登場人物の外見
私が小学生だった頃、教師が百人一首の絵札の話しをした記憶があります。
「清少納言がなぜ後ろ向きで描かれているかわかるかい」
その教師曰く、想像力の余地を残したそうです。
諸説あり、黒髪を強調したかった、実はブスだった等々。
でも私は教師の説が好きです。
後ろ姿を見せられ「この人は美人です」と言われれば、自分の思い描く最大級の美人を想像します。
なぜこの話しを持ち出したかというと、登場人物の外見描写が多くないか? と思ったからです。
小説の書き方サイトなどを読むと『誰が読んでも同じ風景・人物が思い描けないとダメだ』と書いてあったりします。それは本当なのでしょうか。
TVドラマや映画、アニメは見たままが記憶されます。映像なので当然です。ですが、小説はそれら映像作品の台本や設定資料ではないと思うのです。
自分の思い描く主人公やヒロインが活躍してこその小説だと。
ですが、ラノベなどは表紙にヒロインが描かれています。
想像の余地なしです。
表紙で手に取る読者も多いと聞きます。
有名な絵師だと売り上げが桁違いだとも。
表紙のヒロインを記憶した後、本文で「言葉が出ないほどの絶世の美女」なんて描かれていると。
「え? 嘘? これが?」と、表紙を二度見します。
念のため、決して絵師が下手と言っている訳ではないですよ。
でも、もったいないとは思います。
小説と漫画の中間地点にあるもの、それがラノベだと考えています。
物語の中心的存在であるヒロインの外見、それを想像するという一番の美味しいところを奪われる。
それを良しとする文化、なかなか面白いと思いませんか。
私の買う文庫本は描写が殆どありません。魅力的な会話だけで物語が進みます。
自分の住む街、知り合い、理想的な俳優、最も好きなタイプの異性、それらが頭の中で映像化され物語が進む楽しさ。
おそらくラノベではそのあたり、求められではいないのでしょうね。
自分の好きな作品がラノベ化、漫画化、映像化されないことを切に願う私でした。