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シーサイド・フェスティバル  作者: 芳川見浪
第三章 ドラゴンスレイヤー
25/65

広大な大地へ (山岡編)

五月七日 月曜日

松尾には親族がおらず、葬式は執り行われなかった。ゆえに告別式だけ粛々と行われる事になった。


「よお、お前も来るとは思ってなかったぜ」


祭壇の上に飾られた松尾の写真に深く頭を下げ「お疲れ様です」と短い言葉を呟いた後、参列者席に戻った山岡に喪服に身を包んだエンジェルが驚いたと言わんばかりの言葉を吐いた。


「一応、数少ない本音をぶつけた相手ですからね。それに松尾さんは結構気に入ってたんですよ、エンジェルさんよりも」


「そうかよ」


「ええ…………松尾さんの遺体は戻らないんですね」


山岡は棺の無い祭壇に目を向ける。


「ああ、まだドラゴンの腹ん中か、(クソ)になって捨てられているかだ」


「何だか悔しいですね、僕は明日モンゴルへ向かいます。さっき社長からそういうメールが届いたんです。ついでに若宮も一緒です」


「そうか、俺はこの後すぐだ。お前達二人がいるという事は、いるのか? 奇人が」


「まだわかりません。けど社長とエッツェルはそう睨んでるみたいです」


「もうじき告別式が終わる。次会う時はモンゴルだな」


「そうですね、死ぬなとは言いませんけど、無駄死にはしないで下さいよ」


「はんっ、言ってろ。てめえは後方で茶でもしばきながら俺の活躍に胸震わせてろ」


参列者の最後の一人が祭壇から離れる。そして喪服の男性が現れ告別式の終了を告げた。


――――――――――――――――――――


十五時十分、株式会社ジッパー格納庫

中島源緑は制御室内にいた。山岡はゆっくり格納庫を歩き回り制御室までたどり着く。

ハンガーに掛かっているカドモスはコートを剥がされ無骨な骨格が剥き出しになっている。


「ナノディコートの調整中なのかな」


山岡は制御室のドアを開けて中に入った。


「どーも、装備の点検に来たんだけど」


源緑は制御室内のPCをせわしなく操作していた。山岡が入ってきたのを確認すると煩わしそうな顔を向ける。


「なんじゃ山岡か、貴様(きさん)の装備は格納庫の隅っこに固めてあるから勝手に持っていけ、儂は今カドモスの整備で忙しい」


「えぇ、なんか雑。今ってナノディコートの調整やってるの?」


「そうじゃ、モンゴルの気候に合わせねばならん。向こうに着いたら微調整をやらねばならんし、全く何でこんな面倒なものを作ったんじゃ」


因みにカドモスの設計者は巨乳美人と名高いエッツェル博士。

ナノディコートとは、ナノマシンで構成された集合体の事、カドモスから供給される電気エネルギーを利用して大気中の炭素や窒素を表面に焼き付けて硬化させる事でコート状に変形する。


SF小説にあるように自己修復と自己増殖は出来るが、質量保存の法則は無視できず、素材となるケイ素、モリブデン、アルミ等の金属類と電力が無いと実行できない。


「ん〜、関節を隠すためと、耐熱耐寒、耐G効果と衝撃吸収とか色々あるけど、やっぱり一番はエッツェルの趣味かなあ」


「エッツェルに言っておけ、もっと整備性の良いものを渡せと」


「言っておくよ」


源緑はPCの操作を止め、隣のレバーを引く。するとモニター画面が次々とシステムチェックを行い、異常無しを告げるcondition greenの文字がモニターを埋めていった。


そして最後にカドモスの各部アクチュエータからナノディコートが展開して、馴染み深い燕尾服を纏った黒い人型戦車が出来上がった。


どうやらカドモスは快調のようだ。

次からモンゴル入ります。

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