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おでかけしましょ⑥

「お兄ちゃん、これ、どうですか?」


ショーケースに入った定期入れの1つを出してもらって見せれば、隣に立つ兄が覗き込んできます。


ベージュの皮にピンクの太めの糸でステッチがしてあって可愛いです。

小銭を入れれるポケットも付いてて、隅っこにはブランドロゴの入ったシルバーの飾りがさりげなく付いてます。


「ん、良いんじゃないかな?母さん好みだと思うよ」


今使ってるのが随分ボロボロで定期入れをプレゼントにするのは早くから決まってたんですけど、なかなか良いのが見つからなくて、時間かかっちゃいました。


けど、3軒目でようやく発見、です。


「じゃぁ、コレで。プレゼントなのでラッピングお願い出来ますか?」

隣に張り付く店員さんに手渡すと、にっこりと 笑顔が返ってきました。


「サービスでカードも付けれますが、書かれますか?」

レジに誘導されながらの言葉に兄と顔を見合わせます。


「え〜っと、カードは別に用意するので大丈夫です」

「さようでございますか」

首を横に振れば気を悪くした様子もなくアッサリとひかれて、ホッと一安心。

偶に妙に押しの強い店員さんがいるんですよね……。




支払いの後、ラッピングができるのを待ってフラフラと店内を歩き回ります。

革製品を中心に扱う、中学生にはちょっと敷居の高いお店なのですが、今日は隣に兄がいるので平気です。


そう。兄と2人です。

余計な外野は現在いません。


食事がすんだらアドルフォさんを連れてレミジオさんは速やかに撤退していきました。

なんでも、知人と昼食をとる予定があったのにすっぽかした為、昼食会が晩餐会に変わったらしいです。

アドルフォさんの顔が心底嫌そうに歪んでいたのですが、………まぁ、自業自得ですよね。


「俺まで巻き込まれたんだ。この落とし前はつけさせるからな」

ヒンヤリと冷たい笑顔のレミジオさんに、アドルフォさんが凍りついてましたが、兄がにこやかに手をふっていたので、まぁ、大丈夫でしょう。


「……………に、しても、性格変わった?」

「ん?ゆあ、なんか言った?」

心の声が漏れていた様で、兄が不思議そうに首を傾げました。

少し離れた場所にいたから、聞こえていなかった様です。セーフ。


「何でもないです。次はカード探しですね」


適当に返事しながらも、脳裏に浮かぶのはレミジオさんの様子です。

食事が来た頃にはすっかり落ち着いた様子で、「ご乱心」を揶揄うアドルフォさんもサラリとかわしていました。


言葉少なで、表情もあまり変わらない。

どうも暴走しがちなアドルフォさんのお目付役的な存在みたいで、落ち着いたクールキャラみたいです。


あまりにも、「前」と違う様子に、本当にヤツなのかと疑いたくなるレベルです。

でも、名前呼ばれましたし、合図通じましたし………ね。


(まぁ、話をすればわかる事、ですね)

何気なく探ったポケットの中にカサリとした感触。

2人を見送った時に、気がついたらポケットに入っていたそれには電話番号が書かれていました。


どう考えても(レミジオ)の仕業でしょう。

しかし、天才スリ師か何かですか?

本当に気づかなかったんですけど?





「ゆあ、出来たよ。行こう」

ボンヤリしているうちにラッピングが終わったらしく、兄に呼ばれました。

少し先に立っている兄の所へと、慌てて駆け寄ります。


「あんまりボンヤリしてると、迷子になるよ?」

少し揶揄う様な笑顔に、唇を尖らせます。

「さすがにあんな狭い店の中で迷子になんてなりません!」

「はいはい。じゃあ、店の外は危ないんだろうから、手をつなごう、ね?」

抗議体制の私にクスクス笑いながら、兄がするりと自然な動作で私の手を掬い上げました。


「外でもなりませんよ?!」

理不尽な言いがかりにさらに唇を尖らせて猛抗議すると、笑顔の兄に唇を押し潰されました。

「わかってるよ。僕が手を繋ぎたいだけ」

そう言ってとろける様な笑顔でキュッと繋いだ指に力を込められれば、もう文句なんて言えません。


と、いうか。

他の人がやってたら単なるチャラ男ですからね?!

もう!兄がカッコ良すぎて辛いです。

イケメンなんて滅びてしまえ!


「しょ………、しょうがないから繋いでてあげます!」

顔が熱いですが、気にしたらダメです。

それに、何だか負けた気分になりましたが、兄と手を繋ぐのは大好きなのです。拒めるはずがありません。


だって、この手はいつだって私を守ってくれるのですから。


ブラコン?だからなんですか?

逆に、この兄がいてブラコンにならない妹がいたら連れてこい!ですよ。


繋いだ手に力を込めると、直ぐにふってくる視線。

それに笑顔を返してから、ブンブンと大きく振り回してみました。


「何?どうしたの?ゆあ?」

突然の私の奇行に驚いた様に少し目を見開いた後、兄がクスリと笑いました。


「なんとなく、です!さっ、カード屋さんに行きましょう!」





大好きな兄。

大切な家族。

引っ掻き回すつもりなら、いくら元幼馴染といえ容赦しませんよ?


敦史(あつし)











読んでくださり、ありがとうございます。



あれ?

なんでか結愛ちゃんが戦闘態勢に?


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