第3話「家族について思い出そう」
閻魔様は私に撫でられてフニャッとした顔になりながらも、覚えていることの確認をしてくる。
やっぱり癒される〜。
「名前は覚えてるんだよね?」
「はい。福咲 護です」
「うんうん。マモルちゃんは家のこと思い出せる?形とかどんな感じだったとか」
閻魔様は外見に似合わず、優しい瞳で私を見つめる。
ドキドキしてきた。
違う違う!ちゃんと思い出さないと!
家…家…形は思い出せないけど、暖かくもなく寂しくもない感じ。
たくさんの人がいた気がする…30人ぐらい。
普通こんなに家族はいないと思うから使用人とか?
もしかして私はお嬢様だったの?
だとすれば大きな学校はお金持ちの子が通う学校?
「大きい家で人がたくさんいた気がしますが、家族って感じはしないです」
「そりゃそうだよ。みんな使用人だもん。護ちゃんはお嬢様だからね!」
やっぱりお嬢様でした!
家族の顔を思い出せないのは忙しくて会ってないからかな?
「家族のことは思い出せないですね」
「えっとね、母親は福咲グループっていう企業グループの総帥」
「福咲グループ……。思い出しました…怒ると笑顔で無言の圧力をかけてくる人です…。滅多に怒りませんが…」
「最初に思い出すのは怒られた記憶なんだね…」
閻魔様が呆れてる。
でも、仕方ない。
忙しくて殆ど会えなかったから、印象に残るエピソードが少ないのだ。
だから最初に思い出したのは初めて怒られた記憶。
風邪を引いて寝込んでいて暇だったから、手作業でできる何かをしていた時だっけ。
何をしていたかは思い出せないけど。
「父親は母親の秘書兼ボディガード。ムキムキマッチョメンだね」
「思い出しました!ムキムキでしたね!」
閻魔様がムキムキマッチョメンって言った瞬間、整った顔立ちと暑苦しい筋肉が思い出された。
人生の目標は、銃弾を跳ね返す筋肉をつけることで、今のところその目標は叶ってないけど、パワードスーツとか作って擬似的に達成したんだよね。
そのパワードスーツの開発でお母さんと知り合って、意外と頭も良かったから意気投合して結婚することになったって、高校生になる時に言われたんだ。
頭の中まで筋肉じゃなくて良かった!って真っ赤な顔で言うぐらいお母さんに惚れてるお父さんを見て、結婚するならちょっと変わっていても、私を愛してくれる人がいいなって思ったっけ。
「お姉さんが2人いるけど思い出せそう?」
「思い出せました!お姉ちゃんの他にお兄ちゃんや弟と妹もいます!6人兄弟ですね!」
閻魔様のおかげでだんだん思い出してきました!
2人のお姉ちゃんはお母さんを若くした感じ。
上のお姉ちゃんがアメリカ方面担当で、下のお姉ちゃんがヨーロッパ方面担当。
お兄ちゃんが中国、オーストラリア担当だった。
お兄ちゃんはお母さんに似て体の線が細かったけど、武術の才能はお父さんから受け継いでて、剛のお父さん、柔のお兄ちゃんって感じ。
私もお兄ちゃんと一緒に体を動かしてた。
弟と妹は二卵性の双子で、同じ学校の初等部に通ってた。
私は高等部の2年生。
大人しめなグループに所属していたけど、家が学校に資金提供しているから、薔薇色の人生っていう特別な会に入らされてたんだよねー。
私は庶民的なところがあるから浮いてたはずなんだけど、薔薇色の人生専用のサロンによく行ってたんだよ。
なんでだっけ?