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最強傭兵団でこの先生きのこるには  作者: 蛇色の海
メルチェナーリョ、、、イタリア語で傭兵
9/27

傭兵団を最強と呼んだのは

その傭兵団は最強と呼ばれていた

地上最強の傭兵団長

絶対無敵の副団長

常勝無敗の騎兵長

―――だが誰が彼らを最強と呼び出したのか?―――





よしっしっかりとした返事をしてやる!団長はベルが言ってた事は

ほとんど嘘だと言っている!なるほど!ほとんど嘘!



「ふぇえ?」



俺は三回返事をした中で一番まぬけな声を最後に持ってきた

今なんて?

おかしな声を出した俺をまるで夏の熱されたアスファルトに張り付いて乾燥したミミズでも見るような目で副団長は声をかけてきた


「ごめんねエリオ君、騙すつもりなかったんだけど

入団するって言ってくれるまではどうしても言えなかったの」


入団するまで言えなかった?

なるほど理解できる

あれだ

ブラック企業がアットホームな職場ですって言うのと一緒だ


「明日よ、ちゃんと説明するからさ!俺の傭兵団がどういう物なのか!まあ今日の所はゆっくり休んでよ!明日話そう明日!」


ばんばんと肩を叩かれてわははとその場を後にする団長

また明日ねと手をひらひらさせてその場を後にする副団長


呆然と取り残された俺の所に団長だけ戻ってきた

「悪い!!今日は俺の天幕じゃなくてどこか別の天幕を使ってくれよ!どっか空いてるよきっと!じゃあそういう事で!明日は朝早いからよ!早めに寝たほうがいいと思うよ!」


そう言って俺の肩をばんばん叩いてその場を後にする団長


うん、なるほど

どこか空いている天幕で寝ればいいらしい

そうしよう

俺は幾つも並ぶ天幕の中からとりあえず一番近くにある場所を覗いた

中は暗く土臭かった

地面はむき出しで6畳ほどの広さの空間に二段ベッドが二つ置かれている

どのベッドも使用された形跡はなく汚れなどはないがどうも埃っぽい

俺は右側一段目のベッドに置かれた布団の埃を外で払ってから敷き直して横になる

そして目を瞑って明日になるのを待つ事にした


だが中々眠りにつく事ができない


あれはほとんど嘘だごめんよ!

はぁ?

ほとんど嘘って?

なんだよほとんどって中途半端だな

逆に嘘じゃない部分はどこなんだよ

それで明日説明する事ってなんだよ

数々の疑問が頭の中をよぎる内に

なんとか自分の心を整理させて

明日以降の目標を定めた

とりあえずあの赤髪を見つけてぶっ倒す

この事だけは変わりない

その為に傭兵団に入る事にしたのだから


その後もしばらく寝付けなかったが

目を瞑って寝返りを打ち続けて無理やり意識を失った




「おはよ!!エリオ君!良く眠れたかよ!」


天幕の中に良く通る大きな声が響き渡る

あまり良く眠れなかった俺はなんとかこの声を無視できないかと

布団を頭まで被った

だがすぐに布団を引っぺがさられて

更に大きな声で呼びかけられた


「お!は!よ!う!エリオ君!昨日話しただろうよ!さあ行くぞ

戦場によ!」


「、、、なんでそんなに元気なんですか、、、団長、、、

昨日の事なんとも思ってないんですか、、、?」


「昨日の事?ああベルか!なんとも思ってないわけないだろうがよ!

ベルとの付き合いは随分長いからな!まあうちの雇用主は優しいから

偉大なる騎兵長の葬儀費用ぐらい出してくれるだろうよはっはっは!」


俺はなんだかこの人の事が嫌いになりそうだ

寝ぼけた頭でなんとかベッドから起き上がる


「今日はキーリが案内するからよ!じゃあそういう事で!」


そう言うとそそくさと団長はどこかへ行ってしまった


外に出るとキーリさん、、、副団長が馬に乗って待っていた

あの馬は、ベルが乗っていた馬だ

「おはようエリオ君、その様子だとあまり眠れなかったみたいね

まあ今日はそんなに忙しくないからあまり気負わなくていいわ

団長なんて畑仕事に行っているぐらいだから」


畑仕事だって?

TOOIOじゃあるまいしなんで傭兵が畑?

副団長の様子は昨日の出来後にも関わらず

変わらないように見えた

俺は寝起きの調子で副団長に挨拶を返す

「おはようございます副団長

今日は副団長が教えてくれるんですよね

傭兵団の事を

今度はどれだけ嘘が混じっているんですかね」


俺の皮肉に動じる様子もなくうっすらと笑みを浮かべる副団長

「大丈夫よ、今日私が説明する内容に嘘はないわ、、、たぶんね」

そう言って舌をちょろっと出してウィンクする副団長

やっぱり可愛いなちくしょう


「とりあえずペイシュバルデまで行きましょうか

ペイシュパルデって言うのは一昨日君がいた平原の事ね

さあ後ろに乗って」


え、馬に乗るの?しかも副団長の後ろに?

少しばかり緊張しながら馬に跨ろうとする

だがこれが意外と難しい

と言うかどうやって上がればいいんだろう


「もしかして馬に乗るの初めてかしら?ほら手を貸して

そこの鐙に足をかけて、、、」


副団長の手を借りると流れるように騎乗できた

そして副団長のブーツの拍車で馬の腹を叩いてやると

颯爽と駈け出した

というか

すげー落ちそう!

でこぼこした砂利道を自転車で全力疾走しているような揺れに

びびりまくりの俺はここぞとばかりに副団長の腰に手を回して

がっちりホールドした


「大丈夫エリオ君?体の力は抜いて

背筋を伸ばして馬の動きに合わせて腰をグラインドさせて、、、」


副団長言われた通りに馬の動きに合わせて上下に体を揺らすように動くと

少し体が安定した

だが安定しだすと今度は密着状態での上下のグラインドのせいでなんだかへんな気分なりそうだった



馬に乗っていたのは10分程だろうか

そのわずかな間にすっかり乗馬のコツを掴むことが出来ていた俺は

余裕を持って周りを見渡す事ができるようになっていた


陣営地からしばらくは緩やかな丘陵を上り続けて

その丘陵の頂上へ辿りつくと視界は一気に広がった

俺は馬から降りて更に辺りを見渡していく

左には雄大な渓谷とその先に更に雄大な山がそびえている

右にはひたすらに平原が続きその先にうっすらと緑の塊が見える

そして正面には無数の傭兵たちが、、、


「、、、副団長、今目の前に居るのがフロメルの部隊ですか?」


「そうよ、何人か病欠している人もいるけどあれが私達の本隊、、、

少ないと思った?」


そう少ない

このだだっ広い平原からしたらまるで米粒のようなもんだ


「全部で100人ぐらいかしら、昔に比べたら随分と大所帯になったわ」


「100人!?ベルの奴5000人いるって言ってたけど」


「彼女そんな事言ったの?

私からは適当に水増しして説明しておいてとは伝えてあったんだけど

5000人も居たらとても兵站を維持できないわ

あの子も限度を知らないわね」


「だけど一昨日は何というか迫力のある戦いだったと言うか

もっと人が多かった気が、、、」


「エリオ君がここに現れた日ね、、、、しっかりと周りを見ていたかしら?本当に何千人もの人々が戦っていた?」


本当に戦っていたかだって?いや、確かにものすごい矢が盾に向かって、、、


「、、、言われてみれば戦っているのは何人かで

すごい数の盾はあったけど

その場からピクリとも動いてなかった気がする」


「それについてはまた今度

そして先に見えるのが私達が戦っている相手

アリアート・メルチェーナーリョ 通称アルメル

その本隊よ」


その本隊よ、ってあっちも同じぐらいの人数しかいないぞ

目を凝らして赤髪の女を探すがどいつもこいつも兜やらマスクやらを

していて見分けがつかない

じーっと敵部隊を見つめる俺に副団長が話しかける


「エリオ君、昨日団長が言った事だけど

他にも細々とした規則や決まり事が色々あるの

それは追々説明するとして、、、

もしもチカチーロを見つけても本気で戦っちゃだめ」


「チカチーロと戦っちゃダメって、、、

あいつだけ特別扱いしてないですか?なんなんですかあいつは?」


昨日は殺さずに追い返すだけ

今日は見つけても戦うな

一体彼女は何者なのか

そんな事を考えていると副団長は更に続けた


「チカチーロだけじゃない、あなたが戦場に出るようになっても

誰とも本気で戦っちゃダメ、相手を殺すのはもちろんだめ

戦わないのも駄目、、、一言で言うと」


副団長はいったん言葉を切って、そして言った


「戦っている振りをしてほしいの」


副団長の一言を聞いて俺は今まで喉に引っかかる魚の小骨のように

感じていた違和感の正体にやっと気が付いた


同時に

イカサマ傭兵団フローデ・メルチェナーリョでこの先生きのこるには

俺が手に入れたステータス65535は

何も役に立たない事にも、、、






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