第5話「サロンでの過ごし方を思い出そう!」
閻魔様に言われてサロンのことを考える。
最初に思い出せるのは部屋数で、そこから大体の間取りが思い出せた。
「サロンのことはどれくらい思い出せた?」
「えっと…部屋が5つありました」
本校舎の中にサロンがあって、使用できるのは薔薇色の人生に所属している生徒だけ。
サロンも初等部、中等部、高等部、大学部に加えて共用の5つ。
自分の部と共用部以外の使用は基本的に禁止。
別部の人がいると落ち着かなくなる人もいるからね。
各部のサロンには共用のサロンにつながる扉があって、共用サロンから各部のサロンへ連絡する手段もあったから、よく呼び出されてたなー。
「マモルちゃんはどこのサロンを使ってた?」
「私は自分の部の……あれ?共用部ばかり使っていました…。なぜ?」
そう。思い出したのは高等部のサロンではなく、広い共用部のサロンだった。
共用だから他の4つ分以上の広さがある上に、吹き抜けになっていて2階もあった。
中央はホールでダンスを踊ったり、武芸を披露したり、お茶を立てたりもしたなー。
1階はホールを囲むようにソファとテーブルが置かれていて、壁際にはキッチンやピアノなんかの楽器類。
階段裏には物置があって、確か地下に食材を保存しておける大きな冷蔵庫があった。
2階には仮眠用の個室が24部屋あったんだよね。
各部の上が仮眠室になるような設計だった。
私はそのサロンの一角、1階の初等部寄りの席が私専用になっていた。
「初等部の近くに座っていました…弟や妹に会うため?」
「もう少しだね」
閻魔様が続きを促す。
弟や妹に会うためかと思ったけど、どうやら違うようだ。
じゃあなんのために初等部近くに?
「初等部…優姫ちゃん…美月ちゃん?」
初等部のことを思い出そうと考えていたら、2人の子が浮かんだ。
初等部1年生の優姫ちゃんと美月ちゃん。
優姫ちゃんはふんわりとウェーブした髪で、ほわっとした雰囲気のとても甘えん坊。
私の膝の上がお気に入りで、迎えの車を待つ間共用サロンで一緒に過ごしてた。
美月ちゃんは腰まである黒髪の女の子で、寡黙かと思いきや人見知りの激しい子だった。
服の袖をキュッて掴みながら、潤んだ瞳で見上げてくるから、よく頭を撫でてあげたりしてたなぁ。
2人との出会いはもちろん共用サロン。
弟と妹が共用サロンに呼び出すから私もそこで過ごすようになってしばらくしたら、優姫ちゃんと美月ちゃんが入学。
妹に連れられて会ったのが最初だね。
2人とも他の子より不安そうにしてたから、今までの初等部の子と同じように抱きしめてあげたんだよね〜。
そこから一気に懐かれたんだよ。
なぜ抱きしめたかって?
弟と妹も入学して初めてサロンに来た時は不安そうにしてたから抱きしめたら落ち着いたんだ。
それを他の一年生にもしてあげたらみんな仲良くなれたたんだ。
以降も毎年不安そうな子にはしてあげることにしたの。
弟と妹で慣れてるしね。
「サロンのこともだいたい思い出せたと思います」
「まだだよ。まだ趣向を思い出せてない!」
閻魔様は起き上がり、私を指差して宣言する。
趣向?
そういえば趣向を思い出すためにサロンを思い出したんだっけ。
でも、サロンでは初等部の子と話をしてただけなんだけどなぁ………あれ?
「初等部の子」と?
高等部の子とは?
それ以前に弟と妹は初等部5年生。
中等部の時の記憶でも初等部の子とばかり話してた…。
あれ?