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ある部屋での二人
――おい……おい……
暗闇の中で、何者かの声が聞こえてくる。
その声に意識を向けると光がこちらにやって来た。
寂しそうな天井。
ブランドンは布団に包まれていた。
全身は包帯で絡まっている。
左に顔を向けると傾いた日を照らす空が見える。
右に顔を向けると、声の主がいた。
「何でここにいるんだ?」
「そっちこそ、どないしたん?」
「俺は今日、すげえ忙しかったんだ」
「俺だって忙しかったわ」
「どうせ馬車にでも撥ねられたんだろ」
「自分こそ、しょうもない理由で運ばれたんやろ。食い過ぎて当たっちゃったんとちゃう?」
「この怪我で、どうやって食あたりになるんだ」
「俺も忙しかったんだ」
中身の無い会話が響く。
そのうち部屋からは、枕が飛ぶ影が映っていた。