いつもの日常
なろうでは初投稿になります。
暖かい目で見ていただければ幸いです。
ですが作者は冷たい目で見られれるのも好きなのでとにかく読んでいただけるだけで嬉しいです(笑)
カーテンから覗く朝日が俺の顔に当たり夢から覚める。ちらりと時計に目をやると午前6時を指していた。
「んんっ・・・・・・飯作らないとな」
両親が共に海外で働いているため毎日の朝食と昼の弁当作りは俺の役割だ。起きるのはめんどくさいし料理もめんどくさいが妹のためとあらば頑張らざるを得ない。むしろ今日のだけに限らず一気に明後日までの分も作ってあげたいくらいだがそれでは料理が腐ってしまう。俺の妹への愛は冷凍食品よりも長持ちだというのになんて不甲斐ないんだ、とわけのわからないシスコン脳を回転させつつキッチンへ向かう。
階段を降りた先にはすでに妹がいた。
妹の名前は葵。黒髪で長さはミディアムとかいう肉の焼き加減のような名前のものらしい。
「おはよう葵!どうしたんだこんな朝早くに・・・・・・もしかしてお兄ちゃんと朝食作りの共同作業を?!」
「おはようお兄ちゃん。そんなことは一生しないから安心して。ただ目が覚めちゃって喉が渇いたから降りてきただけ」
「そうか、朝飯の時間にはまた来いよ」
「わかってる」
そう言って部屋に戻っていく妹の背中に心の中で投げキッスをしつつ朝食の準備を始める。さてと、今日は何を作ろうか。まぁ定番のソーセージと目玉焼きでいいか。なんだかんだでこの組み合わせが朝食のスタンダードだろう。
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「ごちそうさま」
「はいお粗末様!弁当ここに置いておくから忘れるなよ」
「わかってる」
そうだよな、毎日やってることだもんな。それでもなぜか言ってしまうんだよなあ。今なら事あるごとに確認してきた母ちゃんの気持ちがわかる気がする。
「さてと俺も準備しますかね」
こんな専業主婦のようなことをしていても俺はまだ高校3年生だ。それに今日は始業式だから遅れるのはあまり良くない。
急いで着替え歯磨きと髪のセットを済ませて玄関に向かった。ちょうど葵も家を出るようだ。
「じゃあ私先に行くから」
「あ!俺も途中まで一緒に行く」
「・・・・・・」
俺の言葉も虚しく葵は一切振り向くことなく玄関から出て行く。いくらお兄ちゃんが鋼のメンタルだからって傷つくからね?お兄ちゃんも人間だからね?
急いで玄関を出るとそこで葵が待っていた。お兄ちゃん信じてたよ!なんだかんだで待っててくれるって!すぐに自転車の鍵を開け引きながら妹の横まで急いで向かった。
「なんだかんだ待ってくれてるところ好きだぜ!」
葵は俺がきたのを確認すると何も言わずに歩き出した。俺の愛の告白になんのリアクションもしないとは・・・・・・葵も難しい年頃だからな!照れ隠しなんだろう!え?照れ隠しだよね?
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特に会話をすることなく葵の通う中学の近くまで来た。葵は今中学2年生だ。中2というと男の子なんかは有名な病気である厨二病を患う時期だが女の子はどうなんだろう。葵に特にそのような言動は見られないけど・・・・・・そもそも俺とあんまり話してくれなかったわ!
「ここでいいから」
「わかった気をつけてな!」
葵はいつも中学に着く前に俺と別れる。まあ兄に学校まで送られるなんて恥ずかしいだろうからね。葵を見送り真逆の方向にある自分の高校に向かう。葵がいつもより冷たい態度に違和感を覚えた。そのせいか足取りは普段より重かった。
はあ、行きたくねえなぁ。高校に葵いないし。かといって家に帰っても葵は学校だし。中学に入ろうものなら不審者として捕らえられるだろう。なんで義務教育なんてあるんだ。せめて妹だけは免除できるような制度ないの?その制度作るために総理大臣になっちゃおうかな!
進路という名のモンスターとの戦いの1年を過ごす高校3年生にあるまじきバカなことを考えていると見知った顔があった。
目と目が合ったらバトル!なんてどこぞのポケットのモンスターの世界とは違い我々の世界では挨拶が行われる。
「あれ〜?恭二だ〜!おはよ〜また葵ちゃん送って来たの?」
このいかにもふわふわ癒し系で天然な女子は俺の幼馴染の木々咲早希だ。
挨拶されたら返すのが礼儀。これに関しては妹でなくとも該当する。
「おはよう。まあ葵は可愛いからな毎日俺が送らないと危険がいっぱいだ」
俺にもっと金があればボディーガードとかつけてるレベルで危ない。それどころかボディーガードまでが手を出す可能性まであるので俺がボディーガードとして就職してようやく安心できるレベル。
「相変わらずのシスコンだね。早くしないと遅れちゃうよ?」
そう言って早希は小首を傾げる。そういう仕草がね?恋愛経験皆無の非モテ男子を何人も葬ることになるんだよ?
見た目がよく誰にでも優しく接する早希は男子からの人気がすごい。しかし天然ゆえにそういった行為に気づくはずもなく水面下で爆死させているらしい。機雷かよ・・・・・・シスコンでよかったぜ全く!
「今更だろ、俺はこの世に産み落とされたその日からシスコンなんだよ!」
「それまだ葵ちゃん産まれてないじゃん・・・・・・」
それもそうだな。4つ離れてるもんなあ。こんな優しい子を呆れさせるなんて罪な男だぜ俺は。なんてくだらないことを考えつつちらりと時計を見ると結構危ない時間になっていた。
「うっわ結構時間やばいぞ!走るか?」
俺がそう聞くと早希はう〜んと困ったような表情をして答えた。
「私足遅いし、体力もないから・・・・・・」
そうだった・・・・・・早希は見た目通り足が遅いし体力がない。しかし困ったな、俺だけ行くのもなんか悪いし自転車を貸そうにも早希乗れないしな。しょうがない、あれは妹にだけの禁じ手だったんだがな・・・・・・。
「後ろ乗るか?今の時間だったら警察の巡回とかもないだろうし」
そういうと早希はちょっと驚いた様子で答えた。
「え?いいの?恭二がそんなこというなんて珍しいね」
「いいから乗れって」
早希は嬉しそうにうん!と言うと後ろに乗った。
「じゃあ行くぞ」
一人の時とは違いゆっくりと漕ぎ始める。すると早希は当たり前のように俺に捕まって来た。ちょ!そういうのよくないよ?どこがとは言わないけど胸が当たってます!って言っちゃってんじゃねえか!なんて動揺しつつ漕ぎ続ける。
こういう時は妹のことを考えると落ち着くはず。妹・・・・・・妹・・・・・・妹・・・・・・よし!落ち着いた!みんなも緊張した時や焦った時なんかは妹を唱えると落ち着くぞ!
行くぞ!スレイプニル!と厨二チックな名前をつけた愛車に鼓舞をして学校へと向かう。
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『キーンコーンカーンコーン』
チャイムとほぼ同時に俺と早希は教室に入った。
「危なかったねぁ〜ありがとね〜」
「間に合ってよかったよ」
緊張のせいか道中の事はほとんど覚えていない。妹以外に緊張するなど一生の不覚!
「おう恭二遅かったな」
「なんか妹がいつもより冷たい気がしてな・・・・・・ついつい足取りが重くなったんだよ」
「ほーん、よくまぁ毎日送るもんだ。妹以外にもそのぐらい熱心に慣れたら彼女の一人や二人できただろうにな」
呆れたように笑っているのは上村真琴。イケメンだし基本何でもできるTHEモテ男ってタイプなんだが普段のバカっぽさからか意外と女子人気がない。
「お前にそう言われるのはありがたいが妹以外に愛情を向けるなんて御免蒙る」
「そういうと思ってたけどな、もう移動の時間だ。行くか」
「ああ」
「あ、私はお花摘んでから行くね?また後でね〜」
早希以外にお花を摘むなんて言ってる女子見たことないけどこいつには異様に似合う言葉だと思う。
さて、始業式に行きますかね。
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先生の指示のもと指定された列に並ぶと間も無く式が始まった。
「えーまず初めに教頭先生、開式の言葉をお願いします」
開式の言葉と閉式の言葉いつも教頭がやってるけどそれ以外で教頭見たことねえな。なんて思っている間にも式は順調に進む。しかしこれから始業式をはじめとした式典の最大の山場を迎える。
「校長の挨拶」
で、出たー!挨拶という名がついているにも関わらず10分20分平気で話すあの拷問だ。今学期も頑張りましょう的な話だけでいいというのに、むしろその話ですら面倒臭いというのになんで毎回話題のニュースに絡めて話をしようとするんだよ!話題のニュースの話をするのは某池上の某彰さんだけでいいよ!オリンピックが近いとほぼほぼオリンピックの話だし。リアルタイムで見てるしニュースでやってるから今更だよ!
「では、今学期も頑張って行きましょう」
そう言って校長は一礼をしステージを降りて行く。やっと終わった・・・・・・真琴はもちろん寝てるし周りにもちらほら頭の下がっている生徒がいる。なんだよこれ催眠術かなんか?校長の話をまとめたCD売り出せば睡眠に効果絶大で空前の大ヒット起こるまであるぞ。
そんな山場を乗り越え全員での校歌合唱をし教頭が閉式の言葉をのべて始業式は終了した。
「ふわぁ〜」
「お前見事に寝てたな」
「当たり前だろ。あんな長話聞いてられる方がどうかしてるぜ」
散々校長への文句を垂れた俺でも若干校長に同情してしまいそうなくらい辛辣だった。うん、今度からは聞いてあげようかな、5分くらい。
「と言っても今日は終わりだし楽なもんだな」
俺がそういうと真琴は突然元気になった。
「そうじゃん!始業式最高だぜ!」
こういうとこがほんとバカっぽいなって感じる。なんかバカっぽいやつって大体いいやつだよな、こいつ含め。
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「それじゃ今日はこれで終わりだけど明日は課題テストだからなー、いつまでも休み気分で気抜くんじゃねえぞー」
「「はーい」」
「じゃあ挨拶」
「起立、礼、さようなら」
「「さようなら〜」」
明日テストだるいわ〜とか、俺なんもしてねえ!やべえよ!とか口々に言いながらみんな教室から出て行く。
「じゃあ俺らも帰るか」
「やべえよ俺なんもしてねえ」
普通このテンプレのような言葉を聞いたら絶対こいつやってるだろ、と疑うところだが真琴に関しては本当にやってない。宿題はちゃんと出せた回数の方が少ない。なのになんで頭いいんだよ・・・・・・。
とはいえ俺も全然勉強してないのでやばい。しかも真琴と違って地頭がいいわけでもないのでさらにやばい。どれくらいやばいかというとのび太にドラえもんが助けに来なかったくらいにはやばい。なにそれ超やばい。
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他愛もない話をしながら帰路につき、やがて分かれ道につく。
「お前と帰るのなんて結構久しぶりじゃね?」
「そうだっけ?」
うーん、言われてみると確かにそうかもしれない。妹の通う中学は俺が通う高校よりも下校時刻が早く妹自身生徒会に所属しているため部活動をやっておらず生徒会の仕事がない限り俺よりも早く家に着いている。ならば俺が直帰するのは当然であり寄り道もしない。ここ最近は学校を出る最速王の称号を欲しいがままにしていたかもしれない。
「そうだよいっつも妹が家にいるから帰るんだって言ってたじゃん」
「俺そんなこと言ってたの?」
あまりにも早く帰ることに集中しすぎて下校間際の記憶はあまりない。そんなこと教室で堂々と言ってたのか。俺は恥ずかしくないけど第三者から見ると相当痛いなそれ。
「今日妹の学校は早く終わるのか?」
「いや、今日課題テストがあるらしいしいつもと変わんなかったと思う」
「そうか、なら久しぶりにゲーセンでも寄ってくか?」
ゲーセンか、最近行ってないし行ってみるか?でも時間があるなら妹にお菓子でも作ってあげたいな。うん、そうしよう。
「ごめん、家帰って妹のお菓子でも作ることにするわ」
「おまっ・・・・・・今更だよな、じゃあまた明日な」
「おう、また明日」
最後真琴少し寂しそうな顔をしてた気がしたな。まあいつものことだし気のせいか。さーて今日は何を作ろうかしら。
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「マコちゃん、今日もダメだった?」
「ああ、いつものことなんだけどな。あいつの妹好きは昔からだがここ最近は少し眼に余るところがあるというか」
「確かに、何よりも妹優先って感じで少し距離ができちゃった気がする」
「このままだとあまり良くないかもな。これから社会に出て行くわけだし。俺たちはあいつのことを知ってるからいいが、初対面からしたら相当感じ悪いぞ」
「うん、どうにかできないかなぁ?」
「もう手遅れなんじゃねえかな、特別な何かが起こらない限りは」
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家に着いた俺はスーパーで買ってきた食材を並べクックパッドとにらめっこしながら新作のお菓子にチャレンジしている。チョコレートテンパリング?ドキッ!天然パーマだらけのフォークダンス的な?ああ、温度調整のことなのね。
未だに慣れないお菓子作りに奮闘していると玄関のドアが開く音が聞こえた。むむっ!この感じ!葵か!どこぞの新しいタイプばりの感覚で妹を察知すると速攻出迎えの体制へと移る。
「おかえりなさいませお嬢様。本日はお菓子をご用意させていただく予定ですので今しばらくお待ちくださいませ」
豪邸で働く執事も顔負けなくらいに丁寧な出迎えをした。
「うん。後でもらうからテーブルにでも置いておいて」
「あ、はい・・・・・・」
えー、こんなに冷たかったっけ?なんか悩みでもあるのかな。朝感じたものと同じ違和感を覚えつつもお菓子の完成へと手を進める。
「よしっ」
初めてにしては中々のものだろう。早速妹を呼ぼうかと思ったが今日はなんだか話しかけない方がいいような気がしたので言われた通りテーブルに置いたまま部屋へと戻ることにした。
部屋に戻るとゲームをやっていてもネットサーフィンをしていても内容が右から左へ抜けていく。なんか今日はダメだな、もう寝るか。
明日のテストの勉強などももちろんせずにベッドへと向かう。おっと危ない妹の部屋に向かっての礼拝を忘れるところだった。神聖な存在である妹の部屋に向かっての礼拝は俺の日課だ。
日課を終えると俺は眠る体制に入った。いつもは布団に入ってからすぐに眠れるような質ではないのだが不思議とすぐに睡魔に襲われた。
これから31日までどんどん更新していくつもりです!
初心者だというのに既に締め切りの恐怖に襲われております・・・・・・
前書き、後書きに関しましては今回限りとさせていただきます。
この作品を楽しんでくださる方がいるように期待しつつ。