完全無欠の転生者
小説家になろう初投稿です
暗くならない話目指します
来須エリオは目の前の状況が呑み込めていなかった
つい先ほどまで自分の部屋のベッドの上で日向ぼっこをする猫のように
だらだらとTVのチャンネルをあちこちに変えながらノートパソコンで
ストリーミング配信されているアニメを見ていたはずなのに
今目の前に見える光景を一言で表わすのならそれは戦場だった
左を見れば屈強な男がハンマーで強大な鎧の兵士に殴りかかっている
右を見れば流麗な剣士がすさまじいチャンバラを繰り広げる
後ろを見れば千の矢が2千の盾を襲っている
そして前を見るといかつい鬼のような兜を被った馬のような生物に乗ったいかつい鬼の兜を被った騎士のようなものが怒涛の勢いでこちらにやってきた
ん?いかつい鬼がやってきている?まずいまずいまずい!
寝ころんだ状態だったエリオは
バッと立ち上がり騎士が来る方向とは逆にに向かって走りだした。
ひいいい、すさまじい勢いで騎馬が迫ってくる
それから逃げ出そうと一心不乱に腕を振り、足を振り
がむしゃらに走り続けた
するとエリオは騎馬を少しずつ突き放していく
あれ?あれあれあれと驚いていると空から千の矢が降り注ぐ
や、やばいやばいやばい!完全に終わった!もうだめだ!
ほら、すぐそこに矢が見える、危ない避けないと!ああ!
こっちも!そっちも!これを避けて、そっちははたき落して
この一本だけは無理だ腕で受けるしかない!
あれ?あらあら?なんだか対応できている?
腕で受けようとした矢は皮膚を抜ける事はなく
まるで壁に当たった野球ボールのようにはじかれた
およ?およよ?これはどういう状況なんだ?
無軌道に走り回っていると左と右に剣士がいた
更に言えばその剣士はちょうどお互いに切りかかろうとしていた
エリオは二人の剣に手を伸ばす
スローモーションのようにはっきり見えるそれを
左手と右手の中指と人差し指でピタッと止める
エリオは状況を少しずつ呑み込んでいた
少し落ちついた彼は、自分のズボンのポケットに何かが入っている事に気付く
剣士達の争いからさっと離れ
巨大なハンマーを振り回す屈強な男を背もたれにそれが何か確認する
それは可愛らしく装飾されたピンクの封筒だった
中にはこれまた可愛らしい手紙が入っていた
「ハロー、エリオくん
君はこの世界の転生者に選ばれました(はぁと)
そんな君にささやかなプレゼントがあります
それはステータスの値がすべて65535になる事☆
2の16乗ー1のステータスを君へ
この世界がより良いものになりますように
健闘を祈ります
万物の創生神オニャンコポンより愛を込めて」
俺はその辺の鈍感野郎とは違う自負がある
これは天啓だ
若干ノリが軽い事に違和感はあるが
要するに
最強になった
そしてここは異世界
俺がやりたい放題にできるって事じゃあないか!
「ちょっとあなたどういうつもりなの!」
不意に声をかけられて振り向くと禍々しい気を纏った鬼がいた
横には鬼のような馬がいる
ように見えただけで実際にいたのは
派手な見た目に作られた兜を被った人と
派手な鬼のような見た目に作られた兜を被った馬だった
さっき前から突っ込んできた騎馬と騎士だと
気がついたが、その問いかけの意味はわからなかった
「えーと、ごめん、どこから話せばいいのやら、、、
どういうつもりって何が?」
どうやら俺は受け答えを間違えたらしい
剣を抜いて鬼の兜を被った奴はこっちに突っ込んできた
突っ込んでは来ていたのだが、俺からするととても遅く見える
例えるなら辺りに花びらを舞わせながら笑顔で
スキップしてくる美少女のようだ
というかよく見れば鎧の胸の部分に二つの山がある
気になった俺は向かってくる奴の兜を足で蹴り上げスパァンと上方へ
弾き飛ばした。
その兜の下に
顔を歪ませた金髪の美少女がいた
「ちょっと、、、どういう事なのよ!!」
さっきと同じようなセリフだが怒気が強まっていた
金髪のポニーテールを揺らしながら大きく振りかぶって縦に切りかかってくる
さっと横に体を躱し、彼女の問いに答える
「待ってくれよ!どういうつもりも何も俺が説明してほしいぐらいだよ!ここがどこで!何なのか!ちょっと切りかかるの止めてくれないかな?」
相手に合わせてこちらも語気が強まった
だが彼女は手を休めずに切りかかってくる
「あんた見ない顔ね。さては新人でしょ!
なんであの人達は何も説明しないで
こんな戦場のど真ん中に放り込むのかしら」
彼女は喋りながら縦に振りおろした剣をそのまま斜め下方に流して
体をクルリと回転させ横に薙ぎ払おうとしている
俺と言えばなんだか母親に最新の電化製品の使い方を説明している時に引っ切り無しに電話がかかってきているような気分になっていたのでいっそここでこの横切りの直撃を受ける事により
俺の持つステータスを彼女に伝えてあげようと思った
だが不可解な事に横に回転切りを放とうとしていた彼女は
こちらの様子を確認すると舌打ちしつつ憎らしい者を見るような表情に顔を歪ませ
剣の機動を変えて斜め上方に切り上げた
もちろんその剣は完全に俺を逸れた
そして彼女は一旦距離を取った
「ちょっと!あなた!!どういうつもりなの!!」
興奮気味の彼女の言葉は少しちぐはぐになっていた
「だからよくわかんないんだって、、、一から説明してほしんだけど」
それでも彼女は切りかかってくるので
みぞおちに一発拳を入れてしまった
うげぇっと顔に似つかわしくない声をあげて悶絶する彼女
それを見てなんだか悪い事をしている気分になった
「ごめん、なんだかいつまでも切りかかってくるから、、、
けど今ので分かっだろ?俺の方が強いって」
「ちょっと、、、あんた、、、本気で、、、どういうつもりなのよ、、
ごほっごほっ」
その時俺と彼女の居る場所に無数の矢が飛んできた
「やばっ、、あんた、、、て、、」
みぞおちへの一撃が効いているのか
彼女に矢を避ける余裕は無さそうだ
俺は飛んできた矢をことごとく拳で払いのけた
すうっと息を吸いもう一度自分が知る限りの事を
彼女に話した
「大丈夫?さっきはごめん、けど本当に何にもわからないんだ
俺はこの世界の人間じゃあない、信じられないかもしれないけど
転生してきたんだ、多分。それで、、、それでできたらその、、、
落ち着いたらでいいからこの世界の事を教えてほしいんだけど」
一方的にまくし立てた、だが
彼女の反応を見るとまだ苦しそうにしていて
こちらの問いかけに反応できる様子ではない
よくよく考えれば彼女にこだわる理由はない
矢も剣も俺には通用しないし
さっさと立ち去って話の解る人間を探した方が早い気がしてきた
いざとなっても女神からの贈り物がある
どう考えても俺がこの世界で完全無欠の存在じゃあないか
だけど
そのかんがえは
いっさいがっさい
まちがっていて
このさきにまっていることは
なにからなにまでよそうしていたものとはちがっていた