゃ。黄金と言っても金で出来てる訳じ「〇〇〇殿ぉ! 呑気に自慢してる場合ではありませんぞぉ!」


「ええぃ、分かった分かった! さっさと出撃させるわい!」



 伝令に連れられて城門まで行くと、既に多数の発石車と守備兵がスタンバってて、来るならいつでも来いな状態になってた。

 そこへ斥候に出てた騎兵が戻って来て、敵軍の様子を語る。


「敵は正面にオークとゴブリンの混成部隊がメインで、両翼にウルフ系が展開しており、更に後方にはワイバーンが控えてるようです」


「ワイバーンか……くそ! 奴ら本気で落とす気か……。それで、敵の規模は?」


「はい。ゴブリンとオークは合わせて200と少数ですが、ウルフ系とワイバーンが多数確認されており、ウルフが300ずつと、……ワ、ワイバーンが……500です!」


「ご、500だと!?」


 ワイバーンの数を聞いて兵士達が青ざめてるのが分かる。

 空からやって来るワイバーンへの対処は難しいため、より多くの人材が必要になるが、そうすると正面から来るゴブリンとオークに押されてしまう。

 これはいよいよ覚悟を決める必要があるかと多数の兵士が腹を括ろうかとしたその時! 不適な笑いと共に変態(パパ)が声を上げた。


 ん? パパの扱いが変人から変態に変わってる? それは些細な問題、もしくは無問題。

 兎に角、パパが自信満々に宣言した。


「狼狽えるな皆の者! このガーディアンが居る限り、我が国は不滅だ! 魔物なんぞ指先1つでダウンさせてくれるじゃろう!」


「「「おおっ!!」」」


 いや、おおっ!! じゃないが……。

 だいたい指先1つでどうにか出来るのは、どこぞの世紀末覇者くらいだと思われる。

 けれどそんな事はお構い無しにバカ(パパ)は語り続ける。


「さぁ見たまえ、このオリハルコンで出来たデリシャスなボディを。これはどんな攻撃をも防ぐ事が可能であり、魔法にだって強いのだ! 更に更に、このゴーレムは……ななな、なんとぉ、話す事も出来るのだぁ! 例えば、朝方出掛けた時に運悪く犬の糞を踏んでしまった時、昼に仕事の失敗で上司から叱責(しっせき)にあった時、夜に恋人から別れ話を切り出された時、そんなおセンチさんなあなたに「〇〇〇殿のぉ! 早く出撃しないと手遅れになりますぞぉーーっ!」


「ええぃ、良いところなのに……。仕方ない、オリハルコンゴーレムよ、出撃じゃ!」


「リョーカイデス、マスター」


 漸くバカ(パパ)から解放されたルーは、その鬱憤(うっぷん)を晴らすべく敵に向かって突っ込んだ。

 すると面白いようにゴブリンやオークが吹き飛んでいく。

 しかし正面の部隊がだいぶ消耗したところに空からワイバーンが仕掛けてきた。

 けれどワイバーンの炎や爪もルーには殆ど効果がなく、最初こそ果敢に挑んできた連中も次第にルーとの戦闘を避けるようになり、最終的にルーを放置して城門に向かって行った。

 それを見て慌てて戻ろうとしたところで、敵の大将が目の前に現れた。


「随分派手に暴れてくれたなぁ。だがこの俺様、邪王様の矛である四天王ルドーラが貴様を葬ってやろう!」


 その姿はサイクロプスそのもので、全長5メートルという巨体だった。

 因みにルーも同じくらいの大きさ。


「さぁ、かかってくるがブゴッ!!」


 指先をくぃくぃってやったから多分挑発されてるんだなと思い、まずは小手調べに軽~く顔面を殴りつける。

 すると空中で3回転捻りを実演しつつ、後方にバウンドしていった。


「ホゲゲェ、ホグオハッヘウエタハァ!」


 何とか立ち上がったルドーラは、頭の打ち所が悪かったらしく、呂律の回らない口調で話し出す。

 だけどルーには何を言ってるのか分からなかったので、近くに居たルドーラの部下達に聞いてみた。


「おのれぇ、よくもやってくれたなぁ! だがそんなチャチな攻撃は効かねぇぜ! と言ってるんだぞ、この野郎!」


 これは驚いた。

 まさかルーの攻撃を耐える奴が居るとは思わなかったから。

 なので今度はさっきよりも少し強めに殴ってみる。


「ヘグホッ!」


 すると同じように後方に吹っ飛んでいくが、今度は4回転捻りにランクアップした模様。

 そしてフラフラと立ち上がったルドーラは、またしても聞き取れない言葉で話し出した。


「ハ、ハッテクヘ。ハハッタ、ホウハンフル。ホウハンフルカラ!」


 それを聴いた部下達が、親切に訳してくれる。


「へ、まったくもって効かないぜ! 遠慮しないで掛かってきな! と言ってるんだぞ、この野郎!」


 どうやらルーは侮り過ぎたらしい。

 先程からの空中捻りは、余裕の表れなのかもしれない。

 今度は力を込めて殴りつけてやった。


「ビジブヘッ!」


 すると今度は5回転捻りの後にヘッドスライディングを披露してきた。

 もしかしたら見た目とは裏腹に、意外と芸術家なのかもしれない。

 そんな芸術家のルドーラはヨロヨロと立ち上がると、多少興奮した様子で話し出した。


「ハーハーア、ホウハンフルッテイッヘルハオォ!」


 首を左右に振って手で大きくバッテンをしてる仕草は何を表してるのか不明なので、例の如く訳してもらう。


「アーアー効かない効かない、そんな攻撃はペケだね! と言ってるんだぞ、この野郎!」


 この時ルーはときめいた。

 ルドーラならルーの本気を受け止める事が出来るかもしれないと思った。

 だから助走をつけて、勢い良く殴り飛ばす。


「ブゲボガゴベェ!」


 すると、これで決めると言わんばかりにイナバウアーな姿勢で後方にスウェーしていく。

 やはりルドーラは芸術家だったんだ。

 そして両手を地面についたままの姿勢で、力の限り叫んだ。

 

「オヘハイマッヘ! アホムハラマッヘ! コホホウリ!」


 何故か土下座をしてるように見えなくもないその姿を眺めつつ、毎度の如く訳してもらう。


「おい、お前はアホだなぁ。後方の城を見てみろ! と言ってるんだぞ、この野郎!」


 城? …………あ!

 そうだ、すっかり忘れてた!

 ルーとの交戦を避けた敵の部隊が、城に殺到してたんだ!

 急いで城に引き返そうとしたけど、もう手遅れになってるのに気が付いた。

 城の天辺にある見慣れた国旗が降ろされて、代わりに敵軍の国旗が風ではためいてるのが見える。

 ルーが戦闘に夢中になってる間に、城が制圧されてしまったようだ。


「ハ、ハフハッカ……」


「ハッ、バカめが! と言ってるんだぞ、この野郎!」


 どうやらまんまと敵の罠に嵌まったらしい。

 このルドーラという四天王、見掛けによらず知将だったようだ。

 敵は見事ルーを誘き寄せる事に成功し、これによりルーを無力化したという事になる。

 悔しいけどルーの負け。

 結局城に戻ろうにも魔力切れにより活動限界を越え、そのまま2度と覚醒する事はなかった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「以上でルーのルーによるルーのための感動スペクタクルを終ります」


「………………」


 ……見事に自滅したように聞こえたのは気のせい?

 やりようによっては勝てたんじゃないだろうか……。

 まぁ今更な話だけども。


「それにしても邪王って、確かホークの話の中にも出てきたわよね?」


「せやな、ワイが交戦した相手も邪王の四天王とか言うとったで」


 もしかしたら、ホークとルーが生存してた時期は近いのかもしれない。


アイリ「やっぱり戦には知力が無いと勝てないわね」

アイカ「相手の四天王は運が良かっただけな気がしますが……」

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