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迅雷の昼

 シレットが友達と愉快な学校生活を送る中、また一つ異なる生活を送る者がいた。


 王立高等学校にある教室で生徒達が授業を受けている。

 スダップ先生が丁寧に書いた数式を生徒達が説明を聞きながらノートへ写していた。

 そんな中、スダップに問題を解くようにと指名された少年が黒板の前に立ち、チョークで書かれた難問を容易く解くと、スダップやクラスメイトから拍手と賞賛の声が送られた。


「おおおおーッ!!」

「騒ぎ過ぎだ。静かにしてくれ」


 しかし、少年は自信に満ちた笑みを浮かべる処か、寧ろ猛禽類の様な冷たい顔と声で教室全体を一気に静めた。

 重苦しい雰囲気となった所で、チョークを引っ掻き、粉受けに溜まった石膏を撒き散らしながら席へ戻った。


「え、えーと、皆もリールフ君を見習う様に」


 空気に混じる石膏が口や鼻に入ってしまい、スダップは咳を繰り返すが、何とか教室の雰囲気を和らげた。



 授業が終わり、昼休みが始まると、生徒達は教材を片付け、昼食の準備に入っていく。

 少年はスダップに呼ばれ、しかめっ面をあげながら教壇に立った。


「リールフ君、何もあそこまで言わなくても良かったんじゃないかな?」

「騒がしいのが嫌いなだけです。今度から気を付けます」


 その一言だけを伝え、少年は足早に教室を出た。

 それはとても態度を改める様なものではなく、ダイヤモンドに値する頑固さを象徴していた。

 少年の名はリールフ・ダルマイヤー。

 固めな金のアップバングヘアと青いツリ目、小さく引き締まった顔は、正に美男子と言っても過言ではないが、いつも冷たい顔を浮かべており、強面の様だ。

 リールフが廊下を歩けば、男子が冷やかしの混じった噂を口にする。


 ――流石、大臣さん()の息子は違うよな。

 ――それもサンダーバードの息子。あーいうのを天才って言うんだぜ。

 ――先生は『努力は裏切らない』って言うけど、あればかりは『才能』だよな。


 勿論、男子だけではない。女子も引き気味にリールフの人間性を語る。


 ――リールフ君、ハンサムだけど近寄り難い雰囲気あるよね。

 ――首席で入学したのに何が嫌なんだろう?

 ――でも、そういうところがリールフ君の魅力だと思うけどな~

 ――あんた、諦めなさい。リールフ、彼女いるらしいわ。


 陰口を吐かれるリールフだが、どこ吹く風の様に受け流していると、自分を呼ぶ声が聞こえた。


「待ってよリールフ」


 振り向いた先にはリールフと同い年の少女がいた。

 肩より少し下まで伸びる黒髪は何も結ばれておらず、漆塗りされたかの様に美しい。

 リールフに負けず劣らず、小さな顔に配置された鼻と口、柔らかい黄色い瞳は誰が見ても魅了される。

 ミーナ・メルローズ。それが少女の名前だ。


「なんだ?」

「どこ行くの? お昼一緒に食べよ」

「……下で買って来るから待っててくれ」

「いい。私も行く」

「勝手にしろ」


 早歩きで先に進むリールフに、ミーナは駆け足で近くに寄り、彼の横を歩いた。

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