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文明への旅立ち

作者: 味噌田楽

 宇宙の遠いところからまた遠くへ行き、更に遠くへと言ったところに一つの星があった。美しい緑と清らかな水を持つこの星はほんの数年前に発見された未開の星で、ある宇宙探検家によってこの星が発見された時には「宇宙ノ楽園発見サル」として宇宙の人々を大いに賑わせたことは記憶に新しい。

 そんな純朴な星のある所に星の風景とは不釣り合いな銀色の塔がそびえ立っていた。赤、緑、黄の光をチカチカと放ちながら佇むこの塔は異星からやって来た人々が彼らの宇宙船でこの星に乗り入れるために造り上げた宇宙港で、異星人たちの玄関口となっていとして機能していた。


 その宇宙港のある埠頭に一隻の宇宙船が停まっている。それも探検家のものや、金持ちが個人で所有しているようなものとは全く異なり、まるで城や要塞のような大きさの船だ。巨大な都市があるわけでも希少な資源が発掘されているわけでもないこの未開な星にこのような巨大な船が停泊しているのは港の人々にとって奇妙な風景に思えただろう。

 しかし奇妙な風景はこれだけではなかった。宇宙船の船室にはには高度な文明と科学力の産物である宇宙船とはかけ離れた、麻布のような布や毛皮だけを身に着けた原住民の男たちが部屋いっぱいにひしめきあっている。


「いやあ、楽しみだなあ。」

 ある男が黒い瞳を輝かせて希望に胸を含ませていると、その隣にいた男も深く頷いた。

「ああ、全くだ。この星のどんな国よりも大きいと言う国に行けて、その上その国の技術を学べるとはな。これで俺たちの星ももっと豊かにるぞ。」

 そう言った男の表情は落ち着き払っているようだったが男の腰から生えた尻尾は鼻歌を歌っているときのように揺れている。

「向こうの国はきっと凄いんだろうな。」

 黒い瞳の男がうっとりとした様子で呟き、腰かけているベッドを撫でた。

「こんなに綺麗で柔らかい布団は聞いたこともない。王様だって使っていないんじゃないか。」

「ああ、本当にそうだろうな。」

 尻尾の生えた男もそう言ってベッドを撫でる。

「こんな上等なものを作れる国に俺たちは行くんだ。そんな国の技術を星に持ち帰ることができれば、きっと皆幸せになれるだろう。」

「向こうに着いたらどんなところで働くのかは分からないけれども、お互い頑張ろうな。」

 そう言って黒い瞳の男が笑うと、尻尾の生えた男も声をあげて笑った。

時同じくして発進の準備ができた宇宙船は星を離れ、宇宙への舵をきろうとしていた。大型宇宙輸送船エヴァルス号、そしてエヴァルス号に積まれていた原住民の男たちがその後どうなったかは記録には残されておらず、今となっては知る者はいない。


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