表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/121

お話ししましょう。

「本当に申し訳ありませんでした」


テーブルに額を押しつけるようにして謝罪する美少女に、私は、内心そっとため息をつきました。


あの後、泣きじゃくる彼女が少し落ち着いたところで、学園から少し離れた場所にある喫茶店に移動しました。


さすがに泣きはらした顔で学内のカフェには行きづらかったし、あのまま立ち話は、当然あり得ないしと言うことで、苦肉の策です。

裏通りの少し寂れた喫茶店に、うちの学園の子達が入って来る確率は限りなく低いだろうと緊急避難したのです。





「うん。もう、謝罪はいいから顔を上げてもらって良いかな?四季原さん」

隣に座った兄が、苦笑しながらポンポンと目の前に差し出されたようになった彼女の頭を撫でて促しました。


「そうですよ?甘いもの食べて、ひと息つきましょ?」

私も出来るだけ優しい声を出してみます。

あ、ようやく顔が上がりました。


まだ少しだけ潤んだ瞳が、ジッとコッチを見つめてきます。

卑屈にも思える行動なのですが、美少女がやると可憐さと憐憫を強調するんですね。

1つ勉強になりました。まぁ、活用する機会があるかは分かりませんが。


タイミングよく、おばあちゃんが頼んだ飲み物やパフェを運んできてくれました。

レトロな雰囲気の喫茶店でしたが、これまたメニューにいかにもなパフェがあって、とりあえず衝動的に頼んじゃったんですよね。


「うん。美味しいです。兄の奢りですから、貴女もどうぞ」

一口掬って口にすればタップリと盛られた生クリームも冷たく冷えていてとても良い感じです。

もちろん、彼女の分も注文済みです。

やっぱり女の子の機嫌をとるなら甘いものですよね。


「…………おいし」

つられたようにパフェを口にした彼女が、ふわんっと微笑みました。

(かぁ〜〜わぁ〜〜いぃ〜〜)

青ざめた顔や泣き顔はたくさん見ましたしそれはそれで可愛かったのですが、初めて見た笑顔は格別です。

やっぱり女の子は笑顔が1番ですよね!


パクパクと食べ出した様子にチョット安心して、私もスプーンを動かします。

パフェを美味しく食べるのは、時間との戦いなのです。

生クリームやフルーツは冷たいのが良いし、アイスは少し溶けて下のコーンフレークに染みるくらいはアリですが、溶けきってドロドロになるのは私的にはアウトなのです。


そうして、無事に美味しくパフェを食べきり、少し冷えてしまったお腹を紅茶で温めるべく、ほぅっと幸せなため息をつけば、向かいの彼女と見事にハモりました。

なんとなく2人で顔を見合わせて笑ってしまいます。


そんな私たちを眺めていたらしい兄が、隣でニコニコ笑っていました。

穏やかな空気が流れます。


「で、落ち着いたところで、イロイロと白状してもらおうかな?君は何を「知っている」んだい?四季原さん?」

そして、その空気をぶち壊すように唐突にブッ込んで来た兄の発言に、のんびり紅茶のカップを傾けていた四季原さんが噎せました。


正確には、紅茶を吹き出しそうになり無理やり飲み込んだせいで、変なところに入っちゃったみたいですね。

御愁傷様です。


「お兄ちゃん!」

「いや、だって2人のほのぼの空気に飲まれてたらいつまで立っても先に進めなさそうだし」

悪びれなく肩をすくめると、兄は優雅な仕草でカップを傾けました。


澄ました顔がなんだか小憎らしいですね。

こんな時でもかっこいいとか、コレだから美形は。

「こんな時でもかっこいいとか、イケメンなんて滅びれば良いのに」

ボソリと耳に小さな声。

あれ?私、声に出してましたっけ?


「それは褒めてるのか落としてるのかどっちかな?四季原さん?」

「ひぃぃ!何でもございません。ごめんなさぁ〜い。つい、心の声が」

兄の冷たい声に、四季原さんが悲鳴をあげました。

笑顔なのに視線で凍えそうです。

と、いうか、四季原さんの声だったんですね。

アァ、びっくりした。気が合いますね、四季原さん。


「………うん。もう「ごめんなさい」はいいから。なにが君を苦しめてるのか、僕たちに教えてくれるかな?」

ひーひーいってる四季原さんに1つため息をつくと、手を伸ばした兄が、テーブル越しに四季原さんの頭をなでなで。


突然の接触に、四季原さんはビクっと体を震わせた後上目使いで兄の顔を伺いました。なんだか、人馴れしてないノラ猫さんみたいですね。


そして、そこにけして責めるわけでもなくただ、静かに四季原さんの言葉を待っている様子の兄の顔を見つけ、一瞬迷った後、ぎゅっと唇を噛み締め、顔をあげました。


「私!前世の記憶があるんです!そこで、この世界にそっくりなゲームをしてて。それで、私が主人公で、倉敷君はそのゲームに出てくるんです。冬乃院君とか、アドルフォ君とかも!」


四季原さんの可愛らしい叫びが、さほど広くない店内に響き渡りました。

兄の目が驚きに見開かれます。


まぁ、予備知識があるとはいえ、私も驚きました。

まさか、どストレートに告白されるとは思わなかったので。


………とりあえず、他にお客さん、居なくて良かったです。













読んでくださり、ありがとうございました。


あれ?話が進まない………。

ただパフェを食べて和んでるだけだ(汗

待て、次回!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ