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最強傭兵団でこの先生きのこるには  作者: 蛇色の海
メルチェナーリョ、、、イタリア語で傭兵
2/27

絶対無敵の副団長

エリオがこの世界に現れた頃戦場が見渡せる小高い丘陵では男女二人が戦場を見つめていた

一人が口を開く

「団長、ベルがボコられてる、相手に見覚えはない。正確にはみぞおちに一発入れられて嘔吐して

腹を抱えてどういう事よと言おうとしている」

彼女とベルと呼んだ者との距離は1里程離れている

団長と呼ばれた男はそれを聞いて驚いたように声をあげる

「なんだって!どういう事よ!」


「ベルと戦っている相手が何を言っているかわからない。今は

何か、、、説明しようとしているような、、、」


団長と呼ばれた男はやれやれと息をつき彼女に命じる


「キーリよ、見てきてくれよ。場合によっては教育だ

俺は何も聞いていないし、もしかすればアルメルとも関係ないかもしれん、だが話ができそうなら聞いてみてくれ

その後の判断はお前に任せる」


「スィ・セニョーレ」


「それとよ」

団長は一言付け加えた

「殺すなよ」


キーリと呼ばれた女性は答えた

「分かってますユーリ団長。今の私はあの頃の私じゃあない」


女は迅雷の如く駆け出した







横たわって未だに苦しそうにしている金髪の少女に

いかつい鬼の兜を被った馬が頬を寄せて悲しそうないななきをあげる

その後、顔をあげて、兜越しにこちらを威嚇するように顔を向ける

馬に人の言葉が解るとは思わないが、、、

「おいおい、そっちがしかけてきたんだぜ?

正当防衛だよこれは、、、言ってもわからないか」


なんだか悪い事をしたような気分になる

俺はどうどうと言いながら未だ苦しみ続ける彼女とぎろりとにらみを利かしているように見える彼女の馬から少しずつ

距離とっていく

あたりの戦闘は大分落ち着いてきたのか

風を切る音や鉄が擦れる音が少なくなってきていた時



それは来た

始めは隕石が落ちてきたかと思った

後方の空から

光の線が伸びて来て

そのまま地上に突き刺さった


静かなる死 逃れられない悪夢 明日から来る断頭台

昨日までの思い出 片道切符 希望を狩るもの 

幾つもの異名が付けられそれらは

後に

シンプルに

一つにまとまっていった

死をもたらす者

傭兵団フローデ・メルチェナーリョ、通称フロメル副団長

キーリ・アストージアが

生きる死神が戦場に権現した


だがエリオはそんな彼女の事を露とも知らない

まためんどくさそうなのがやってきたと感じるに留まった


「ベル?大丈夫、、、大丈夫そうね。

そこのあなた、始めまして。私はキーリ

もしかしてアルメルの新人かしら?

ジュリィから話しは聞いているの?」


空から落ちてきた彼女は一瞬苦しむ彼女の様子を確認した後

すぐにこちらに向き直り質問してきた

どうやら今まで切りかかってきていた女の子はベルと言うらしい

しかもこの人はなんだか話が通じそうだ


「は、初めまして、俺はエリオって言います

その、ぶっちゃけなんもわからないんです

アルメルだのジュリィだのがなんなのかも良くわかっていないです

ここにもさっき来たばっかりで、、、

この人にも聞こうとしたんですけど聞き耳持たずで

仕方ないから腹を殴ったらうずくまってしまって」


俺の話を聞いている彼女の目は氷にように冷たく

こちらが真実を語っているかどうか見定めているように見えた

「エリオ君だったわね

本当に何も知らないで、

ただベルが、、、彼女が襲ってきたから対処した

そういう事なのね?」


俺はこくこくとうなずいた

それに至極安心した

びっくりするほど話が分かる人だ

この先の生活も何とかなるんじゃあないかと楽観できる


「わかったわ、、、あなたの言う事を信じます

簡単に説明するわね

ここは戦場

しかもど真ん中

私達、、、私や彼女はフローデ・メルチェナーリョと言う

傭兵団に所属していて

通称フロメルと呼ばれているの

今日戦っているのはアレアート・メルチェナーリョ。通称アルメル

彼らも傭兵団よ

けどそろそろ今日の雌雄は決していて皆退却する所

ここまでは理解できた?」


なんて親切な人なんだ。さっきまでのもどかしい状態が嘘のように

状況が見えてくる

しかも落ち着いて彼女を良く見るとものすごい美人だ

細く流れる眉に鋭い翠色の瞳

過不足無い鼻筋に少し薄めな唇

なんだか話すのが億劫になってきてあちらこちらに視線を飛ばすと

ベルと呼ばれた娘が

未だに腹を押さえながらばたばたと足をばたつかせもんどりうっている


「はい、理解できました、、、お姉さんすごい親切ですね

さっきまでまるで会話にならなくて本当に困っていたんです

この世界に《《転生》》してきてすごく不安だったけど

なんだかうまくやっていけそうな気がしてきました」


初めて彼女から笑みがこぼれた


「転生?ふふっ面白い事言うのね。。。

ねえここで長居するのも何だし行くあてもないんでしょ?

良ければ私達の陣営にこない?

そこで詳しく話をしましょう、この世界の事や私達の事

それにあなたの事も」


彼女は笑みを携えたまま右手を差し出してきた

俺といえばそんな彼女に見とれていて足元に転がった石に気が付かないまま

差し出された手を握ろうと前に進み「こちらこそぜひともお願いします」と言おうとした所で思いっきり石に左足のつま先を引っかけてしまい前のめりになって倒れそうになるのを防ごうと慌てふためいて海で水をかくように両手でクロールを始める

幸いにも地面に激突する前に二つの小ぶりな隆起を掴む事ができた

難を逃れた俺はやれやれと自分の手の平が何を掴んでいるかを確認してから今更先ほど言おうとした言葉が喉から飛び出した


「こちらこそぜひともお願いします!違う!今のは事故で!」


慌てて彼女の胸から手を離したせいで今一度バランスを崩した俺は

馬鹿の一つ覚えにクロールを繰り返した

悪い事は続くもので俺の指先は彼女の下衣を抑えるベルトにひっかかり

全体重を載せてそのまま彼女にひれ伏すようにうつ伏せになった


やっちまったーーー!!やっちまったけどさっきまでの彼女の落ち着いた話し方これは事故だと話せばきっと許してくれるはずだ!

恐る恐る顔をあげていくと

目の前には完全に足首までずり落ちた下衣がある

嫌な汗がこめかみから頬に伝って顎の下にぴたりと張り付く

「あの、、、ごめんなさいその、、、石につまづいて、、、」


俺がしどろもどろになっていると

彼女は先ほどと変わらない声色で答えた


「いいのよ、とりあえずその手をどかしてくれるかしら?」


よかった怒ってない大丈夫だった

すいませんと言いながら

すぐに立ち上がりその場を離れようとしたが

あまりに慌てていた為に足がもつれ

今度は彼女に覆いかぶさるように倒れ込む


やっちまったー!!しかもこの感触は、、、

俺の唇が味わう初めての、柔かい感触の正体は彼女の唇だった

止めとばかりに急いで離れようと地面に手を置いて立ち上がろうとしたが

手を置いた場所は先ほども手にした二つの小ぶりな隆起だった


いやあ、さすがにこれで怒らない人なんていないんじゃないかと思う前に体が上空にすっ飛んでいた 

かなり高い場所まで体は持ち上がり

もう少しで鳥とダンスが踊れそうな距離だ

顔を横に向けると彼女が居た 

いつのまに履いたのだろうか下衣はしっかり元の位置に戻っていた


「あなたね、、、

一回目はまだぎりぎり理解できると考えた

ありえなくもない、ここは大人の対応をしなくちゃって私も思ったの

だけどその後はおかしいありえないわざとやっているとしか思えない

穏便に連れていこうと思ったけど予定変更よ

捕縛させてもらう

ただ今の蹴りで平気な顔をしているのは意外だわ

もう少し本気を出しても良さそうね」

彼女はそう言いながら俺の頭に滑車付きブーツでかかと落しを放った

それは脳天に直撃しとても捕縛して連れて帰ろうとする人が放つ蹴りじゃないと思った


回転しながら仰向けに地面にめりこんだ俺は彼女の怒りへの恐怖ともう一つ別の恐怖を感じていた


あれ?俺スゲー強くなったはずじゃないの?

ステータスが65535とか書いてあったけど

ふつーに痛い

腹はずきずきするし頭は親父に灰皿で殴られた時みたいな感じがする

否、これで痛いぐらいで済むって事は

やっぱり強くはなっているんだろう

つまり彼女はチート並みに強い原住民と言うだろうか


降り注ぐ流れ星のように向かってくる彼女の追撃を

めり込んだ地面から飛び出して間一髪避ける

だがすぐに蹴りの追撃がやってくる

できるかぎり捌いたが

また一発もらってしまった


上に吹っ飛び下に吹っ飛び、今度は横に吹っ飛んだ

ごろごろと転がっていると横にやっと立ち上がった金髪の女騎士がいる

この時の俺は様々な事が起こり過ぎていて何故だかその考えが

一番ベストのように思ってしまった


金髪の子、ベルだったか

俊敏に彼女の後ろに回り込み腕で首を絞めあげた


「うぐえっ ちょっとあんた!どういうことよっ」


果たしてこの子は同じセリフしか話す事ができないのだろうか

何にしても恐ろしい強さの彼女に

どう対処するか考える時間は稼げそうだった


いかずちのような速さで向かってきていたキーリはエリオの行動を見て雰囲気を更に変貌させた

同時に動きを静止させた


「今、あなたへの信用は完全に地に落ちたわよ

その行為は小石につまづいてできる事じゃあないわ」


「だってそうしないといつまでも蹴られるんだろ!

ごめんなさいって言ったじゃないか!

もう蹴らないって言うならすぐにでも離すよ!

さっきのは事故!これは正当防衛!OK!?」


どうしてこうなった

さっきまでとんとん拍子に友好な関係を築けそうだったのに

あっちでもそうだった

うまく行っていると思うとすぐにそうじゃないと気付かされる

もういっそ彼らと敵対する勢力に顔を出すと言うのはどうだろう

このまま彼女を手土産にしてそれでそいつらに取り入って、、、

どんどん良くない考えが思いつく

だけどこれが今は最善なんだ他に方法は、、、


「ちょぉぉっとまったぁあああ」


戦場中に響く大きな声がエリオ、ベル、キーリの視線を一点に集めた

そこに居たのは馬に跨った金髪の、不敵な笑みを浮かべた大柄な男だった


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