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あの頃

 扉をゆっくりと開けた。

 ガチャリと響いたその先から真っ暗な空間が広がる。

 ダージリンは明かりを付けずに部屋へ入ると、窓を開けて外の様子を伺った。

 煌く星々と月を眺めたかったが、夜空は厚い雲に覆われ、光一つも見当たらない闇そのものと化していた。


(昼間はあんなに晴れていたのに……)


 肩を落としながら、ふと小さい頃の思い出が浮かび上がった。

 五歳の時、ダージリンは十一歳の姉と九歳の兄と一緒に中庭で横になり、夜空を見上げていた。

「綺麗だね。姉さん、兄さん」

「お母さんはね、星になって私達を見守っているんだって」

「お星さまになってるの?」

「そうだよ」

「……ねえ、お母さんは優しかった?」


 星よりも母の事が気になったダージリンは姉達に質問すると、今度は兄が口を開いた。


「優しかったよ。でも僕達が喧嘩とか、悪戯したりすると、おっかない顔で叱られた」

「怖かった?」

「うん。殺されるかと思ったよ」


 殺される、というワードに少し青ざめるダージリンだがすぐに笑顔へ戻った。


「ねえ! 僕もお母さんに会えるかな? お母さん、僕と会うの楽しみにしてるかな?」


 胸を高めながら姉達に聞くと、何故か二人とも黙り込んでしまい、ダージリンは不安げに顔色を伺った。


「……会えるよ」


 先に口を開けたのは姉だった。


「本当?」

「うん。良い子にしてればね」

「やった!」


 満面の笑み心を躍らせるダージリンだが、姉が苦し紛れに微笑んでいたのを知らずに、今度は兄にも聞いた。


「ねえ、兄さんもお母さんに会いたい?」

「……う、うん。僕もお母さんに会いたいよ。だから皆で良い子にいよう」


 やはり兄も、何かを隠す様に目尻を下げていた。

 それを見た姉は気の毒そうな眼差しを兄と合わせるが、二人は無邪気に笑うダージリンに応えて、兄はダージリンの頭を撫で、姉はギューッと抱きしめた。



 思い出はそこで終わり、ダージリンの目は震えていた。

 ――無邪気に光っていた自分はもういない。

 姉達は、沢山の愛情と一緒に色んな事を教えてくれた。

 今でも二人を敬愛している。一緒に頑張ろうとも誓った。

 しかし、約束は叶えられなかった。

 姉達に会わせる顔がないと悔やんだ。


「……姉さんと兄さん、今頃何してるのかな――」


 光一つもない夜にそよ風がダージリンの髪をなびく。

 身震いを起こしたダージリンは窓を閉めて、机にポツンと置いてあるランプに手を翳すと、幻想術に反応したランプが花開く様に明かりを灯した。

EPISODE1を改稿し、パートごとに分けました。

自分で書いておいてなんですが、結構長く書いたんだなと思いました。

2話以降も改稿して投稿していきますので、よろしくお願いします。

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