表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/70

始まりの灯火

記念すべき第一話です。

 貼り廻れた板が広い空間を作っていた。

 大勢の少年少女が集まっている。

 皆、身なりが整ったブレザーを着ているが、その上には飛び散った血痕がある。

 全身が震えていた。

 少女達の目に涙が溜まり、止まらず流れていく。

 もう自分達は助からない、そう思っていたのだ。


 何故ならば、黒服の男達が空間を制し、おぞましい殺意を放っているからだ。

 事実、逆らったのであろう者達は体に穴が開いたまま、動いていない。

 その穴からは生々しい血が溢れている。

 ここは地獄だ。

 そして今、愚かしくも逆らった者の処刑が始まろうとしていた。




 黒服の男から伸びる鉄。

 その鉄は輪となって無数に繋がり、少女の首を絞めている。

 赤い雫がゆっくりと流れ、少女は崩された姿勢のまま、男を睨んでいた。


「友達を助けたつもりか? やめときゃあ良かったのに」


 首を絞められる度に、喉から声が漏れていく。


「う、ぐ、ぐうう、ぐぐぐぐ……」


 絞められた首を解こうと力を入れるも、ビクともしない。

 その側では、もう一人の少女が絶望に満ちた顔で泣いていた。


「いや、やめて、やめて、やめて……」


 自分を庇ってくれた友達が、痛め付けられている。

 だが、どうする事も出来なかった。

 首を絞められた友を、ただ震えて見つめるしかなかった。


「あんた達は、絶対に許さない」

「言ってろ。そんな状態で何が出来るんだ? 自慢の『風』も使えねえのによ」


 少女は歯を食いしばり、睨み続ける。

 それが今、精一杯に出来る反抗だからだ。


「お前をぶっ殺した後、お友達にもチケットやって向かわせてやるから、な」


 男の懐から現れる鋭利な輝き。

 悪魔の様な短剣だった。


「ぐわああああ!」


 突然、閉ざされていた出口から爆炎が参り込んだ。

 近くで見張っていた黒服の男の内、何人かが吹っ飛ばされる。

 その爆炎に、全員が目を疑った。


「な、何だ?」


 静まった爆炎が少しずつ広がっていく。

 向こうから近付いて来る人影。


「こ、こいつ!」


 ある男が引き金を引こうとした。

 その時、球となった炎が腹に激突。

 衝撃と共に男は炎上した。


「ぎ、ぎゃあああああああああああああああああ」


 男が火達磨になる中、人影は一歩二歩と大きくなっていく。

 やがて、その姿をはっきりさせた。

 丸く光り輝く瞳。

 その瞳から広がる白銀の仮面。

 仮面を隠すローブから繋がる広い袖。

 そして、炎と化した姿がそこにあった。


「な、何故だ!? 何故ここに『スピルシャン』が!?」

「く、クソ!」


 男達は酷く戸惑いながら、弾丸を一斉に放った。

 だが、スピルシャンと呼ばれる存在は落ち着いたまま、その場で飛び上がった。

 腰を大きく曲げて一回転。

 銃を手にした男達は動揺した。


「と、飛んだ!?」


 それでも男達は諦めずに発砲を繰り返すが、弾丸は横を通り過ぎるばかり。

 遂に一つも当たらず、スピルシャンは着地。

 後ろへ回り込まれてしまった。


「す、すげえ……」


 捕らわれの身だった少年達の目に、輝きが戻っていく。

 今度はスピルシャンが攻め手に入った。

 掌から飛び出した小さな火炎は、まず正面にいた男に炸裂。

 着弾と同時に炎上し、左、右と男達を次々倒していった。


「や、野郎おおおおおおおおおおおお」


 残った男が激昂し、駆け出した。

 銃を捨て、懐から短剣を取り出し、距離を詰めて行く。

 振り下ろそうとした時、男の顔が青く染まった。


 短剣を持った腕が掴まれ、お互いの腕力が抵抗し合う。

 男は歯を食いしばり、全力を出した。

 だがスピルシャンは、その丸い瞳をはじめ、特に変わり様はなく、寧ろ涼しく見えた。


 左手を男に見せ、人差し指から小指までを滑らかに折り、最後に親指を重ねる。

 次の瞬間、男は壁に打ち付けられていた。

 そして、抜ける様に落ちた。


 スピルシャンは男が落とした短剣を拾うと炎で包み、振り向いてそれを勢い良く投げた。

 流星の様な短剣は空気の間を突き進んでいく。


 やがて、その赤き刃は少女の首を縛る鉄を砕き、男との繋がりを断った。

 男はスピルシャンを見る。

 燃え上がるその姿は、英雄。

 絶望である自分の前に、希望という『敵』が降臨していた。

いかがでしたか?

続きも是非読んでください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ