表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/70

赤備えの男

やった!

水曜日更新!!


感想増えろ~!!

 学校へ来たダージリンはいつもの個室にいた。

 机の上には今日やる筈の課題が汚れた球となって置かれている。

 それも数枚、いや、この場合は数個と言うべきか。

 両手を顔に当て、肘を付きながら机に伏せている。

 乱れた頭。

 その頭の中で『記憶』が激しく回っていた。

 いや、記憶ではない。

 記憶を元に作られた『恐怖』だ。

 多分、今朝父が触れた『過去』がそのまま根付いてしまったのだ。


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……」


 脳に根付いた過去(きょうふ)に耐えながら、息を吐き続けるが苦しくなるばかり。

 試しに肘から力を抜いて完全に机へ伏せてみるが苦しさは変わらない。

 それどころか、心臓が飛び出すかの様に動き続け余計に苦しくなった。

 ――このままじゃあ、ダメだ。


(保健室へ行って少し横になろう)


 大きく吸って吐く。

 この動作を二、三回繰り返し、ダージリンは左胸を抑えながら立ち上がると、廊下へ繋がる扉に手を伸ばした。

 その時、扉が急に歪み、頭も急に重くなった。

 手で頭を抑えるが、目の前が突然遮断される。

 真っ黒の中で倒れてしまった。




 ここはどこだろうか。

 いつの間にか、ダージリンは外にいた。

 轟音と共に吹く風に倒されそうになるが、ダージリンは踏ん張る。

 辺りを見渡したが全く見覚えがない。

 初めて来た場所だった。

 どこかもわからない場所をダージリンは進んでみた。

 歩く度に地面の小石と砂利がぶつかり、鈍い音を発する。

 大岩が何個も積み上げられていた。

 そして風も吹いているので、砂がそれに乗って目に入ろうとしてくる。

 その都度目を擦った。



 暫く進んだ所に、空を反射して青を広がす水溜まりがあった。

 その水溜まりを囲う様に、深く生い茂った木々が風で揺れている。

 いや、もう向こう側の木々が見えない程だから湖と言った方が正しいか。

 木々から落ちる枯れ葉から小さい波紋が広がる。

 大自然。

 大きな命をこの身で感じた。

 湖の潤いと同じくらいに瞳が揺れる。

 風も気にせず、ダージリンは湖を眺めていたが、魅了されていくうちに雲行きが怪しくなっていた。

 湖の青が灰色に濁ったのに気付き、ダージリンは空を見上げた。


(さ、さっきまで、青かったのに……風が吹いてたからかな?)


 積み重なった雲が灰色と化していく。

 雲は止まらず重なり続け、やがて闇となった。

 真っ黒に染まった雲から雨が降り出し始めるが、ダージリンはどこかへ隠れようとはせず、落ちてくる雨水に身体を濡らした。

 一粒、一粒が心を凍てつく様であり、足の力をみるみる内に奪っていく。

 生きている心地を失わす雨に、ダージリンは崩れ落ちた。

 ――この雨は、『僕の心』だ。



 蝕んだ心が降らす闇の雨。

 抗う術はなく、ただその身を濡らし、己の無力さを痛感する。

 やがて、閃光が轟き始めた。

 それと同時に一本の木が炎上する。

 雷は一本、二本、三本と数を増やしていき湖の周りに沢山生えている木に命中し、焼き尽くしていく。

 近くに落ちて来る雷には目にも暮れず、ダージリンはただただ縮まり続けた。



 トコ、トコ、トコ、トコ、トコ、トコ……



 泥と化した地面を響かす硬い音。

 徐々に大きくなっていくその音にダージリンは顔を向けた。

 向こうから人影が見えてくる。

 ダージリンよりも一回り大きそうだ。

 同時に、硬い音が何なのかも理解する。

 人影は何かに跨っている様だったが、それは馬であった。

 硬い音は馬の蹄が響かしていたのだ。

 馬に乗った男と僅かな距離までになると、ダージリンはその姿に唖然とした。

 ただでさえ大きい馬だった。

 多分、今立ち上がってみても馬の方が大きいだろう。

 男もそれに似合う様な体躯をしており、更に着ている鎧が一層大きく見える。



 男は左掌を開いた。

 小さな光が揺らめきながら大きくなっていく。

 林檎よりも大きい赤は、まるで太陽だった。

 太陽は男の掌から離れ、天空へと昇っていく。

 やがて雨雲の中へ入り込んだその時、大きな動きを見せた。

 雨雲が炎に包まれ蒸発したのだ。

 それは一瞬の出来事であり、雷は消え、突風は静まり、濡れた地面は徐々に乾いていき、そして、晴天となった。

 小さき太陽は本来あるべき太陽を呼び起こしたのだ。



 瞬く間に起きた天変地異にダージリンは腰を抜かしてしまい、青空をただ眺めるしかなかったが、それよりも天候を変えてしまった男が何よりも気になった。

 視線を男に向けると、男は相変わらず馬に乗ったままだったが、晴天となった事でその姿がハッキリと見えた。

 紅蓮の鋼は馬と共に身に纏い、風になびく黒いマントは男の威厳を見せている。

 馬も真っ黒だ。

 兜に生えた角は鋭く、鋼のあちこちに付いてある金色の円盤には四角い空洞があった。



 そして、男の顔は面具で覆い隠されており、瞳の中も真っ黒だった。

 ダージリンは口を開けながら見続ける。

 正体が気になるが、それよりも男の右手にある得物だ。

 赤く塗られた柄。

 その先に光る十字の刃に目を奪われ、胸が高鳴る。

 それは炎の槍。

 『赤備えの男』に相応しい得物だった。

水曜日を更新日にしましたが、宣言通りに更新できたのは今回が初です(笑)

更新スピード上げたいな……


続きも近々更新します。

感想とレビュー、欲しいので書いてください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ