チビ
チリンチリン、――――――――――――
それはふと、僕の耳に滑り込んできた。
ベル、というよりはやはり鈴というような、風に揺れたような可愛らしい音に、僕は視線を向ける。
階段を上りかけていた足を止めて、僕は窓から庭を見る。
家の周りを覆うように茂っている庭の中に、子猫が二匹はしゃいでいた。
真っ白のやつと、
黒ブチのやつと。
たまに来る半野良の二匹だ。
チリンチリンと首に着いている鈴が、透明な雨粒のように弾ける。
葉はまだ緑色なのに、風はすっかり涼しい。
そんな中を風に乗るように、二匹は庭を駆けて、駆けて、転がって。
その度に首の鈴がチリンと心地よい音色を奏でる。
……と。
そうして見ていると、その足の間を家のチビが通って行った。
白い毛の尻尾が丸く曲がった、家の三男坊。白猫のチビだ。
チビは同じく秋の風のように網戸の方へ疾走していくと、そこにしがみつくようにして外を見る。
しかし網戸を少しガリガリと引っ掻くと、やめてしまって、今度はその前にお座りをした。
そしてそのままじっと外を見ていた。外で遊んでいる二匹の子猫を見ていた。
家はチビで何代目だったか……確か六代くらいだったはずだが。
そのほとんどが交通事故か病気で亡くなってしまっている。唯一今の一代前だけが寿命で亡くなったが、それでも猫の中では短命だったという。
なので親たちは外に出すことを嫌って、家の中、もしくは納屋だけで飼おうということになっているのだ。
でも……
「……」
そのじっと動かない背中を見て、僕は少し切なくなって、二階へ行った。
なんとかしてチビを外に出してやれないものか……
(……晩御飯の時にお母さんに相談してみようかな)
僕が二階に上がった時、下の縁側からニャーと声が聞こえ、空気に溶けていった……
その晩。
「ああ、それきっと警戒していたのよ。あの二匹とチビは仲悪いから」
「へ……?」
あ、そうなの? としか、僕は恥ずかしくて言えなかった…/////