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誘われしダンジョンマスター  作者: 北のシロクマ
第1章:外の世界
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ギルドマスター

「粋がってる割には弱いわね」


「……いや、この場合、(しゅ)が強すぎるんじゃないかと思うがの」


 あの汚ならしい存在(柄の悪い4人組)を叩きのめした直後、ギルド内のあちこちから歓声が上がった。

単純に「あの子スゲー!」から「アイツらザマァ!」な声まで様々だ。

 中には「あぁ僕だけのエンジェル!」とか言ってたのもいるけど、そいつの顔は覚えたから、なるべく近寄らないようにしよう……。


「すすす、凄いですぅ! 何ですか今の! ザザッとやってパパッとやってギッチョンギッチョンな感じで、とにかく凄かったですぅ!」


 ちょ、ちょっとちょっと、受付嬢さんがおかしくなっちゃった……。

しかも、なんか擬音ばっかりでよく分かんないこと言ってるし。

というか落ち着け、受付嬢、冷静に冷静に。


「ちょーーっと落ち着いてもらえるかな?」


「す、すみません! ちょっと気分が舞い上がってしまいまして……あ、じ、自己紹介しないと……私は冒険者ギルドの受付嬢をやっております、ナタリエと申します」


「あ、うん。私は冒険者……に、なる前の一般人のアイリよ」






「………………」


 一般人って言ったら、ナタリエさんに嘘だろ!?って顔をされた。


 ダンジョンマスターを名乗るのは危険かなと判断した結果つい一般人と言ってしまったけど、少々問題だったかもしれない。

でも他に言いようがないし……。


「あのぅ、アイリさんのような方は一般人とは言わないのでは?」


 そうかもしれないけど……あ、そうだ!


「一般人よりも多少強いのは認めますが、師匠から素性を明かすなと言われてますので」


「な、なるほど、さぞお強いお師匠様なのですね……」


 よし、何とか誤魔化せた。

私にとっての師匠って言えばレベリングに協力してくれた眷族たちなんだけども、恐らくナタリエさんは人里離れた山中に住んでいる仙人みたいなのを想像したに違いない。

いや、この世界に仙人が居るのか知らないけれども。


「で、では、こちらの紙に名前と、使用武器や得意魔法等の記入をお願いします」


 言われるまま名前や武器を記入してる途中で気付いたけど、私ったら無意識にこの世界の文字で書いてる……。

これは多分スキルの相互言語のおかげね。


「……あ、魔法名とかは書かなくても……はい、属性のみで大丈夫です……あ、年齢は記入しないで下さい、私に効くので……はい、ありがとうございます」


 どうやら無事終わったみたいね。

これならアンジェラの登録も問題なさそう。

私が説明を聞いてる最中に、他の3人も登録してもらおう。


「こちらがギルドカードになります。登録直後の方は、Gランクからのスタートになります。依頼を受ける際は、2ランク上のものまでしか受けられませんので、最初はEランクまでの依頼の受注までが可能です」


 受けられるのは2つ上までかぁ。

ならCランクくらいまで上げといた方が良さそうね。


「ランクの最上位はSランク?」


「昔は(シングル)までだったのですが、覇王様や召喚された勇者様等が現れてから、更に上のランクも出現しまして、今はSSS(トリプル)ランクまで存在します」


 へぇー、トリプルねぇ……。

私はチラリとアンジェラをに視線を向ける。

アンジェラならトリプルくらいは成れそうね。

モンスターランクがSSS(トリプル)だったわけだし。


「依頼は複数受けられるの?」


「はい、一度に複数の依頼を受けてから、遠征に出かけるパーティもいらっしゃいます。ですが、依頼失敗が重なると、ランク降格や罰金が発生する可能性もありますので注意してください」


 なるほど、無茶をする奴は上にはいけないわね。


「それから依頼放棄が発覚した場合、冒険者ギルドの信頼を損ねる行為により、ギルド除名の上、衛兵に突き出すことになります」


 これも理解できる。

冒険者ギルドとしても、依頼失敗はキチンと報告を受けないと、対策もとれないし依頼主への釈明も儘ならないといったとこかな。

だから依頼放棄は最悪の行為ね。


「よくわかったわ、ありがとう」


 丁度他の3人も登録が終わったみたいなので、早速依頼を受けようかな。


「依頼を受けるのですねお姉様?」


「ついでだし、どんな依頼があるかも見てみないとね」


 さて、依頼書が貼ってある壁側に……。


「これは何があったのかね!?」


 む? 上から誰か降りてきたわね。

見た感じ、中肉中背の初老の男性だけど、ギルド内の雰囲気的に立場が上の人なのはわかる。

でも一応受付嬢さんに聞いてみよ。


「あの人は?」


「あの方は()()この冒険者ギルドのギルドマスターです」


 うん、予想通りだった。

というかナタリエさん、一応って言ったわよね今……。


「コヤツらは誰がやったんだね?」


 ギルドマスターが、さっき私たちに絡んできたアホ共(柄の悪い4人組)を指さして、近くの職員に確認をとってるようだ。


 で、その職員から私たちのことが伝えられたギルドマスターは、私たちを見て疑惑の視線を職員に向けた。

気持ちはとても理解できるけど、見た目で判断するなんて素人のすることよ。


「あの男共を伸したのは、お前さんだと聞いたのだが間違いないか?」


「はいそうです。向こうが絡んできたので返り討ちにしました」


「はい、お姉様カッコ良かったです!」


 アイカには少し静かにしててもらいたいんだけど……。


「……詳しく聞かせてくれるかの?」


「詳しく……といっても、私たちが受付に並んでたのを、後ろから割り込んできたアイツらに邪魔だとか言われて殴りかかってきたから、返り討ちにしただけです」


「うむ、無駄のない、いい身のこなしだったぞ」


 アンジェラも静かにしてほしい……。


「しかし、ギルド内での暴力沙汰は見逃すことはできん。よって、お前さんには何らかの罰則を与えねばならん」


 なんだか話がおかしな方向に向いてきたんだけど……。


「暴力を受けた側なのに罰則があるわけ?」


「応報したのは間違いなかろう?」


「でも私は事前にそこの受付嬢に確認したわよ? 冒険者同士のいざこざには関与しないって」


 受付嬢とのやりとりを出した途端、不快そうにギルドマスターに睨まれる受付嬢さん。

ちょっと可哀想な気がしてきた。


「そもそもギルド内の暴力は認めないなら、そこの男共はどうなの? 以前から同じことを繰り返してるみたいだけど?」


「旅は繰り返し~♪ 世も繰り返し~♪」


 セレン、あんたも黙ってなさい……。


「……じ、事実確認ができなければ罰することはできない」


 言い訳くさいことを言い出したわね……。


「目撃者ならこのギルド内にいっぱい居るじゃない、そうよねみんな!?」


「俺はこの子が殴りかかられてるのをみたぞ!」

「それなら私よ、私もみたわ!」

「そうだそうだ! アイリちゃんは悪くないぞ! 薄いピンク最高ぅ!」


 よし、アイツらかなり嫌われてたみたいだから、みんな賛同してくれたわ。

そして最後の奴、あんた私のスカートの中覗いたわね!?


「……コホン、だがしかし、基本冒険者ギルドは冒険者同士のいざこざには関与しない」


 はい? コイツは何を言ってるの? さっきと言ってることが逆じゃない!

 ……っと、少し落ち着かないといけないわね、冷静に冷静に。


「ねぇ、さっきと言ってることが違うんだけど、どういうことなの?」


「そうじゃの。まるでこの男共には()()()()()はならないかのようじゃな」


「そ、そんなことはない。先程も言ったように、冒険者同士のいざこざには関与しない」


 誤魔化しかたが下手くそだけど、何か裏が有るのは間違いなさそうね。


「だったら私とこの男共が何しようと、あんたには関係ないわね!?」


「う、うむ。そういうことになる……」


 とりあえず私たちへの罰則はなしになった。

当然よね? 私たちが絡まれた側なんだから。

そして()()ギルドマスターらしい爺さんは2階へと戻っていった。


 何かスッキリしないけど、今回は仕方ない。

この街に居る間、ギルマスとチンピラ共の情報収集を優先しましょう。


『セレンは酒場でアイツら(ギルマスとチンピラ)の情報を集めて。アンジェラはセレンの護衛をお願い』


『わかりました~♪』

『承知じゃ』


 多分セレンだけでも大丈夫だろうけど、念のためアンジェラに見ててもらいましょう。


『アイカは私と依頼選別よ』


『はいお姉様』


 何か面白そうな依頼でもないかしらね……。




「お嬢さん、依頼を探してるのかい?」


 依頼票を眺めてると、後ろから声をかけられたらしい。

振り向くと、銀髪でどこか気品の感じる青年が

立っていた。

 その青年の両サイドにはパーティメンバーと思われる若い女性もいる。

女性2人は私を睨んでる気がするんだけど……うん、睨んでるわ絶対……。

関わりたくないから適当にあしらおう。


「はい、そうなんですけど中々面白い依頼が無かったので、もう帰ろうと思います」


 私たちは、そのまま出口に向かおうとしたんだけど……


「あ、待って待って、なんか警戒されてるみたいだけど、別にナンパとかじゃないから!」


 そうは言っても、そっちの女性2人は明らかに私を敵視してるっぽいんですが。

まるで私達の男に手を出すな的な感じで。


「それで依頼のことなんだけど、最初は採取依頼を受けるのがいいよ。派手に討伐依頼で稼ぐと、良く思わない連中に目をつけられる可能性があるからね」


 そっか、言われて気付いたけど、私たちが依頼を多くこなすと、その分他の人たちの受けられる依頼が減るってことになるのね。

これは素直に感謝だわ。


「親切にありがとうございます」


「いやいや、どうって事はないよ。そうだ、自己紹介がまだだったね。僕の名前はルーゼって言うんだ、宜しくね。それでこっちの剣を持ってる女性はミスティで、こっちの槍を持ってる女性がハンナだよ」


 男に紹介された女性2人は軽い会釈だけして無言のままだ。

ちょっと感じ悪いなぁ……。


「私はアイリです。で、こっちが双子の妹でアイカよ」


 アイカも会釈だけで済ませたみたい。

今の私たちは双子の設定にしてある。

理由は当然、ダンジョンマスターとダンジョンコアだと言うわけにはいかないから。


「僕もさっきの騒動を見てたけど、君は相当な実力者みたいだから心配は無用だったかもしれないね」


 どうやら最初から見られてたらしい。


「ヨゼ……コホン、ルーゼ様、そろそろ行きましょう」


「ああ、分かってる。すまないが僕らはこれで失礼するよ、それじゃ良い冒険を!」


 ハンナという女性に施されて、ルーゼさんのパーティはギルドを後にした。


「あれが俗に言うハーレムパーティというやつですね、お姉様」


「かもねぇ……」



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 結局、特に面白そうな依頼は無かったので、冒険者ギルドの隣にある宿屋で、セレンとアンジェラが戻るのを待つことにした。

宿屋に居ることは2人に念話で伝えてある。


「それにしても許せませんね。あれがギルドのトップとか信じられません!」


「同感ね。何か弱みを握られてるか、元々親しい間柄なのか、いずれにしても、今後の冒険者として活動するうえで妨げになりそうだから、取り除くまでよ」


 ところで……。


「アイカ、今、後ろに隠した物は何?」


「ななななな何のことでしょう?」


 そもそも思いっきり私の前で出してたじゃない。

残念ながら、チラッとしか見えなかったけど、あの大きさだと恐らく……。


「今アイカが後ろに隠してるプリンのことよ」


「違います! 後ろにあるのはハーゲ〇ダッツです! あ……」


 違った! というか、予想よりランクアップしてるじゃないの!

全くもう、最近スマホの使用履歴がおかしいとおもったら、夜中に勝手に入手してたわね、DP使用して。

 しかもハーゲ〇ダッツってDP100も消費するのよ。

カツ丼よりも高いのよ!


「申し訳ありませんお姉様。(ハーゲ〇ダッツが)あまりにも魅力的だったもので……つい」


 コヤツ、舌が肥えてきておる……。


 しょうがないわね……ホントにもう。

まぁアイカのお陰で多少は気が紛れたから、今回は良しとしとこう。


「勝手に使うなとは言わないから、今度からキチンと報告すること」


「ありがとうございます、お姉様!」


 見てたら私も食べたくなったから、後で召喚(取り寄せ)しよう。


『主よ、情報収集完了したぞよ』


 おっと、アンジェラからの念話だ。


『早いわね、どうだった?』


『うむ。ギルマスに関してはそれほど集まらんかったが、チンピラ共については予想以上じゃった』


 うーん、ギルマスの方は仕方ないから、進展するまで暫く放置ね。


『でも~、一応少しは集まりましたよ~♪』


『うんうん、何にせよご苦労様。2人が帰ってきたら一緒に晩御飯にしましょう』


『そう言われれば、腹が減ったのぅ』


『はい~♪ 直ぐに戻ります~♪』


 さて、まずはチンピラ共ね。

いったいどんな情報があったのやら……。


 その日の夜、食後のデザートに舌鼓(したつづみ)をうちながら、今後の作戦を思案するアイリであった。


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