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おでかけしましょ④

彼と私はいわゆる幼馴染ってヤツでした。

しかも、産まれてすぐの頃からの筋金入りの。


庭なんて申し訳程しか付いていない建売住宅の中。

ほぼ同時期に隣に引っ越してきて、同じ年の子持ちとなれば、親しくなるのは当然の成り行きだったのでしょう。


1番古い記録は、自力移動不可能なくらい小さな私とちょこんとお座りする彼が隣り合ってキョトンとしている写真で。

お互い母親がパートで働いていた為、何かと言えばどちらかの家に預けられていて、そんな兄妹同然の生活をしていれば、男女の別なんてつくはずもありません。


さらに、1つの布団を同時におねしょで濡らした仲で、「遠慮」なんて言葉は2人の間に存在しませんでした。

少なくとも、ヤツが突然色気づくまでは。


いえ、正確には、「遠慮」って言葉を覚えたのは私だけで、相手は相変わらずの距離感だったんですけどね。


ヤツの「初めての彼女」とやらに、人気のない校舎裏で文句をつけられたのを皮切りに、女性トラブルに巻き込まれること数知れず。

早々に学習して距離を置こうとするものの、今度は、ヤツの「なんでどうして」攻撃。


曰く

「彼女にはお前のことは幼馴染の友人だって話してるし納得もしてくれてるから」

って。


…………そんなわけないでしょうに。


人の心の機微に鈍感だと言われる私にだって分かります。

自分の彼氏の近くにに幼馴染とはいえ異性がウロチョロしてたら気分悪いって。

そして、大好きな彼に嫌われたくないから物分りのいいフリをしているだけだって。


それでも。


大して付き合いのない「彼女」と産まれた時から隣にいる「幼馴染」。

どちらを優先するかといえば、ヤッパリ「幼馴染」で。




………嘘です。

そんな綺麗な感情でもなく、ただ距離を置こうとすれば、「なんでどこかに行こうとするんだ」とつきまとい、果ては半泣きになるヤツがメンドくさかったんです。


だって、敵は親も顔なじみ………というか、実子よりも可愛がってるんじゃないかと思われるお隣の子供で(イケメンなんて滅びればいいのに)、ヤツが騒げばもれなくうちの親まで騒ぐ。さらにはお隣の夫婦まで騒ぎ出すという悪連鎖。


かたや、学校の間だけ、たまにチクチクやられるのを我慢すればいいだけとなれば、どっちに日和るかなんて明らかでしょう?



結果。

高校で女子校に入るまで、私の学校生活はなかなかに綱渡りであり、アグレッシブな恋愛脳のお嬢さんが飛ばしてくる火の粉は中々に大変だったとだけ言っておこうかと思います。

よくいじめの標的にならなかったよなぁ、私。


さらにいえば、女子校に行ったからって平和だったかといえば、そういうわけでもなく。

………なんで、他校の校門前で待ち伏せして喧嘩売るかな?

暇なの?

さらに、その騒ぎを伝え聞いたヤツから絶縁され、「フラれたのはあんたのせいだ!」と特攻かけるとか。

完全に自業自得だよね?

当時は、「やぶ蛇」って言葉を真剣に教えてあげたいって思ってたっけ。




いい加減ウンザリして、もう少し、女関係をどうにかしろと説教することも数知れず。


それでも。


私が本当に大変な時には、相談もしていないのに、いつの間にか気づいてただ側にいてくれる存在を、突き放すことなんて出来るはずもなかったんです。


すり込み、だったのかも知れないけれど。


それでも。


学校を卒業して、社会人になっても。

月に2〜3度は一緒に食事をしては馬鹿を言い合って笑いあう。

そんな関係を気に入っていたのも確かだったから。


そのうち、ヤツが綺麗なお嫁さんでも貰う事になって年貢の納め時だと笑う日も来るんだろうと思っていたのですが。


それより先に、私の命の期限がきてしまうなんて、本当に思ってもみませんでした。


見知らぬ男女の縺れに巻き込まれ、刺された腹部の出血で朦朧としながら思ったのは、次の日の約束。

そして、きっと泣かせるだろうなぁと浮かぶ面影でした。


それでも、男女ともに友人知人の多かったヤツのことだから、きっと大丈夫だろうと、さほど心配もせずにいたのですが…………。





現在。





「沙絢、やっと見つけた。やっぱりこの世界に居たんだな!」

初対面のはずのあきらかに国籍違う人物に、力任せに抱きしめられてます。


ただ、問題点は、彼が誰も知らないはずの私のかつての名前を連呼していることと、姿形は違えども、この突飛な行動や抱きしめて来る腕に激しくデジャブを感じてる点でしょうか。


………確かに、自分という前例がある以上、他にも似たような人(・・・・・・)がいても可笑しくは無いのでしょうが………。


えぇ〜〜!本当(マジ)に?!








読んで下さり、ありがとうございました。


さて、ネタバレ回です。


しかし、ゆあちゃんははたしてお母さんのプレゼントは買いに行けるのでしょうか?(笑

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